慣れない「シテめし」で、われわれ米食人種にとって嬉しいのは、時たま出されるピラフである。<br />これは肉の突き合わせの野菜としてであり、芯が残っていてパラパラしている。<br />それでも、ひさびさにご飯を食べた気になるからありがたい。<br /><br />こんな時には恥じも外聞もなく、お代わりをねだる。<br />しかし３杯目には勇気がいる。<br />最初は遠慮していたが、だんだんと出来るようになった。<br /><br />「芯が残っていてパラパラしているご飯」には、数々の恨みがある。<br />街で売られている米には、粒の長いものと丸いものとがある。<br />Riz long　（リ・ロン）とRiz rond（リ・ロン）。<br /><br />発音が似ているので、なかなかわれわれが好きな“rond”を売ってくれない。<br />彼らはおいしいお米といえば“long”の方と考えているからだ。<br />“ｒ”に力を入れて、<br />「リ・ロン（“ｒ”）をください」<br />「リ・ロン（“ｌ”）でしょう？」<br />「いやロン（“ｒ”）です」<br /><br />自炊でご飯を炊いていると、おせっかいな掃除のおばさんが口を出す。<br />「あなたはお米の料理方を知らない。一度ふき上がったら水を捨て、すぐに洗いなさい」<br />「そんなことをしたら、せっかくのご飯の味が台無しじゃないの」<br />「いや私の言うことを、一度聞いて見なさい」<br /><br />どちらのご飯がおいしいか。<br />この論争は無限に続く。<br />

21　パラパラのご飯

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1970/06/21 - 1970/06/21

11740位(同エリア16401件中)

#グルメ

片瀬貴文さん

慣れない「シテめし」で、われわれ米食人種にとって嬉しいのは、時たま出されるピラフである。
これは肉の突き合わせの野菜としてであり、芯が残っていてパラパラしている。
それでも、ひさびさにご飯を食べた気になるからありがたい。

こんな時には恥じも外聞もなく、お代わりをねだる。
しかし３杯目には勇気がいる。
最初は遠慮していたが、だんだんと出来るようになった。

「芯が残っていてパラパラしているご飯」には、数々の恨みがある。
街で売られている米には、粒の長いものと丸いものとがある。
Riz long　（リ・ロン）とRiz rond（リ・ロン）。

発音が似ているので、なかなかわれわれが好きな“rond”を売ってくれない。
彼らはおいしいお米といえば“long”の方と考えているからだ。
“ｒ”に力を入れて、
「リ・ロン（“ｒ”）をください」
「リ・ロン（“ｌ”）でしょう？」
「いやロン（“ｒ”）です」

自炊でご飯を炊いていると、おせっかいな掃除のおばさんが口を出す。
「あなたはお米の料理方を知らない。一度ふき上がったら水を捨て、すぐに洗いなさい」
「そんなことをしたら、せっかくのご飯の味が台無しじゃないの」
「いや私の言うことを、一度聞いて見なさい」

どちらのご飯がおいしいか。
この論争は無限に続く。