氷河が消える前に～夏のスイスアルプス2025⑪　ゴルナーグラート展望台からの絶景とハイキング

2025/06/29 - 2025/07/08

　2025年夏、10日間のスイスアルプス紀行です。いつもは個人でオリジナルなルートを組んでヨーロッパの街歩きを楽しんでいます。スイスは久しぶりで、アルプス方面は初めてです。温暖化の影響で氷河が猛烈なスピードで後退しているので、溶けて消えてしまう前に行っておかなければ…。
　今回は、列車などの予約の煩雑さ、観光や移動の効率の良さを考慮して、短期間でサクサク周遊するパッケージツアー（添乗員付き）を選びました。半年以上も前に予約して楽しみにしていたところ、出発の１か月前（5月28日）になって、スイスで氷河が崩壊し、麓の村が埋没したというニュースが飛び込んできました。マッターホルンやツェルマットのあるヴァレー州での出来事ですし、他にも危機が迫っている村があるという情報もあって少し心配しましたが、スイスの世界屈指の監視システムを信じて、予定どおり参加することにしました。
　元山ガール?(私）と現役山ガール?(友人）の２人で、３回のハイキングも楽しみました。

★羽田発着10日間（現地8泊）2025.6.29～7.8
1日目　羽田発→ミュンヘン着/泊（①）
2日目　ミュンヘン→ザンクトガレン（②）→マイエンフェルト（③）→ユリア峠（④）→サンモリッツ泊（⑦）
3日目　ベルニナ急行：サンモリッツ→ティラノ（⑤）→ディアヴォレッツァ展望台/ベルニナアルプス→モルテラッチ氷河ハイキング（⑥）→サンモリッツ泊（⑦）
4日目　氷河特急：サンモリッツ→アンデルマット（⑧）→ローヌ氷河→サースフェー/ミシャベルアルプス→ツェルマット泊（⑨）
5日目　スネガ展望台（⑩）→ゴルナーグラート展望台/マッターホルン～ハイキング（★⑪はココ）→ツェルマット泊（⑫）
6日目　ツェルマット→シャモニー～エギーユ・デュ・ミディ展望台/モンブラン→インターラーケン着、泊
7日目　インターラーケン→グリンデルワルト→スフィンクス展望台（ユングフラウ）→ハイキング→インターラーケン泊
8日目　インターラーケン→ブリエンツロートホルン鉄道→ルツェルン→ミュンヘン泊
9日目　ミュンヘン発、帰国へ
10日目 羽田着

⑪は、５日目-２：朝焼けのスネガ展望台からツェルマットに戻り、ホテルで朝食をいただいてからゴルナーグラート展望台へ向かいます。展望台からはマッターホルンやスイス最高峰のモンテローザなどの峰々と、谷間の奥から力強く流れ出る氷河のコラボにテンション上がりっぱなし。お天気にも恵まれ、その後、マッターホルンを眺めながら電車の１駅分をハイキングで下りました。

エリア ツェルマット(スイス)

ゴルナーグラート鉄道ツェルマット駅から、ゴルナーグラート鉄道に乗ります。

ゴルナーグラート鉄道は、ツェルマットからゴルナーグラートまでの高低差1,485mを約40分で結びます。ホームにある案内板では、電車の出発時刻はデジタル表示、現在時間はアナログ表示になっています。

ゴルナーグラート鉄道は、1898年（明治31年）にスイスで最初に建設されたラック式鉄道（歯車）で、全路線が屋外を走る路線としてはスイスで最も標高の高いところを走ります。
たびたびお金の話で恐縮ですが、料金は往復で132CHF（約25,000円）です。通年営業ですし乗客数も多いのでかなりの収益かと思いますが、メンテナンスも大変なんでしょうね。個人で行く場合は、ハーフフェアーカードやピークパスなどをうまく利用して楽しみたいですね。

マッターホルンは進行方向右側に見えるので、ここは右側の席を確保したいところです。出発してすぐ、線路はツェルマットの街を見下ろすように高度を上げ、樹林帯を抜けると、青空のもと、さえぎるものなく全容を望むことができました。

標高3,089mのゴルナーグラート駅に到着すると、マッターホルンがドーンと出迎えてくれました。ここには「3100 クルムホテル ゴルナーグラート」というスイス最高所のホテルがあります。こんなところで1894年（明治27年）創業とは…。今の私たちは鉄道でらくらく登って宿泊できますが（予約がとれれば）、鉄道が敷かれるまでの４年間は、ごくごく限られた人が命がけで来たのでしょうね。

展望台からは、360度ぐるりとスイスアルプスを望むことができます。マッターホルン（4,478m）を始めとして、スイスアルプスにある4,000m級の38峰のうちの29峰が取り囲んでいるという絶景です。この写真の左の山はスイス最高峰のモンテローザ（4,634m）、正面の山はリスカム（4,527m）で、奥から力強く流れているのが、モンテローザ氷河とグレンツ氷河が合流したゴルナー氷河です。
ゴルナー氷河もまた、体積が大幅に減少しています。特に近年は融けるペースが加速していて、2024～2025年のたった1年間で約３％が失われたそうです。温暖化がストップすることは考えづらいので、1年でマイナス３％とすると、10年、20年、30年後を考えると本当に恐ろしいです。

