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 旅にはうれしい誤算も不愉快な誤算もある。旅ってそんなもの、だから思い出になるという人もいるかも知れない。とは言え、うれしい誤算が多い方がいいに決まっている。ハノイ名物水上人形劇はうれしかったほうの一つだ。<br /><br /> 正直言ってあまり期待していなかったのだ。ガイドブックでおおげさに取り上げられているものほど、不愉快な誤算も多いものだ。せっかくハノイに来たのだから、見ておいてもいいかぐらいの気持ちだったのだ。<br /><br /> 5,600人入るかと思える階段状のホールの最前列、真ん中に座らされた。ガイドはS席だという。欧米人も多く、ぞくぞく席が埋まり始める。ストロボもたかれる。おや、今年の夏から写真禁止になったんじゃなかったっけと思って館内案内に聞くと「問題ない」とのこと。こりゃ、写真を撮るには好都合な席だわい。<br /><br /> 舞台というのが、幼稚園のプールのように浅くて狭い水だ。バスクリンを溶かしたような色をしている。プールの向こうには下がすだれになった中国の宮殿風のセット。赤くライトアップされている。どこかのガイドが「皆さんはラッキーです。今日の劇団は歴史も古く、海外講演も多くこなしていて一番上手です。写真はご自由に」などと言っている。私はますます観光的な俗っぽさにうんざりしかけていた。<br /><br /> プールの左サイドに囃子方(とでも言うのか)の席が設けられている。若めの女性が小さな琴(アンプに繋がっている!)で後ろの楽器をチューニングしている。一旦消えて、楽士が入場してきた。おおっ、宮廷楽士の衣裳ではないか。本格的で国に認められた伝統音楽家という趣だ。<br /><br /> 英・仏・中語などで、世界各地で公演してきたという劇団の紹介があって、前奏曲。音色といい、リズムといい、どこか日本の民謡と通ずる。横笛がはじまってびっくりした。これは夏祭りの浦安の舞ではないか、と。<br /><br /> すだれの奥から道化の人形が登場して甲高い声で呼ばわりながら開演の口上を述べる。こりゃ面白そうだ。私はもう身を乗り出していた。人形だけで見ると奇怪な表情も、弾んだ声と滑稽な身振りが加わると途端に生き生きしてくる。<br /><br /> それから17もの演目が始まる。水上で水はもとより火を噴く、潜ったりジャンプしたりして位置を変える、両手をぐるぐる回してクロールやバックで泳ぐ、わっせわっせとオールを漕いで競い舟をする、龍が玉と戯れる、鳳凰の夫婦からは雛鳥がかえる……とまことに軽妙、リズミカル、時に荘重、華麗で千変万化である。<br /><br /> どうやって操っているのだろうと目を懲らしたが、すだれ越しに長い棒で左右に操っているのは分かる。が、回転したり、宙を舞ったりするのはどうみても分からない。見事なものだ。<br /><br /> 演目ごとに変わるお囃子もとてもいい。人形の台詞はテープのようだが、かけ声、はやし声は楽士が発する。二人の女性が竹のカスタネットを器用に操ってリズムを打つ。若い方が高からず低からず快い声調で謡う。日本の馬子唄風だったり、民謡風だったり、まことにノスタルジックな歌声である。<br /><br /> パンフレットには日本語でも演目が刷られている。民話伝承、年中行事、生活風景などがモチーフだ。<br /><br /> 水上での人形劇なんてどうして思いついたのかと思ったが、演目を見ていくとここの人々は水とは切っても切り離せない生活をしてきたことがよく分かる。これはドンホーを訪れた際確信に変わった。<br /><br /> みやげに素朴な作りの扇子をくれる。日本のものに比べれば粗末だが、欧米人には案外好評だ。S席の客にはお囃子のカセットテープもくれた。これは扇子よりうれしい。<br /><br /> ホーチミンが子どもの娯楽(教育?)のためにバックアップしたという人形劇だが、外国人、ことにアジアのはずれにいる日本人としてはルーツの一つをかいま見たような思いで、1時間の公演時間の経つのも忘れていた。(表紙の写真はチケットから)<br /><br />こちらにも旅コンテンツあります。<br />http://fkoktts.hp.infoseek.co.jp<br />

