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情緒纏綿 晩秋嵯峨野紀行<前編>二尊院・祇王寺

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    旅行時期 2012/11/25 - 2012/11/25 (2012/11/28投稿

    JR東海「そうだ 京都、行こう。・・・紅葉は、旅の入口にすぎませんでした」のキャッチコピーに感化され、晩秋の風物詩 紅葉狩りに勤しんでまいりました。今回のテーマは、少々ベタではありますが、『JR東海 京都観光キャンペーン』を辿る旅です。まず、2012年キャンペーンポスターの秋景色を彩る二尊院。そして1994年秋と2010年初夏を幻想的に魅了した祇王寺。次に、2007年秋と2011年初夏に胸躍らせた常寂光寺を訪ねてみました。いずれも嵯峨野に佇む古刹ですので、のんびりと過ぎ行く秋を愛でたいところです。しかし現実は、帰途の混雑が脳裏に浮かび、ツアー旅行のように時間に追われる始末。それでも晩秋の一日を満喫することができました。何と言っても、四季に一番うるさい京都の秋の代名詞を冠するスポットですので、午後2時頃には、長辻通(渡月橋〜野宮)の歩行者天国は紙上で拝見した大阪マラソン並みの人で埋め尽くされていました。
    <散策コース>
    嵐山 渡月橋---野宮神社---二尊院---祇王寺---常寂光寺---野宮神社---嵯峨野 竹林の道---渡月橋
    <前編>は、二尊院と祇王寺を紹介いたします。
    二尊院へは渡月橋から約2km。普通に歩けば20分強の距離ですが、牛歩で進む行楽シーズンであればもう少し余裕を見てください。二尊院へは午前10時前に到着しましたが、道中はさほど込み合っていませんでした。野宮神社からは落柿舎経由の近道を利用しました。

    写真 43枚

    交通手段 : 
    • 現地移動 :  私鉄
    エリア:
    京都 | 嵐山・嵯峨野・太秦・桂
    エリアの満足度:
    評価なし
    • 嵐山 渡月橋
      しっとりとした秋色に彩られた岩田山、その奥の嵐山が、青空に映えます。
      時刻は9時半を回ったところです。この時間帯なら橋の途中で立ち止まり、このように写真を撮ることも可能です。橋の歩道は狭く、一方通行(左側通行)になっていますので、すぐに行列ができて牛歩になってしまいます。

      今回の旅路のマップは次のサイトを参照ください。Googleマップは使い難いという方にはうってつけです。和菓子屋 甘春堂さんのマップですが、優れものです。
      http://www.kanshundo.co.jp/aboutus/shop/sagano/illustmap.htm

    • 天龍寺 妙智院 西山艸堂
      大勢の観光客で賑わう嵐山のメインストリート 長辻通に面した天龍寺脇の嵯峨豆腐料理 西山艸堂(せいざんそうどう)の入口。
      天龍寺の塔頭の一つ「妙智院」の中にあり、森嘉の嵯峨豆腐が静かで趣のあるお寺の境内でいただけます。西山艸堂とは妙智院の別号でもあり、「西の山の草深い所に立つお堂」という意味だそうです。戦後早々の創業で嵯峨で一番古い湯豆腐のお店です。真紅に染まった紅葉がひときわ目を惹きつけます。

    • 長辻通 道祖神
      天龍寺側の路傍に並んだ道祖神です。どれも愛嬌のある表情で迎えてくれ、和みます。
      道祖神とは、集落の境や村の中心、 村内と村外の境界や道の辻、三叉路などに主に石碑や石像の形態で祀られる神です。松尾芭蕉の「奥の細道」では、旅に誘う神様として冒頭に登場します。

    • 野宮神社
      長辻通を左に折れると野宮神社があります。ここへは帰途で立ち寄ることにし、二尊院への道を急ぎます。
      縁結びの神で知られ、普段から参拝者が絶えない神社ですが、まだ参拝の列をなす所までは至っていません。帰途ではどうなっていることやら。お楽しみに!

