日本の旅　奥の細道を辿る【２】　芭蕉が訪ねた平泉・中尊寺と山寺

1993/05/22 - 1993/06/03

　岩手県・平泉では芭蕉は中尊寺と中尊寺の東南にある６７ｍの丘高館(たかだち)・義経堂を訪問している。高館・義経堂は源義経が平泉に滞在中居住したところと言われ、藤原泰衡の軍勢に襲われ、義経はここで妻子とともに自刃したと伝えらている。
芭蕉は　杜甫の「春望」の

国破山河在 (国破れて山河在り)
城春草木深 (城春にして草木深し)
「国が破れ滅びても、山や河だけはむかしのままの姿で残っている。荒廃した城にも春はめぐり来るが、草木だけが生い茂るばかりだ」の詩を思い浮かべ、義経のあわれと奥州藤原氏の栄華盛衰の空しさに涙し有名な句を残した。

「夏草や兵どもが夢の跡」

高館・義経堂の下には広々とした田畑が広がっていたが、山も川も義経や芭蕉が見た姿と変わらない「夢の跡」の光景だった。
　中尊寺を訪れた芭蕉は藤原清衡、基衡、秀衡三代の棺が納められ、三尊の仏像が安置されている光堂（金色堂）で寺の建物が、雨風で朽ちていく中で、金を張った光堂だけが昔のままに輝いているのを見て、光堂にだけは、五月雨も降り残しているのではないか、との驚きを持って一句。

「五月雨の降のこしてや光堂」

中尊寺の金で装飾された光堂（金色堂）、経堂などは奥州藤原文化の栄華を彷彿とさせるものだった。
　人に勧められて訪れた山形県・山寺立石寺では、芭蕉は苔むした岩肌、松・杉・ひのきの老木の中、崖淵の参道を登り仏閣を参拝している。すばらしい景観が静寂の中で一層映え、心が澄み渡っていくようだと感動し名句を残した。

「閑さや岩にしみ入蝉の声」

山寺立石寺では「どうやって建てたのだろう」と疑問を持つような断崖絶壁にお堂が建てられている。岩山の穴には修行僧の遺骨を納めているそうで、中国の三峡で見た岩山の墓を思い出した。断崖絶壁は現在も修行の場となっており、修行僧が転落死することもあるそうだ。
　その後芭蕉は最上川の急流を、仙人堂、白糸の滝などを眺めながら最上川河港「清川」まで下り有名な句を残した。

「五月雨をあつめて早し最上川」

残念ながら最上川下りをすることはできなかったが、平泉と山寺立石寺では芭蕉の歩いた同じ場所を歩くことができたことが喜びだった。
（写真は断崖に建てられた山寺立石寺）

エリア 山形

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: JRローカル

中尊寺。藤原清衡、基衡、秀衡三代の棺が納められ、三尊の仏像が安置されている光堂（金色堂）。
芭蕉は寺の建物が、雨風で朽ちていく中で、金を張った光堂だけが昔のままに輝いているのは、五月雨も降り残しているのではないか、との驚きを持って

「五月雨（さみだれ）の降（ふり）のこしてや光堂 」

の名句を残した。

中尊寺境内の光景。

中尊寺境内から見る平泉の光景。

中尊寺の東南、６７ｍの丘にある高館(たかだち)・義経堂。高館・義経堂は源義経が平泉に滞在中居住したところと言われ、藤原泰衡の軍勢に襲われ、義経は妻子とともにここで自刃したと伝えらている。芭蕉は　「杜甫の春望」の国破山河在 (国破れて山河在り) 城春草木深 (城春にして草木深し) の詩を思い浮かべ、義経のあわれと奥州藤原氏の栄華盛衰の空しさに涙し有名な句を残した。

「夏草や兵どもが夢の跡」

古代から変わらない山・川が美しかった。

平泉の光景。

山寺立石寺から見る光景。

山寺立石寺を望む光景。

山寺立石寺の「奥の細道」の説明板。

山寺立石寺の断崖絶壁。現在も修行の岩場となっており、修行僧が転落死することもあるそうだ。　

山寺立石寺の芭蕉の「閑さや岩にしみ入蝉の声」の句碑。すばらしい景観が静寂の中で一層映え、心が澄み渡っていくようだとの感動の名句だ。

山寺立石寺の断崖絶壁。

山寺立石寺の断崖絶壁。

この旅行記へのコメント （2）

• ralphinさん 2007/01/28 15:45:27

  山寺

  93年にも行かれていたんですね。
  さすらいおじさんの写真の方が、あの断崖が表現されている様に思いました。
  TOPの写真、とっても良いです。
  登るまで苦労しましたが、経堂からの景眺めは最高ですよね！
  芭蕉像以外にも、変わっている所はありましたか？
  

  さすらいおじさんさん からの返信 2007/01/28 18:11:20

  RE: 山寺

  ralphinさん
  
  １９９３年の奥の細道のたびをご覧いただきありがとうございます。
  あのころはフィルムで写真をたくさん撮らなかったのが残念です。
  
  
  ＞芭蕉像以外にも、変わっている所はありましたか？
  
  
  ralphinさん の写真を拝見して、垂直に切り立った山の険しさがよく撮れておられると思いました。
  景観そのものは変わっていないように思います。