2025/06/16 - 2025/06/17
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鯨の味噌汁さん
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6月16日、月曜。
5泊したアムステルダムのホテルをおいとまし、ライデンに向かう。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
トラムで移動し、まずは中央駅へ。
これでアムステルダムとはお別れ。ぶらぶらするにはちょうどいい大きさの街だった。美術館めぐりも楽しかったな。
今度はかーちゃん連れて来よう。 -
ライデンまでは電車で30分ほど。
東京ー横浜くらいの距離感だろうか。わざわざ泊まることもないんだけれど、古都の雰囲気を味わいたくて運河の横にあるホテルを予約した。 -
もちろんアムステルダムにも「カナル(運河)ビュー」のホテルはあるが、目玉が飛び出て運河にポチャンと落っこちるようなお値段だ。ライデンであればそこまで高くないので、一泊だけゼータクすることにした。
-
この町は司馬遼太郎のお気に入りだった。
作家は60代後半、今のワシと同じ年の頃、ライデンを再訪し、ライデン大学の学生たちの様子をうらやましそうに書いている。
戦争で青春時代を棒に振った思いがあるせいか、司馬遼は大学で学ぶ若者たちが好きだった。 -
午後の街をぶらぶらと歩いていると、運河と運河がぶつかり、小さな岬のようになった場所に出た。
ライオンが剣を奮う門があり、その先がライデン市民が籠城した砦だった。
今は周囲にカフェやレストランが賑やかに並んでいる。 -
八十年戦争のさなかの1574年、ライデン市民は飢えに苦しみながら、この小さな要塞で1年を持ちこたえた。最後は水門を破壊することでスペイン軍を水浸しにし、撤退させた。
オランダ独立の指導者だったオラニエ公はライデンの奮闘をたたえ、税の免除を打診したが「免税より、この町に大学を」という市民の申し出で、ライデン大学が創設されたという。 -
それって、当時のオランダ人の意気軒昂ぶりが伝わってくるようなエピソードだ。
商人の親方たちが火縄銃を手に、スペイン軍相手に戦って勝利したのだから。
きっと「夜警」に描かれたような、元気なオッサンたちがいっぱいいたんだろうと思われる。 -
そのライデン大学には日本学科がある。
シーボルトが長崎から持ち帰った資料がきっかけとなってできた学科だ。
さらには、大学の近くにシーボルトのコレクションを展示した博物館があるんで寄ってみた。 -
シーボルトはドイツ貴族の家系に生まれ、長じて医学と植物学を修め、自らの意思で長崎の出島にやってきた。
身分は医師だったが、本人としては博物学者の思いが強かったと思われる。 -
19世紀、博物学は熱狂的に学ばれた学問だった。
世界に残る「知の空白地帯」に冒険的な博物学者が入り込み、動物・植物・鉱物などを収集し、本国に持ち帰った。
なかんずく日本は鎖国の最中であったから、超極上の「知の空白地帯」だった。
日本も世界を知らなかったが、世界もまた日本を知らなかった。 -
そこに野心に燃える博物学者がやってきたのだ。シーボルトが収集したコレクションは数万点におよんだ。
そしてその中には、国禁の品である日本地図が含まれていた。
その少し前、徳川幕府は国防上の理由から、伊能忠敬に正確な日本地図をつくらせていた。つまりはできたてホヤホヤの「国禁」だった。
おそらくは密告によって発覚し、大騒動になった。世にいうシーボルト事件だ。 -
シーボルトは国外追放で済んだが、日本の関係者への追及と処罰はめちゃくちゃ厳しくて、地図を渡した役人は拷問を受け獄死、さらに通詞や教え子にも類が及んだ。
ここらへんは吉村昭の小説「長英逃亡」に詳しい。
中身は「拷問・拷問・また拷問、拷問去ってまた拷問」なので、読むのがしんどくなるけどね。
この時代、世界中に散った博物学者は、ときに軍事探偵的な役割も負った。シーボルトは地図の持ち出しが法に触れることも知っていたし、バレたら協力者の首が飛ぶ(たとえではなくリアルに)ことも知っていたはずだ。
よってシーボルト軍事探偵説は今でもささやかれる。真相はわからない。 -
歩き疲れたら運河巡りのボートなどにも乗り、カフェでアイスクリームなどいただき、ライデン駅まで戻り、おとなりのハーグまで行く。
ハーグ駅から近い美術館に「真珠の耳飾りの少女」がいるという話を聞いたので、思い立って会いに行くことにした。予約は16時からで前日に取れた。 -
ハーグは駅前に高層ビルが何本も建っているハイカラな町だった。
そういえば、この旅行から帰国してすぐ、この町でNATOの首脳会議をやっていた。
ヘンな髪型の爺さんが、オランダ国王に接待されていたっけ。 -
レストラン街を抜けると広場があり、その先にこぶりな美術館が建っていた。
マウリッツハイス美術館というんだそう。 -
