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プノンペンに着いたのは、午後1時半を少し回っていた。<br />バスは速度を落としながら、大通りを左方向へ折れた。<br />狭い路地付近で停車すると、たちまち大勢の男たちが駆け寄って来た。<br />「ホテルは決めているのか!」「バイタクはどうだい!」<br />必死の形相で窓ガラスをノックしながら、声を張りあげていた。<br /><br />カンボジアの首都プノンペンはシェムリアップやベトナム、タイ方面を目指す旅行者にとっては、たんなる通過点に過ぎない。<br />見るべきものが少ないからだろうか。<br />私も2泊だけしたら十分、国境を越えてホーチミン行きを決めていた。<br /><br />バスを降りて格納庫からバックを取り出してもらう。<br />重いバックを腰踏ん張りながら背負おう。すると急に軽くなった。<br />背後でバックを誰かが持ち上げてくれている。<br />不意を突かれて、何となく気分が悪い。<br />「ホテルの名はなんという?」色黒で眼光の鋭い男が、へたな日本語で話しかけてきた。<br />顔をしっかり見ると、額から眉付近まで薄い傷後のある男だった。<br />「キャピトル?」。うかつに返事をしてしまった。<br />「なら、そこだよ」と指を差した。<br />ひとりで旅する者にとって、とかく西も東も分からない都市を訪れたときなどは、常に不安だらけである。<br />大地に足が這うような感じで、臍に力を入れながらバックを担いでは身構えした矢先。なんとバス停の目と鼻の先だとは、恐れ入った。<br />腰が砕けそうなるくらいな安堵感で、目の前ががぜん明るくなった。と、こう言えば大袈裟すぎるようだけど、なにせここは悪名高きプノンペン。<br />「今日の予定は?」。男は、しつこく付いてくる。<br />「別に決めていない」<br />「なら俺が案内するぜ」<br />「疲れているから、今日は観光するつもりはない!」<br />「明日は?」しつこい問い掛けに、少し躊躇したが、<br />「いくらだい?」。<br />宿の場所を教えてくれた手前、挨拶代わりにとまあ聞いてみる。<br />「一日貸しきりで7?。キングスフィールドまで行ってもいい」<br />前もって調べていた相場よりも、かなり安い。<br />「まあ、それでもいいけどね」。気乗りしないまま、軽い返事をした。<br />男は、笑いながら、<br />「俺の名はトシ。明朝8時ここで待っていなよ」<br />「約束は出来ないけどね」<br />男と別れて、少しだけ後悔した。<br />話し振りからして、けして悪人ではなさそうだけど、あの顔じゃちょっとな〜、と。<br /><br />

バックパッカーな旅 カンボジア?―プノンペンのバイタク野郎  トシとマサル

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2005/07/10 - 2005/07/15

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がまだす@熊本

がまだす@熊本さん

プノンペンに着いたのは、午後1時半を少し回っていた。
バスは速度を落としながら、大通りを左方向へ折れた。
狭い路地付近で停車すると、たちまち大勢の男たちが駆け寄って来た。
「ホテルは決めているのか!」「バイタクはどうだい!」
必死の形相で窓ガラスをノックしながら、声を張りあげていた。

カンボジアの首都プノンペンはシェムリアップやベトナム、タイ方面を目指す旅行者にとっては、たんなる通過点に過ぎない。
見るべきものが少ないからだろうか。
私も2泊だけしたら十分、国境を越えてホーチミン行きを決めていた。

