2005/12/26 - 2006/01/03
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ホホデミさん
実はローマは、急ぎ足だったので余りよく覚えていません。
覚えているのは・・・
「母の手を繋いで歩いた事」
母は私をかなり高齢になって、生んでしまいました。(よく後悔しているそうです。(爆笑))
母は、3年前腰の手術をしました。背骨を削る大手術でした。
そのお陰で腰や足の痛みが減りましたが、普通の人のように歩く事はできません。
高血圧もあります。緑内障をやっているので、白内障の手術も容易にできず、今はそのまま。当然目もよく見えません。
ローマの段差の多い石畳を歩くのは怖く、とても苦しかったと思います。
何が、そんな状態の母をローマへ駆り立てたのか。
ローマへ、ローマへ、ヴァチカンへ・・・!
母は私の左腕につかまって、時には手を握って歩きました。
「安心するの」
普段、気持ちの強い母が初めてそう言いました。
手を繋いでいるだけでも、安心するのだと。
母の手は小さかったです。少しプヨプヨしています。背をかがめているせいか背丈も小さくなっていました。
その弱々しい手が時々、私の手の骨を折らんばかりにギュッと掴みます。
「ハイ、次段があるよ」
足でトントンと段差を叩いてありかを知らせます。
添乗員さんには、申し込み前にその旨を伝えましたが、「前には車椅子の人も来られていましたから」と回答を受け、申し込みましたが、私は迂闊でした。
車椅子の方と、自分で歩けるけれど普通の速度で歩けない人との違いを、その添乗員さんはわかってくれていなかったのに気づいていませんでした。
早足の方なのか、さっさと先導します。
母に自分の傍にいるよう指示しながらも、母は添乗員の彼女と同じように歩けません。この矛盾に母は旅の間、悩み続けました。
大人数の旅ではありませんでしたが、母は「自分がここまで歩けない人間だとは思わなかった。つい10ヶ月前友達とエジプトに行って普通にやってこれたと思っていたのに」と宿で落ち込む夜が数日続きました。
母は口グセの「すみません」を何度発したことでしょう。
旅の人から「すみません、はナシね?」といわれつつ、坂道(アシジの坂道など)ポールに掴って一人、ゆっくり降りてゆくと、こともあろうに(という言い方は失礼かもしれませんが)女性の聖職者の方が「お母さん、すごい!すごい!」と悪意なき励ましを・・・そして母にとってはもっとも自責と屈辱の念に駆られた瞬間でした。
坂道を一人、ポールに掴って下る自分の姿が、他人から観れば”すごいこと”に見えてしまうのか、と。
その都度私が母の耳元で「何ですと?スゴイとあやすとは失礼な。(笑)悪気のあるなしは関係なし、私もそういわないよう気をつけるよ。言われて傷つくことには変わりはないもんね、ねえ?おかーちゃん」とか
「日本に帰れば、こうも優しくされないんだから、皆さんのご好意に甘えたらいーじゃん?(笑)」とか。
一番、母のつらさを分かって下さったのは、聖職者でない一般の方々でした。
牧畜を生業とし、すごいカメラさばきで趣味の写真を撮る青年、観光中に皆さんで食べようと美味しいガレットを持参して下さった方。
特に美しいシニョーラさんとドミナさんの母娘のお二人は、時にご自分がお疲れになってしんどい時もあるのに、母を気遣って下さいました。最後尾にわざとついて、母と一緒に歩いたり、娘のドミナさんが、前の列とはぐれないようランドマークになって下さったり。
一緒に旅する仲間として、若い!(?)私こそ、気遣いする立場なのに、それがかなわず心残りです。
で、私も正直、時々、母にイライラしていた時もあったんです。
でも、背中を曲げて、見た目つらそうなのに、皆さんに迷惑をかけまいと、少しでも早く歩こうと弱音を吐かずに歩く(弱音も吐いていましたが(大笑))母を見るたび、どうしても心の底から責める気になれませんでした。
かーちゃん、がんばろう。歩こう。待ってもらえばいいじゃん?
後で一緒に謝ろう!イチニ!イチニ!もうすぐだよ、もうすぐ着くよ、あんなに行きたがっていた場所に。
ヴァチカンへ・・・!!
ただ、その一念だけが彼女の原動力でした。
これは旅行記ではないかも知れません。
でも、これだけは、残しておきたい記憶でした。
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この旅行記へのコメント (12)
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- さすらいおじさんさん 2006/01/24 01:50:45
- お母様はいい思い出を作られたことでしょう。
- ホホデミさん
親孝行をされたのですね。
中国、石林、昆明のツアーでは90歳の高齢者で歩く速度はほかの人の半分以下、料理も自分では皿にもれない、バイキングでは皿を落とす、といった一人参加のおじいさんが一緒でしたが、メンバー全員が助けて、本人も周囲に気を遣う事無く、石林の丘にも登られましたし、どこの観光地もパスされませんでした。迷惑に思った人もおられましたが、本人が一生懸命歩かれるので、途中からはおじいさんのスピードに合わせたたびになりました。
旅好きの人は厚かましさも必要かも知れませんね。お母様はいい思い出を作られたことでしょう。
- ホホデミさん からの返信 2006/01/24 23:49:50
- RE: お母様はいい思い出を作られたことでしょう。
- さすらいおじさんさんへ
90歳の方がお一人で参加されたのですか。
一人でも参加したい程思い入れがあったのでしょうね?
確かに、一人ペースが違うと良い印象は受けないかも知れませんが、(その点では私たち母娘もご迷惑をおかけしました)そのおじいさん、どの観光もパスされず踏破されたのは素晴らしいと思います。
私はご迷惑をかけた母娘の片割れですが、乱暴な言い方すれば景色はプロの写真が日本でも見れます。
でも、人の想いはお金やプロの写真では代替できません。90歳の方の想いのように。
本当は、ご家族の一人が一緒に来て下されば、会話も弾むし普段の生活ではそこまで必要ないコミュニケーションがとれて別の意味で意義のあるものになるとは思いますが・・・。
また、母を旅行に連れて行こうと思います。(ご迷惑をかけないように、頑張らなくては)
-
- kamigakiさん 2006/01/16 23:30:03
- 拝見させていただきました
- 義臣さんから、このサイトを教えていただき、来て見たらホホデミさんの書き込みがあり、リンクをたどってここまで着ました。
ローマへの旅はホホデミさんにとっても、お母さんにとってもいい思い出となったようですね。ホホデミさんのお母さんの力強さを感じます。ローマまで行ってみようと思うこともすごいです。
- ホホデミさん からの返信 2006/01/17 12:28:36
- RE: 拝見させていただきました
- kamigakiさんへ
ようこそいらっしゃいませ。(o^^o)
kamigakiさんも、せっかくページを作られたのですから、こちらでも
お伊勢さん旋風をおこしてはいかがでしょうか?(^^)
昔いかれた海外の旅行記でもいいですよね。
ビールの旅と称して、ドイツやベルギーへ出かけられてもいいですよね。
ローマ編、読んでいただきありがとうございました。
お陰様で母の長年の夢だった場所へようやく行く事ができました。
珍道中でしたが、無事に帰ってこれました。
-
- 義臣さん 2006/01/14 09:22:04
- 母と
- 読ませて頂いていると亡き母との奈良 京都の旅が思い出されます。
たった一度に親子三代の旅、
奈良や京都にはまるで興味のない母は、
私たちとの旅行だけが嬉しかったのでしょう、
あの嬉しそうな姿、今朝は思い出されて。涙腺が緩んでます。
- ホホデミさん からの返信 2006/01/14 22:50:44
- RE: 母と
- 義臣さんへ
ようこそ、いらっしゃいませ。(o^^o)
三代で訪れた奈良に京都。
仮にお母様がそれまで興味がなかったとしても、皆さんと一緒だか
ら安心で、楽しかったでしょうし、それがゆえ奈良や京都の景色が
ことさら眩しく映ったのではないでしょうか。
>あの嬉しそうな姿、今朝は思い出されて。涙腺が緩んでます。
すばらしい旅をされたのですね。本当にすばらしい旅・・・!
