1970/04 - 1970/05
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ソフィさん
共産主義社会の陰があちこちで話題になる昨今、一度自分の目でのぞいて見たいと、機会をうかがっていた。
1970年春、東京鉄道首脳会議からパリへの帰途、ソ連、ポーランド、チェコスロバキアを訪ねた。遅い北国の春も、4月下旬ともなれば木々の芽がふきはじめ、風も爽やかだ。
まずはモスクワ。本のページをめくってまでチェックする、空港での厳重な入国検査。無愛想なホテルのポーターのチップねだり。第一印象はすこぶる良くない。
鉄道技術研究所を訪問すべく、所長に電話したところ、東京で出会った時とは全く別人のように声が沈んでいる。私との交わりを、周辺に知られたくないらしい。
これほどにまで人間の相互不信が進めば、この社会もそろそろ終りだろうと直感する。
レニングラード(現ザンクトペテルブルグ)では、昔のロシア宮廷の華麗さを残すトランプを見つけ、この国の深さを知らされる。
そしてキエフの一日は、楽しかった。
「ご覧になりたいものを、遠慮なくおっしゃって下さい」
微笑みを絶やさない、ぴちぴちした美人通訳と二人で、大型のハイヤーを借り切り、結婚式とサラリーマンの標準家庭を訪ねる。訪問先ではみなから歓迎され、新郎新婦には祝福のキスを求められる。
「何を撮影されようと、まったく問題はありません」
日本では、「ソ連での撮影は要注意。見つかればフィルムを没収される」と、口やかましく注意を受けた。それはいったい、何だったのだろうか。
ホテルには、地区共産党書記長から、メーデーの特別席への招待状が届いた。
キエフに限り、インツーリスト(国営旅行エージェント)に特Aクラスの処遇を申し込んでいた。すべてその効果であろう。
三都を比べようと、それぞれのサーカスを見た。最も注目したのは、お客さんの表情と反応である。
一言で印象を言えば、モスクワは重々しく、レニングラード(現ザンクトペテルブルグ)は壮麗で、キエフは爽快である。
ソ連は広いだけあって、町ごとに違った国に来たようだ。
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