三笠・幾春別日帰りドライブ～『三笠のキング…』を見て旧炭鉱町の地域振興を考える～

2025/06/06 - 2025/06/06

とある昼下がり。HBCラジオ(北海道の地方局)から「渡部絵美の住まいるハウス」が流れてきました。ゲストは高杉真宙さん。大河ドラマ『光る君へ』で紫式部の弟役を演じられた俳優です。
このラジオ番組にはこれから始まる高杉さん・柄本時生さんダブル主演のドラマを紹介するために出演されたようです。
ドラマのタイトルは『三笠のキングと、あと数人』、北海道三笠市を舞台にしているとのこと。えっ？あの三笠で？

三笠市幾春別(いくしゅんべつ)は、私の夫が生まれた地で、小学校2年生まで過ごしました。現在は家族・親族は誰も住んでいませんが、毎年お墓参り訪れます。
過疎化が急速に進むかつての炭鉱町、でもちょこちょこ美味しいものはあるね、くらいの認識でした。

という訳で、ドラマに触発され、三笠を再発見すべくロケ地を中心に三笠市街地と幾春別地区を日帰りドライブしてきました。

写真は幾春別の様子。遠くに見えるのは旧奔別炭鉱の立坑櫓です。

エリア 三笠・南幌(北海道)

三笠市は札幌市の北東約50kmに位置しています。
かつては大変栄えた炭鉱町でしたが昭和40年代に炭鉱は閉山されました。
鉄道は昭和62(1987)年に廃線。札幌からのアクセスは車かバス。
まずはドラマ『三笠のキングと、あと数人』ロケ地マップがもらえるという三笠市役所へ。
入るとすぐにポスターが貼ってありました。

ポスターをたどって行くと、2階の企画調整課へ導かれ、そこでロケ地マップをいただきました。

こちらがロケ地マップ。
本日はこの中のいくつかに行ってみようと思います。

まずはおなかが空いたので、毎年お墓参りの後に立ち寄る幾春別地区にあるお蕎麦屋さん更科食堂へ。
しかし！あろうことか、この日はお休みでした。金曜日だったのでまさかお休みとは思わなかった…通常、定休日は火曜ですがこの日は何かの都合で休みだったようです。なのでこの写真は2022年に撮った過去picです。

更科食堂 グルメ・レストラン

『三笠のキング』ではこのお蕎麦屋さんの行列の脇を高杉真宙さん演じる健太が通った時、何者かに捕まって拉致される展開でした。

2022年撮影

更科食堂 グルメ・レストラン

更科食堂は、1998年頃からほとんど毎年お墓参りの帰りに寄らせていただいていました。なので2020年、店主が高齢のため店を閉じると聞いた時はショック！
しかし、三笠市が地域おこし協力隊としてこの店を引き継ぐ人を募集し、翌年には再開にこぎつけたのでした。
この写真は2022年撮影なので再開後になります。
私はいつも手打ちのざるそばを注文します。
他に、ラーメンや天丼も美味しいです。

更科食堂 グルメ・レストラン

これは今回来訪時の写真
ドラマ『三笠のキング』を見て、こんな所あったっけ？と思ったスイーツのお店　
IMO melon NANKIN (旧名KULATUTA)
更科食堂のすぐ近くにありました。
店主さんとお話ししたところ、札幌～東京を経て、三笠に移住され、2年前に開業されたそうです。

IMO melon NANKIN グルメ・レストラン

IMO melon NANKIN　では三笠の農産物さつま芋、メロン、カボチャを使ったスイーツが提供されています。
写真は購入品。
さつま芋プリン(1個540円) 赤ワイン澱入りスイートポテト(1個518円)。
とても味わい深く上品な風味でした。

IMO melon NANKIN グルメ・レストラン

IMO melon NANKIN
2階はイートインスペースになっていました。
そうドラマで先輩(柄本時生さん)と由紀子(森田想さん)が待ち合わせする場所です。

IMO melon NANKIN グルメ・レストラン

IMO melon NANKIN
壁にはドラマに出演した高杉真宙さん(健太役)、森田想さん(ヒロイン由紀子役)、黒田大輔さん(幽霊森氏役)のサインが。

IMO melon NANKIN グルメ・レストラン

次は同じく幾春別エリアにある旧奔別(ぽんべつ)炭鉱へ。
奔別炭鉱は住友石炭鉱業が経営する企業でした。
神木隆之介さん主演のドラマ『海に眠るダイヤモンド』を見ると、戦後の傷跡を感じつつ日本が高度経済成長期に入った頃の炭鉱町の様子がリアルに体感できました。

旧奔別炭鉱立坑櫓 名所・史跡

旧奔別炭鉱　立坑櫓(たてこうやぐら)
端島(通称軍艦島)を舞台にした『海に眠るダイヤモンド』では、実際に石炭を掘る炭鉱夫以外にも実に様々な職種の人々が炭鉱町を支えていたのがわかります。
夫の父親(故人)はここ幾春別で住友石炭鉱業が経営する配給所と呼ばれる所に勤務していました。

旧奔別炭鉱立坑櫓 名所・史跡

炭鉱町の配給所とは炭鉱で働く人々とその家族のためのスーパーマーケットのような施設。
炭鉱を経営する会社によって運営されていました。
『三笠のキング』では健太と先輩がここに忍び込み、色々と事件が起こる場所です。

