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四日目(仙台若林区~名取市~福島県南相馬市~飯館村視察 栃木県鬼怒川温泉)<br /> <br /> ホテルは被災した若林区に近い。フロントの女性に尋ねると、ギリギリ津波の被害から免れたという。彼女は若林区と聞いて顔を曇らせながら答えてくれた。ホテルをスタートして若林区等、宮城県沿岸部の幹線道路を南下、福島県の行ける場所の果てを目指す。震災当日、若林区を襲った津波については、NHKのヘリからのライブ映像、広々とした仙台平野の田園地帯を飲み込むように進む津波と逃げまどう車のそれが今も記憶に生々しい。<br /> <br /> 緯度の高い地域だが、そろそろ田植えの時期だろう。ところがほとんどの田は手がつけられておらず、雨水がたまり荒れたままである。塩害のため放置されているようだ(5/18のNHKの地方ニュースで若林区の一部で二年ぶりの田植えが始まったとも報じられたが)。荒れた田と背景で頂に雪を被った蔵王の山々の美しい姿との対照が痛々しい(写真1 海岸公園近辺)。名取市では道路がやや内陸を通る。少し土地の海抜が高いのか新築している家が割りとある。左手には仙台空港だ。岩沼市、亘理町、山元町と続き、その後福島県入りして新地町である。どこにでも見られる田園風景と瓦礫や荒廃した田畑の風景が何度も繰り返し現れる。相馬市に入ると共同火力発電所が姿を見せる。またその横には瓦礫の仮置き場か、あるいは分別場と思われるスペースも(写真2)。ただしここ、分別受け入れがいつまでと期限が付けられている。福島県の瓦礫処分は相当に困っているのだろうと推察出来る。<br /> <br /> 南相馬市では少し海岸端の道に侵入してみる。そこは未だ、手が付けられていない荒れたままの場所である。雨水が溜まったままの田畑らしき地域を横目に、石や枯れ木が転がったままの道路をゆっくりと進むとやがて行き止まり。海の方角を眺めるも、荒れ放題の沼地だけで海は見えない。ポンプ場がある小屋で何とかUターンする(写真3)。今度は被災したと思われる集落に向けて方向転換するも、地元民のパトロールに止められた。「ボランティアの後、南下して視察中」と説明すると、「それは御苦労さま」と労われるも、「ここらは全く手つかずだから入っちゃ駄目」と注意される。<br /> <br /> めげずに更に南下。とうとう検問が待ち受けていた。ここから先は浪江町、住民等一部をのぞき一般の人は通行できない。通行許可証と免許証の提示を求められるが当然許可証はない。許可証がわりにと、ここでも「ボランティアの後…」と理由を説明したが愛想の一つもなく、「先へは行けません。制限区域近くは検問ばかりです」と言われる。せっかくなので「写真、一枚良いですか?」と言うと「私は…ちょっと…むむむ」と身構えられたものの、「いや、この辺り全体ですから」と撮らせてもらう(写真4)。昼食を南相馬(写真5 被災したままの家屋が多い)の「道の駅」で取り、完全に国の支援から取り残された震災初期に、いち早くツィッターやNHK報道を通じてその窮状を発信して市民を救い「世界のリーダー100人」に選ばれた市長がいるはずの市役所を横目に通り過ごしながら、一路、内陸の東北自動車道を目指す。<br /> <br /> 原発事故で多くの村民が避難を余儀なくされた飯館村を通る。内陸で津波の影響がないこの村の風景が静かに原発の恐ろしさを物語る。通過するのに東西20kmの距離を要したろうか。その間、道路沿いの民家で人が生活する気配を一度も感じる事がない。数は少ないけれど店舗は全てシャッターが降ろされている。一度も住民を見かけないのだ。見かけるのは通過する車のみである。本当に背筋が冷たくなる思いだ。宮城とは全く異なる。原発事故の影響がある福島では、全くと言って良いほどに復興は進んでいないわけだ。本当に酷いものである。もう止めよう、そんな思いがこみ上げる。少しくらい得をするからって原発を利用するのは馬鹿げている。何が原子力の平和利用だ、糞くらえ。パンドラの箱は決して開けてはならない。人知を超えた、踏み込んではならない領域に、人は侵入してはならないのだ。<br /> <br /> さようなら飯舘村、そして福島県。帰ったら、誠に小さく、かつ誠に微力ながら、ここで私たちが見て知って感じた全ての事を、「東北見聞録」を通じて出来る限りの人に対して発信したい。快晴の空に美しい磐梯山が現れ、微笑みながら私達の車を見送ってくれた。<br />

東北見聞録 ~ボランティア、視察、観光の旅~その4

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2012/05/10 - 2012/05/14

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つう

つうさん

四日目(仙台若林区~名取市~福島県南相馬市~飯館村視察 栃木県鬼怒川温泉)

 ホテルは被災した若林区に近い。フロントの女性に尋ねると、ギリギリ津波の被害から免れたという。彼女は若林区と聞いて顔を曇らせながら答えてくれた。ホテルをスタートして若林区等、宮城県沿岸部の幹線道路を南下、福島県の行ける場所の果てを目指す。震災当日、若林区を襲った津波については、NHKのヘリからのライブ映像、広々とした仙台平野の田園地帯を飲み込むように進む津波と逃げまどう車のそれが今も記憶に生々しい。

 緯度の高い地域だが、そろそろ田植えの時期だろう。ところがほとんどの田は手がつけられておらず、雨水がたまり荒れたままである。塩害のため放置されているようだ(5/18のNHKの地方ニュースで若林区の一部で二年ぶりの田植えが始まったとも報じられたが)。荒れた田と背景で頂に雪を被った蔵王の山々の美しい姿との対照が痛々しい(写真1 海岸公園近辺)。名取市では道路がやや内陸を通る。少し土地の海抜が高いのか新築している家が割りとある。左手には仙台空港だ。岩沼市、亘理町、山元町と続き、その後福島県入りして新地町である。どこにでも見られる田園風景と瓦礫や荒廃した田畑の風景が何度も繰り返し現れる。相馬市に入ると共同火力発電所が姿を見せる。またその横には瓦礫の仮置き場か、あるいは分別場と思われるスペースも(写真2)。ただしここ、分別受け入れがいつまでと期限が付けられている。福島県の瓦礫処分は相当に困っているのだろうと推察出来る。

 南相馬市では少し海岸端の道に侵入してみる。そこは未だ、手が付けられていない荒れたままの場所である。雨水が溜まったままの田畑らしき地域を横目に、石や枯れ木が転がったままの道路をゆっくりと進むとやがて行き止まり。海の方角を眺めるも、荒れ放題の沼地だけで海は見えない。ポンプ場がある小屋で何とかUターンする(写真3)。今度は被災したと思われる集落に向けて方向転換するも、地元民のパトロールに止められた。「ボランティアの後、南下して視察中」と説明すると、「それは御苦労さま」と労われるも、「ここらは全く手つかずだから入っちゃ駄目」と注意される。

 めげずに更に南下。とうとう検問が待ち受けていた。ここから先は浪江町、住民等一部をのぞき一般の人は通行できない。通行許可証と免許証の提示を求められるが当然許可証はない。許可証がわりにと、ここでも「ボランティアの後…」と理由を説明したが愛想の一つもなく、「先へは行けません。制限区域近くは検問ばかりです」と言われる。せっかくなので「写真、一枚良いですか?」と言うと「私は…ちょっと…むむむ」と身構えられたものの、「いや、この辺り全体ですから」と撮らせてもらう(写真4)。昼食を南相馬(写真5 被災したままの家屋が多い)の「道の駅」で取り、完全に国の支援から取り残された震災初期に、いち早くツィッターやNHK報道を通じてその窮状を発信して市民を救い「世界のリーダー100人」に選ばれた市長がいるはずの市役所を横目に通り過ごしながら、一路、内陸の東北自動車道を目指す。

 原発事故で多くの村民が避難を余儀なくされた飯館村を通る。内陸で津波の影響がないこの村の風景が静かに原発の恐ろしさを物語る。通過するのに東西20kmの距離を要したろうか。その間、道路沿いの民家で人が生活する気配を一度も感じる事がない。数は少ないけれど店舗は全てシャッターが降ろされている。一度も住民を見かけないのだ。見かけるのは通過する車のみである。本当に背筋が冷たくなる思いだ。宮城とは全く異なる。原発事故の影響がある福島では、全くと言って良いほどに復興は進んでいないわけだ。本当に酷いものである。もう止めよう、そんな思いがこみ上げる。少しくらい得をするからって原発を利用するのは馬鹿げている。何が原子力の平和利用だ、糞くらえ。パンドラの箱は決して開けてはならない。人知を超えた、踏み込んではならない領域に、人は侵入してはならないのだ。

 さようなら飯舘村、そして福島県。帰ったら、誠に小さく、かつ誠に微力ながら、ここで私たちが見て知って感じた全ての事を、「東北見聞録」を通じて出来る限りの人に対して発信したい。快晴の空に美しい磐梯山が現れ、微笑みながら私達の車を見送ってくれた。

同行者
友人
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
レンタカー JALグループ
旅行の手配内容
個別手配

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