    • 落柿舎
      のどかな田園風景が広がる嵯峨野にポツンと佇む、ひなびた藁葺屋根がよくなじむ素朴な草庵。往時の風情を今に偲ばせ、なんとも心が安らぎます。
      芭蕉十哲の一人 向井去来が1686年に結んだ隠棲所。往時、庵の周囲に40本の柿の木があり、商人が立木ごと柿を買い取ろうとしたところ、夜中に風が吹いて全ての実が落ちて破談になったことが由来で「落柿舎」と命名したそうです。去来は「柿主や こずえはちかき あらし山」と詠みました。訪れるなら柿の実る頃が一番。あちらこちらに実った柿に、去来の思いを馳せてみてはいかがでしょう。
      1691年(元禄4年)春、この庵に松尾芭蕉が滞在して嵯峨日記を著しています。野沢凡兆、その妻の羽紅、去来が訪問し、一つの蚊帳で5人が一緒に寝たりしたそうです。 現在の庵は俳人 井上重厚によって再建されたもので、場所も建物も芭蕉の時代のそれとは異なっているそうです。のんびりと物思いに耽るのにもってこいの庵ですが、今回の目的から外れるので、後ろ髪を引かれる思いでそそくさと道を急ぎます。

    • 二尊院 総門
      渡月橋から20分強で二尊院へ到着。総門前にはすでに20mほどの行列ができていました。

      「百人一首」で名高い小倉山の東麓に位置し、釈迦如来と阿弥陀如来の二尊を本尊とするため、二尊院と呼ばれていますが、正式名は「小倉山二尊教院華台寺」といい、 明治以降は比叡山延暦寺に属する天台宗のお寺となっています。開創は承和年間(834〜48)で、嵯峨天皇の勅願によって慈覚大師が開山しました。その後荒廃しましたが、法然上人らによって再興されています。また皇室や秀吉、家康など時の権力者の庇護を受け、大いに栄えたお寺です。応仁の乱によって諸堂が全焼しましたが、本堂・唐門のみ約30年後に再建されました。嵯峨三名跡(大覚寺、天龍寺)のひとつ。

      総門は、伏見桃山城にあった薬医門を江戸時代の豪商・角倉了以が1613年に寄進・移築したものだそうで、京都市指定文化財に登録されています。


    • 二尊院 紅葉の馬場
      総門をくぐると石を敷き詰めた「紅葉の馬場」と呼ばれる参道が境内へと導いてくれます。参道の両脇には色づいた楓の木が空間を埋め尽くすように立ち並び、燃え盛る炎のように迫り来る紅葉の素晴らしさは圧巻です。

      JR東海 京都観光キャンペーンのポスターはこちらです。
      http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/kyoto/autumn_2012_01.html

    • 二尊院 紅葉の馬場
      「もみじ」と言うと真紅に染め上げた紅葉を思い浮かべますが、そこまでは熟していない朱色の異空間が、錦絵の世界を演出していました。これも一興です。

      「もみじ」は今日では当たり前のように「紅葉」と綴りますが、奈良時代には「大君の御笠の山の黄葉は今日のしぐれに散りか過ぎなむ」(大伴家持)とあるように、万葉集に80首以上も詠まれる「もみじ」は一首を除き「黄葉」と綴ったそうです。これは、中国の陰陽五行説で方角を色で表す際、青は東、黒は北、白は西、赤は南と色分けされ、黄は皇帝が居る中央の「最も高貴な色」として扱われたためと言われています。それが平安時代になると「紅葉」と綴る方が圧倒的に多くなったのは、日本が中国文化の影響から離れ、感じたままを称える独自の文化が芽生えてきたことの象徴だと説かれています。

    • 二尊院 築地塀と紅葉
      参道の緩い傾斜を登りきった右手に聳える楓の老木です。

      「もみじ」の語源は「草木の葉が赤や黄色くなる」という意味の動詞「もみず」に由来し、その連用形「もみじ」が葉色の変化する様や紅葉そのものを指す名詞へと変化したのです。「もみず」の語源は、染め物の「揉み出づ」。紅花染めにはベニバナの花びらを用います。花びらには紅色と黄色の2種類の色素が含まれ、真水につけて揉むとまず水溶性の黄色の色素ができます。次に、アルカリ性の灰汁に浸して揉むと、鮮やかな紅色を揉み出せるそうです。紅花染めに由来することから、「赤葉」ではなく「紅葉」が定着したのは頷けます。

    • 二尊院 紅葉の馬場
      築地塀から総門を振り返るとこんな景観が広がっています。

      「楓(カエデ)」と「もみじ」って何が違うのでしょうか?言葉の成立ち上、葉が赤や黄色に変わる草木は全て「もみじ」で、「カエデ」はその中の代表的な植物のひとつ…が解答例となります。見事な紅葉を見て、「きれいなもみじだなぁ〜」と無意識に洩れる言葉。この時、あれはブナ、これはカエデなんて気にしていないはずです。尚、「カエデ」の語源は、葉の形をカエルの手のひらと見立て、「かえるて」がつづまってできたというのが定説だそうです。