美味しいものをぽっちり。みんなで仲良くお喋りしながら召し上がっ
てまた散策されたのでしょうか。
宿で温かいお風呂に入って疲れを癒して心安らかに熟睡。
旅は”想い”があってこそ、心に残るものかもしれませんね。
私もこれからも、そんな旅ができるよう心がけたいと思います。
- 義臣さん からの返信 2006/01/15 07:54:07
- RE: RE: 母と
- 今度はこちでのお話を、
もう母も父もいないので余計なのかも知れません、
父もたった一回の奈良 京都の旅、
自分の好みで歩いて来たのですが。
どこか父母の行きたい所を考えて行ってあげればと、
ふと 思いました。
こちらからもよろしく。
- ホホデミさん からの返信 2006/01/15 23:13:58
- RE: RE: RE: 母と
- 義臣さんへ
お父様も奈良、京都へご案内されたのですね。
ここは日本が世界に誇る古都ですもの。「行きたくなかった」
なんていう方は”ない”とは申せませんが、まずいらっしゃら
ないと思います。(^^)
私も多分、日本でしたら奈良・京都でしょう。
しかも明日香を案内するかも知れません。←マニアック・コース
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- 迷子さん 2006/01/12 09:09:17
- たまには親子で旅行(珍道中?!)も素敵です。
- オハヨウございます。
私のコーンウォールも見て下さり、ありがとうです。
ローマの街中をお母様の手を引いてチョロチョロ(失礼!)されている
様子が想像できますね。疲れても楽しかったのではと思います。
私も最近は高齢の母と出掛けることが多くなり、フムフムと旅行記を
拝見して頷いてましたです。私達の場合は普段家ではあそこ、ここ
などと体調に不都合ばかりの母ですが、旅先では誰より一番元気です、、。
ホホデミさんもしかっりと母親孝行してますね、次はお父様の出番かな?
- ホホデミさん からの返信 2006/01/12 21:56:07
- RE: たまには親子で旅行(珍道中?!)も素敵です。
- 迷子のプロさんへ
ローマで思い切りチョロチョロ(笑)してきましたよ。
母と手を繋ぐ旅が印象深いものになろうとは、予想できませんでした。(笑)
迷子のプロさんもお母様とご一緒にトラベラーなさっているのですね。
親子鷹(-v☆彡)キラリン!
旅って不思議ですよね。
家ではグータラの私ですが、旅に出ると元気満々なんですよ。
だからお母さんのお気持ちがわかります。
>次はお父様の出番かな?
ホホデミ父とは敦煌の莫高窟を観に行った事があります。
でも周囲は「父と娘でフツー旅なんてしないよ〜」と散々。(T-T)
だから迷子のパパさんとの旅行記を拝見して嬉しくなりました。
さり気に「今度はきゅーさいこー(確か中国の世界遺産)に行きたい」といているようです。
-
- 文香さん 2006/01/11 08:18:56
- 感動しました。
- すべての道はローマに続いていたんです。
親孝行の道もローマに…。というか神のお導きってものがあってのことかも知れません。サンピエトロ大聖堂のピエタの像が招いたのでしょう。あの像は、今まで見たどの彫刻よりも美しく、「愛」を放っていましたから…。
よかったです、お母さんといい思い出ができて。
私は今の状態では、母の奴隷になってしまうので、一緒の旅はできそうもありません。お父さん、お留守番お疲れ様。
- ホホデミさん からの返信 2006/01/11 22:29:33
- RE: 感動しました。
- 文香さんへ
>すべての道はローマに続いていたんです。
そうかも知れませんね。母にとってはそうだったのでしょう。
私のは親孝行なんてもんじゃなく「ネコの手よりマシだった」って程度です。(笑)
何かのTV番組で観たのでしょうか、何十年も前から「ヴァチカン、ヴァチカン」って。BSでもよくやっているそうですし。
ローマは雨でした。早く歩いて下さい!という添乗員さんの声をこの時ばかりは、思い切り無視して
「せめて、サン・ピエトロ広場は、ちゃんとみなよ〜っ」って、入り口正面、広場が広く見えるポジションから、しばし立ち止まって眺めました。
「わあ!広い♪」と母。
段差があるので、歩きながら眺めるなんて怖くて、彼女にはできなかったんです。
前に一人で旅した時もこの時期で、晴れでした。ど真ん中で伸び(いいのか?こういうことして)をしました。それが気持ち良かったので、母にもさせてあげたかったんですけどね。
ど真ん中で「深呼吸」。比叡山でラジオ体操するもんですわ。(?)
>お父さん、お留守番お疲れ様。
兄も叔父親子と3人でカンボジアへ行きましてん。
桜文鳥のトリと二人で正月だったそうです。O( _ _ ) O ショボーン
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