バスを降りて格納庫からバックを取り出してもらう。
重いバックを腰踏ん張りながら背負おう。すると急に軽くなった。
背後でバックを誰かが持ち上げてくれている。
不意を突かれて、何となく気分が悪い。
「ホテルの名はなんという?」色黒で眼光の鋭い男が、へたな日本語で話しかけてきた。
顔をしっかり見ると、額から眉付近まで薄い傷後のある男だった。
「キャピトル?」。うかつに返事をしてしまった。
「なら、そこだよ」と指を差した。
ひとりで旅する者にとって、とかく西も東も分からない都市を訪れたときなどは、常に不安だらけである。
大地に足が這うような感じで、臍に力を入れながらバックを担いでは身構えした矢先。なんとバス停の目と鼻の先だとは、恐れ入った。
腰が砕けそうなるくらいな安堵感で、目の前ががぜん明るくなった。と、こう言えば大袈裟すぎるようだけど、なにせここは悪名高きプノンペン。
「今日の予定は?」。男は、しつこく付いてくる。
「別に決めていない」
「なら俺が案内するぜ」
「疲れているから、今日は観光するつもりはない!」
「明日は?」しつこい問い掛けに、少し躊躇したが、
「いくらだい?」。
宿の場所を教えてくれた手前、挨拶代わりにとまあ聞いてみる。
「一日貸しきりで7?。キングスフィールドまで行ってもいい」
前もって調べていた相場よりも、かなり安い。
「まあ、それでもいいけどね」。気乗りしないまま、軽い返事をした。
男は、笑いながら、
「俺の名はトシ。明朝8時ここで待っていなよ」
「約束は出来ないけどね」
男と別れて、少しだけ後悔した。
話し振りからして、けして悪人ではなさそうだけど、あの顔じゃちょっとな〜、と。

  • 朝7:00。<br />この時間帯になると、街中はどこも活気に溢れていた。<br />内戦を終えて10年ちょっとだけど、プノンペンの立ち直りは早いようだ。<br /><br /><br />

    朝7:00。
    この時間帯になると、街中はどこも活気に溢れていた。
    内戦を終えて10年ちょっとだけど、プノンペンの立ち直りは早いようだ。


  • トシと約束した場所に向かう。<br />トシは、まだ来ていない。<br />しばらくしてから若い男が、近づいて来た。<br />「トシを待っているのでしょう?彼は急用で来れなくなりったので、代わりに僕がご案内します」<br />男は流暢な日本語で話しかけてきた。<br />トシと違って話し方がソフト。<br />乗っていたバイクも、服装のセンスもトシとは大違いであった。<br />

    トシと約束した場所に向かう。
    トシは、まだ来ていない。
    しばらくしてから若い男が、近づいて来た。
    「トシを待っているのでしょう?彼は急用で来れなくなりったので、代わりに僕がご案内します」
    男は流暢な日本語で話しかけてきた。
    トシと違って話し方がソフト。
    乗っていたバイクも、服装のセンスもトシとは大違いであった。

  • トシが来なかったのは理由がある。<br />地元のヤクザとトラブルを起こした仲間を、迎えに行ったらしい。<br />バイタク仲間が後日、ことの成り行きを詳しく話してくれたので分かった。<br /><br />トシは27、マサルは26。生まれも育ちも同じ村。<br />トシは貧困な母子家庭で、マサルは印刷業を営む裕福な環境で育ったらしい。<br />トシはガキ大将。マサルは賢くて優しい性格。<br />気性が激しいトシを、幼い頃から兄のように慕っていたという。<br />カンボジアではバイタクを始めるには、経済的にゆとりがなければとても無理。<br />ホンダ200ccの新車は2千?。中古車でも1,200?もするという。<br />大卒の公務員の初任給が40?だから無理もない。<br />トシのバイク購入を手伝ったのはマサルだった、とバイタク仲間から聞いたことがある。<br /><br />

    トシが来なかったのは理由がある。
    地元のヤクザとトラブルを起こした仲間を、迎えに行ったらしい。
    バイタク仲間が後日、ことの成り行きを詳しく話してくれたので分かった。

    トシは27、マサルは26。生まれも育ちも同じ村。
    トシは貧困な母子家庭で、マサルは印刷業を営む裕福な環境で育ったらしい。
    トシはガキ大将。マサルは賢くて優しい性格。
    気性が激しいトシを、幼い頃から兄のように慕っていたという。
    カンボジアではバイタクを始めるには、経済的にゆとりがなければとても無理。
    ホンダ200ccの新車は2千?。中古車でも1,200?もするという。
    大卒の公務員の初任給が40?だから無理もない。
    トシのバイク購入を手伝ったのはマサルだった、とバイタク仲間から聞いたことがある。