うれしい「誤算」−水上人形劇

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2004/09/06 - 2004/09/10

4519位(同エリア4928件中)

2

13

フランシスコ

フランシスコさん

 旅にはうれしい誤算も不愉快な誤算もある。旅ってそんなもの、だから思い出になるという人もいるかも知れない。とは言え、うれしい誤算が多い方がいいに決まっている。ハノイ名物水上人形劇はうれしかったほうの一つだ。

 正直言ってあまり期待していなかったのだ。ガイドブックでおおげさに取り上げられているものほど、不愉快な誤算も多いものだ。せっかくハノイに来たのだから、見ておいてもいいかぐらいの気持ちだったのだ。

 5,600人入るかと思える階段状のホールの最前列、真ん中に座らされた。ガイドはS席だという。欧米人も多く、ぞくぞく席が埋まり始める。ストロボもたかれる。おや、今年の夏から写真禁止になったんじゃなかったっけと思って館内案内に聞くと「問題ない」とのこと。こりゃ、写真を撮るには好都合な席だわい。

 舞台というのが、幼稚園のプールのように浅くて狭い水だ。バスクリンを溶かしたような色をしている。プールの向こうには下がすだれになった中国の宮殿風のセット。赤くライトアップされている。どこかのガイドが「皆さんはラッキーです。今日の劇団は歴史も古く、海外講演も多くこなしていて一番上手です。写真はご自由に」などと言っている。私はますます観光的な俗っぽさにうんざりしかけていた。

 プールの左サイドに囃子方(とでも言うのか)の席が設けられている。若めの女性が小さな琴(アンプに繋がっている!)で後ろの楽器をチューニングしている。一旦消えて、楽士が入場してきた。おおっ、宮廷楽士の衣裳ではないか。本格的で国に認められた伝統音楽家という趣だ。

 英・仏・中語などで、世界各地で公演してきたという劇団の紹介があって、前奏曲。音色といい、リズムといい、どこか日本の民謡と通ずる。横笛がはじまってびっくりした。これは夏祭りの浦安の舞ではないか、と。

 すだれの奥から道化の人形が登場して甲高い声で呼ばわりながら開演の口上を述べる。こりゃ面白そうだ。私はもう身を乗り出していた。人形だけで見ると奇怪な表情も、弾んだ声と滑稽な身振りが加わると途端に生き生きしてくる。

 それから17もの演目が始まる。水上で水はもとより火を噴く、潜ったりジャンプしたりして位置を変える、両手をぐるぐる回してクロールやバックで泳ぐ、わっせわっせとオールを漕いで競い舟をする、龍が玉と戯れる、鳳凰の夫婦からは雛鳥がかえる……とまことに軽妙、リズミカル、時に荘重、華麗で千変万化である。

 どうやって操っているのだろうと目を懲らしたが、すだれ越しに長い棒で左右に操っているのは分かる。が、回転したり、宙を舞ったりするのはどうみても分からない。見事なものだ。

 演目ごとに変わるお囃子もとてもいい。人形の台詞はテープのようだが、かけ声、はやし声は楽士が発する。二人の女性が竹のカスタネットを器用に操ってリズムを打つ。若い方が高からず低からず快い声調で謡う。日本の馬子唄風だったり、民謡風だったり、まことにノスタルジックな歌声である。

 パンフレットには日本語でも演目が刷られている。民話伝承、年中行事、生活風景などがモチーフだ。

 水上での人形劇なんてどうして思いついたのかと思ったが、演目を見ていくとここの人々は水とは切っても切り離せない生活をしてきたことがよく分かる。これはドンホーを訪れた際確信に変わった。