    • 二尊院 築地塀の参道
      木漏れ日を受けた紅葉の葉が輝いています。こうした光景を目の当たりにすると言葉を失ってしまいます。

      柿紅葉、白樺紅葉、雑木紅葉など多様な植物名を冠した言葉があり、これらからも「もみじ」が草木の種類を特定していないことが窺えます。神宮外苑の並木道はこれからが「銀杏黄葉」の季節。尾瀬ケ原は湿原一帯の植物が鮮やかな「草紅葉」になることで有名です。
      一方、古来より親しまれる言葉だけあり、食べ物にも用いられます。紅葉おろしや紅葉和え。もみじ鍋は鹿の肉。説は2つあり、古今集にある猿丸太夫の歌「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき」からの引用とする説と花札「鹿に紅葉」の絵柄から取ったという説があるそうです。

    • 二尊院 黒門
      勅使門への途中にある小さな門です。黄色に色づいた紅葉が鮮やかできれいです。

    • 二尊院 勅使門前の紅葉
      勅使門の前に広がる紅葉の大海原です。これも筆舌に尽くし難いものがあります。

      間接的に「もみじ」を連想させる食べ物は、竜田揚げ。「竜田」は、紅葉の名所 奈良の竜田川に因むそうです。小倉百人一首には、竜田川の紅葉を詠んだ和歌が2首あり、その1つが「ちはやぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは」(在原業平)。川面を真っ赤に染める紅葉の美しさは神話の昔にも聞いたことがないと称えた歌です。竜田揚げは、しょうゆに染まった揚げ物の褐色と、表面にまぶした片栗粉の白色を、川面の紅葉と白波のコントラストに擬えているのだそうです。紅葉狩りのお弁当に入れ、二重に風流を味わうのは如何でしょうか。

    • 二尊院 勅使門
      本堂と共に三条西実隆によって1521年に再建された勅使門(唐門)。通常、勅使門を潜れるのは勅使参向の時に限られますが、ここが境内への正式な入口になっています。小倉山の扁額は後柏原天皇の宸筆。

    • 二尊院 勅使門
      白壁の本堂築地塀に設けられた勅使門を潜って中に入ると本堂が佇みます。本堂手前にある前庭は龍神遊行の庭園とも呼ばれ、昔龍女が遊んでいたが、正信上人によって解脱昇天したという伝説を基に造られた庭だそうです。本堂も京都御所の紫宸殿を基に設計されたとも言われ、外陣廊下は鴬張りになっており、歩くとキュッ、キュッと音がするそうです。生憎、この時期は参拝者の数が半端でないので、靴を履いたまま参拝できるように廊下にはシートが被せられ、床音に興じることは叶いませんでした。

    • 二尊院 勅使門
      定番の額縁効果を狙った一枚です。勅旨門前に広がる紅葉の大海原の表情がうまく伝わっているでしょうか?

    • 二尊院 本堂
      本堂は、入母屋造、桧皮葺の堂々たる方丈建築(重文)。後奈良天皇の勅額「二尊院」を掲げ、鎌倉時代に作られた二本尊の木造立像・發遣(ほっけん)の釈迦如来、来迎(らいごう)の阿弥陀如来を安置しています。

      本堂にかかる二尊院の扁額は、後奈良天皇の宸筆。

    • 二尊院 本堂
      本堂のご本尊の釈迦如来(右)と阿弥陀如来(左)。
      釈迦如来は、人が誕生した時に人生の旅路に送り出す「発遣の釈迦」、また反対に阿弥陀如来は、人がその寿命を全うして閉じる時に極楽浄土より迎えてくださる「来迎の阿弥陀」と呼ばれるそうです。つまり釈迦如来と阿弥陀如来は表裏一体、それぞれの役割を担っておられます。この二体は、有名な快慶によって鎌倉時代に彫られた仏像と伝えられ、重要文化財に指定されています。

      この紀行を読まれた方々にもご利益がありますように…。

    • 二尊院 寂光園
      本堂南にある石庭は「寂光園」と呼ばれ、極楽浄土の世界を現したとされています。そういえば荒廃していた二尊院を再興した法然上人は浄土宗ですね。

