<br />1962年1月31日（水）<br /><br />昨日フランス国鉄から頂いた再招待のニュースが嬉しくて、思い出すごとに興奮している。<br /><br />これまでどこかに暗い影を残していたフランス国鉄のイメージが、今日は明るく輝いて感じる。<br /><br />また、私のことを忘れずにいて下さった十河総裁や、フランスに帰国後すぐに再招待の方針を決め伝えて下さった、フランス国鉄副総裁の厚意など、どれほど私を元気づけてくれたか計り知れない。<br /><br /><br />日本から出張中のＭさんのパリ土産として、買い物を手伝う。<br /><br />Ｍさんによれば、東海道新幹線建設工事は、最後に用地買収の最難航区間が残され、オリンピックに間に合うかどうかは、そのネックの処理にかかっている。<br /><br />「君が帰ってきたら、その最難関を担当することになるかも知れないね」<br /><br />不安も大きいが、期待されるのはとても嬉しい。<br /><br /><br />私は終戦直後の混乱以来、困難を求めて解決することに、生きがいを感じるようになっている。<br /><br />父を亡くし、インフレに襲われ、農地改革で収入源を奪われた。<br /><br />どうやって生き延びるかギリギリの線で、私はムクムクと心底から勇気が湧いてくるのを感じ、楽しかった記憶が生々しい。<br /><br />「憂きことのなおこの上に積もれかし限りある身の力試さん」<br /><br />この歌がまさに自分のことを歌ったように感じられて、大好きだった。<br />

1962年のパリだより【765】久々にすべてが明るい一日だった

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1962/01/31 - 1962/01/31

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#留学

ソフィさん

1962年1月31日（水）

昨日フランス国鉄から頂いた再招待のニュースが嬉しくて、思い出すごとに興奮している。

これまでどこかに暗い影を残していたフランス国鉄のイメージが、今日は明るく輝いて感じる。

また、私のことを忘れずにいて下さった十河総裁や、フランスに帰国後すぐに再招待の方針を決め伝えて下さった、フランス国鉄副総裁の厚意など、どれほど私を元気づけてくれたか計り知れない。

日本から出張中のＭさんのパリ土産として、買い物を手伝う。

Ｍさんによれば、東海道新幹線建設工事は、最後に用地買収の最難航区間が残され、オリンピックに間に合うかどうかは、そのネックの処理にかかっている。

「君が帰ってきたら、その最難関を担当することになるかも知れないね」

不安も大きいが、期待されるのはとても嬉しい。

私は終戦直後の混乱以来、困難を求めて解決することに、生きがいを感じるようになっている。

父を亡くし、インフレに襲われ、農地改革で収入源を奪われた。

どうやって生き延びるかギリギリの線で、私はムクムクと心底から勇気が湧いてくるのを感じ、楽しかった記憶が生々しい。

「憂きことのなおこの上に積もれかし限りある身の力試さん」

この歌がまさに自分のことを歌ったように感じられて、大好きだった。