2007/08/11 - 2007/08/19
238位(同エリア359件中)
ダイサクさん
M氏はリキシャーに乗っていた。
リキシャーの上から、僕を取り囲んでいる子ども達にバングラデシュ語で何かを言う。何をしゃべっているのかは理解できなかったが、子ども達の動きが止まる。
「ここは危ないですよ。あなたは一人で旅行をしているのですか?」
「はい、一人旅です。」
「いつバングラにきたの?」
「さっき着いたばかりです。ところであなたは何故日本語をしゃべれるのですか?」
「昔、出稼ぎで日本で働いていたことがあるんですよ。いいですか、彼らは危ないです。何か盗まれたら絶対戻ってきませんよ。彼らは全員グルです。 あなたこれからどうするのですか?私の家にきませんか?・・・私は一緒にビジネスをしている日本の友達がいます。」
そう言って渡してくれた名刺には、“JAPAN Busines&Culture Exchange Friendship Circle ”と書かれてあった。
「今からここで宿を見つけようと思っているんですよね。せっかくの紹介ですが、、遠慮させて頂きます!」
「あなた、ここは危ないですよ。ちょっと待って!私、日本人の友達に電話してあなたに代わるから、ちょっと話してください。」
日本人の友達、という言葉に心を動かされる。時刻はもう夕方になろうとしている。乗り継ぎのタイ、バングラでの荷物紛失手続き、子ども達に囲まれていて疲れていたのもあり、その日本人の友達って人と話したくなった。 M氏が携帯で、日本人の友達に電話をする。
「社長ぉ、今、日本人の旅行者が駅前でストリートチルドレンに囲まれていたから助けたんですよ。(中略)代わりますので、ちょっと話してください。」
日本人社長(以下、A氏)の声は低く、落ち着いていた。
異国の地で日本人と出会ったり、話をすると、同朋意識から自然と互いにテンションが上がるものなのだが、A氏の声からは日本人と話すことに特別懐かしさや嬉しさなどの気持ちが感じられなかった。 年齢的には50才くらいだろうか。A氏は怪しい人ではないのか、という気持ちとともに、いや、彼はここバングラデシュで地に足をつけてビジネスをしているのだ、ということを納得させようとしている自分がいる。 一人旅で今日入国したこと、そして先ほど駅前で子ども達に囲まれ、M氏に出会ったこと等を手短に話す。
「もし、今夜時間があれば、私の家に彼と一緒に来ませんか?
彼にまた連絡しますので、良かった来てください。色々話しましょう。」
M氏が誇らしそうな表情でこちらを見てくる。どうだ、おれは日本人と一緒に仕事をしているって本当だろってところか。後ろでは、先ほどの子ども達が僕たちのやりとりをニヤニヤしながら眺めている。 滅多に旅行者が訪れないというこの国で、永遠に続くのだろうかという退屈な生活の中で、目の前に私のような人間が突然現れたのだから興味津々なのだろう。
お礼と、もし都合があえば、あなたの家に行きたいと話し、携帯をきる。
「私は日本人に色々とお世話になった。日本人のこと尊敬しているし、感謝もしている。あなたにもバングラデシュを好きになって欲しいのです。」
「・・・どうもありがとうございます。日本人の方とはお会いしたいんですけどねぇ。」
「ダイ、そうしたら、まずは私の実家に行きましょう。その後、ダイがよければ社長さんの家に行きましょう。」
「わかりました!よろしくお願いします!申し遅れましたが、僕の名前はダイサクといいます。ダイと呼んで下さい。」
「ダイ、わかった。私は○×△です。それでは、これから我が家に招待します。その後で社長の家に行きましょう。」
リキシャに乗り込む。子ども達が追いかけてくる。好奇の眼差しと憂鬱そうな表情が交じり合った彼らの表情が、次第に遠くなって消えていった。
「ここは汚い。今からいく私の実家も汚いし、狭い。だけど、今、新しい家を建てているんだ。後で、その新しい家に案内するから。すっごく大きいのですよ。本当に綺麗で、ビックリしますよ。」
自分はここの貧しい人たちとは違うー。そんな想いを感じ、同時に第一印象、直感から、どこかM氏を信じることができないことからくる不安の芽が僕の心にはかすかに生まれていた。
- 同行者
- 一人旅
- 航空会社
- タイ国際航空
-
M氏と2人、リキシャーの上に乗ってバングラデシュの町並みを移動する。頭上の曇った空模様は、僕の心模様そのものだった。10分程走って大通りからわき道に入る。リキシャを降りる。なんやかんやで楽しい。とはいっても、どこかスッキリしない。