 みやげに素朴な作りの扇子をくれる。日本のものに比べれば粗末だが、欧米人には案外好評だ。S席の客にはお囃子のカセットテープもくれた。これは扇子よりうれしい。

 ホーチミンが子どもの娯楽(教育?)のためにバックアップしたという人形劇だが、外国人、ことにアジアのはずれにいる日本人としてはルーツの一つをかいま見たような思いで、1時間の公演時間の経つのも忘れていた。(表紙の写真はチケットから)

こちらにも旅コンテンツあります。
http://fkoktts.hp.infoseek.co.jp

  • 前列しか写っていませんが、2列8名ほどで演奏します。とても心地よい音色です。

    前列しか写っていませんが、2列8名ほどで演奏します。とても心地よい音色です。

  • 劇場のトップライト。人形が登場すると実に効果的です。

    劇場のトップライト。人形が登場すると実に効果的です。

  • 「祭の旗上げ」「テウさんのナレーション」と続きます。口上を述べる道化で、この劇場の一方のトップスターです。

    「祭の旗上げ」「テウさんのナレーション」と続きます。口上を述べる道化で、この劇場の一方のトップスターです。

  • 「龍の踊り:4匹の火を噴く龍の共演」とあります。写真に撮れたのは水を吹き掛け合う場面でした。

    「龍の踊り:4匹の火を噴く龍の共演」とあります。写真に撮れたのは水を吹き掛け合う場面でした。

  • 「水牛とフルートを吹く子供」ドンホーの版画にもある伝統的な構図です。牧歌的でとてもいい。

    「水牛とフルートを吹く子供」ドンホーの版画にもある伝統的な構図です。牧歌的でとてもいい。

  • 「田植え作業」まさに「河内」を意味するハノイの農村風景そのものだと感じました。一体一体の農作業の動作が細かくコミカルで楽しい演目です。最後に水中から苗がぞろりと顔を出すので、ホール内はどよめきました。この後、「カエル採り」「アヒル農法と狐狩り」「釣り」と続きます。

    「田植え作業」まさに「河内」を意味するハノイの農村風景そのものだと感じました。一体一体の農作業の動作が細かくコミカルで楽しい演目です。最後に水中から苗がぞろりと顔を出すので、ホール内はどよめきました。この後、「カエル採り」「アヒル農法と狐狩り」「釣り」と続きます。

  • 「凱旋帰郷」という演目。おそらく越南将軍とかの英雄の帰郷風景でしょう。フロートに乗った人形を引っ張っているだけで、演目中テクニックは最もシンプルですが、晴れやかでどことなく厳粛で、気持ちのいい出し物でした。この後「獅子舞」と続きます。

    「凱旋帰郷」という演目。おそらく越南将軍とかの英雄の帰郷風景でしょう。フロートに乗った人形を引っ張っているだけで、演目中テクニックは最もシンプルですが、晴れやかでどことなく厳粛で、気持ちのいい出し物でした。この後「獅子舞」と続きます。

  • 「不死鳥(鳳凰)の舞」です。一羽の鳳凰が二羽の夫婦になり、やがて卵をもち、ひな鳥に孵化します。私の右側に座った二人の日本の尼さんが、頭も青々と「あっらー」と笑っていました。

    「不死鳥(鳳凰)の舞」です。一羽の鳳凰が二羽の夫婦になり、やがて卵をもち、ひな鳥に孵化します。私の右側に座った二人の日本の尼さんが、頭も青々と「あっらー」と笑っていました。

  • 「レロイ王、ホアンキエム湖の伝説」湖の南の岸辺に小さな亀の塔が建っています。15世紀に王朝を創始したレロイ王が湖の亀に剣を奉納したという故事にちなんでいます。演目でも美しい亀が王の手から剣を受け取って、新王朝を祝福します。ハノイに亀のシンボルはとても多いのです。この後「水遊び」という子供の日常そのままの出し物が続きます。これも十分面白いから不思議。

