2011/05/04 - 2011/05/08
610位(同エリア1011件中)
そんざーさん
旅行3日目、揚州から蘇州に入った私は、ホテルにチェックイン後、早速、世界遺産の拙政園へと向かいました。拙政園の見学後、時間はあまりないのですが、これもまた世界遺産の留園へと移動です。
今回は、私流に言わせると豪華絢爛で演出上手な庭園、世界遺産であり中国国宝庭園でもある留園を紹介します。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 3.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
留園は、中国の四大名園の一つで、当然のことながら、蘇州四大名園の一つでもあります。因みに蘇州の四大名園とは、滄浪亭、獅子林、拙政園、留園を言います。また、蘇州の拙政園と留園に、北京の頤和園と華北省承徳市にある避暑山荘を加えて、中国四大名園と言います。なお、留園は中国の国宝庭園でもあり、さらに1997年に世界遺産にも登録されています。
ちなみに留園の広さは2haあり、蘇州の四大名園の中では、拙政園に次いで広い庭園です。左の写真は留園の入口です。
今日は、揚州から蘇州に移動し、ホテルチェックイン後に、拙政園を見てから留園にきましたので、もう時間は4時になろうとしています。留園は5時に締まりますので、閉園まであと1時間少しです。駆け足で回ります。 -
大門(入口)から視界のない長い回廊を歩いていくと、突然様々な形の窓が現れます。いよいよ庭園が見えるのかと思えば、竹林です。でも、人をじらすようなこうした演出は、天下の名園、留園だからこそ、訪れた人の期待感をますます膨らませます。
そして、いよいよ左の写真のような窓が並ぶと、そこから庭園が見え始めます。模様のある窓を漏窓、模様のない窓を空窓といいますが、空窓から見事な庭園が見え始めます。庭園の素晴らしさはさすが留園です。いよいよ、留園に来たという実感が沸いてきます。 -
回廊が終わると、上の写真にある、池畔に建てられている明瑟楼という建物に着きます。明瑟楼は、留園の主要な建物の一つである涵碧山房と一体になっていて、画舫(がぼう=屋形船)という建物になっています。
画舫というのは、神仙蓬莱思想の中の「始皇帝と徐福の不老不死の薬」の話から来ていて、仙人たちが住む島へ旅立つための舟をイメージしています。不繋舟とか石舫とか呼ばれることもありますが、後ほど池の反対側からの写真を見ていただくと、その意味が分かるかと思います。
明瑟楼では、中国民族音楽の演奏が始まっていました。
奥の山の上に見える小さな建物は、舒嘯亭です。 -
明瑟楼では二人の演奏者の掛け合いで音楽が進んでいます。
蘇州評弾という形式の蘇州の伝統芸術です。通常、二人がそれぞれ中国琵琶と三弦(中国三味線)を演奏しながら、故事を歌い奏でるというものです。この舞台では、女性が中国琵琶を、男性が三弦を演奏しています。因みに、三弦が日本に伝わって、日本の三味線になったとされています。優雅な伝統的な中国メロディに乗せて、女性が高い歌声が歌います。なかなか興味深い伝統芸術で、こうした演出は留園の蘇州古典園林としての魅力を引き立てます。 -
明瑟楼と一体になっている涵碧山房の室内です。二つの額がかけてあって、右側は蘇州生まれの画家、朱欣生が留園の蓮を描いた「香遠益清」という絵です。朱欣生は現代の画家ですので、最近かけられたものなのでしょう。
一方、左側は南宋時代の詩人・学者、楊万里が蘇州で詠んだ詩です。 楊万里は蓮の花を愛した詩人として有名で、蓮を題材に多くの詩を詠んでいます。
私なりに、前半部分を和訳すると次の通りです。
紅白の蓮の花が池一杯に広がって咲いている。
どちらの色も芳しいものだ。
漢の時代の宮殿にいた三千人の宮女に似ている。
半分は濃い化粧で半分は薄化粧だ。
この楊万里の詩を読んで、蘇東坡が杭州の西湖について詠った詩を思い出してしまいました。当時の詩人が美しさを表現するとこんな感じになるのですね。蘇東坡の詠んだ詩です。
湖の水が輝く晴天の日が良い。
山々が霞んで朦朧とした風情も一興である。
西湖を西施に例えるならば、
淡い化粧の時も濃い化粧の時も、いずれ劣らず素晴らしい。 -
左の写真は、今回の旅行ではなく、以前留園に来たときに、涵碧山房の前の池で撮影したものです。涵碧山房の前の池は、夏になると蓮の花が咲き乱れます。
綺麗な色をした花ですね。このような花が池に咲き乱れた情景を想像すると、上に書いた楊万里の詩の心も理解できるような気がします。
楊万里は南宋時代の詩人ですから、留園の誕生よりも早い時期です。ということは、留園の庭の設計者としては、楊万里の詩に描かれた情景をこの留園に再現しようとしたのではないでしょうか。蓮池に面する涵碧山房に楊万里の詩を飾ったのは、こんな理由があるのではないでしょうか。 -
涵碧山房の正面の低い築山の上に建つ建物、可亭から見る涵碧山房です。涵碧山房が茶色の平屋建て建物、その左の涵碧山房と一体となっている白い二階建て建物が明瑟楼です。
