2016/05/28 - 2016/05/28
163位(同エリア801件中)
クッキーさん
信濃大町から松本に行く途中、穂高に寄り道をして大王わさび農場を訪れました。
安曇野って響きにずっと憧れていましたから、一帯を歩き回りたかったのですが、時間の制約もあり、かなわないことでした。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- タクシー
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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信濃大町を14:13発、穂高駅14:42着。
駅前の案内図です。 -
ほんの小さな木造の駅です。
構内には木のベンチも置かれ、ほっこりします。
邪魔なスーツケースはコインロッカーへ。利用料は500円でした。あんなに標高の高い黒部で300円だったのに比べて高すぎると夫は不平たらたら。 -
道祖神の石像が置かれていました。
道祖神巡りをするために来られる方もいらっしゃるそうです。 -
穂高駅前には数件のレンタサイクル店がありましたが、これを利用しようかという提案は即座に却下され、駅前に停まっていたタクシーに乗りました。
途中、運転手さんから、「わさび農場までの道は自動車でひどく混むことがあるので、もしかしたら少し手前で降りてもらうかもしれません」と言われました。事前に聞いていた事なのでレンタサイクルの方が良かったかも、と心配したのですが、幸い農場まで無事に行くことができました。 -
わさび農場の散策マップ。
「農場」と名がつくものの、こちらはいわゆる観光農園で、安曇野の自然を多くの人に体験してほしいという思いから入場は無料。
年間入場者数は、なんと約120万人だそうです。 -
散策の前に、まずはワサビソフトクリームを。
わさび農場を代表する一品らしく、多くの方が買い求めていました。
お味の方は、ほんのりワサビっぽいかな、というところ。 -
散策開始。売店を出てすぐ左手にありました。
この水車小屋を見たかったんですよ。 -
わさび田に水を汲み入れるための水車なのかと思っていたんですが、違うんですね。
すっかり風景に溶け込んでいる水車小屋なのですが・・・
映画の撮影の為にわざわざ建てられたロケ用のセットの名残りなんですって。 -
ここは、故黒澤明監督の映画「夢」の第8話の「水車のある村」の撮影が行われたロケ地であり、撮影の為に明治の頃の水車小屋を再現したそうです。
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ロケがなければなかった風景なんですね。
清流の中で水車がゆっくりと回る風景は、安曇野というか、日本の農村の原風景、トトロの世界です。 -
人気スポットだけに、ベタなアングルですが皆さんカメラに収めます。
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ここをロケ地に選び、水車小屋を配したとは、さすが世界のクロサワ・・・
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農場の脇を流れる川。
湧水からなる蓼川(たでがわ)と一般河川の万水川(よろずいがわ)は、この地点で合流してひとつの川になります。
ふたつの流れの境目が見えます。
万水川(写真右側の流れ)は水温が17度、蓼川(左側の流れ)は100%湧き水で水温は14度と、温度が異なるので、混じり合わずにしばらくこのまま流れていきます。 -
これは蓼川が冷たい分重いので起こる現象。某テレビ局の番組「な○コレ!珍百景」に申請中だそうです。
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わさび田・北畑。
澄んだ水がさらさらと流れています。 -
田の地下からは、何千とも何万ともいえる場所から日量12万トンもの水が湧き出しているのだとか。年間を通し、平均13度という北アルプスの湧水です。
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確かにわさび田をよく見てみると、あちこちの水面にポコポコと湧水から発生した泡が見られます。
12万トンという湧水量は23万人が1日に使用する量と同量だそう。 -
寒冷紗に覆われたわさび田。
わさびは直射日光に弱く、七陰三陽という日照条件が好ましいと言われていて、70〜85%程度遮光した環境を好むため、4月から9月の終わりまでこの黒い寒冷紗で覆われて育ちます。 -
冷たく清らかな北アルプスの湧き水が巡る広大な「わさび畑」の開園は大正十六年(1917年)
大王わさび農場はもともと平かった地面を掘ってできました。
現在、わさび田となっている左側の平地から土砂を掘り起こし、その土砂を積み上げて右側の堤防が完成しました。
当時は大正時代ですから、大きな機械もなくすべて人力で行ったそうで、厳冬期にも開田作業は続けられたのだそうです。 -
わさびは、安曇野のような冷たく清らかな湧水の流れる場所にしか育たない植物です。
こちらの水は軟水の弱アルカリ性で「水割りに使いたい」とか「ご飯を炊くのに」とこちらに汲み上げに訪れる人もいるほどだとか。
100ml中に含まれる細菌は水道水だと0.7mg以下ですが、ここの水はゼロ、水の色の具合は0度、濁度は0と普通の水道水(色は5度以下、濁度は2度以下)よりはるかにきれいなお水。
それなのに、このスタッフさん達は流れの小石に付いた藻を手作業でこすり落としているんですよ。少しでも藻などが付くと、流れが悪くなるからですって。
わさびを大切に育てているんですね。 -
北アルプスの雪解け水は山中で落ち葉や枯れ枝をくぐって地下にしみ込み、じっくりと養分をとり込んで、長い場合は20〜30年かかって地上に湧き出します。
ここのわさびはアルプスの森がつくる栄養で育てられているのです。 -
わさび田は、まんべんなく水が行きわたるように、畝の作り方が工夫されています。
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わさびの苗が植えられている畝の間の水流は、掛け水用と排水用に役割が分かれていて、その流れを作り出すために畝の一方は縁の小石を盛り上げ閉じ、もう一方は排水口として空けられています。これによってまんべんなく適量の水がしみこんでいく仕組み。水流は5〜6度くらいの緩やかな傾斜を人の歩くくらいのスピードで流れていきます。これが傾斜のない平地式わさび田の工夫。
仕組みを図にした解説がこちら。 -
わさびの花言葉は「幸せを運ぶ」であることから、農場内には〈幸いのかけ橋〉があります。この先がその橋だったかしら。カップルで渡ると幸せになれるというジンクスがあるそうです。
ちょうど前を歩いていたカップルの後姿と共に。 -
振り返って。
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「大王わさび農場」なんて変なネーミングはどこから?
