2004/09/06 - 2004/09/10
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フランシスコさん
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ハノイから30キロメートルくらいのところにドンホーという村があって、何百年の昔から素朴な木版画で知られている。「紙の村」という異名さえあると言うではないか。200軒あった版画工房も、今はほとんどの家が、古い版木をプリントすることで生計を立てている。現在、彫りも、摺りもやっているのは2軒だけで、伝統的な技術の継承者も二人だけだという。これを聞いたときから、この村には必ず行ってやろうという気になった。
9時、ホテルにぴかぴかのトヨタがやってきた。ハノイ市内を案内したのと同じガイドだ。日本語はあまりうまくない。本人は「ドンホーは10度くらいも行った。つい先月も客を案内した」という。
「大水があって道路が壊れ工事中なので少し時間がかかる」と言う。普通ならハノイから1時間程度のところだが、今日はもっとかかるだろうという。
ハノイ市街から紅河にかかるチューン・ズーン橋を渡り、工業団地のようなところをすぎて田舎道へ入った。さらに両側が河や沼、湿地帯の中をまっすぐ抜ける土手の道だ。一車線半ほどしかない。もちろん舗装などはない。まわりは点在する村々を囲むように水田からバナナ園、放牧された馬や牛、鶏、アヒル、そこに老若男女が働くでなく、遊ぶでもなく点々と動いているというのどかな風景である。私自身は車窓から、普通なら見られないだろうこの田園風景を存分に楽しむことができた。水上人形劇というユニークな発想も、村々が沼沢に囲まれ、人々が半身水につかって農作業をしているこういう風土から生まれるのは当然だと、いたく感心していた。けれども、ドライバーとガイドは必死である。
雨のせいか、土手の道もひどく荒れている。でこぼこがある程度ならいいが、ぬかるみのなかに車の腹がつくのではないかというほど陥没しているところもある。ドライバーはそれでも土手のへりすれすれを通ったり、勇敢にもぬかるみにつっこんだりしながら、なんとか通り抜けていく。ぴかぴかのトヨタも泥だらけ、窓まで泥が飛んでくる始末。私自身でもこんな道は通らない。まして、車が高価な財産だし、メシの種でもあるベトナムでは身を切られる思いがしたことだろう。
「車は会社(現地旅行社)のものか」と聞くと、「チャーターしたものだ」という。「それでは高くつくだろう」と言うと、「免許を持っていて、車を持っている人間は日本語ができない。ガイドは免許を車の免許は持っていない」という。
途中で出会う村人に、ガイドが何度も「ドンホーはどこだ」と尋ねる。めったに見ない車だから村人もビックリして、あきれ顔で「ドンホー? まだ遠い」ぐらいなことしか言わない。ガイドが「普段通らない道なもので不安になって」と言い訳する。
「観光客はドンホーへはあまり行かないのか?」と聞くと、ガイドは「行かない。ドンホー版画は人気がない」という。「不便なこともあるのか?」というと「それもある」と言う。
とにかく2時間弱、泥の土手の道を延々と走って、ようやくドンホーの一番の名人で、海外でも知られているというチェーさんの家についた。
そこで見たチェーさんの作品(400年にわたるという先祖代々のも含めて)には感銘した。中国風、ベトナム風入り交じっているが、生活や民俗、冠婚葬祭をバックにした、おそらくは定番だろう、素朴きわまりない作品の数々の絵柄は、どこか奈良絵扇子の素朴さを連想させた。
チェーさんで20代、息子で21代、孫22代、ひ孫23代の4世代で手作りする伝統のドンホー版画。これもまた、日本の「民芸」のように、現地人ではない外国人によって再評価、再認識される日が来るのだろうか。そのときに現役の創作者が皆無ということになりはしないだろうか?
こちらにも旅コンテンツあります。
http://fkoktts.hp.infoseek.co.jp
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地元の人たちの生活道路兼堤防です。ドンホーに着くまでに出会った車は3,4台だったでしょうか。
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堤防の右も左も沼沢地。馬や牛がのんびり草をはんでいます。青草はたっぷり。
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散在する村々。水は多すぎても少なすぎても大変です。ハノイ市中でも、郊外でもこんな探検隊スタイルのヘルメットは多く見かけます。昔、家にもあったなあ、カーキ色じゃなかったけれど。
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堤防には所々に消防小屋のような、水防小屋のような、倉庫のような建物が建っています。牛は肉牛です。ポークの方が高級だと思われています。
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農作業に出る村の人々。向こうに見えるのはこの辺の産物のレンガを焼く窯です。水辺に延々と立ち並んでいます。車の窓には泥はねが点々。
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途中の村。
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途中の村。裕福そうな家もあります。
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レンガの窯。製品は小舟で運び出すことが多いようです。レンガに適した赤土の産地でもあります。
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やっとドンホーに着きました。正確にはバックニン省トゥンダン県ソンホー村ドンホーといいます。ランラム・ザイ・トゥ・コン(紙の村)という異名があるそうです。2,3の屋根や壁に「ドンホーの版画」という看板が見えます。ここも沼を正面に村が広がっています。水上人形劇の世界です。手前はおとなの親指ほどの(けれど甘い)バナナ園です。
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ドンホーの街角。ここにもレンガが積まれています。
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ドンホーの町並み。9月、新学年の始まった学校帰りの子どもらも通ります。
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ドンホーの最高の職人の一人、グエン・ダン・チェさんの家。
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チェさんの名刺。
UNESCOセンター文化財遺跡修復−職人−グエン・ダン・チェ−GOLD HAND−ドンホー絵のコレクション及び保存
とあります。無形文化財としての勲章も受けているチェさんです。 -
玄関番のネコ。自分の居場所はここと決めています。
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四季図。図柄の違う四季図が何とおりもあります。チェさんが下絵を描き、息子(21代目)が彫ります。譲っていただけるとすれば一組20US$。
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息子のお嫁さんが刷りをやっています。はんこ式のやり方と、ばれんで擦るやりかたとあるようです。
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今年(2004年)は6月に、仙台の宮城教育大に招かれ、昨年は横浜に行きました。ドンホー版画の歴史や文化財としての意義について話し、作品を公開してきました。
紙に植物や鉱物(雲母・石英の微粉含む)からとったコーティングをしてから版画を摺っています。
チェさんが眺めているのは、年中行事に掲げる伝統的な図柄です。これらの版木は古いもので、200年前のもあります。
チェさんで20代400年、一家でこの村で版画に携わっています。 -
これも伝統的な図柄と版木です。版木は新たに息子(21代目)が彫ったもの。セットで10US$で譲っていただきました。
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これも四季の花鳥図です。
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佳人遊楽図です。水上人形劇の楽士が使っていたのとほとんど同じ楽器たちです。
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チェさんと息子さん。
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左がチェさんの奥さん。手漉き紙の画帳を閉じる紐を用意しています。23代目が離乳食の白がゆを食べさせてもらっています。
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孫娘(22代目)が画帳を綴じています。カメラを向けるとちょっとはにかむところが可愛い。
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フキを笠に、水牛の上で笛を吹く童子。水上人形劇でも登場しました。農耕用は水牛です。
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蛙の王様と役人かな。沼沢地といえば蛙でしょう。そういえば蛙の料理は食べ損ないました。
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やれ恐ろしや、男の浮気が元の痴話喧嘩です。紙上の木目のようなのはコーティングのあとです。
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豚は尊重されていて、彫り物(彫刻)などにも多く見かけます。多産の象徴でもあるのでしょうか。
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子どもの発育を願う紙です。これは「富貴」とありますが、よく似た図柄で「栄花」というのもあります。唐子ですね。
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