      本堂の縁側に腰を下ろすと、時折、心地よい鹿威しが響き渡り、心安らぐひとときを味わえます。

    • 二尊院 茶室「御園亭」
      庭園の向かいには茶室「御園亭」があり、抹茶をいただきながら紅葉を仰いで愛でる趣向になっています。茶室は後水尾天皇の第五皇女、賀子内親王の御化粧間であったものを元禄10年に下賜されて茶室に改造されたもので、狩野永徳筆の腰張りがあります。
      「寂光園」で探しても見つけられなかった鹿威しは、この露地庭園に設けられていました。

    • 二尊院 本堂裏
      本堂を一周する回廊巡りでは、裏庭に当たる小倉山の山腹にも錦絵巻のような絶景が広がります。

    • 二尊院 鐘楼と角倉了以の銅像
      戦国期の京都の豪商と言われる角倉了以は、「水運の父」とも呼ばれ、木屋町を流れる高瀬川を作った人。質屋経営者でもあり医師でもあった、嵯峨出身の人物です。 二尊院の総門は、この了以によって伏見城の「薬医門」が移築されたものです。
      朱印船貿易で莫大な富を得て徳川家康に天下が移ると、京都の嵯峨を流れる保津川を使い、大堰川(桂川)高瀬川を私財を投じて開削し、搬送船を通しました。
      二尊院には了以の墓所もあります。


    • 二尊院 鐘楼
      法然上人御廟への登り口にある「しあわせの鐘」は、参拝者が自由に撞くことができます。鐘楼は安土・桃山から江戸時代の慶長年間(1569−1615)に建立され、梵鐘は1604年に鋳造されたものを1992年に再鋳造したものです。
      一回目は自分が生かされている幸せを祈願。二回目は生きとし生きるもの全てへの感謝の気持ち。三回目は世界人類の幸せを祈念。三つセットで撞き、それぞれに祈願するのだそうです。
      確かに心が洗われるような梵鐘の音でした。

    • 二尊院 弁財天堂
      弁財天堂の屋根に佇む鳳凰と赤く染まった紅葉です。

    • 二尊院 法然上人御廟
      急峻な階段を息を切らして登っていきます。
      階段を途中まで登った左手には、小倉百人一首が編まれた「時雨亭」跡があります。現在は石組みしか遺されていませんが、ここであの百人一首が選ばれたと聞くと何か感じ入るものがあります。しかし、山荘「時雨亭」の場所には諸説あります。常寂光寺、厭離庵、そしてここの二尊院です。どれも急峻な場所に存在し、牛車で移動してた往時を鑑みると、所在の必然性に欠けると思うのは当方だけではないように思います。

    • 二尊院 小倉餡発祥の地の碑 
      日本で初めて小豆と砂糖で餡が炊かれたのは、平安京が出来て間もなくの820年。当時、この辺りの小倉の里に和三郎という菓子職人がおり、亀の子せんべいを作っていたそうです。和三郎は、809年に空海が中国から持ち帰った小豆の種子を栽培し、それに御所から下賜された砂糖を加え、煮つめて餡を作り、これを毎年御所に献上ました。これが、小倉餡発祥の由来だそうです。

    • 二尊院 白壁の本堂築地塀と枝垂れ紅葉
      築地塀の白壁と枝垂れ紅葉の鮮やかなコントラストが人の目を惹きつけます。

    • 二尊院
      逆光に輝く色とりどりの紅葉のグラデーション。
      カエデの老木の幹と築地塀のシルエットがくっきり浮かび、とてもきれいです。

    • 二尊院
      築地塀から入道雲のように湧き立つ紅葉。お寺が燃えている!!

    • 二尊院 総門
      総門を入ってすぐの所に茶店が出ていました。
      紅葉の馬場を見ながらお茶をするのも乙ですが、日陰ですので防寒対策は怠らないようになさってください。

    • 祇王寺
      二尊院から徒歩5分程度の距離にあります。表門は閉め切られており、奥まった所に通用門があります。
      祇王の悲恋話もさることながら、祇王寺を再建された高岡智照尼(高岡たつ子)の波乱万丈の人生も語り草です。高岡智照尼は、身売りされて12歳で大阪宗衛門町で花柳界に入り、その後、東京一の芸奴となり、時の西園寺公望や桂太郎が贔屓にする売れっ子にのしあがります。その後、恋愛関係のもつれから小指を剃刀で切り落とし、米人女性との同性愛で渡米するも破局。帰国後、女優として活躍するも、夫のDVから逃れるため一念発起して奈良で出家。39歳の時、荒れ寺同様の祇王寺の庵主となり、このような素晴らしい紅葉の名所として復活させたのです。その波乱万丈の人生は平成6年98歳で幕を閉じ、瀬戸内寂聴 著「女徳」のモデルとなっています。

