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ポーランド、ヴロツワフ市出張の機会に世界遺産の百年記念会館と旧市街を訪れた。この町は多くの日系企業が東欧進出の拠点としており、日本人の駐在員も多い。<br /><br />ヴロツワフ駐在の方に伺ったことであるが、ポーランド語の発音はLに当たるアルファベットが日本語のラ行とワ行と区別しにくい。ヴロツワフはヴロツラフと、または通貨のポーランドズウォティもズロティと表記されることがあるが、ここでは前者のワ行の表記で統一しておく。<br /><br />ヴロツワフ(ドイツ語名ブレスラウ)は、ポーランド第4の都市で、美しい旧市街を持ち、ポーランドの中でも最も古い都市のひとつである。折しもヴロツワフは、UEFAユーロカップ2012のホスト都市として湧いており、空港は開港直後でピカピカであった。今思えばワルシャワ空港のアクセス鉄道も開通直後だったのはこのユーロカップ開催のためだったのだ。この数年でポーランドの主要都市のインフラ整備は一気に進んでいる。<br /><br />ヴロツワフは10世紀にボヘミア公ブラチスラフ1世によって建設された。13世紀にはモンゴル帝国の侵略を受け、14世紀にはボヘミア王国に支配されたのち、ハプスブルク帝国の一部となる。その後プロイセン王国領となり、第2次大戦後までドイツの一部となっていた。やがてナチスドイツのポーランド侵攻により第2次世界大戦に突入、ヴロツワフもドイツ軍とソ連軍の激しい戦場となり、美しい歴史地区の大半が破壊された。戦後、ワルシャワと同様残された資料を元に市民の手によって正確に復元された。ヴロツワフ歴史地区はユネスコ世界遺産にこそ登録されていないが、その優美さはワルシャワ、クラクフと比較して全く遜色ない。<br /><br />さて、ヴロツワフ市の百年記念会館は長期間改修が行われていたが、昨年完成し再公開された。鉄筋コンクリート建築の歴史における画期的な建造物として2006年にユネスコ世界文化遺産に登録されている。ドイツ領だった1911〜1913年にブレスラウ市の建築家マックス・ベルクの設計により建設された。「百年記念会館」という名は、ナポレオン率いるフランス軍に勝利を収めた1813年のライプツィヒの戦いから100年を記念して建てられたことに由来する。このホールは当初展覧会場として造られ、今回の改修を経て現在も多目的娯楽施設として機能している。<br /><br />私の専門分野なので、メモ代わりに細部を記載しておきたい。百年記念会館の天上を覆う円形ドームは直径が67m、高さは43mで、頂上の部分は鉄鋼材とガラスで出来た明かり取りの天窓になっており、建物全体はそのドームを中心に正十字に翼を拡げた四葉型となっている。音響効果を高めるため壁は木材やコルクを混ぜたコンクリートの遮音層で覆われている。会館の最も幅の広い部分は95mあり、利用可能な床面積は14,000平方メートル、客席部分には約6,000人が収容可能である。<br /><br />高所に飾りや装飾は一切なく、今でこそ一般的であるが、打ちっ放しコンクリート表面には木型枠の木目が残っている。機能優先の設計で、ヨーロッパで主流だった劇場や教会建築とは一線を画する。その後の鉄筋コンクリート建築の発展にも大きな影響を与えたことが世界遺産登録の理由である。館内には建設当時の写真や、CGによる建設ステップの解説がされており、専門家ならずとも興味を引かれることだろう。地元ポーランド人にとっては、ドイツ領時代のドイツ人設計の建物、という見方をするのもうなずけるが、貴重な建築が保存されて公開されていることに感謝したい。

ポーランドの世界遺産No.5:ヴロツワフの百年記念会館とパステルカラーが美しい旧市街

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2012/07/16 - 2012/07/17

65位(同エリア161件中)

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ハンク

ハンクさん

ポーランド、ヴロツワフ市出張の機会に世界遺産の百年記念会館と旧市街を訪れた。この町は多くの日系企業が東欧進出の拠点としており、日本人の駐在員も多い。

ヴロツワフ駐在の方に伺ったことであるが、ポーランド語の発音はLに当たるアルファベットが日本語のラ行とワ行と区別しにくい。ヴロツワフはヴロツラフと、または通貨のポーランドズウォティもズロティと表記されることがあるが、ここでは前者のワ行の表記で統一しておく。

ヴロツワフ(ドイツ語名ブレスラウ)は、ポーランド第4の都市で、美しい旧市街を持ち、ポーランドの中でも最も古い都市のひとつである。折しもヴロツワフは、UEFAユーロカップ2012のホスト都市として湧いており、空港は開港直後でピカピカであった。今思えばワルシャワ空港のアクセス鉄道も開通直後だったのはこのユーロカップ開催のためだったのだ。この数年でポーランドの主要都市のインフラ整備は一気に進んでいる。

ヴロツワフは10世紀にボヘミア公ブラチスラフ1世によって建設された。13世紀にはモンゴル帝国の侵略を受け、14世紀にはボヘミア王国に支配されたのち、ハプスブルク帝国の一部となる。その後プロイセン王国領となり、第2次大戦後までドイツの一部となっていた。やがてナチスドイツのポーランド侵攻により第2次世界大戦に突入、ヴロツワフもドイツ軍とソ連軍の激しい戦場となり、美しい歴史地区の大半が破壊された。戦後、ワルシャワと同様残された資料を元に市民の手によって正確に復元された。ヴロツワフ歴史地区はユネスコ世界遺産にこそ登録されていないが、その優美さはワルシャワ、クラクフと比較して全く遜色ない。

さて、ヴロツワフ市の百年記念会館は長期間改修が行われていたが、昨年完成し再公開された。鉄筋コンクリート建築の歴史における画期的な建造物として2006年にユネスコ世界文化遺産に登録されている。ドイツ領だった1911〜1913年にブレスラウ市の建築家マックス・ベルクの設計により建設された。「百年記念会館」という名は、ナポレオン率いるフランス軍に勝利を収めた1813年のライプツィヒの戦いから100年を記念して建てられたことに由来する。このホールは当初展覧会場として造られ、今回の改修を経て現在も多目的娯楽施設として機能している。

私の専門分野なので、メモ代わりに細部を記載しておきたい。百年記念会館の天上を覆う円形ドームは直径が67m、高さは43mで、頂上の部分は鉄鋼材とガラスで出来た明かり取りの天窓になっており、建物全体はそのドームを中心に正十字に翼を拡げた四葉型となっている。音響効果を高めるため壁は木材やコルクを混ぜたコンクリートの遮音層で覆われている。会館の最も幅の広い部分は95mあり、利用可能な床面積は14,000平方メートル、客席部分には約6,000人が収容可能である。

高所に飾りや装飾は一切なく、今でこそ一般的であるが、打ちっ放しコンクリート表面には木型枠の木目が残っている。機能優先の設計で、ヨーロッパで主流だった劇場や教会建築とは一線を画する。その後の鉄筋コンクリート建築の発展にも大きな影響を与えたことが世界遺産登録の理由である。館内には建設当時の写真や、CGによる建設ステップの解説がされており、専門家ならずとも興味を引かれることだろう。地元ポーランド人にとっては、ドイツ領時代のドイツ人設計の建物、という見方をするのもうなずけるが、貴重な建築が保存されて公開されていることに感謝したい。

旅行の満足度
4.0
観光
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.0
交通
4.0
同行者
友人
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配
  • 新築間もないヴロツワフ国際空港、この規模の都市としてはまれに見る素晴らしい空港ターミナルを持つ

    新築間もないヴロツワフ国際空港、この規模の都市としてはまれに見る素晴らしい空港ターミナルを持つ

  • 素晴らしい空港ターミナルビルの内部

    素晴らしい空港ターミナルビルの内部

  • 円形ドームを持つ百年記念会館の外観

    円形ドームを持つ百年記念会館の外観

  • 壁を覆うつたの葉が歴史を感じさせる百年記念会館の入り口

    壁を覆うつたの葉が歴史を感じさせる百年記念会館の入り口

  • 入り口から百年記念会館ドームを見上げる

    入り口から百年記念会館ドームを見上げる

  • CGによる建設ステップの解説、専門家ならずとも興味を引かれることだろう

    CGによる建設ステップの解説、専門家ならずとも興味を引かれることだろう

  • CGによる建設ステップの解説、専門家ならずとも興味を引かれることだろう

    CGによる建設ステップの解説、専門家ならずとも興味を引かれることだろう

  • 現在も機能しているホールのホワイエ

    現在も機能しているホールのホワイエ

  • ドーム内部の観覧席

    ドーム内部の観覧席

  • ドーム内部の観覧席と天井採光

    ドーム内部の観覧席と天井採光

  • ドーム内部の天井採光

    ドーム内部の天井採光

  • ドーム内部の観覧席と天井採光

    ドーム内部の観覧席と天井採光

  • 記念会館の入り口、この日もイヴェントが開催されている

    記念会館の入り口、この日もイヴェントが開催されている

  • 記念会館の入り口、この日もイヴェントが開催されている

    記念会館の入り口、この日もイヴェントが開催されている

  • 円形ドームを持つ百年記念会館の外観

    円形ドームを持つ百年記念会館の外観

  • 歴史的にも貴重な吊り橋

    歴史的にも貴重な吊り橋

  • ヴロツワフ市内のトラム

    ヴロツワフ市内のトラム

  • 旧市街に面する聖アルベルト教会のファサード

    旧市街に面する聖アルベルト教会のファサード

  • 旧市街に面する聖アルベルト教会

    旧市街に面する聖アルベルト教会

  • 戦後復元された美しい歴史地区に建つ市庁舎

    戦後復元された美しい歴史地区に建つ市庁舎

  • パステルカラーが美しい歴史地区の建築群、その優美さはワルシャワ、クラクフと比較して全く遜色ない

    パステルカラーが美しい歴史地区の建築群、その優美さはワルシャワ、クラクフと比較して全く遜色ない

  • パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

    パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

  • パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

    パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

  • マーケット広場でチェロを奏でる女性たち

    マーケット広場でチェロを奏でる女性たち

  • パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

    パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

  • マーケット広場の街並み

    マーケット広場の街並み

  • マーケット広場のアレクサンダー・フレドロ像

    マーケット広場のアレクサンダー・フレドロ像

  • パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

    パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

  • パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

    パステルカラーが美しい歴史地区の建築群

  • 夕刻のライトアップされた歴史地区

    夕刻のライトアップされた歴史地区

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