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アンコールには「アンコール・ワット」「アンコール・トム」の二つの遺跡を中心として、その周辺には幾つもの古い遺跡が残されている。何か、大和まほろば、奈良盆地の平城京、西の京、飛鳥、斑鳩、吉野、等々数多くの旧跡・名跡があるのと似ている感じである。<br /><br />アンコールの北東約40キロ、幾つかの集落を通り過ぎ、一面がコメ畑の平野に出て暫らく走ると、前方に忽然と山が現われ、それは丁度大和三山の「天の香具山」に似た形の整った小山で、バイクは見る見るその山に近づき、その山の麓近くに今日訪ねる「バンテアイ・スレイ」がある。<br /><br />この寺院は午前の早い時間に行くと良い。その赤茶けた臙脂色の古い寺院は、旭日を浴びて、燃えるような赤になる。全体がばら色砂岩で作られたこのヒンドウの寺は、アンコール・ワット、トムの先駆をなすもので、クメール王朝がコンポントム(サンボー)からこの地に移ってきた10世紀、最初に建設された寺院で、当時のインド様式のヒンドウ芸術が色濃く残されている。<br /> <br />「バンテアイ・スレイ」、まさにこの名前「女の砦」が示すように、寺院の至る場所にインド風の女性像が彫刻されていて、所謂「東洋のモナリザ」もこの寺にある。<br /><br />嘗てアンドレ・マルローはこの地を訪れ、1個のレリーフを盗もうとして逮捕された史実が示すように、この寺院はアンコールの遺跡の中でも最も格調が高く、且つ芸術的であると言われている由縁でもある。<br /><br />東面する正面の参道は今将に旭日を受けてばら色に輝き、幾つもの楼門を潜り抜けた先の一番奥まった堂宇の壁面の中にそのモナリザ像はひっそりと佇んでいた。長躯バイクを走らせ、砂埃の舞う未舗装の道路を1時間走らせてここまで来た価値はあった。<br /><br />ここから更に50キロ、更に酷いデコボコ道を走り、「プノン・クレーン」国立公園の山中を走ること約1時間、この山塊の一番高い場所に「ライチの山」があり、802年、この場所に於いてジャヤヴァルマン2世が「神なる王」の儀式を行い、以後700年に及ぶアンコール王朝が始まったのだった。<br /><br />その泉水は今でも乳白色の湧き水を噴き出していて、尽きることがない。攪拌、撹乱。「乳海攪拌」はここにあり、1200年の永きにわたり今日も尚、この泉は音も無く地中から乳色の水を湧出し、攪拌し続けていた。<br /><br />いやしかし良く見ると、乳白色に見えた噴水は、地中の細かい白色の砂が水と混じり合って乳色に見えるのであって、水自体は透明無垢な純水だった。手に掬って飲む。甘露と言ったら嘘になるが、無色透明な味だった。<br /><br />この泉から流れが始まり、シェムリアップ川になり、トンレッサプに注がれ、更にはメコンに合流し、遂には南シナ海に流れ落ちる。昔の人々にもこの道理が分っていたのだろう。<br /><br />源泉から数十メートル下流には川底の大きな石に男女交合のシンボル、ヨニとリンガの彫刻が大小無数に刻まれていて、清らな流れが薄く、浅く、清流となって薄絹のベールのように流れている。数百年にわたって彫り続けられてきた人間のシンボル。飽くなき欲望。源泉。乳海攪拌。<br /><br />ここから更に谷を隔てた山頂には巨大な岩石(砂岩)の上に建立された仏教寺院「プリア・トム」が有り、これまた巨大な砂岩から作られた寝釈迦「ブリア・アントン」が祀られている。<br />寺の展望台からは、360度の樹林帯が見渡せ、その緑の海は、ここが南方のとある場所であり、この広大な密林の中には想像もつかない奇獣、珍獣、猛獣が潜んでいるかも知れない、と。<br /><br />お寺を下ったところには大きな滝があり、水量は豊富で落差も充分あり、先年見た秋保大滝に負けず劣らぬ豪快さで、滝の真近まで寄っては飛沫の冷気に身体の熱気を冷やし、漸く夢から覚めた面持ちで、ニワトリ1羽を丸まるから揚げしたのと、地元山岳民族の作った最高の料理(豚肉とハーブを和えたようなもの)の昼食を食べながら、アンコールビールを飲みつつ、このような辺鄙な場所までこられたことに感謝した。<br /><br />「湧き出る乳海攪拌人の源」<br />

「写真の無いブログ」悲しみのカンボジア(10)「遺跡」・4、神々の源「プノン・クレーン」

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2008/12/23 - 2009/01/07

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ちゃお

ちゃおさん

アンコールには「アンコール・ワット」「アンコール・トム」の二つの遺跡を中心として、その周辺には幾つもの古い遺跡が残されている。何か、大和まほろば、奈良盆地の平城京、西の京、飛鳥、斑鳩、吉野、等々数多くの旧跡・名跡があるのと似ている感じである。

