2024/10/07 - 2024/10/07
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鯨の味噌汁さん
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さて。
ルクソール空港からタクシーを拾い、「酒屋→ホテル」のルートを堂々指定したワシである。
目指す「Drinkies」はルクソール駅の並びにあった。タクシーを停めてもらい店内に入ると、ひんやりした空間にワインとビールがずらっと並んでいた。
ふたりで手に手を取って喜び、ワシはビールを半ダース、かーちゃんは赤ワインを1本仕入れる。
これで本日のミッションは終了した、あとはチェックインしてお昼寝するだけだ。(目標設定が低い夫婦)
するとホテルへ向かう車の中で、ドライバーのムハマンド氏が明日以降の予定を聞いてくる。ウムと頷き、答える。
「ルクソールには3泊する。午前は斉藤寝具(sightseeingの鯨的発音)、午後はホテルでお昼寝である」
すると、それまで処女のようにおとなしかったムハマンド氏の営業スイッチが入る。いきなりワンルームマンションの営業マンみたいなド迫力でまくしたてる。
「安うしまっせ、勉強しまっせ、1日1000ポンド、2日で2000ポンドでよろしおます!!」
「まてまて、空港からホテルまでで1500ポンドなのに、なんで半日で1000ポンドなの?」とワシ。
「空港は客引きにコミッション払うから高こなりまんねん」
なるほどー。観光客を乗せたらそこからようやく「自分の商売」ができるわけか。どのギョーカイも大変だな。
「じゃあ明日とあさって、2日で2000ポンド払うから、9時から2時までお願いするわ」
ムハマンド氏、大いに喜ぶ。
ワシらにしても、2日間の足代が2000ポンドであればウレシイ。日本円にしたら7000円ほど。
ちなみに地球の歩き方には「ナイル西岸はレンタル自転車を活用せよ」などと書いてあるが、この炎天下でチャリなんぞ漕いだら午前中でミイラになるであろう。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- タクシー
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
タクシーはルクソール市内を北上し、やがてナイル川を渡って西岸へ。ここまで約1時間。
たどり着いた宿はナイルのほとり、「エジプト貴族の館を再現」したのが売りのホテルだった。
エントランスを抜けるとよく手入れされた庭園があり、客室は庭に沿って並んでいる。どの部屋にもテラスがあり、ナイルの方を向いている。
重いドアを開けて室内に入ると、ひとつしかない窓には飾り細工を施した木戸がついており、そのせいで室内は照明をつけても暗い。本も読めんぞ。(老眼だけどな!)
確かに貴族の館はこんなだったんだろうが、いくらなんでも暗すぎる。その暗さは、かつての大塚駅付近のピンサロを想起させる。
あそこらへんのピンサロは真昼から営業しており、仕事をさぼるサラリーマンの憩いの地であり、お相手してくださるお姉さまの顔が暗くて見えないのが定番だった。
ひょっとしたらお姉さまではなくお婆様だったのかもしれない。若い頃はそんな状況でもハッスルハッスルなのであった。(遠い目) -
ホテルに話を戻す。
冷蔵庫にミニバーはあるけど全部ソフトドリンク。
しかも「飲食物の持込はご遠慮ください」とある。田舎の温泉宿みたいだな。
やむなくビールはその日の夜に飲む分だけ冷蔵庫に入れ、空缶はスーツケースに隠すことにする。
修学旅行の高校生が先生に隠れてビール飲んでるみたい。 -
翌10月7日、連日の快晴。午前9時にムハマンド氏がやってくる。
最初に見物のコースを相談。
本日は西岸の遺跡、明日は東岸のカルナック神殿を見物したい旨を告げる。
ちなみに西岸の遺跡は20ばかりあり、半日で全部回るのはハナから不可能である。
いっぱい見物してもどうせ端から忘れるので、午前中に回れそうな場所をピックアップして伝える。
「メムノン巨像、ラメシアム、ハトシェプスト女王葬祭殿、王家の谷。全部で四つ」