「真珠の耳飾りの少女」は門外不出だそうで、ウワサによると世界で一番高い絵なんだという。
フェルメールは寡作で、世に知られる作品は少なく、ニセモノも多いせいだろう。
ちなみに、あのナチスもまんまと贋作を掴まされている。
バレたら銃殺間違いなしだろう、いい度胸の画商がいたもんだ。 -
月曜の午後5時、館内は空いていた。少女の前にはぼちぼちと見物客がいたけど、半分くらいの時間は独り占めできた。
300億だか500億だかの少女とじっと向かい合うのはなかなかの贅沢である。ずっとこっちを見られてる気分だ。 -
隣の部屋にあった、これも有名な作品。レンブラントの「なんとか博士の解剖学講義」。
ワシにはその価値はわからない。
どうせわからないなら、おじさんたちより女の子のほうがいい。 -
大いに満足し、ライデンに取って返し、ホテルでゆっくり休む。
午後8時を過ぎてるのにまだ夕方の入口。部屋は表通りに面した運河の見える部屋。窓を開け放つと風が入ってきて気分がいい。 -
ゆっくりシャワーを浴び、バスローブだけはおり、どーんとベッドに横になり、そのままウトウトする。1時間ばかりそのまま寝落ち。でもって窓の外が賑やかになったんでむっくり起き上がり、下を覗く。
目の前の運河を小さなボートが通り過ぎるところだった。ボートには10人ほどの女の子たちが座り、にぎやかにおしゃべりしていた。良きかな良きかな。
だがしかし。その中のひとり、ブルネットの女の子がワシの方を見て「ものすごぉぉぉぉぉぉぉく」変な顔をした。
そこで気づく、おお何と言うことでしょう、バスローブの前ははだけていて、ワシの偉大な息子が堂々コンニチハしてるではないか。
この身を恥じ、カーテンを引き、静かにおパンツを履き、以降は大人しく部屋で過ごした。 -
反省しつつも
「1日2回も美少女と目が合うとはツイてる」
と前向きに考えることにした。
オランダはきょうまで。あすはレイキャビクに向かう。
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この旅行記へのコメント (4)
-
- willyさん 2025/07/08 12:41:52
- 運河の風
- 鯨さん
立て続けにお邪魔します。
オランダを楽しまれて何よりでした。お宿もよさげで運河の風もさわかやそうです。
わが埼玉(東松山市)が誇る世界第2位のマーチング大会のよしみで、ナイメーヘンと姉妹都市だそうなので、いずれこの大会にいずるべく、訪れたいと思っていますが、ライデンもよいですね。
吉村昭はどれもたいがいどんよりしますが、「フォン・シーホルトの娘」はよい印象でした。わたしはどちらかというと吉村派・・・。
willy
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2025/07/08 17:43:07
- 吉村昭、いいっすよねぇ
- willyさん、
今回オランダは6泊したんですが、宿はアムステルダムとライデンだけ。
ワシにしては珍しく大荷物(といっても中型スーツケースですが)だったんでホテルから郊外へ日帰りで出かけていました。こういう滞在型、年を取るとラクでいいです。いつも2泊くらいで移動して、町を覚える前に次に行っちゃってましたから。
吉村昭、ワシも一部短編やエッセイをのぞきほぼ読んでると思います。「ふぉん・しーほるとの娘」も家の本棚にずっとあったのに、なぜだか読んだのは今年になってからでした。女性特有の事件をやや重く感じてたもので、なかなか手に取れなかったっす。
そういえば、日本地図関連だと間宮林蔵も小説になってましたよね。
- willyさん からの返信 2025/07/30 13:25:31
- Re: 運河の風
- くじらさん
お返事が遅くなりました。ながく北極の風に吹かれておりました。
吉村昭はどれ読んでもどんよりげっそりですが、なんかマゾヒズムを刺激するといいますか・・。
間宮林蔵も吉村氏のおかげ?せい?で悪印象になりました(笑)。吉村昭といえば「破船」の舞台がどこなのかずっとわからなかったのですが、佐渡らしいですね。私もつい最近これをしりました。
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2025/07/31 12:17:59
- 佐渡なの!?
- >ながく北極の風に吹かれておりました
お近くに行かれてたんですね。
やっぱりサウナに突撃したのかしらん?
>「破船」の舞台がどこなのかずっとわからなかったのですが、佐渡らしいですね
マジですか。
慌ててwikiを見にいっちゃいました。
江戸時代の話にしては中世っぽいから、伝説をもとに作家が着想したのではないかしら。
大佐渡と小佐渡の間に立派な田んぼもあるから、あそこまで「食えない」イメージはなかったです。
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