  • キリング・フィールドへ。<br />キャピタルGHからキリング・フィールドまではバイクタクシーで約20分。<br />目抜き通りからオリンピックスタジアム前を通り過ぎると、しばらくして左折した。道路状況は雨降り後ので泥水道。<br />マサルの運転は、<br />私の足に泥水が跳ね掛からないように、深水を避けながらゆっくりゆつくり走る。<br />

    キリング・フィールドへ。
    キャピタルGHからキリング・フィールドまではバイクタクシーで約20分。
    目抜き通りからオリンピックスタジアム前を通り過ぎると、しばらくして左折した。道路状況は雨降り後ので泥水道。
    マサルの運転は、
    私の足に泥水が跳ね掛からないように、深水を避けながらゆっくりゆつくり走る。

  • キリング・フィールド周辺は、<br />遠くまで見渡す限り田園風景だった。<br />内戦続きのポルポト政権時代このあたりで知識人らが何十万人も処刑され土中に埋められた。<br />今では全く想像さえできないほどの長閑さがある。

    キリング・フィールド周辺は、
    遠くまで見渡す限り田園風景だった。
    内戦続きのポルポト政権時代このあたりで知識人らが何十万人も処刑され土中に埋められた。
    今では全く想像さえできないほどの長閑さがある。

  • ここも処刑地らしい。<br />今でも人骨が埋まっている、と聞いた。

    ここも処刑地らしい。
    今でも人骨が埋まっている、と聞いた。

  • 池ではない。<br />死体を埋め尽くした壕だ、と聞いた。<br />牛飼い少年が、カメラに向かってポーズをとってくれている。<br />この後少年は、ちゃつかりとモデル代を請求していた。

    池ではない。
    死体を埋め尽くした壕だ、と聞いた。
    牛飼い少年が、カメラに向かってポーズをとってくれている。
    この後少年は、ちゃつかりとモデル代を請求していた。

  • 手造りカヌーが趣味な私は、内部構造まで興味津々。

    手造りカヌーが趣味な私は、内部構造まで興味津々。

  • 隣のバイクと比べると、いかに巨大なカヌーであるかが分かる。<br />マサルの説明では、建造費を含めた総価格は3千万円以上かかったと話してくれた。

    隣のバイクと比べると、いかに巨大なカヌーであるかが分かる。
    マサルの説明では、建造費を含めた総価格は3千万円以上かかったと話してくれた。

  • キリング・フィールド内に展示されているカヌー。<br />一本の木でくり抜かれたカヌーの長さは、30メートルはゆうにある。<br />原型は、とてつもない巨木だったに違いない。<br />

    キリング・フィールド内に展示されているカヌー。
    一本の木でくり抜かれたカヌーの長さは、30メートルはゆうにある。
    原型は、とてつもない巨木だったに違いない。

  • キリング・フィールドの帰り道。<br />注)オリンピックスタジアム付近で、<br />信号待ちしているのバイク・自転車。<br />この混み様はハノイやホーチミンを連想させる。<br /><br />注)プノンペンではオリンピックは開かれたことがないけれど、なぜオリンピックスタジアム?<br /><br />

    キリング・フィールドの帰り道。
    注)オリンピックスタジアム付近で、
    信号待ちしているのバイク・自転車。
    この混み様はハノイやホーチミンを連想させる。

    注)プノンペンではオリンピックは開かれたことがないけれど、なぜオリンピックスタジアム?