するとムハマンド氏、お節介にもアドバイスをくれる。
「ラメシアムはマイナーやで、客おらへん」
「マイナーメジャーは関係ないんじゃね? 見たいもんがあるからはるばるやって来たんだから」
ムハマンド氏、なるほどと頷き観光開始。 -
それぞれの遺跡は2-3キロ離れているから、タクシー貸切だと快適だ。
施設の入口で集合時間を決め、その間ムハマンド氏は駐車場で待つスタイル。
メムノンの巨像は鎌倉大仏がイスに座ったらこれくらいかな、という大きさ。
二体あって、いずれも顔が削り取られている。
これもイスラム教徒のしわざかと思ったが、あとから本で調べてみたらキリスト教徒も偶像破壊をやったらしい。
ここらへんはローマ領になり、4世紀にはキリスト教は国教になった。エジプトだとコプト教ですね。
キリスト教は一神教であるから、ご先祖様がこしらえた巨像の顔を削ったのだと思われる。
キリスト教もイスラム教も仏教も、やる時はやっちまうんだな。なんともたいぎなことである。 -
そこからすぐ近いラメシアムは、ラムセス二世の葬祭殿だ。
ばかでかい像が8つばかり立っているが、やっぱり首を落とされている。
かつてここには、8つの像のほか、ラムセス2世の胸像があった。
そこへ19世紀の初め、ベルツォーニというイタリア人がやってきて、胸像を根元から引っこ抜いた。いわゆるひとつの「遺跡荒らし」。
そのままゴロタを使ってナイル川まで運び、イギリス行の船に載せた。今は大英博物館に展示されているラムセス2世の胸像がそれだ。 -
ベルツォーニは井戸掘りの職人としてエジプトにやってきた。
だがしかし、どこでどう間違えたのか、井戸は掘らずに、遺跡という遺跡をほとんど熱狂的にほじくり返した。
アブシンベル神殿を砂の中から掘りだしたのもこの男だ。
考古学の知識は皆無、前職は大道芸人だったベルツォーニが、なんでこんな大仕事をやったのかは知らない。
ばかでかい胸像を運び出すには膨大な費用が掛かったはずなのだが、イギリス領事を説得してカネを出させたそうな。
映画に例えれば企画・カネ集め・現場の指揮、全部やったわけで「プロデューサー・監督・主演」を井戸職人がひとりでこなしたことになる。
19世紀、ヨーロッパにおけるエジプト考古学は、ナポレオンの遠征をきっかけに始まった。
考古学なんてのはそもそも貴族の子弟がやるもので、「大道芸人→井戸掘り職人」が熱中するものではなかった。
学会でも「歴史を作った冒険者」との評価がある一方「稀代の盗掘屋」とくさす学者もいるそうだ。
だが、ワシにはベルツォーニの山師っぷりが好ましく映る。
元大道芸人が領事を説得してカネを出させ、馬鹿でかい胸像をぶっこ抜くなんて、痛快ではないか。
ちなみにインディ・ジョーンズのモデルの一人といわれる。その破天荒さは似ていないこともない。身長2メートル、なかなかの美男子だったらしい。
ベルツォーニはいったんイギリスに戻り、回想記などを出版したが、漂泊の思いはやまず、ニジェール川の水源調査の旅に出て、辺境の町で熱病で死んだ。 -
ハトシェプスト女王葬祭殿に向かう道の途中で、山の中腹に古い住居跡を見かけた。半分砂に埋もれ、かつて窓だった四角い穴ぼこがいくつか遠望できる。
ムハマンド氏に問う。
「あれは遺跡か」
「ノー。クルナ村の跡だ」
クルナ村ってなんだよ、とgoogle先生に聞いてみたら、なんのことはない、墓泥棒の村だった。
彼らは代々遺跡の上に家を作り、「自分の敷地内を掘る」名目で盗掘し、戦利品をヨーロッパの好事家に売っていたそうな。
20世紀に入るとその強弁はさすがに通じなくなったらしく、ルクソール東岸に強制移住させられたらしい。 -
で、ハトシェプスト女王葬祭殿の前には物々しい装甲車がドンと鎮座していた。
1997年、イスラム過激派が観光客を無差別に銃撃した「ルクソール事件」の現場となった遺跡だ。
ここにたどりついたのが11時。早くも太陽は中空にさしかかり、神殿の石畳にも照り返し、狂暴な暑さになっている。
日本では経験したことのない、鉄板の上で煎られてるみたいなチリチリする暑さだ。
このままでは「安房名物・鯨の干物(たれ)」になってしまい、千葉の道の駅で売られてしまうであろう。
「これはあかん」