      『生もよし 死もよし 若葉更によし』<高岡智照尼>



    • 祇王寺 本堂
      竹林とカエデの木々の間に息を潜めるように佇むどこか女性的な草庵(本堂)は、訪れる人をいやがうえにも平家物語の世界へと誘います。祇王寺は、大覚寺塔頭の尼寺で、法然上人の弟子念仏房良鎮が創建した往生院の跡に建てられました。往生院は明治の廃仏毀釈により廃寺になりましたが、1895年に白拍子(しらびょうし)の祇王(ぎおう)の悲恋を知った第三代京都府知事 北垣國道が、祇王を偲び嵯峨の別荘にあった茶室を寄進し、これを本堂にして冨岡鉄斎らにより現在の祇王寺が建立されました。本堂には、本尊大日如来、祇王、母の刀自(とじ)、妹の祇女(ぎにょ)、仏御前、平清盛の木像が安置されています。

    • 祇王寺 庭園
      苔に覆われた庭に音もなく降り積もる散り紅葉を見つめていると、ここで残りの半生を尼として過ごした女性たちの心中はいかばかりだったのか偲ばれます。
      そして、自分の人生を祇王たちにオーバーラップさせてお寺を復興させた住職 高岡智照尼の心中を知ればこそ、また感慨深いものが込み上げてきます。

      JR東海 京都観光キャンペーンのポスターはこちらです。
      http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/kyoto/autumn_1994_01.html
      http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/kyoto/summer_2010_01.html

    • 祇王寺 表門
      以前はここが正式な入り口だったそうですが、今は閉ざされています。派手さはありませんが、色とりどりの楚々とした嵯峨菊が門の周りに飾られています。嵯峨菊の特徴は、細長い花弁の内側が巻く様に見え、毛筆の穂のように直立していることです。嵯峨菊は、嵯峨天皇御愛の菊として嵯峨御所(現大覚寺)の大沢池の島に植えられたのが始まりの古代菊の1つです。
      菊は、日本には奈良時代に移入し、江戸期に改良されました。梅、竹、蘭とともに4君子の一つとされます。

    • 祇王寺 紅葉に抱かれる本堂
      写真右下に、お寺のマスコットの白猫「まろみ」ちゃんが水瓶から水を飲んでいる所が写っています。(写真をクリックすると拡大できます。)
      「平家物語 巻の一」祇王、仏御前の物語。
      平氏全盛の頃、都に使えた白拍子(歌舞を歌い踊る遊女)の名手に祗王、祗女という姉妹がいました。祗王は平清盛の寵愛を受けていましたが、ある日、唄の上手な加賀の国の仏御前が現われ、清盛は門戸を開けます。その美しい声、妖艶な舞に、清盛の心はいつしか仏御前に移ってしまいます。No.1の座を奪われた祇王は、敗北感を征服しようとはせず、敗北をバネにして浄土に行きたいと思うようになります。もっとも、平家物語の登場人物は、ほとんどが浄土往生を口にしています。少し大袈裟に表現すると、現生は浄土に往生するための前提に過ぎないという考え方です。
      ある日、仏御前が体調を崩した折、清盛は祗王に仏御前の前で舞って慰めるよう命じます。芸の上では、敗北は認めるが、これ以上の屈辱はないと思った祇王は、死ぬ決意を固めます。しかし、母 刀自に浄土で地獄に堕ちると諭されて断念し、舞を披露します。 世の無情を知らされた祗王は、妹の祗女と母の3人で往生院(現 祗王寺)で隠棲し、念仏三昧の日々を送りました。この時、祗王21歳、祗女19歳、母・刀自45歳。 その後、祗王の不幸を思うにつれ、世の無常の思いに憑りつかれ、清盛に捨てられた17歳の仏御前も頭を丸めて祗王の庵を訪ねて尼となったそうです。
      平家物語では清盛については良く書かれていませんが、実はそうではなく、権力者は大衆芸能を保護する義務があり、芸能史の必然に立ってのNo.1への寵愛だったのです。これぞ、ノブレス・オブリージュの典型です。どこかの市長のように、古典芸能を見下すような心の狭い了見では、人々が納得するような治世を行うのは難しいということを歴史が物語っています。

