2025/01/18 - 2025/01/18
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morisukeさん
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オッサンネコです。
個人の落書きが観光地に化けた奇跡のアート村。
それが、台中にある虹彩眷村と呼ばれる場所。
ひとりの老人から始まった小さな極彩色の世界は、
やがて多くの人の共感を呼び、
取り壊し寸前だった眷村を救う存在にまでなりました。
ところが近年、この虹彩眷村が
政治的なゴタゴタに巻き込まれたという話を耳にします。
なにやら壁画が塗りつぶされたとか、
すっかり様変わりしてしまったとか…。
なんとも穏やかではない噂話が流れるシマツ。
奇しくも虹彩眷村は、高雄から台北への帰り道にある場所。
ここまで条件が揃ってしまった以上は…
行かねばならぬでしょう。
果たして、虹の村に訪れた劇的な変化とは如何なるものなのか?
その時の記録です。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 タクシー 徒歩 飛行機
-
どうもどうも、オッサンネコことモリネコです。
本日は帰国日。
高雄から台北(桃園)に出て、帰路につくだけの行程ですが、
移動日もせっかくだからハッスルしちゃいましょう。
本日はまず朝イチで果貿社區を見に行き、
その後、台北に向かう途中で台中に途中下車して、
台湾屈指のアートスポット虹彩眷村に寄り道する予定です。
それではハリキッテ行ってみましょう ( ゚∀゚)ノ -
果貿社區の最寄り駅は、MRTの巨蛋駅。
暑さが残る朝の路地を颯爽と駆け足で進みます♪
巨蛋…
直訳すると大きな卵ですが、別に卵があるわけではありません。
中国圏ではドームの事を比喩的に「巨蛋」と呼ぶのが一般的であり、
駅近の高雄アリーナが駅名の由来になってます ( ゚∀゚)ノ -
巨蛋駅から早足で歩くこと20分。
幹線道路から巨大な集合住宅が見えてきましたぞ。
チクワを半分に切ったような半円形の異質な集合住宅。
あれぞ、わたすが目指している「果貿社區」になります。
あっ 誤解ないように説明しておきますと、
果貿社區は日本でいう団地の名前でございます。
果貿社區自体はトータル13棟の集合住宅群でして、
中でも注目を集めているのが、8号棟と9号棟になりまっす。 -
果貿社區──
1970年代に整備された外省人向けの大規模集合住宅。
戦後台湾に形成された「眷村」の系譜に連なる存在であり、
長らく軍関係者とその家族の生活基盤として機能してきました。
果貿社區は、従来採用されてきた低層の眷村住宅とは異なり、
高層型の集住モデルである事が大きな特徴。
その中でもなぜか8号棟と9号棟だけが円環型になってます。
二つの棟の真ん中は公園になっていて、
ココから空を見上げて写真を撮れば、
建物に囲まれた丸い空の写真が撮れるというカラクリなのです。
なお、果貿社區が日本人に広く知られるようになった契機ですが、
写真家 佐藤健寿氏の奇界遺産である事は間違いないかと思います。
眷村という景観美とは無縁の歴史的背景を持ちながら、
俯瞰すれば抽象的な円環建築として立ち現れるその姿。
本来は交わることのない二重性こそが、
単なる団地を唯一無二の景観へと押し上げた要因かもですね。 -
そんな果貿社區ですが、普通のカメラのレンズで撮影しても、
オンモシロイ写真が撮れるわけではないのです… (´_`。) グスン
果貿社區を美しく撮るには「広角れんず」といふものが必要なのです。
あゝ当時のワタクシにはそんな高価なものなどありませんでした。
ところが、
そんな庶民のカベをぶち壊す、画期的なアイテムが現れました。
iPhone── なんと彼には広角れんずが備わってるそうな。
あゝ生まれ持つての才能、まさにギフテッド…。