その名は「魏石鬼八面大王(ぎしきはちめんだいおう)」の伝説から来ているのだとか。
「その昔、全国統一を目指した大和朝廷が、信濃の国を足がかりに東北侵略を進めていました。この地の住民たちは、朝廷軍に沢山の貢物(みつぎもの)や、無理難題を押し付けられて大変苦しんでいました。
安曇野の里に住んでいた魏石鬼八面大王は、そんな住民を見るに見かねてたちあがり、坂上田村麻呂の率いる軍と戦い続けましたが、ついには山鳥の尾羽で作った矢にあたり、とうとう倒れてしまいました。 -
大王があまりに強かったため、息を吹き返すことを恐れた朝廷軍は、大王の体をいくつかの場所に埋めました。
胴体が埋められたという塚が農場の中にあったことから、この地は大王農場と名づけられ、その塚は後に大王神社として祀られています。」
歴史の表舞台では征夷大将軍の称号を得ている坂上田村麻呂も、「夷」の側である地方からみると、完全にヒールになり、魏石鬼八面大王は地元のヒーローなんですね。 -
長野県はわさびの生産量が全国1位ですが、その9割を占めるのが安曇野産。
市内の穂高地区には100を超えるわさび田があるそうですが、なかでも群を抜いて大きいのが、4万5000坪(15ヘクタール)という広さ(東京ドーム11個分)を誇る大王わさび農場です。 -
大王畑。木々の向こうに延々と延びています。
一面の寒冷紗で覆われている畑は壮観。 -
この案内図に描かれたお顔は、この大王わさび農場 百年記念館の館長の濱さんという方。
故郷の松本に戻ってきて、この大王わさび農場の「生産活性化プロジェクト」に参画し、百年記念館をプロデュースすることになったそうです。
今では大王わさび農場に欠かすことのできない名物「わさびマスター」。 -
農場の一角では採れたてのわさびを丁寧に処理し、出荷しています。
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ここで栽培されるわさびは、およそ2年の歳月をかけて出荷されます。
年間生産量は130トン。この量は日本の本わさびの総生産量(1299トン)の約1割にあたりますが、なんとそのほとんどは、敷地内のレストランや売店での販売などで消費されるのだとか。 -
左は古畑。
右に見えているのはレストラン。 -
最後にわさび田を。
この後訪れた松本でも、大王わさび農場直営松本店があり、そこでも、生ワサビや加工品が買えるようでした。 -
売店は、わさび関連のお土産を買い求める人で大混雑。
わさびのキュウリ漬が美味しかったですよ。
わさびコロッケは、わさびの風味があまりしておらず、普通のコロッケという感じ。 -
タクシーに乗ろうとしたら一台も停まっておらず、乗ってきたタクシーの運転手さんの名刺をもらっていたので電話。タクシーが来るまでの短い時間ですが、百年記念館で時間をつぶそうと入ってみましたが、見応えのある展示がされており、時間が足りないくらいでした。
百年記念館の展示物集めや資料の文章書きなどはすべて館長の濱さん作だそうです。濱さんは、わさびはもちろん、植物学の知識の獲得に向けて2年間猛勉強し、また、穂高の地域の文化や大王わさび農場の歴史など掘り起こし、本物のわさびも掘り起こしながら、2015年8月の百年資料館のオープンに携わったそうです。
『わさびの栽培環境には地形や地面の状態によっていくつかパターンがあり、まずは地形から。ひとつは畳石式(たたみいし式)といって山の傾斜地を段々畑のようににして、水を上から下に流していく方式。伊豆地方のわさびはこの畳石式を採用しているのだそうです。
大王わさび農場は平地式。平坦な土地を掘り下げて、畦を作って植え付ける豊かな湧き水を使うのに適した栽培方法です。
そして畦の状態も砂と石があり、わさび田を見たときにパッと黒っぽいのが礫岩、白っぽいのが花崗岩もしくは、砂づくりということになります。』 -
『もともと梨田だったこちらの土地。2メートルも掘れば水が湧いてくる豊かで清らかな水と8つの川が注ぐ扇状地の地形がわさび作りに適している、と目をつけたのは初代の深澤勇市さん。わさびの一大産地にするために、所有者が217軒もある土地の買い上げからスタート。
次に5ヶ村240戸の農家のみなさんを動員した治水工事。工事は農閑期の冬に行わなければならないため、安曇野の厳しい寒さとの戦いでもありました。』というような開発秘話や、わさび栽培の話など興味深いものばかりでした。 -
穂高駅に戻ってきました。
正面に飾られたこの人形は、もしかしたら地元のヒーロー・魏石鬼八面大王だったのかもしれません。 -
あずさ2号と書いていないのが残念です。
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車窓から。
アルプスの山々に囲まれた街。
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