    「レロイ王、ホアンキエム湖の伝説」湖の南の岸辺に小さな亀の塔が建っています。15世紀に王朝を創始したレロイ王が湖の亀に剣を奉納したという故事にちなんでいます。演目でも美しい亀が王の手から剣を受け取って、新王朝を祝福します。ハノイに亀のシンボルはとても多いのです。この後「水遊び」という子供の日常そのままの出し物が続きます。これも十分面白いから不思議。

  • 「ボートレース」4艘の舟が懸命に漕ぎます。まさにハッスルハッスルです。単純でとても面白い。この後「獅子のボール遊び」と続きます。

    「ボートレース」4艘の舟が懸命に漕ぎます。まさにハッスルハッスルです。単純でとても面白い。この後「獅子のボール遊び」と続きます。

  • 「仙女の舞」というので期待して見ましたが、クリオネよろしくケープを肩に両手をパタパタとやりながらフォーメーションを変えるだけです。この静かさ、単調さが、また、とてもいいのです。グランド・フィナーレ前を演じる、この劇団の一方の大スターたちでしょう。

    「仙女の舞」というので期待して見ましたが、クリオネよろしくケープを肩に両手をパタパタとやりながらフォーメーションを変えるだけです。この静かさ、単調さが、また、とてもいいのです。グランド・フィナーレ前を演じる、この劇団の一方の大スターたちでしょう。

  • 演じる人々です。お腹から下に渓流釣りのようなゴム長はいて登場しました。ホールからはやんやの喝采です。カラクリにはどうしても分からないのがありました。大変な芸能者です。

    演じる人々です。お腹から下に渓流釣りのようなゴム長はいて登場しました。ホールからはやんやの喝采です。カラクリにはどうしても分からないのがありました。大変な芸能者です。

  • S席の特典で貰ったテープです。ノスタルジックなお囃子を聴くのが楽しみです。いい気持ちで眠くなるのは困るので、車の中では聴かないことにします。<br />(後日談)家でかけてみたら、テープは裏も表もシーン! 無音でした。やられたっ。

    S席の特典で貰ったテープです。ノスタルジックなお囃子を聴くのが楽しみです。いい気持ちで眠くなるのは困るので、車の中では聴かないことにします。
    (後日談)家でかけてみたら、テープは裏も表もシーン! 無音でした。やられたっ。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • 背包族さん 2006/01/20 21:42:23
    チケットはどちらで?
    バッチャンの情報、ありがとうございました。
    やはり、個人で行ったほうが自由に見られてよさそうですね。
    ネックは、製造工程を見せてくれるかどうかですね。
    ま、それほどこだわりはないので、適当に行きます。
    さて、水上人形劇ですが、日本人に評判がいいようですね。
    私もぜひ見てみたいものです。
    旅行社で申し込めばいいんでしょうかね?

    フランシスコ

    フランシスコさん からの返信 2006/01/20 22:53:51
    RE: チケットはどちらで?
    バッチャンのメインストリートは、僅かな軒数の店が並んだ小さな通りです。歩いてもすぐ町はずれに出てしまいます。店の裏や上階に型どりや絵付けをしているスペースがあるところが多いです。品物を見せてもらいつつ、ことばも分からないふりして工房覗いてしまうテもあります。私なんか大体このテです。追い出されそうになったら、「ごめんなさい」というふりをします(笑)。で、100円くらいのお醤油皿でも買う、と。

    水上人形劇はどうせ観光客相手なのだろうなーと思っていたのですが、予想以上に面白かったです。沼田の土手を通ってドンホーという村に行ってきた後だったので、水と共に生きてきたベトナムの風土がよくわかりましたし、のどかな温かい気分になれました。それに音曲はどことなく日本の民謡のようなノスタルジーも感じさせてくれました。

    チケットはシンカフェでとってもらいました。最前列中央の特等席で、写真を撮るのにとても好都合でした。撮影禁止なんてことはなかったですよ。客席は階段状になっていますから、なにも最前列でなくてもいいのですが。扇子とカセットテープのおみやげ付きでしたが、カセットは旅行記に書いたように音が入っていませんでした(笑)。

    ジャパンも寒いので、ハノイに今すぐにでも飛んで行きたいで〜す。

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