    • 祇王寺 庭園
      晩秋の木漏れ日が瑞々しい緑に彩られた苔の絨毯に降り注がれ、地形の微妙なアンジュレーションがもたらす色合いの絶妙さに息を呑みます。そこに、秋の深まりと共にひとひらづつ音も立てずに散り始めた色鮮やかな落ち葉が重なり合い、天然グラデーションを演出する散り紅葉も圧巻です。
      嵯峨野では最も遅いと言われる祇王寺の紅葉ですが、人を魅了してやまないのは、苔生した庭とのコラボレーションではないかと思うのです。

    • 祇王寺 庭園
      双葉葵が植えられていました。
      ウマノスズクサ科フタバアオイ属の多年草。葉は帯紫色の長い柄につき、茎の先端に葉を 2 枚対生するのでこの名前になっています。葉の形は、ほぼ心臓形。五月頃、葉間に淡紅紫色の花を一個つけます。京都賀茂神社の神紋とされ、徳川家・松平家もこれを用いました。別名 賀茂葵とも呼ばれますが、これは葵祭の神事に用いられるからだそうです。


    • 祇王寺 竹林
      境内の北側には立派な竹林があり、小道には小柴垣が立てられています。こぢんまりした境内ですが、苔生した庭園あり、紅葉あり、竹林ありと趣向に富み、「わびさび」が凝縮されています。それゆえに、四季それぞれの趣きがあるのだと思います。
      智照尼の努力に頭が下がる思いです。

    • 祇王寺 吉野窓
      「吉野窓」と呼ばれる草庵の庵内の控えの間にある円窓は、光の入り具合によって影が虹色に映ることから虹の窓とも称され、その美しい情景が祇王寺の見所となっています。
      この日は、誰が開けたのか障子が全開で、趣を楽しむことは叶いませんでした。

    • 祇王寺 吉野窓
      吉野窓を外側から写したものです。

    • 祇王寺 庭園
      庭園の一角に手水舎のようなものがありました。
      苔生した石灯籠と素朴な手水舎が、味わいを深めてくれます。

      門の前ではバスツアーの団体さんが入山の時間待ちをされていました。狭い境内ですので、一挙に大勢が押し寄せては興醒めになると思います。旅行会社の企画にも嵯峨野での自由時間を設定するなど、もう少し柔軟性を持たせ、入山人数をばらけさせるなどの配慮があればなぁと思うのは当方だけではないように思います。常寂光寺、二尊院、祇王寺ならほぼ一本道ですので、迷子になることはないのでは?

    • 祇園寺 庭園
      庭園の脇にはツノナスが植えられていました。ブラジル原産のナス科。果実が黄色で、キツネの顔に似ていることからフォックスフェイスやキツネナス(狐茄子)と呼ばれます。また、カナリアがとまっているように見えることから、カナリアナス(金糸雀茄子)とも呼ばれます。
      京都ではポピュラーなもので、ハロウィンのペインティングや生け花にも使われています。

      赤い果実は、マムシグサです。サトイモ科テンナンショウ属の多年草。赤い実は、薄暗いところにあると、ドキッとして妖しい感じもします。
      名の由来は、偽茎の模様が「マムシ」のように見えることから来ているそうです。春先のマムシグサの写真は次を参照ください。
      http://4travel.jp/traveler/montsaintmichel/pict/25196738/

    • 祇王寺 宝篋印塔と五輪塔
      裏庭には、祇王、祇女、刀自が合葬されたと記される宝篋印塔があり、その右脇には清盛塚と呼ばれる五輪塔が並びます。いずれも鎌倉時代の作。平家物語の記述では仏御前もこの墓に入っているはずなのですが、その名は記されていません。 実は、仏御前が祇王寺を訪ねた時、既に清盛の子を身籠っていました。ここで産めば祇王達に面目が立たない、清盛の心理的呪縛から解放されない。そんな思いから翌春、身重の体でありながら生まれ故郷へ向います。途中、白山麓の吉野谷村の木滑で出産しますが、赤子は無理がたたり数日後に亡くなります。満身創痍の体で故郷原町に着いた仏御前は、茶屋を開いて生計を立てます。歌舞が巧く美人であったため大繁盛します。ところが、村の風紀が乱れるという反発を買い、阿稜山中に呼び出され村の女性に刺殺されたそうです。享年22歳。こうした「愛別離苦」、「会者定離」、「盛者必衰」に思いを馳せながら、嵯峨野の静寂に一時の安らぎ覚えるのは不思議な感覚です。

      後編は、常寂光寺と野宮神社編を紹介いたします。

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