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<br />1962年3月13日(火)<br /><br />工事現場の視察が長くなり、空腹を抱えての昼食となった。<br /><br />いつもフランス国鉄の現場視察でいただく料理は、その地方のトップクラスのもので美味しいが、今日はさらに一段と特別クラスのもののように思った。<br /><br />どうもフランス国鉄幹部を日本に招待した際に手厚く遇したので、そのお返しなのかもしれないとも思う。<br /><br /><br />最初は、自家製のハム。<br /><br />ここのハムは、薄切りではなくて塊だ。<br /><br />その弾力性ある歯触り、鼻をつく燻製の芳香がたまらない。<br /><br />この一皿だけでも、ランチとして十分なボリュームなのに、御馳走の入口に過ぎないのだ。<br /><br /><br />次の料理は、皿からはみ出すほど大きいイセエビの蒸し焼き。<br /><br />そして次の皿、リードヴォー(子牛の胸線)で、感動はピークを迎える。<br /><br />大きさは、200グラムはありそうだ。<br /><br />サラダ、チーズをはさんで、デザートの味と量にさらに感動は深まる。<br /><br />フワフワッとした卵焼きに、コアントローかグランマルニエか、甘いリカーがかかっていて、天にも昇りそうな美味しさなのだった。<br /><br /><br />ワインは、この地方に産するミュスカデ。<br /><br />あっさりした味わいと、芳香が素晴らしい。<br /><br />これだけで値段は幾らくらいかと訊ねてみたら、30フラン(約2千円)とのことだった。<br /><br />その安さに驚く。<br /><br /><br />だが、食事中の会話は、料理の中味よりいっそう充実していた。<br /><br />ファントンさんは、日本のことを深く知っておられて、私の知識ギリギリの議論が多い。<br /><br />13歳の坊ちゃんも、大の日本びいきとのことだ。<br /><br />パリに帰ったら、九谷焼の置物と日本の切手を送ろう。<br /><br /><br />食事中の会話について、私はこれまで場を楽しくするための儀礼程度に思っていたのだが、親しい仲間ではもっと深く、人生の送り方すなわち哲学の分野にまで展開する。<br /><br />彼らに近づくには、自分の生き方をしっかり確立することが、何より大切だ。<br /><br />また客の立場であっても、受け身の姿勢だけでなく、招待主に少しでも多くの満足を与えようとする、前向きの姿勢が望ましい。<br /><br />こういったことを痛感した、今日一日だった。<br /><br /><br />次のスケジュールは、15時30分の列車でルアン行きだったが、楽しい食事の会話は出発時間ギリギリまで続いた。<br /><br /><br />ソフィーさんのマイページ」(訪問54カ国、文章1,590件 写真6,770枚)<br />http://4travel.jp/traveler/katase/<br /><br />スイスの写真が美しい「片瀬貴文さんのマイページ」(文章625件 写真2,400枚)<br />http://4travel.jp/traveler/takafumi/<br /><br />ブログの作成日順に並んでいる「片瀬貴文の記録」(文章1,650件)<br />http://blog.alc.co.jp/d/2001114<br /><br />(片瀬貴文 79歳)<br />

1962年のパリだより【829】充実した食事には充実した会話が必須だ

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1962/03/13 - 1962/03/13

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ソフィ

ソフィさん


1962年3月13日(火)

工事現場の視察が長くなり、空腹を抱えての昼食となった。

いつもフランス国鉄の現場視察でいただく料理は、その地方のトップクラスのもので美味しいが、今日はさらに一段と特別クラスのもののように思った。

どうもフランス国鉄幹部を日本に招待した際に手厚く遇したので、そのお返しなのかもしれないとも思う。


最初は、自家製のハム。

ここのハムは、薄切りではなくて塊だ。

その弾力性ある歯触り、鼻をつく燻製の芳香がたまらない。

この一皿だけでも、ランチとして十分なボリュームなのに、御馳走の入口に過ぎないのだ。


次の料理は、皿からはみ出すほど大きいイセエビの蒸し焼き。

そして次の皿、リードヴォー(子牛の胸線)で、感動はピークを迎える。

大きさは、200グラムはありそうだ。

サラダ、チーズをはさんで、デザートの味と量にさらに感動は深まる。

フワフワッとした卵焼きに、コアントローかグランマルニエか、甘いリカーがかかっていて、天にも昇りそうな美味しさなのだった。


ワインは、この地方に産するミュスカデ。

あっさりした味わいと、芳香が素晴らしい。

これだけで値段は幾らくらいかと訊ねてみたら、30フラン(約2千円)とのことだった。

その安さに驚く。


だが、食事中の会話は、料理の中味よりいっそう充実していた。

ファントンさんは、日本のことを深く知っておられて、私の知識ギリギリの議論が多い。

13歳の坊ちゃんも、大の日本びいきとのことだ。

パリに帰ったら、九谷焼の置物と日本の切手を送ろう。


食事中の会話について、私はこれまで場を楽しくするための儀礼程度に思っていたのだが、親しい仲間ではもっと深く、人生の送り方すなわち哲学の分野にまで展開する。

彼らに近づくには、自分の生き方をしっかり確立することが、何より大切だ。

また客の立場であっても、受け身の姿勢だけでなく、招待主に少しでも多くの満足を与えようとする、前向きの姿勢が望ましい。

こういったことを痛感した、今日一日だった。


次のスケジュールは、15時30分の列車でルアン行きだったが、楽しい食事の会話は出発時間ギリギリまで続いた。


ソフィーさんのマイページ」(訪問54カ国、文章1,590件 写真6,770枚)
http://4travel.jp/traveler/katase/

スイスの写真が美しい「片瀬貴文さんのマイページ」(文章625件 写真2,400枚)
http://4travel.jp/traveler/takafumi/

ブログの作成日順に並んでいる「片瀬貴文の記録」(文章1,650件)
http://blog.alc.co.jp/d/2001114

(片瀬貴文 79歳)

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