1982/02/20 - 1982/03/08
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ちびのぱぱさん
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ローマ
遺跡公園、フォロロマーノ。
千幾百年の時を経たとは思えない、まばゆいようなコンスタンティヌス大帝の凱旋門。
それをくぐって遺跡公園に入ると、そこは一転、つわものどもの夢の跡というにふさわしい瓦礫の原。
このわびしい荒れの原の方が、その上を通り過ぎたしかるべき年月に似合った場所のように思えます。
かつて壮大な建造物の一部であったろう大理石のかけらが、ところどころに点在。
その様は、むしろ静かに物思いにふけるのにちょうど良いのです。
2月末のある午前中。
訪れる人も少なく、
一人の背の高い男性が小脇に分厚い本を抱え、2メートルほどの長さの倒れた石柱の前で佇んでいるのみです。
何を見ているのかと静かに近づいて、彼が見入っている石柱に目をやると、彼は私に気づいて
「おはようございます。」
といって微笑みました。
「なにを見ていらっしゃるんですか。」とわたし。
「これは、この石柱が、かつて建物の一部だった頃の年代が記されているんです。」
なるほど、ローマ数字のように見える文字が含まれているのが私にも分かりました。
「ラテン語が読めるんですね。」
「わたしは、古いラテン語を学んでいまして、時々ここに来て、これらのかけらの文字を読んでその時代に思いをはせるんです。」
「それはうらやましい。」
「ここにあった建物は、バチカンがサンピエトロを建てるときに、その建材にするために持っていってしまったといわれているんです。残っているのは瓦礫ばかりです。」
「なるほど、そういう訳ですか。」
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彼と別れて、さらにフォロロマーノの奥に進んでゆくと、他の凱旋門が見えてきます。
どうやら、バチカンは凱旋門には手をつけなかったようです。
その中のひとつは、紀元1世紀のティトゥス将軍の凱旋門です。
ローマ軍が、反抗するエルサレムを平定したときのもので、神殿から宝物を運び出す様がレリーフに描かれています。
以来故国を失ったユダヤ人は、20世紀に列強の思惑に沿って故国を回復したものの、イギリスの二枚舌のせいで、パレスチナ人との泥沼の戦いに入ったわけです。 -
フォロロマーノの奥を右手のほうに上ってゆくと、写真のような緑豊な庭園に出ます。
公園を囲むオレンジの木には、色鮮やかなオレンジの実がたわわに生っていて、
「食べられるのだろうか。」
と本気で思いましたが、取って食べるのはなんとか思いとどまりました。
あたりには人影もなく、ただ小さな噴水が小鳥のさえずりのような水音をたてているのが聞こえるのみです。 -
公園を突っ切って大きな通りに出ると、屋台のアイスクリームやが目に入りました。
のども渇いたので、アイスクリームを注文すると、店の番をしていたのは20歳くらいの若い小柄な娘です。
紛れもないイタリア娘ですが、どこか和風な優しい顔立ちです。
わたしのいでたちに興味を覚えたらしく、いろいろと質問をしてきます。
「学生さん?」
「そう。」
「いつローマに来たの?」
「昨日。」
「ローマはどう?」
「素敵ですね。新しいものと、古いものとが調和して‥‥。」
「あっ、ちょっと待って。」
この時お金を払おうとしていたら、別のお客さんが来たのです。
その客の対応を済ませてしまうと再びこちらを向いて、
「日本人でしょ。」
「そうです。」
「日本て、いつか行ってみたいなあ。」
「そうですかあ?」
「ネエ、いつまでいるの?」
「今晩の夜行で発ちます。」
「あら、そうなの‥‥。」
お金を渡して別れを告げると、その足で、今度はコロッセオに向かいました。 -
ローマの市場は午前中のうちは活気があります。
肉も野菜も、活きが良いように見受けました。 -
いわずと知れたコロッセオ。
床が抜けた状態になっています。
その昔この地下を、野獣やら、奴隷やら、あるいは剣士たちが出番を待ち、行き交ったのでしょうか。
パンと娯楽を求めた飽食のローマ人がこの場を埋め尽くし、親指の向きを上下して、生殺与奪の味をしめたのでしょうか。
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この旅行記へのコメント (2)
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- しにあの旅人さん 2019/06/07 05:05:37
- 心に沁み入る旅行記です
- 1982年。37年前ですか、コロッセオには現在ある舞台のようなものはなかったのですね。反対側かな。雑草が石にまとわりついていて、今よりはるかに遺跡っぽい。私はこういうコロッセオのほうが好きです。昨年行きましたが、ただの巨大な観光地でした。
アイスクリーム売りの娘さん、五木寛之の小説みたい。彼女はもっと話したかったのですね。その後彼女が日本にやってくるとか、五木ならそういう展開になりそう。
青春のローマの一コマ、いい思い出ですね。
- ちびのぱぱさん からの返信 2019/06/07 07:54:41
- Re: 心に沁み入る旅行記です
- 古い旅行記をご覧下さり、有り難うございます。この時の飛行機はキャセイパシフィックで、その後、ソ連崩壊前後に二度ほど、アエロフロートにもお世話になりました。
シニアの旅人さんの旅行記で久しぶりにアエロフロートの機内を拝見し、いろいろ思い出しました。
生まれて初めてキャビアを口にしたり、醤油顔が珍しいらしく、新体操チームに囲まれ写真を撮られたりして赤面したことなど。妖精のように綺麗だけど素朴な女子高生という感じで、日本で買ったらしい安カメラで、互いを撮り合ったりしていました。日本で大会に出た帰りだったのかと思いますが、田舎のおじさんのような監督(?)に叱られていました。
若いというのはいいなあと、最近つくづく思います。
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