インド一人旅、南米二人旅、オーストラリア、モロッコ一人旅に、インド・ネパール二人旅。これまでの旅で感じたことのない種の、なんとも言えない不安感。まるで待ち伏せしていたかのように、M氏の友達が現れる(以下、H氏)。
H氏はM氏よりは若く、M氏の召使的な立場なのか、M氏に従順な態度で一緒についてくる。彼の左目は失明していた。何があったのかはわからない。おい〜この人ちょっと危険なんじゃないのぉ・・・・。
マジかよ〜。。。が、意外にも礼儀正しく、こちらが何かをするとそれに答えてくれるもの静かな男だった。M氏が通りの店でバナナを何本か買う。
その一つをもらいながら、路地を歩き、M氏の実家へ。 -
M氏が実家と呼ぶ場所は、4畳ほどの土でできた壁と地面で囲まれた家だった。そこにいたM氏の母さんと話し、チャイをいれてもらう。暖かくおいしいチャイを飲み、どこからか集まってきた子供たちと触れ合う。
-
外国で一番最初に仲良くなるのはいつだって子供たち。
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そうしているうちに、旅モードにはいったことに少しテンションがあがる。
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ちょっと不安はあるけど、良い出会いなんじゃないの?
-
そんな期待を抱きながら、写真を撮ったりしながら過ごす。
-
「そろそろうちの叔父の家に行こう」
「ここは汚い。この後叔父の家に案内してから、僕の新居に案内します。」
やっぱりどこか信用できないM氏ではあったが、H氏は強面の顔ながら、とても穏やかで、時折見せる笑みに本当はいいやつなのかって気がしてくる。
午後5時過ぎ、M氏の叔父の家へ。 -
そこには彼の叔父、兄弟の子供たちがいて、色々としゃべり、気持ちもほぐれていく。
-
日本の携帯を見せたり、インド・ネパール2人旅の写真を見せたり、屋上で子どもと遊んだりする。
-
Let's
-
enjoy
-
our
-
one time life!
-
with Free Soul.
-
M氏もいいやつなんじゃないか?そんな想いがだんだん勝ってくる。中でも、子供たちのうち大学生の子とは、特に仲良くなった。
-
「明日はオレの大学を案内します。一緒に行きましょう。明日、必ず会いましょうね。」
よっしゃ〜明日はバングラデシュの大学か〜、これはいい経験になるぞ。そんなことを思いながらも、時間はふけていき、外は雨が降り始める。
夜21時頃、雨が降り始めてきたのを機に、マトンが言う。
「ダイ、そろそろ、うちの家へ行かないか?」
「社長さんもダイと会いたいと思います。」
子供たちと遊びつかれていたのもあり、行きましょう!と即答。 -
雨足が強まってきた外に出て、リキシャーを呼ぶ。
H氏の表情がまた、いつもの強面に戻っている。
何かに緊張しているような、この後起きるだろう何かを知っているかのような表情だった。 -
僕らを乗せたリキシャーは走る。
「タバコをくれないか」
「もちろん」
「ありがとう」って返事も言わずに差し出したタバコを吸い出すM氏。ぶっきらぼうなその態度に、再び心の底に沈んでいた疑いの念が沸きあがってくる。
-
「マリファナは好きか?」
「いいや、マリファナはやらないよ。」
「どうして?いいもの持ってるからやらないか?」
「No, thank you.. I'am Healthy man!」
「ダイ、オレがマリファナを吸っているって、絶対叔父や子供たちには内緒だぞ?!」
「わかったよ。」
やっぱり、M氏は良い人ではないー。僕らを乗せたリキシャーは走る。雨の中、暗闇の中。もう、どこをどう進んでいるのかさえわからなかった。隣に座るM氏は携帯で誰かと母国語でしゃべっている。H氏は強面の顔を窓の外に傾け押し黙っている。本当はH氏はいいやつなんじゃないかって想いが強くなってきていた。どうしようもないから、M氏に従っているのではないかー。
リキシャー内は、マリファナの匂いとともに、何か危険な匂いに満ちていた。まあどうにかなる、どうにかなそうと思いながらも、僕は不安な気持ちで外の景色を眺めていた。そして、どこをどう走ったかわからないが、大通りから小道に入り、幾分か進んでからリキシャーは止まった。
そこには、豪邸があった。
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