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経済の貧しいこの国で公職につける事ほど有り難いことはなく、なかんずく、警察官などはエリート中のエリートであるに違いない。<br /><br />万事悠然と構えることが、彼らエリートの特権の象徴かどうかは知らないが、昨日の内に済ませてくれれば良い手続きを今日改めての出頭要請。昨日は責任者が不在だったが、今日は来ているので、今日また来てくれ、との要請で、今朝は30分も前から来て待っている。後進国の通例で、待たされるのはやむを得ないか、と思っていたが、意に反して、8時半過ぎには責任者の Mr.Kosal がやってくる。この辺り、嘗てのフランス風官僚意識はまだ辛うじて残っているのだろう。<br /><br />ツーリスト・ポリスと言っても、3階建て位の長屋ビルの間口2間ほどの一間を急造したような詰め署で、署長をMajor、と呼ぶには少し相応しくなく、所長のCaptainと尊称したが、それでも満足そうに応対してくれた。<br /><br />彼は一応の話を聞き、事件発生現場近くのLocal Police へ届けに行けと言う。署の前に何人か屯している刑事の一人を呼んで、連れて行くように指示する。<br />そうこの詰め署自体が狭く、室内の事務机は一つあるか二つあるかの狭さで、所属する刑事は普段は署の前にある屋台のテーブルで待機しているようだ。一つ、二つの事務机を必要に応じて交代で使用しているようである。それ程事件が少ない、というか、のんびりした国情なのだろう。<br /><br />その刑事のバイクの後部座席に乗って、Local Police まで案内されるが、彼の腰を掴んだところ、長シャツの下に拳銃のホルダーを隠し持っていて、成る程、左右どちらかの腰の膨らみで地元民は彼らが刑事かどうかを判断しているんだな、と思う。この膨らみが無ければ、そこら辺を歩いている無職者と全く変わらない風体である。<br /><br />バイクで4−5分先にLocal Policeの、ここも又交番と言うよりか、詰め署という程度のものがあるが、天井の高い1階部分を半分に仕切って作られた中2階の部屋に案内され、再び何か又ブツクサ言いながら待たされ、英文フォームを持ち出してきて、これに状況を記載しろ、と言う。<br /><br />書いている間に責任者はどこかへ出て行ってしまい、書き終えて外に出ると件の刑事はどこかへ消えてしまっている。ツーリスト・ポリスへ戻る前にもう一度昨日の事件現場へ行き、その辺に屯している住民、バイクタクシーの運転手、通行人等に話を聞き、謝礼を持ちかけるが、殆ど埒があかない。<br /><br />ツーリスト・ポリスに戻り、CaptainにLocal Police に届けを出したことを伝えると、コピーはどうした、と言う。行く前にコピーを貰って来い、などとは一言も言ってなかったのにと思いつつ、ここで言い合いをしてもマイクロ・メモリーは戻らない。言われるがまま、先の刑事にLocal Police との間を往復してもらい、コピーをお願いすると、今度は又10時半に受け取りに来い、と言われる。まだ1時間以上もある。<br /><br />又再びツーリスト・ポリスに戻りその旨を説明すると、「お金を出さなきゃダメですよ。お金が必要ですよ。」とお金の要求。一体幾ら出したら良いのか、と聞くと、最初は言い渋っていたが、「10ドル」と言う。10ドル位なら止むを得ないか、と思いつつ、「じゃ又10時半に来るから」とその場を立ち去ろうとすると、「こちらで払っておく。お金は預かっておく。ここには2時半に来れば、皆済む」と言われ、その場で10ドルを渡す。刑事に往復の度に1ドルを渡し、これから先又何往復するかを考えると、この場で10ドル渡すのもそれ程高くはないだろうと思う。<br /><br />再び現場に戻り情報収集に当たる。全く糠に釘の感じ。失われたものは戻らない。カメラ代金とお金は保険でカバーされるとしても、アンコールワット、トム、バイロン、アンプウ、旅先で会った人々、それ等の写真はもう元に戻らない。記録、連絡先等を書いているノートも失われた。深い喪失感に襲われる。一旦ホテルに戻るが、プールに入る気もしない。ベッドの上に横になり、ただぼんやりと考える。元旦なのにNHKは相変わらず下らない番組をだらだらと流し続けている。虚無感、喪失感。失われた物の大きさ。<br /><br />2時過ぎに再び警察へ行くと、今日はもうLocal へ行っても無駄だ、明日10時にもう一度来てくれ、と言われる。明日はシアヌークビルへ行くので時間が無いと話すと、それじゃあ、とその場で書類を作るが、急ぐのでお金が必要だという。何で又! 朝10ドル払ったばかりじゃないか! 朝のコピーはどうした! 10ドル払ったので、代りに受け取りに行ってくれる、と言ったじゃないか! と抗議しても、糠に釘。明後日の方を向いて、部下とどうも下らない話をしている。<br /><br />当方としてもここで警察証明を貰えないと、帰国後に保険請求出来ないので、証明書はどうしても必要だ。責任者はそこら辺のことを承知しているのか悠然と構えている。<br />仕方なく、一体幾ら必要なんだ、と聞いたところ、当方を値踏みするように、最初は50ドル、と言ってきたが、冗談じゃない。お金も300ドル盗まれ、鍵代も75ドル請求された。今は旅行中でお金もない。50ドルなどとても払えない、何とかならないか! と強く主張したところ、じゃ30ドルで良い、と言われ、その場で書類作成に応じてくれる。<br /><br />何だ、こんな簡単な書類なら昨日の内に20−30分で出来たではないか、と思いつつ、書類を受け取るが、今になって思うのは、そうか、そういう事だったのか、当方を行ったり来たりキャッチボールさせ、種類作成が如何に大変かを印象付け、一方で、泊まっているホテルがどこだの、お金はどれ位入っていたの、とその都度、当方の値踏みをしていたに違いない。彼らに取っては犯人を捕まえる事より、目の前にいる日本人から如何に多くの金銭をせしめるかに頭を巡らせて違いない。<br /><br />カンボジアを含めての後進国の警察の非効率、尊大さ。それはそうすべき背景事情、理由もあるのだ。彼らの警察組織にがっかりするよりも先に、彼らの薄給を哀れにすら思った。そう思うと、彼らの裏側が見えてきて、ドロボーも然り、路上生活者も、この警察責任者も、皆押しなべて、カンボジア人の哀れさ、悲しさを等しく感ずるものだった。盗難は僕に取っては初めての経験だったが、こういうことが無ければ知る由もない、庶民生活の裏側まで見えて、これはこれで随分と貴重な経験にもなった。<br />

