2003/08 - 2003/09
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captainkojiさん
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イスタンブールは、アジア、中東、ヨーロッパから来た旅人やこれからそれぞれの地域に向かう旅人が集まる街だ。長旅をする傾向の強い日本人旅行者は特に多い。
ヨーロッパを回ってきた者はアジアに帰ってきたことにほっとし、アジアを横断してきた者はインド、パキスタン、イランなどでの疲れを癒し、アフリカや中東から上がってきた者は文明や食の豊かさを楽しむ。またこれからアジアや中東へ向かう者はビザの取得をまとめて行う。そんな街の日本人宿では、”沈没”してしまう旅人が多い。
日本人宿とは、旅行者が多く集まる街によくある、日本人用の、もしくは日本人がよく利用する宿であり、世界中に存在する。そこでは日本食を自炊したり、各国の情報を交換したり(通常”情報ノート”なるものがあり、掲示板的な役割を果たしている)と、日本人長期旅行者にとっては便利かつ憩いの場となるのだ。
イスタンブールの日本人宿“Tree of Life”は、宿というよりは生活共同体だ。毎日持ち回りで夕食の準備などをしている。皆で食べる夕食(シェア飯)と夕食後の皿洗いジャンケンが、沈没組のその日最大のイベントとなる。その他は飲んだり歌ったり語ったりゲームをしたりしながら過ごす。
彼ら(沈没組)のほとんどは滅多に宿から出ない。1日1回近所のスーパーに出かけることを目標に掲げている奴も少なくない。彼らは一体そこで何をしているのか?何もしていない。まさに、“沈没”しているのである。
彼らの口癖は、「明日こそ○○大使館に行ってビザを申請してくる」「明日こそ△△行きのバスのチケットを買ってくる」「明日こそ・・・」「明日こそ・・・」。そしていつもと同じ日々を繰り返す。そんな状態が、何週間、何ヶ月と続くのだ。
俺は初めて彼らを見たとき、「腐ってるな」と思った。彼らの多くは、一度社会に出た後、仕事を辞めて旅に出てきている。世界を放浪するのが夢だったのかもしれない。自由を求めて飛び出してきたのかもしれない。だが、ただ単に日本の社会に適応できず、逃げ出して来ただけなんじゃないのか?目的もなく沈没の日々から抜けられない彼らを見ていると、ついついそう感じてしまう。
ある日宿の管理人のちーにーが、弾き語りのライブをやってくれた。ちーにーは旅を続けること3年、この数ヶ月はここで管理人のバイトをしている。以前ニューヨークのバーでも歌っていたミュージシャンパッカーだ。いつもニコニコしていて皆に優しいちーにーだったが、その気持ちを込めた熱い歌声にもう1人のちーにーを見た。
体中に鳥肌が立った。それは聞いていた皆の心にも十分すぎる程響いており、全員息を飲むようにして聞き入っていた。最後に尾崎豊の“シェリー”をちーにーは選んだ。それは自分へ、そして皆へ送る歌だった。
シェリー いつになれば 俺は這い上がれるだろう
シェリー どこに行けば 俺は辿り着けるだろう
シェリー 俺は歌う 愛すべき者全てに
・・・・
ふとそれを聞いている皆の顔を見た瞬間、俺は切なさとも何とも言えない気持ちで胸が苦しくなった。涙を流して聞いている奴もいた。。。
旅はある意味非現実の世界だ。ほとんどの旅人は旅とは別に自分の現実の生活がある。旅はいつかは終わりを迎え、現実の世界へと帰っていく。だがこの非現実の世界で何かを探し求める。何が見つかるのだろう。それは自分自身か。それとも他の何かか。
沈没している旅人も、皆いつかはまた旅立つ。それぞれの場所に向かって。そんな旅人たちが通った後には、希望の轍が続いている。
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