今回はiPhoneのギフテッドをフル活用して、
この何でもない景色をギュイーンと変えてみたいと思いまふ。 -
ギュイーンと曲げてみました。
おおぅ━━━(゚∀゚≡゚∀゚)━━━ぃ
これはおんもしろいぞ。 -
イチオシ
ギュイーンと曲げてみました。
広角れんずでは、かくしてこの様な建物に囲まれた丸い空が撮れるのです。
決して世界が歪んだわけではなく、建物がそもそも曲がってるのです。 -
これが撮りたかった果貿社區のフシギ写真。
歪みに切り取られた丸い空、
とてもとてもイイ感じです (´∀`о)
空を見上げすぎて首が痛くなってきました。 -
果貿社區の中心に据えられた、握手のモニュメント。
眷村という特異なコミュニティの中で、
異なる出身・背景を持つ住民同士の団結を示す象徴でしょうか。
けれども同時に、外省人も台湾社会の一員である──
そんな外の社会へ向けたサインにも思えてくるのです。
閉じた共同体からの脱却。
日本の団地が抱える課題とも、どこか重なる風景ですね。
念願の写真も撮影することができたので、果貿社區の散策はこれでヨシ。
お次は高鉄で台中まで移動して、虹彩眷村を見に行きます♪ -
台中は虹彩眷村までやって来ましたい。
時間がない場合は、手っ取り早くタクシーを捕まえるのが良いかと。
写真を見せて「おらここに行きてぇだ」と伝えるだけでOKです。
さすが有名観光地…。 -
虹彩眷村(レインボービレッジ)
元々この場所は、アートスポットでも何でもなく、
戦後に政府が手配した軍人用の集合住宅=眷村(けんそん)でした。
先ほどの果貿社區も規模感は違えど同じ眷村なのですが、
虹彩眷村はわずか数十戸の小さな集落。
正式名称は”干城六村”。
1950年代に建てられた初期の眷村なのです。
干城六村の眷村は時代の流れと共に老朽化が深刻化し、
2000年代に再開発の対象になり、住民は退去を余儀なくされます。
集落はほぼ廃村状態となり、取り壊しが決まるのですが、
そこで登場するのが、最後まで集落に残った黄永阜 氏(虹の爺ちゃん)。
1924年生まれの元国民党の軍人。
ある日、寂しさを紛らわせるように壁へ絵を描き始めました。
動物、人物、抽象模様、鮮烈な原色。
素朴で、どこか童画のような独特な世界観。
そのストーリーと独特のペイントがSNSや口コミで話題になり、
地元の大学生たちが保存運動を開始。
市政府もこのアートを文化資産として残すことへ方針転換し、
観光地としての虹彩眷村が誕生するのです ( ゚∀゚)ノ
ココまでは誰でも知っているお話。 -
ココで注目したいのが、左の建屋の上の方に描かれた人物画。
民族衣装を着こなした、天真爛漫なキャラクターたちが並んでいます。
ただ、この子たち。
よく見ると、明らかに 黄永阜氏の人物像とは違っています。
黄お爺ちゃんの人物の特徴は、
・正面直立
・シンメトリー
・棒立ち
ところが、この壁の人物は
・体の向きがバラバラ(横向きもあり)
・ポーズが付いている
・アシンメトリー
つまり、別の誰かが描いた可能性が高いということ。
このあたりの事情については、
後ほど少しディープに語ってみたいと思います (*´д`) -
ここから虹彩眷村の内部に入れます。
描かれている壁画の中にある、25号信件、老兵在、33。
これらは全て居住区・郵便を表す言葉ですな。
なので、此処に描かれている人物──
それはかつての眷村の住民なのではないかと。 -
路地に入ると、住居の壁一面に描かれた極彩色の壁画たち。
描かれているものに規則性があるわけではなく、
個人の脳にあるイメージをそのまま可視化したような感覚…。 -
こちらの動物…?たちも独特のタッチである。
特に右のネズミ…? わからん… ネズミなのか…
もはや、ちびまる子ちゃんのEDに出てた
爆チュー問題と同じくらいのクオリティである。
え? 今の世代の人は知らない…? -
イチオシ
個人的に好きなのはこのネコ。
一応、ヤマネコ(石虎)がモデルらしい。
台湾には、台湾固有のヤマネコはいないのですが、
絶滅危惧種扱いになっていて、近年では保護区も設定されてます。
ヤマネコはめちゃくちゃ警戒が強いので、
まず野生種をお目にかかれる事はないそうで ( ゚Д゚) -
壁も地面も、とにかく描けるとこには全部描く。
壁画の住民たちに同じ顔は二つとなく、
どいつもこいつも妙にキャラが立っています (゚∀゚≡゚∀゚) -
イチオシ
村の外側には人物シリーズゾーンがあります。
人物にはそれぞれお名前が書いてあるのですが…
左から二人目… 日本姑娘…
直訳すると、日本から来た娘さんって感じですかな。
ただ、私が知る限り、日本の女子はこんな姿ではない ( ゚Д゚) -
人物シリーズゾーン。
描かれている名前は、胡瓜、張菲、張帝…。
台湾在住の友人に訊いてみたら、
あー、それ一昔前の台湾芸能人の名前だよ~。
つまり、台湾バラエティ界のアベンジャーズがずらり。
日本の感覚で言うと、志村けんとかタモリが描かれてる感覚…
お爺ちゃん、テレビ好きだったんだな… (; ゚ロ゚)
虹彩眷村は老人の純粋なアートと評されてますが、
否… お爺ちゃんの頭の中の世界が描かれてるのである(笑) -
さて、ここから少しディープな話をしていきます。
先ほどの人物シリーズと同場所にあるこの壁画、
「修復」されている事がわかるでしょうか?
黄お爺ちゃんのオリジナル感は維持しつつ、
修復を担当する協力者がいた…
虹彩眷村の物語は、実は少し複雑に絡まった話なのです。 -
かくして、あまりにも有名になった虹彩眷村ですが、
実は観光地化された当初から課題が山積みでした。
・老朽化していく集合住宅
・観光客爆増における管理どうすんだ問題
・壁画の修復と増強
・収益管理…
市政府としても、文化資産にすると決めたからには
ちゃんと管理・運営をしなきゃいけない。
そこで管理を委ねたのが、彩虹文創という文化運営団体でした。
彩虹文創は、壁画の修復・制作補助、グッズ販売や収益管理、
さらには観光地としての運営全般を担うことになります。
要は、虹彩眷村の裏方をほぼ一手に引き受ける構図、ですな。
特に、高齢化により黄氏の制作活動が困難になってからは、
実務の多くを彩虹文創が担っていたとされています。
(この点は後の裁判でも明らかになってます)
ものすごく簡潔にまとめると、
原作的イメージは黄お爺ちゃん。
イメージを具現化・増殖させたのが彩虹文創。
当初はWin-Winの関係にあったとされますが、
晩年には実質的に運営側が主導だったという声も囁かれています。
トドのつまり、お爺ちゃんの願いから始まった小さな村は、
成功とともに権利の問題が複雑に絡み合っていくのです (*´д`) -
その歪みが一気に表面化したのが、2022年の出来事でした。
いわゆる彩虹文創による「塗りつぶし騒動」です。
発端は管理契約の更新を巡る対立でした。
彩虹文創は市政府から管理運営を委託されていましたが、
その契約は永続的なものではなく更新制。
観光地としての成功とともに、
ブランドの主導権は徐々に彩虹文創へと傾いていきます。
この状況に市政府側が焦りを感じちゃいます。
公有資産なのにめっちゃ商業化されてね?──
もはや文化財としての価値とか、無視されてね?──
そこで市行政は商業化した虹彩眷村を一度リセットするために、
彩虹文創との契約更新を行わない方針を決定します。
当然、彩虹文創は猛反発。
長年、現場を運営して支えてきたのは誰やと思うとんねん──
でも予定通り、市政府は更新を拒否し、明け渡し期限を通知。
当然、これで一件落着…するはずもなく、その期限が迫る中、
彩虹文創は村の一部壁画を塗りつぶす行動に出ます。
彩虹文創の主張は、
自分たちが制作・修復した部分を処理しただけ──
ちゃんときれいにして明け渡したましたけど、何か?──
これに対して今度は市行政がブチギレ。
お前らふざけんな、文化資産の毀損で刑事告発してやる──
こうして、行政と管理団体の泥沼のゴタゴタがここに開幕…。
荒らされてしまった虹彩眷村はしばし閉鎖の道をだどる事になります。
黄氏のタッチとは明らかに異なる壁画が存在する理由、
それはまさにこの経緯の中にあったわけです (*´д`) -
この渦中にあって、お爺ちゃんは、
自分の一生をかけた創作が台無しにされた──
そんな思いを口にしていたとも伝えられています。
元々、退屈を紛らわすために始めた落書き。
それが人を呼び込む大きな観光地となり、
やがて権利や契約、さらには政治的な対立にまで巻き込まれていく。
自分の描いた世界が、争いの中心に置かれてしまう…、
平安を願って塗り重ねた色とは、あまりにも対照的な結末でした。 -
そんな騒動を経て、2023年6月に虹彩眷村は再開しました。
運営は市行政が主導となる体制へ。
商業色はかなり抑制され、壁画は“原型尊重”を意識した修復がされました。
これが原型尊重の修復かどうか… (*´-`)
ただ、以前のような物販中心の賑わいとは全く雰囲気が変わり、
より文化資産寄りの空気にシフトしたのは間違いないかと思います。
黄永阜氏が作り上げた世界観が再定義された虹彩眷村。
これをどう感じるかはその人次第ですかね。 -
最後にゴタゴタを巡る裁判の結末とは?
争点は塗りつぶしの行為が「器物破損」に該当するかどうか。
裁判所が下した判定、それは彩虹文創側の無罪。
ただ、それは壁画の所有権を認めたという意味ではなく、
誰が描いたのか、誰の作品なのか、
その境界がとてもとても曖昧だったため、
刑事責任を問うことができなかった…
それが実情だったようです。
虹彩眷村は、ひとりの老人が描き上げた奇跡の村──
そんな物語として語られることが多い場所ですが、
その裏側には美談とは少し異なる現実もあったのでした。 -
こちらは生前の 黄永阜氏。
2023年12月、前回に私が訪れた時のお姿。
日本から何度も来ていると伝えると、
嬉しそうに笑ってくれました。
握手した手にはほとんど力がなく、
その翌月2024年1月、お爺ちゃんはこの世を去りました。
80歳を過ぎてから筆を取り、
世界中から人が訪れる村を生み出した人。
新たなことに踏み出すのに年齢は関係ない
そんなことを教えてくれた偉大な存在でした。
ただただ、ご冥福をお祈りします。 -
少し趣向を変えて、黄永阜氏の初期の絵を見てみましょう♪
修復をされていない謎の壁画。
確実にお爺ちゃんの画力は上がっとるやん、と思うのですが、
初期の絵は劣化も合わせてかなりホラーテイストになってます.
個人的には、こっちのタッチも好きです。
っていうか、こっちの方がむしろ好きです… (*´艸`) -
これは序の口 (ノ∀`)ブハッ
心理セラピーやってる友人に聞いたら、
この色遣い、かなりヤベェらしいです笑
と言うのは半分冗談で、
中国圏では五行思想に基づいて、色を選ぶ傾向があります。
赤は福・繁栄
緑(翡翠)は長寿・徳
虹彩眷村は圧倒的に赤と緑が多い気がするのですが、
うーん、単純にお爺ちゃんの嗜好に寄っただけの話なのかも。
真相は、もはや神のみぞ知る、ですね (*`∀´) -
この辺とか、もはやホラーの世界である (((; ゚ロ゚))
昭和の遊園地にいそうなキャラクターなのである。 -
いや、怖い怖い怖い── ((((; ゚ロ゚)))──っ!
目が虚ろすぎ。
口からもペンキが垂れてるし…
我が街にあったら、間違いなく人気者になれるはずである。
今後、修復されてくんだろなーっと、寂しい気持ちもありますが、
リアルなお爺ちゃんの絵を見ることができて満足です ( ゚∀゚)ノ
今回の奇界遺産を辿る旅はこれにておしまい。
黄永阜氏が描いた世界が、長く後世に残るとこを期待して、
この奇妙で愛おしい村を後にしました。
それではまた~。
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