とゆうわけで、チラ見しただけでとっとと日陰に避難する。
一方かーちゃんは、日傘をさしてグイグイと葬祭殿の奥の方まで見物し、なおかつ壁画も熱心に見て回っている。やはり平均寿命が5歳長いイキモノは作りが違うのである。 -
最後に王家にの谷に向かう。
ここは広い谷間に歴代王の墓が60ばかり作られ、その端から盗掘された。前述したベルツォーネもグイグイ掘って、ミイラや財宝を持ち去った。
もちろん白人の財宝探しだけではなく、地元にも職業としての墓泥棒がいた。3000年にわたって盗掘され、ほとんどの王墓はカラにされた。
1922年、ツタンカーメンの墓が無傷で発見されたのは、だから奇跡に近かったと思われる。 -
ちなみにツタンカーメンは、ワシらの世代の男子は横山光輝の漫画「ジャイアント・ロボ」でその形態を認識し、さらに仮面ライダーの怪人「エジプタス」により、ほぼ全員が「ツタン仮面」だと思い込んでいた(はずである)。
さらに頭の両脇にある黄色と黒のシマシマは頭巾ではなく「ヘアスタイル」だと思っていた(はずである)。 -
ワシのエジプト史の知識はその程度なので(つまりゼロに等しい)、広い「王家の墓」で見物したのはそのツタン仮面のお墓だけであった。
狭い階段をトントンと降り、壁画とケシズミみたいに黒くなってるミイラを拝んだ。
あとはとっとと日陰に避難し、岩山を眺めながら、売店で買ったコーヒーを飲んでいた。
ちなみにかーちゃんは、チケットで見ることができる墓を時間ギリギリまで見て回ったそうだ。
午後は無事にホテルに帰り、たっぷりお昼寝できたので吉とする。
(参考文献:「盗まれたエジプト文明」篠田航一著 文芸春秋社)
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旅行記グループ
10月のエジプト(ガチで暑い)
この旅行記へのコメント (6)
-
- ほいみさん 2024/11/30 14:57:13
- 面倒臭い国、エジプト!
- いや~‥今回も、ツタンカーチャンがいい味出してますね。
エジプトは2回行ってるのに、まじめに観光してなかったので、クジラさんの分かり易い説明で楽しんでます。特に「ベルツォーニというイタリア人」の話は面白いです。こういうのって、ガイドブックや真面目な解説書では読む気にもならないんですよね・・・特に老化後(中?)は。
>頭の両脇にある黄色と黒のシマシマ
あれは今でもヘアスタイルだと思ってたかも。
日本のちょんまげと比べたら、あんなヘアスタイル普通じゃんね。
そういえば、うちのカーチャンは明日から「私に猫を押し付けて」友人とエジプトに行くみたいです。
ほいみ
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2024/12/01 10:13:42
- ツタンかーちゃん(笑)
- ほいみさん
>まじめに観光
あい。今回はワシにしては珍しく観光モードでした。
現地8泊でナイルの一番南から地中海までですものね。
ワシはオアシス間をジープでぶっ飛ばすドライブもいいなーと思ってたんですが、かーちゃんがNG。そもそもアブシンベルとアレキサンドリアを8泊でっちゅうのは駆け足になりますよね。次回、単独行があれば砂漠に突っ込んでいくのもええなぁ、と思いましたよ。
ベルツォーネは山師のかおりが漂ってていいですよねぇ~。こんな怪しい連中がエジプトにはいっぱいいたんだろうけど、執念でカネを集めてやりきったところがすごいなーと思うわけです。
無名の井戸掘りがイギリス領事を(説得というよりは)だまくらかして、カネを引っ張ってくるんですから凄いよね。
-
- フィーコさん 2024/11/11 21:04:57
- 7月のエジプトも暑いおまっせ
- 鯨の味噌汁大先生 こんばんは。
ほー
タクシー貸切やっすぅー
私が行ったころ、日本人ほとんどおらず
欧米は早朝から馬ででかけ(ラクダちゃいまんねん)
昼にはホテルのプールで遊んでた。
暑過ぎて、息するのも熱風を吸い込む感じ。
夜になっても少しましくらいで「むわー」
ウチらのツアーも13-15時まではプールどうぞでした。
王家の谷、奥さまがんばりはりました!