ゴルナー氷河はブライトホルン（4,164m）の足元を大きく蛇行して流れて行きます。茶色く見える流れはモレーン（氷河が削り取った岩石や土砂の堆積）で、氷河の合流によってこのように見えます。

展望台には無料の望遠鏡がいくつか設置されていて（この写真には写っていませんが）、覗くとそこに見えている山の名前と標高が表示されるようになっているとのこと。そんな機能があるとは知らなかったし、無料なことも知らなかったので、リサーチ不足でした。これから行かれる方はお見逃しなきよう！

ふたたびマッターホルンです。マッターホルンの標高は4,478mで、ゴルナー氷河沿いのモンテローザやリスカムより低いのですが、周りに山がない独立峰なので、聳え立つ迫力が凄いです。
ゴルナーグラート展望台での滞在は時間が全然足りず、ギフトショップに寄ることもできず、とても残念でした（ここでしか買えない限定グッズが欲しかった）。時間が常に押せ押せなのがツアー最大の難点ですが、しかたありませんね。大急ぎでトイレだけ済ませてお別れしました。

ゴルナーグラート鉄道でローテンボーデン駅まで一駅下り、ローテンボーデンからその先のリッフェルベルク駅までの一駅分をハイキングします。

ローテンボーデンからリッフェルベルクまで約2.2kmのハイキングは、標高差232ｍの緩やかな下りを1時間30分ほどかけて行く初級コースです。日本人ツアーの定番ルートなので何組かのグループの姿もありますが、なにせ景色が雄大なので気になりません。現地ガイドの説明を聞きながら、のんびりと下っていきます。

マッターホルンに向かって歩きます。まずはリッフェル湖へ。逆さマッターホルンは見えるでしょうか。

リッフェル湖に着きました。完璧ではないけれど、湖面に逆さマッターホルンが映っています。

逆さマッターホルンは、たとえマッターホルンがきれいに見えていたとしても、風で湖面に波が立つと見られません。山には少し雲が被っていますが、十分満足です。やったー！

リッフェル湖の近くに、リッフェルホルンという岩山があります。ジャンダルム（西穂高岳と奥穂高岳の間にある岩塊）のような感じですが、ここはマッターホルン登頂を目指す人が技術をテストされる場所のひとつで、マッターホルンよりも厳しい垂直の壁が手強いそうです。私たちのようなハイカーは、せいぜい花の写真を撮るだけですが…。

マッターホルンを見ながらゆるゆると下ります。マッターホルンが少しずつ高くなるような感じがします。

右側の青い花は、ゲンチアナ・ウェルナというリンドウの仲間で、スイスアルプスに春の訪れを告げる花といわれています。ハイキングでは可憐な花々を眺めたり写真に収めたりすることが大きな楽しみなのですが、いかんせんツアーでは時間がなく、立ち止まることもままならず、大急ぎで撮った写真はピンボケばかり。腕が悪いこともありますが、かろうじてお見せできるのはこの1枚がやっとです。

途中でひと休み。疲れはまったくないのですが、お約束なので…。道はどこまでも緩やかな下りです。

だいぶ下ってきました。なだらかな斜面をゴルナーグラート鉄道が横切っていきます。

ヘリコプターが飛んでいます。物資を運んでいるのでしょうか。背景の左側の山が槍ヶ岳と北鎌尾根にちょっと似ていますね。

パラグライダーも飛んでいます。きっと素晴らしい眺めなんでしょうが、とても飛ぶ勇気はありません。

リッフェルベルクが近づき、ホテル「リッフェルハウス 1853」が見えてきました。1853は標高ではなく創業年を示しています（標高は2,600m）。1853年というと、なんと172年前！　日本でいうと嘉永6年で、ちょんまげの時代です。そしてペリーが来航した年です。はじめは山小屋程度だったのでしょうが今では立派な４つ星ホテルで、内部の装飾も食事もサービスも一流ということです。

リッフェルハウス 1853 ホテル

実はこのホテル、昨年７月に泊まる予定だったのですが、体調により泣く泣くキャンセルしたんです。外にはマッターホルンを目の前にしたジャグジーやスパもあって楽しみにしていたのですが、今回は外観を眺めるだけです。そして、ここでハイキングも終わりです。

リッフェルハウス 1853 ホテル

リッフェルベルク駅からからゴルナーグラート鉄道でツェルマットに戻ります。ラック式レールの歯車がギザギザです。

線路を歩いてまたいで車両に乗り込みます。

途中の駅からもたくさんのハイキングコースが出ていて、人が乗り降りしていました。もう少し歩きたかったなぁ。