このように、明瑟楼の屋根の形や涵碧山房を合わせた形を船に似せて作っています。桃源郷を探しに船の旅に出るという画舫形式の建物になっていて、そうした縁起の良い建物に客人を招き、もてなすわけです。 -
可亭のある低い築山を下ると、涵碧山房の方からちょうど一艘の舟が池に出てきました。中国琵琶の音色が船の上から流れてきているようです。その音色に引き込まれながらカメラのズームで捕らえると、中国琵琶はまさにその小舟で演奏されていました。贅を尽くした庭園、留園にふさわしい演出です。
-
イチオシ
小舟が近くに戻ってきました。音をお聞かせできないのが残念ですが、中国琵琶を爪弾きながら、時々この女性が切なく歌います。留園の風景も優雅ですが、この女性の奏でる調べや歌も優雅です。明や清の時代は、主人がここ留園に客人を招きいれ、こんな情景の中で宴を盛り上げていたのでしょうか。
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さて、池の周りを離れて、五峰仙館の方へ向かいます。
このあたりは建物が幾つも建てられていて、その間を回廊が迷路のようにつながっています。その回廊の横にある小庭園も見事ですし、また、回廊に設けられている窓も見事です。
左の写真は、留園の回廊の漏窓です。漏窓とは窓枠の内部に模様を組んだもので、ガラスとかは入っていません。一般的に白壁の中に作られていて、一種の装飾でもありますが、通風や採光の面の機能もあります。
他の蘇州庭園と同じく、この留園においても、漏窓の形は二つとして同じものはありません。幾何学的な模様もあれば絵画的な模様もあります。 -
また、空窓といって、様々な形に切られた模様のない窓もいくつかあって、そうした窓からは、時々はっとするような庭の風景を見せてくれます。
左は「静中観」と名づけられた空窓です。 -
イチオシ
これは、「洞天一碧」と名づけられた空窓です。額縁の中の絵画を見るようです。
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「洞天一碧」の空窓から見える木を後ろから移してみました。こんな狭い空間に立派な木が育っています。木の陰に見える窓が「洞天一碧」の空窓です。
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そんな回廊を歩いていると、五峰仙館に着きます。
五峰仙館は、留園の中央にあって、客人をもてなすための建物として使用された建物です。五峰仙館は楠木という高価な木材で作られた留園でも最も豪華な建物で、広々とした大広間があります。沢山の客人が招かれたに違いない場所です。鴛鴦(えんおう)式といって、建物がついたてなどで南北二つの広間に分けられていて、男尊女卑の考えのあった中国では、部屋を男女で使い分けたと言われています。
五峰仙館には、建物内も見るからに豪華な絵や彫刻、陶器などに囲まれていて、贅を尽くした留園を代表する建物になっています。この写真では、部屋の壁の至る所が絵画や書で飾られていることが分かると思います。 -
五峰仙館南側にも、これまた立派な太湖石が並べられた内庭(内庭と呼ぶには広すぎますが。)があって、これが神仙島といわれる五仙島の形をしていて縁起が良いということらしいです。縁起が良いということになると、中国人観光客が群がって写真を撮影したがります。
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五峰仙館から留園をさらに奥に進むと、林泉耆碩の館があります。林泉耆碩の館も鴛鴦式といわれる建物で、この広間を南北二つに分けています。すなわち、中国の封建社会では、男女は親しくやりとりをせず、男性の客は男性の主人が、女性の客はその夫人が接待をしなければならず、したがって、男女の客をもてなすために、それぞれ異なる広間を使わなければならなかったということです。
左の写真で、建物内の円洞門をくぐると反対側の広間に入ります。 -
林泉耆碩の館を南北に分けている壁にある花窓です。一つ前の写真で、中央上に横長の額があり、その両側に円洞門があるところまで見えますが、その両側にこの花窓があります。
花窓とは枠が木枠になっていて、中に模様が入っているものです。漏窓と違うのは、花窓にはガラスが入っているということです。
この花窓のガラスには絵も入っていて綺麗ですが、実は林泉耆碩の館の北側には巨大な太湖石、冠雲峰があって、この窓越しにその冠雲峰が見えるようになっているのです。この花窓の代りにここが木の壁であったならば、女性の客人は広間から冠雲峰は見ることができませんし、採光の面から考えても、特に北側の広間では昼間から暗い部屋となってしまいます。男尊女卑という中国封建社会の思想に準拠しつつも、心憎いばかりの設計だと思います。 -
そして、冠雲峰です。
高さは高さ6.5メートルあり、蘇州の庭園の中でも最大のものだとされています。この太湖石はその奇怪な姿により、角度によって印象が異なります。