  • ガイドブック(00の歩き方、メコンの国)「カンボジアでは大型ビルは皆無」と書いてあった。<br />だが、真新しいビルも大型ショッピングモールもある。<br />しかも複合シネマー館までも併設あされているではないか。

    ガイドブック(00の歩き方、メコンの国)「カンボジアでは大型ビルは皆無」と書いてあった。
    だが、真新しいビルも大型ショッピングモールもある。
    しかも複合シネマー館までも併設あされているではないか。

  • 猛暑はビールにかぎる、味も格別に旨い。

    猛暑はビールにかぎる、味も格別に旨い。

  • マサルが案内してくれた中華料理店。<br />この店の餃子は皮も手造り、今回の旅行ではいちばん旨かった。<br />なんでもプノンペンでは、もっとも人気ある台湾人経営の店らしい。<br />このボリュームで約百円。

    マサルが案内してくれた中華料理店。
    この店の餃子は皮も手造り、今回の旅行ではいちばん旨かった。
    なんでもプノンペンでは、もっとも人気ある台湾人経営の店らしい。
    このボリュームで約百円。

  • 旨いものを目の前に並べられると、ついつい箸の方が先に出てしまう。<br />カメラに気がついた時は、すでにぱくついた後。<br />写真撮りを忘れてしまうことがちょくちょくあった。

    旨いものを目の前に並べられると、ついつい箸の方が先に出てしまう。
    カメラに気がついた時は、すでにぱくついた後。
    写真撮りを忘れてしまうことがちょくちょくあった。

  • プノンペンの中華レストラン。<br />旨い!何を注文してもハズレがない。

    プノンペンの中華レストラン。
    旨い!何を注文してもハズレがない。

  • プノンペンの景色。<br />ショッピングセンターのて屋上からから撮ったプノンペン市内。

    プノンペンの景色。
    ショッピングセンターのて屋上からから撮ったプノンペン市内。

  • センターマーケット。<br />市場の中は広くて迷子になりそう。<br />サングラスを買った。4ドル。<br />

    センターマーケット。
    市場の中は広くて迷子になりそう。
    サングラスを買った。4ドル。

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この旅行記へのコメント (3)

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  • さすらいおじさんさん 2005/11/03 08:53:20
    トシとマサル
    がまだす@熊本さん

    カンボジアには「プノンペンのバイタク野郎  トシとマサル 」のような若者が多いのでしょうね。貧しさからヤクザの世界に入ってゆかざるを得ない若者も多いのでしょう。シェリムアップにはアンコールワットを見るために行きましたが、バイタク野郎と知り合うことはありませんでした。とても興味はありますが、またバッカパッカーで歩いていたら私も声をかけられるでしょうが、ヤクザの世界は少し怖い気もします。トシとマサル の話は彼らは今どうしているのだろうか、と気になります。連載を楽しみにさせる、文もうまくて読者を読ませてしまう魅力ある連載旅行記だと思います。
  • obaqさん 2005/10/31 13:41:32
    バイタク野郎・・・拝見
    オヤジパッカーならではの沢山の写真、
    私もこういう旅行を夢にまで見るのですが、クリアできない理由が多すぎて、何度も断念しています。
    現地の人との交流も、遙かに多くできるでしょうし、楽しさも数倍、いや数十倍にもなるだろうなと、・・・
    いやいや、見せていただいて想像して楽しむことにします。
    それにしてもがまだすさん、目一杯楽しんでますね〜

    がまだす@熊本

    がまだす@熊本さん からの返信 2005/11/02 22:41:19
    RE: バイタク野郎・・・拝見
    obaqさん、書き込みありがとうございます。

    私こと“がまだす”は、メコンの国を目一杯放浪して来ました。
    友人から“出たきり老人”なんて 称されていますから、トラベラー名を変えようかな、なんてですね(爆)
    プノンペンでもチェンマイでも見かけました。本物の“出たきり老人”を。彼らの多くは若い女性と腕組んでいましたっけ。
    ちょっと羨ましかったけど、「捨てられるなよなぁ」なんて言葉に出そうで止めましたけど、後姿は何となく物悲しさを語っているようでして・・・。

    ごめんなさい、いつもの癖で横道にそれました。
    今回の旅行記はまだまだ続きます。
    ベトナムとラオス縦断した後、再びバンコクとチェンマイへ足を伸ばしました。
    UPするのがいささか疲れましたので、ひとまずここら休憩。です。
    今しばらくは4トラの皆さんの旅行記を読ませて頂きながら、バーチャルの世界へ旅立つつもりです。
    obaqさんの旅も楽しみ。じっくり拝見させてください。

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