アンコールの北東約40キロ、幾つかの集落を通り過ぎ、一面がコメ畑の平野に出て暫らく走ると、前方に忽然と山が現われ、それは丁度大和三山の「天の香具山」に似た形の整った小山で、バイクは見る見るその山に近づき、その山の麓近くに今日訪ねる「バンテアイ・スレイ」がある。

この寺院は午前の早い時間に行くと良い。その赤茶けた臙脂色の古い寺院は、旭日を浴びて、燃えるような赤になる。全体がばら色砂岩で作られたこのヒンドウの寺は、アンコール・ワット、トムの先駆をなすもので、クメール王朝がコンポントム(サンボー)からこの地に移ってきた10世紀、最初に建設された寺院で、当時のインド様式のヒンドウ芸術が色濃く残されている。
 
「バンテアイ・スレイ」、まさにこの名前「女の砦」が示すように、寺院の至る場所にインド風の女性像が彫刻されていて、所謂「東洋のモナリザ」もこの寺にある。

嘗てアンドレ・マルローはこの地を訪れ、1個のレリーフを盗もうとして逮捕された史実が示すように、この寺院はアンコールの遺跡の中でも最も格調が高く、且つ芸術的であると言われている由縁でもある。

東面する正面の参道は今将に旭日を受けてばら色に輝き、幾つもの楼門を潜り抜けた先の一番奥まった堂宇の壁面の中にそのモナリザ像はひっそりと佇んでいた。長躯バイクを走らせ、砂埃の舞う未舗装の道路を1時間走らせてここまで来た価値はあった。

ここから更に50キロ、更に酷いデコボコ道を走り、「プノン・クレーン」国立公園の山中を走ること約1時間、この山塊の一番高い場所に「ライチの山」があり、802年、この場所に於いてジャヤヴァルマン2世が「神なる王」の儀式を行い、以後700年に及ぶアンコール王朝が始まったのだった。

その泉水は今でも乳白色の湧き水を噴き出していて、尽きることがない。攪拌、撹乱。「乳海攪拌」はここにあり、1200年の永きにわたり今日も尚、この泉は音も無く地中から乳色の水を湧出し、攪拌し続けていた。

いやしかし良く見ると、乳白色に見えた噴水は、地中の細かい白色の砂が水と混じり合って乳色に見えるのであって、水自体は透明無垢な純水だった。手に掬って飲む。甘露と言ったら嘘になるが、無色透明な味だった。

この泉から流れが始まり、シェムリアップ川になり、トンレッサプに注がれ、更にはメコンに合流し、遂には南シナ海に流れ落ちる。昔の人々にもこの道理が分っていたのだろう。

源泉から数十メートル下流には川底の大きな石に男女交合のシンボル、ヨニとリンガの彫刻が大小無数に刻まれていて、清らな流れが薄く、浅く、清流となって薄絹のベールのように流れている。数百年にわたって彫り続けられてきた人間のシンボル。飽くなき欲望。源泉。乳海攪拌。

ここから更に谷を隔てた山頂には巨大な岩石(砂岩)の上に建立された仏教寺院「プリア・トム」が有り、これまた巨大な砂岩から作られた寝釈迦「ブリア・アントン」が祀られている。
寺の展望台からは、360度の樹林帯が見渡せ、その緑の海は、ここが南方のとある場所であり、この広大な密林の中には想像もつかない奇獣、珍獣、猛獣が潜んでいるかも知れない、と。

お寺を下ったところには大きな滝があり、水量は豊富で落差も充分あり、先年見た秋保大滝に負けず劣らぬ豪快さで、滝の真近まで寄っては飛沫の冷気に身体の熱気を冷やし、漸く夢から覚めた面持ちで、ニワトリ1羽を丸まるから揚げしたのと、地元山岳民族の作った最高の料理(豚肉とハーブを和えたようなもの)の昼食を食べながら、アンコールビールを飲みつつ、このような辺鄙な場所までこられたことに感謝した。

「湧き出る乳海攪拌人の源」

  • アンコール・ワットの北約40キロ、「バンテアイ・スレイ(女の砦)」は芸術の宝庫である。

    アンコール・ワットの北約40キロ、「バンテアイ・スレイ(女の砦)」は芸術の宝庫である。

  • ヒンドウの神。

    ヒンドウの神。

  • ヒンドウのふくよかな女神像。

    ヒンドウのふくよかな女神像。

  • 東洋のモナリザ。

    東洋のモナリザ。

  • ばら色砂岩の聖堂は朝日に映えて赤く燃える。

    ばら色砂岩の聖堂は朝日に映えて赤く燃える。

  • インド的な彫刻があちこちにある。

    インド的な彫刻があちこちにある。

  • 石の芸術。

    石の芸術。

  • 金剛製のリンガ。石は「プノン・クレーン」の川底から取り出した石。

    金剛製のリンガ。石は「プノン・クレーン」の川底から取り出した石。

  • リンガ。

    リンガ。

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