「写真の無いブログ」・悲しみのカンボジア(2)この国の警察官。

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2008/12/23 - 2009/01/07

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ちゃお

ちゃおさん

経済の貧しいこの国で公職につける事ほど有り難いことはなく、なかんずく、警察官などはエリート中のエリートであるに違いない。

万事悠然と構えることが、彼らエリートの特権の象徴かどうかは知らないが、昨日の内に済ませてくれれば良い手続きを今日改めての出頭要請。昨日は責任者が不在だったが、今日は来ているので、今日また来てくれ、との要請で、今朝は30分も前から来て待っている。後進国の通例で、待たされるのはやむを得ないか、と思っていたが、意に反して、8時半過ぎには責任者の Mr.Kosal がやってくる。この辺り、嘗てのフランス風官僚意識はまだ辛うじて残っているのだろう。

ツーリスト・ポリスと言っても、3階建て位の長屋ビルの間口2間ほどの一間を急造したような詰め署で、署長をMajor、と呼ぶには少し相応しくなく、所長のCaptainと尊称したが、それでも満足そうに応対してくれた。

彼は一応の話を聞き、事件発生現場近くのLocal Police へ届けに行けと言う。署の前に何人か屯している刑事の一人を呼んで、連れて行くように指示する。
そうこの詰め署自体が狭く、室内の事務机は一つあるか二つあるかの狭さで、所属する刑事は普段は署の前にある屋台のテーブルで待機しているようだ。一つ、二つの事務机を必要に応じて交代で使用しているようである。それ程事件が少ない、というか、のんびりした国情なのだろう。

その刑事のバイクの後部座席に乗って、Local Police まで案内されるが、彼の腰を掴んだところ、長シャツの下に拳銃のホルダーを隠し持っていて、成る程、左右どちらかの腰の膨らみで地元民は彼らが刑事かどうかを判断しているんだな、と思う。この膨らみが無ければ、そこら辺を歩いている無職者と全く変わらない風体である。

バイクで4−5分先にLocal Policeの、ここも又交番と言うよりか、詰め署という程度のものがあるが、天井の高い1階部分を半分に仕切って作られた中2階の部屋に案内され、再び何か又ブツクサ言いながら待たされ、英文フォームを持ち出してきて、これに状況を記載しろ、と言う。

書いている間に責任者はどこかへ出て行ってしまい、書き終えて外に出ると件の刑事はどこかへ消えてしまっている。ツーリスト・ポリスへ戻る前にもう一度昨日の事件現場へ行き、その辺に屯している住民、バイクタクシーの運転手、通行人等に話を聞き、謝礼を持ちかけるが、殆ど埒があかない。

ツーリスト・ポリスに戻り、CaptainにLocal Police に届けを出したことを伝えると、コピーはどうした、と言う。行く前にコピーを貰って来い、などとは一言も言ってなかったのにと思いつつ、ここで言い合いをしてもマイクロ・メモリーは戻らない。言われるがまま、先の刑事にLocal Police との間を往復してもらい、コピーをお願いすると、今度は又10時半に受け取りに来い、と言われる。まだ1時間以上もある。

又再びツーリスト・ポリスに戻りその旨を説明すると、「お金を出さなきゃダメですよ。お金が必要ですよ。」とお金の要求。一体幾ら出したら良いのか、と聞くと、最初は言い渋っていたが、「10ドル」と言う。10ドル位なら止むを得ないか、と思いつつ、「じゃ又10時半に来るから」とその場を立ち去ろうとすると、「こちらで払っておく。お金は預かっておく。ここには2時半に来れば、皆済む」と言われ、その場で10ドルを渡す。刑事に往復の度に1ドルを渡し、これから先又何往復するかを考えると、この場で10ドル渡すのもそれ程高くはないだろうと思う。

再び現場に戻り情報収集に当たる。全く糠に釘の感じ。失われたものは戻らない。カメラ代金とお金は保険でカバーされるとしても、アンコールワット、トム、バイロン、アンプウ、旅先で会った人々、それ等の写真はもう元に戻らない。記録、連絡先等を書いているノートも失われた。深い喪失感に襲われる。一旦ホテルに戻るが、プールに入る気もしない。ベッドの上に横になり、ただぼんやりと考える。元旦なのにNHKは相変わらず下らない番組をだらだらと流し続けている。虚無感、喪失感。失われた物の大きさ。

2時過ぎに再び警察へ行くと、今日はもうLocal へ行っても無駄だ、明日10時にもう一度来てくれ、と言われる。明日はシアヌークビルへ行くので時間が無いと話すと、それじゃあ、とその場で書類を作るが、急ぐのでお金が必要だという。何で又! 朝10ドル払ったばかりじゃないか! 朝のコピーはどうした! 10ドル払ったので、代りに受け取りに行ってくれる、と言ったじゃないか! と抗議しても、糠に釘。明後日の方を向いて、部下とどうも下らない話をしている。

当方としてもここで警察証明を貰えないと、帰国後に保険請求出来ないので、証明書はどうしても必要だ。責任者はそこら辺のことを承知しているのか悠然と構えている。
仕方なく、一体幾ら必要なんだ、と聞いたところ、当方を値踏みするように、最初は50ドル、と言ってきたが、冗談じゃない。お金も300ドル盗まれ、鍵代も75ドル請求された。今は旅行中でお金もない。50ドルなどとても払えない、何とかならないか! と強く主張したところ、じゃ30ドルで良い、と言われ、その場で書類作成に応じてくれる。

何だ、こんな簡単な書類なら昨日の内に20−30分で出来たではないか、と思いつつ、書類を受け取るが、今になって思うのは、そうか、そういう事だったのか、当方を行ったり来たりキャッチボールさせ、種類作成が如何に大変かを印象付け、一方で、泊まっているホテルがどこだの、お金はどれ位入っていたの、とその都度、当方の値踏みをしていたに違いない。彼らに取っては犯人を捕まえる事より、目の前にいる日本人から如何に多くの金銭をせしめるかに頭を巡らせて違いない。

カンボジアを含めての後進国の警察の非効率、尊大さ。それはそうすべき背景事情、理由もあるのだ。彼らの警察組織にがっかりするよりも先に、彼らの薄給を哀れにすら思った。そう思うと、彼らの裏側が見えてきて、ドロボーも然り、路上生活者も、この警察責任者も、皆押しなべて、カンボジア人の哀れさ、悲しさを等しく感ずるものだった。盗難は僕に取っては初めての経験だったが、こういうことが無ければ知る由もない、庶民生活の裏側まで見えて、これはこれで随分と貴重な経験にもなった。

  • 元旦の1日をかけ、漸く発行してもらった警察の盗難証明書。この文字は自身で記載したもの。

    元旦の1日をかけ、漸く発行してもらった警察の盗難証明書。この文字は自身で記載したもの。

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