2008/08/16 - 2008/08/16
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kodeyanさん
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明治から大正にかけて建てられたハイカラな建築が姿を消した。
道路の拡幅工事のためだ。
すべての建材が素晴らしく1枚板が色艶を円熟させた大階段にガラス折り戸、心がふるいたつようなレトロ建築・・
別府民宿「田の湯館」は、外観はモダンな西洋建築でありながら内部は和風という貴重な木造3階建の建築だった。
別府も含む九州初上陸が2007年だったため、残念ながら田の湯館には宿泊できなかった。
が、幸運にも内部を見学する機会を得ることができ撮影と掲載の許可を頂いた。
田の湯館さんへの御礼の意をこめて旅行記を作成しました。
写真撮影日 2008年8月16日
取り壊し 2008年10月
■追記 2009.2.6
wちゃん(4T非会員)から「田の湯館」取り壊し後の写真を送って頂きました。
二枚写真を追加しました。
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田の湯館は、明治44年から大正2年にかけて電力の鬼と呼ばれた松永安左衛門の遠戚に当たる松永万八が、日豊線工事を手がけた際に別荘として建てられたものだ。
モダンな建築は『THE FAR EAST』誌でも紹介されている。
この記事は1913年4月のものである。 -
竣工時は、柱、梁、斜材など木造骨組を露出したハーフティンバー様式だった。
戦後、消防法がらみか規制が厳しくなり、露出している木造骨組をモルタルで塗り固めるよう別府市から指示があり現在の外観となったそうだ。 -
ありし日の別府民宿「田の湯館」
屋根にある三角のドーマは明かり採りではなく換気口の目隠しとして意匠的にデザインされているようだ。
1910年代というと画家のモンドリアンや建築家のリートフェルトが直線構成の表現をしていた時代である。
窓の桟装飾は当時の流行を取り入れたものだろう。
2008年11月28日現在、別府石の石垣のみ残っているものの、その石垣も間もなく撤去されるそうだ。 -
本館の隣りにある建築にはハーフティンバーの面影が残っていた。
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門柱に掲げられた「別府温泉 民衆宿舎」の表札が歴史を物語る。
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もう片方の門柱にある表札は別府民宿田の湯館。
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玄関は、珍しい折れ戸になっているので全開できる。
敷地には植栽も多く居心地のいい空気が流れていた。 -
木目からするとケヤキだろう。
ムク材1枚ものの立派な扁額が玄関に掲げてあった。
アンティークの照明はシンプルだが存在感がある。 -
この日は、「神が通る場所― 別府市公会堂」「ここは観る者の心に一体何を残すのだろう―聴潮閣」という「別府遺産」のDVD製作者であるNさんも来ていた。
田の湯館もいずれ「別府遺産」DVDとして世に出したいそうで何回か撮影に来ているそうだ。
撮影済みの映像を見せてもらったが、流石は舞台美術家だけありドラマチックな映像に感激した。 -
玄関の右横に応接間らしき部屋がある。
その室内ドアのノブが七宝焼きとしゃれている。
ガラスのゆがみは、温かさを醸し出し、たまらない。 -
玄関右横の応接間らしき部屋の照明もアンティーク。
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戦後、アメリカ軍に一時接収されていたことがあり、その時にアメリカ軍が持って来た電話交換機だそうだ。
これは親機で玄関近くの廊下にあった。
子機は別に各部屋に設置したという。
アンティーク好きにはヨダレモノの品かもしれない。 -
存在感がある大階段は、ケヤキの1枚もの。
ムク材は、年月がじわりじわりと深い味を醸し出す。
黒光りした側げたが美しい。 -
廊下の手すりは洋風。
手すり子の意匠も末広がりの優しい曲線で凝っている。 -
廊下のかねの部分はおもしろい貼り方だ。
どこかの教授もこれは大変珍しいといっていたそうだ。 -
廊下の掃きだし窓手前に高欄がありモダンな感じだ。
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赤い屋根のかわいい建物は温泉棟。
『THE FAR EAST』ではチャペルのような建物だがビリヤード場になっている、と書かれている。
昔は社交場だったのだろう。
この温泉棟もレトロでファンが多い。
取り壊しの話しを聞き、関東からタイルの一部を記念に欲しいとやってきた人もいるそうだ。
本館は昔この温泉棟の近くにあったが、移動している。 -
落ち着いた室内は、本物の木がもつ温もりで満ちている。
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アンティークの照明はアールデコ風。
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丸太の床柱に砂壁、襖、そしてモダンに桟がデザインされたガラス窓。
大正モダンの室内。 -
透かし欄間の透かし彫りが洒落ている。
職人さんの粋を感じる仕事だ。
とてもかわいい。 -
拾八番と書かれた部屋札
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天井は、時が創作したアート作品。
さお縁もムク材で本当に凝った建築だ。 -
話しは前後するが、今回見学ができた経緯は、旅行記に度々登場するwちゃん(4T非会員)のお蔭ともいえる。
前から田の湯館は超絶レトロ、と絶賛していた。
エアコンもテレビもないけれど自然のそよ風を感じながらの昼寝は最高らしい。
それで私もいつかぜひ!と電話したところ年内取り壊しに向け片付けなどで女将さんも多忙を極め宿泊は難しいという話しだった。
早速wちゃんに連絡すると、wちゃんは女将さんに電話した。
前に2回泊まったことがあり建物のファンだということや、田の湯館の思い出話しをいろいろ女将さんとしているうちに、取り壊される前に是非もう一度、という熱意が通じた!