ツタン仮面知らんかった
フィーコ
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2024/11/11 22:10:39
- ケチって10月に行ったのは失敗やった!
- フィーコさん
10月でもアチチですから、7月も洩れなく厳しいでしょうねー。
ここは大人しく12月ー1月の観光シーズンに行くべきでした。
ヒコーキが3万円高かろうがホテルが50%増しになろうが、日中外を歩けるなら安いもんです。
砂漠や土漠はいくつか行ったけど今回が一番ヤバかったっす。
もちろん年齢的な衰えもあるんでしょうけど。
そもそも暑さの質が違いすぎるよね。乾燥で鼻の奥とかカラカラになるし、日なたを歩いてると10分くらいで身体中から音を立てて水分が蒸発していくんだもの。
ラクダや馬車は、だから「くっそ暑いんで短い距離でも歩きたくない」観光客のニーズを満たしてるんだと思いましたよ。
-
- ももであさん 2024/11/11 19:01:40
- けっこう仮面
いやいや~ 2日で2000ポンドとは、引越しのサカイも
おったまげの熱血価格でしたね。勉強熱心な人!
レンタカー借りても、1日1500ポンドはしそうです。
牡丹灯籠、四谷怪談、番町皿屋敷、大塚艶女別館...
どれも明るいところで見ると怖いのでしょうねぇ
クルナ村ってなんだかおもしろいですね。
殺人犯が完全犯罪のために、自宅の床下に穴を掘って
遺体を埋めるのが古典的な手法ですが、その逆!
墓の上に家を作って盗掘とは♪
今も遊戯王カードに、「ツタン仮面」があります。
ジャイアントロボはあまり見たことありませんが、
「けっこう仮面」は、子供ながらに萌えました♪
なんだか壁画の人たちがそれっぽく見えます。
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2024/11/11 21:59:10
- けっこう仮面だけでレスが終了する勢いです
- ももであさま、
いきなりけっこう仮面が出てきたのでのけ反りましたよー。
あの「けっこーーーーーー」と叫びながら息絶えていく悪人たち…
「ボクも大人になったらけっこう仮面に窒息させてもらうのだ!」
とココロに誓った少年時代でした。ハレンチ学園もかなり良かったっすよね。
もちろん大人になってもそんな結構なことは起こらず、大塚妖怪別館で果たせぬ夢を追ってたわけです(嘘でんがな)
>引越しのサカイもおったまげの熱血価格でしたね
そうなんです。
今のレートだと1ドル=50ポンドってとこですから、半日乗って20ドル。
当地の物価を考えても安すぎました。
ムハマド氏も言いだしたた手前、価格改定の提案はしづらかったらしく、最後は言いにくそうに「ガソリン代は見てくれないか」。
最後は鯨家にしては精一杯のお礼をして別れました。
クルナ村は…ドライブしてると、丘の中腹にそれ自体が遺跡みたいに見えるのでたまたま訊いたんです。いわゆる洞窟住居らしきものも見えましたんで。
「あそこに行きたい」
と言ったら、ムハマド氏は変な顔をして「クローズド」。
ちなみに村の一族は東岸に移住し、今でも観光客相手の商売をされてる方が多いそうです。
さらに、現在でも盗掘は続けられ、お土産物屋の奥にはひっそりと本物のスカラベが…なんて話も読みましたが、はて、どうなんでしょう。
>今も遊戯王カードに、「ツタン仮面」があります。
検索しちゃいましたよー。やっぱり少年たちは「ツタン仮面」だったんすね!(笑)
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