ただ、こういった自慢の石や自慢の池などの前には、必ず平台(へいだい)という石でできた平らな台があって、当然ながら眺めが最も良い所に平台が設置されますので、平台からの眺めが庭の主人が最も自慢したい眺めなのです。この林泉耆碩の館の前の平台はまさに冠雲峰を見るための平台です。左の写真もこの平台から撮影したものです。 -
冠雲峰です。
太湖石は、長年太湖の水によって浸食された結果、多くの穴が開いて複雑な形をしています。江南地方では、「透、瘦、漏、皺」が太湖石を評価する四大原則だと言われています。すなわち、大きな穴や多くの穴が開いていて反対側が見えていて、かつ、細身で皺が複雑な太湖石が、良い太湖石だと言われているようです。その意味では、冠雲峰は細身の大きな太湖石で、大きな穴がいくつも開いていて、しかも、それが石の上部にあって目立っています。確かに見事な太湖石です。 -
こちらが岫雲峰です。岫雲とは、洞穴のような穴の開いた雲のことを言います。私は良い形だと思います。この太湖石は細身で穴が大きいところに特徴がありますが、高さが低いので、中国人の受けが悪いのでしょうか。日本人の感覚としては左右のバランス感もあって、この太湖石は良いと思います。でも、中国江南地方で太湖石を評価する基準、「透、瘦、漏、皺」で考えると、左右バランスなんてないのですね。
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そうこうしているうちに、裏手の方から琴の調べが聞こえて来ました。琴の調べに誘われて行ってみると、「還我読書処」と名づけられた建物の裏手で、女性が琴を弾いていました。留園は演出上手ですね。中国庭園のムードがいやがおうにも高まります。
さて、「還我読書処」とは、良い建物の名前ですね。冠雲峰やその周りの池を見ながら我に帰って読書をする場所なのでしょう。こんな場所で本を読めたら幸せでしょうね。 -
東側の庭園に抜ける円洞門です。
留園には建物ごとにも小さな庭園がついていたりしますが、回遊式の庭園としては、東側の庭園が最も見事です。回遊式の庭園という言い方は日本庭園で使われる言い方ですが、土地の広さを生かして池や築山、 茶屋などを入れ、それらを巡りながら全体を観賞する方式の庭園を指します。
東側の庭園は、冠雲峰の東裏にあるのですが、冠雲峰を中心とした力強い景観とは異なり、静かな雰囲気を持った庭園であることが洞門を通して伺えます。洞門を通して見せる景色には、設計者の強い意図が働いています。 -
東側の庭園です。園路に沿って太湖石や黄石がふんだんに使われています。ここの太湖石も見事なものですが、冠雲峰を見た後には感動が弱くなってしまいます。とは言え、この園路に沿って歩いていると、心落ち着く庭園です。
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この庭園で、一つ見ていただきたいのは鋪地(ほち)です。日本でいうと敷石です。中国庭園では、鋪地のデザインが多種多様です。小石をデザインして張り付けたものや、瓦やガラスなどを使用しているものもあります。
特に、江南庭園において、鋪地のデザインはモダンなものが少なくなく、なかでも、留園の鋪地は絵画的なものが多く、見ていて心が和みます。 -
二つ上の写真(東園入口の写真)の鋪地は、大樹の下の鶴と鹿です。何か伝説の一部を絵にしたものでしょうか。
一つ上のデザインは、鉢植えの花、そしてすぐ上が蛙。
どれも可愛らしいデザインですね。
これらがいつ作られたかわかりませんが、その原型となるデザインが明や清の時代に作られていたと考えると、当時の人々のモダンなセンスに感心しないわけにはいきません。 -
イチオシ
留園の広い園内を一周してきて、また、入口付近の池の周りに戻ってきました。
舞台上では二人の演奏者の掛け合いで蘇州評弾が演奏されています。
留園は見所が多く敷地も広いものですから、この日のように1時間くらいの見学では、建物、池、花、石、窓そして鋪地など、まだまだ見たりない気持ちです。また、船の上の中国琵琶、冠雲楼近くの二胡や琴、そして、ここでの蘇州評弾と言った具合に、演出が良くてお客さんを飽きさせません。来るたびに、去りがたい気持ちで留園を後にしています。
また、訪れたい庭園です。
なお、留園についての詳細は、私のホームページ「蘇州古典園林の魅力」に詳細を記載しています。興味があれば、参照してください。
留園へは、来るときは時間がなかったので拙政園からタクシーで来たのですが、留園の入口まで乗合バスが沢山走っていますので、通常はこのバスで来ると良いと思います。ホテルへ帰るときもバスです。私の定宿、ホリデイイン・ジャスミン蘇州ホテルは、バス停「愛河橋」の目の前ですから、バスが大変便利なのです。30系統近くのバスが通りますので、蘇州のどこへ行くにも便利です。ホテル選択の際には、こうした市内移動の利便性も考慮すると良いと思います。
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