7月の早いうちまでで女将さんの都合が合う日ということで泊めてもらえることになったのだ。
そしてwちゃんは、急遽別府行きの予定を立て宿泊という運びになったのである。
そして宿泊時にwちゃんが私の話をしてくれた。
女将さんは私が電話したことや会話の内容まで覚えていた。
片付けで忙殺されていた女将さんだったが、貴方からの電話を待っていたのよ、といって頂き見ることができたのだ。
取り壊しの報を聞き全国から見学や撮影依頼があったそうだが、みんな断っていたようなので、この幸運に感謝、感謝! -
そして特別に貴重な資料も見せていただいた。
左の写真の客室も見学させていただく。 -
昔の写真と変わらない、改装などしていないのだ。
貴重な建築だった。 -
透かし彫りに繊細な組子の障子、日本の美。
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引き分猫間障子も基本的に写真と変わっていない。
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レトロなガラスから差し込む光りはやさしい。
結局午前10時から午後3時までお邪魔した。
とっても心地良い空間に浸れて幸せでした。 -
これは帰ってから田の湯館さんに送った御礼のカード。
電話で聞いた声がお元気そうだったので、それは良かったのだが、1世紀近く存在した建物が壊されてゆくときの悲しさを思うと言葉にならない。
別府民宿「田の湯館」にもご苦労様でしたと心のなかで手を合わせたい気持ちでいっぱいだ。
田の湯館に宿泊したことがある方、温泉棟に思い出のある方、別府好きの方に懐かしく見ていただければ幸いです。
なお、建築部材の一部は湯布院で使われるとのことだ。 -
■追記2009.2.6
wちゃん撮影の写真を二枚追加しました。
提供して頂いたwちゃんに感謝です。
跡地はコンビニに・・
写真撮影:wちゃん
撮影日:2009.2.1 -
■追記2009.2.6
この残骸も間もなく姿を消し、思い出だけが残る。
写真撮影:wちゃん
撮影日:2009.2.1
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この旅行記へのコメント (2)
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- ジロさん 2008/11/29 05:57:25
- 漂流中のジロxxx
- おはようでありますなのだ♪
どこまで見たかわからなくなって漂流中のジロなのだ☆
ココはまだ見てないようなので書き込みマーキングしてみたのだ♪
別府にこんな民宿がありましたか、、、っと思ったらもうないのか。。。
ジロは親犬達が温泉連れてけ攻撃するので時々別府へは行くのだ☆
でも安く泊れる亀の井ホテルばかりで民宿は泊ったことないのだ
なんかワンパターン化しているので次はこんな民宿も泊ってみたいなぁ
ジロ
- kodeyanさん からの返信 2008/11/29 07:14:30
- RE: 漂流中のジロxxx
- ジロさん おはようでありますなのだ☆
漂流させてしまってすまぬのう。
夏の旅編は、まだ日田、天ヶ瀬 下関 天草 はやぶさ乗車記と残って
いるのだけど、旅行記はどうなるかなぁ。
でも気になっていた田の湯館が取り壊しになったと聞いて
姿を消した田の湯館編を昨日Upしたのでござるよ。
ジロさんは親犬孝行でござるなぁ。
別府ならジロ2号、3号でススイと行けるけん、うらやましか。
亀の井ホテルは行ったことないのだ。
別府にはまた行きたいのだ。魚も旨いしなぁ。
ではでは☆彡なのだ
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