旧奔別炭鉱立坑櫓 名所・史跡

幾春別地区の炭鉱は昭和40年代に閉山。
当時夫は小学校2年生。義父は札幌にある住友系のスーパーマーケットに再就職が決まり、一家は札幌に移り住みました。
時は高度経済成長期。炭鉱が閉山し、失業者が大量に発生してもそれを受け止める経済的な余力が日本にはまだあったということでしょう。

旧幾春別炭鉱錦立坑櫓 名所・史跡

ということで本当におなかが空いたので市街地方面へ戻ります。
最初の三笠市役所がある市街地から幾春別は8km程離れています。
幾春別から市街地へ戻る途中にあったそば屋さん「梅家」。
驚くべきはその安さ！きつね昆布そば380円、野菜天かしわそば450円。
お味は学食風ではありますが、値段を考えると満足です。
店内も清潔で明るい雰囲気でした。

梅家の斜め向かいには三笠高校生レストラン「まごころキッチン」があります。
三笠高校は食物調理科1科のみの市立高校。まごころキッチンは生徒が調理や接客などを学びながら経営にも参画する実践的な場。
『三笠のキング』で由紀子は教師役として生徒を指導する立場でした。
※外観撮り忘れたので市役所でもらったパンフレットを拝借。

まごころきっちん グルメ・レストラン

高校生レストラン「まごころキッチン」は、高校生が運営しているため、生徒の授業のない土日祝日営業・完全予約制というのは知っていましたが、テイクアウトは平日もオープンだったので、そちらでコッペパンを買い求めました。コッペパンの具が色々選べます。私は迷わず卵コッペに。(480円)
ちなみにテイクアウトのお店の名はエソール・ストアと言って、地元の企業が出資しているそうです。

エソール ストア グルメ・レストラン

三笠高校は元々普通科や工業科などからなる道立高校でしたが、人口減少や少子化に伴い平成24(2012)年に閉校。三笠市がそれを引き継ぎ、食物調理科1科の市立高校としてすぐに再オープンしました。
大学進学目指してる子はどうするのかな、と思っちゃいますが、すぐお隣りの岩見沢市には進学校がありますもんね。
というわけで市街地到着。『三笠のキング』クライマックスの櫓を見に中央公園近くに来ました。

公園に入る直前、こんなお店を見つけました。
「三美堂」1階はカメラ店、『みかキン』のポスターも貼ってあり、営業しているようです。それにしても2Fがおばけやしき?
北海道新聞によると市内の小中学生がお化け屋敷の人形や仕掛けを手作りし、年に数回イベントとして公開しているとか。

中央公園に入ります。
三笠は北海盆唄発祥の地とされていて、中央公園では毎年８月15日頃盆踊り大会が開催されています。市役所のHPによると入込数は令和5年で21,400人、市の人口約8,000人と比べるとかなりの人出です。
北海盆唄は北海道と言うよりは、ドリフの主題歌のイメージが強くないでしょうか？おかげで全国の日本人(50代以降？)が知るメロディとなりましたね。

中央公園内にある北海盆踊り櫓(やぐら)。
ドラマの中で櫓は燃えてしまい、市民一丸となって新しい櫓を作るというストーリーでした。櫓は炭鉱の比喩で、一度なくなったものから皆で協力して何かを再生しようというメッセージがこめられているように感じられます。

最後は道の駅三笠に寄ります。
「みのる青果」でチンゲンサイといちご
三笠の有名なお豆腐屋さん「白川とうふ」で揚げ納豆と茶碗蒸し
道の駅駐車場のキッチンカー「くいしんぼう」で焼き鳥を買いました。

道の駅 三笠 道の駅

「くいしんぼう」の焼き鳥は有名で、いつも行列ができています。
この日もこんな感じ。お店の方が本数を聞きに来ます。
本数制限があり、1グループ20本まで。

道の駅 三笠 道の駅

焼き鳥はこんな感じ。家で食べました。
1片の肉が大きくて柔らか、そして何と言ってもタレが絶品です。
わざわざ遠くから買いに来る人もいるというのもうなずけます。

こちらは白川とうふ店の茶碗蒸しと揚げ納豆。
三笠の老舗豆腐屋さんで、札幌近郊の北広島市の支店はカフェ風のおしゃれな店構えです。
この日の買い物はこれだけでしたが、道産大豆で作った豆腐は濃厚で、豆乳シフォンケーキも優しい味わいです。

揚げ納豆は初めて購入しましたが、豆腐の風味がしっかり感じられるお揚げでした。
魚焼きグリルで3分程温めていただきました。

ドラマをきっかけに年に1度は訪れる三笠を再認識することができました。
三笠市の地域振興は、地元ファースト、まずは地元の人々が幸せを感じられることが念頭に置かれているように感じました。
それがだんだん外部の人も巻き込み、時代の流れに呼応したアイデアを生み、好循環が生まれつつあるような。そんな希望が持てる未来が期待できそうです。
写真は、三笠市役所でロケ地マップをもらった際、市役所の方がこちらもどうぞと言ってくださったティッシュです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい