
2023/09/17 - 2023/09/17
32位(同エリア367件中)
frau.himmelさん
- frau.himmelさんTOP
- 旅行記588冊
- クチコミ0件
- Q&A回答15件
- 1,002,604アクセス
- フォロワー144人
今日は2泊したストラスブールを発ち、同じアルザスのコルマールを観光してスイスのバーゼルまで移動します。
前日突然、バーゼルのホテルがキャンセルされていたことにはパニックになりましたが、何とか新しいホテルが確保できました。
さて、コルマールでは何と言っても「ウンターリンデン美術館」です。
私は2012年に一人旅で、ドイツのフライブルクから美術館の至宝「イーゼンハイムの祭壇画」を見るためだけに日帰りで訪れたことを思い出します。あれから12年、あの頃は若かったな~。
今回は祭壇画についてもう少し詳しく、また制作者マティアス・グリューネヴァルトのことについても考えてみたいと思います。私の老化防止・ボケ防止のためです。残酷な場面が登場しますが、苦手な方はスルーしてください。
祭壇画のキリストの苦難とは比ぶべきもありませんが、後期高齢者三人にも大事件が待ち構えていました。帰りのコルマール駅で発生します。この項は次回に暴露します。
-
2泊したストラスブール。
Nさんの部屋から眺めた朝の街の風景。まだ静かです。
今日もいいお天気。
何事もなく穏やかに過ごせた2日間に感謝してホテルをテェックアウトします。 -
宇都宮市で昨年運行を開始した次世代型路面電車LRTは元々はストラスブールが発祥なのです。1994年から走っています。
今日は「アルザプラス」というチケットを持っているので、駅まで路面電車で向かいます。 -
ストラスブール駅。
フランスではラグビーワールドカップの真っ最中で盛り上がっていました。
さあ、コルマール行きの出発ホームを調べよう。 -
チケットは昨日買っておいた「アルザプラス(グループチケット)」。
TER(普通列車)、長距離バス、バス、路面電車に使えます。1枚で最大5人まで使えるので私たちはこれ1枚で大丈夫。ただし土・日・祝日のみ。
今日は日曜日なので私たちは朝から有効に使っています。 -
私たちが乗ったTERはアルザスのブドウ畑を縫ってコルマールへと走ります。
遠くの山上にお城が小さく見えてきました。ヨーロッパの風景ですね~。 -
ストラスブールから40分足らずでコルマール駅に到着。
コルマール駅にはコインロッカーがありません。
ネットで、駅中の自転車屋さんが荷物を預かってくれるとの情報がありましたのでその自転車屋さんを探します。 -
コルマール駅。
荷物預かりの自転車屋さんは駅舎の端にありました。ちょうどあのバス停の先のほう。
荷物1個2ユーロ(安い!)。
しかし12~14時はお昼休みなので、14時以降にしか受け取れないとのこと。今10時40分。それまでのんびり観光しましょう。 -
バス停が近くてよかったね。
私たちはバスで旧市街のテアター(劇場)まで行きます。
時刻表を見るとバス便は結構充実しているようです。しかもテアターは街の中心地、数分おきに出ている感じです。
しかしバスはなかなか来ませんね~。 -
グズグズしている間に駅の時計塔は11時になった。
-
向かいのバス停も人がいない。おかしいね~。
観光時間にも限りがあるし、旧市街まで歩こうか。せっかく1日乗り放題チケットを持っているから勿体ないけど。 -
静かな公園の脇を歩いていたら何やら賑わしい。
-
向こうから走ってくるのはマラソンランナーじゃない?。沿道には応援の人。
あ~なるほど、今日はこの市民マラソンが開催されるから市内交通のバスがストップしているのね。 -
まあそのおかげで、こんな瀟洒な邸宅やこんな静かな街並みなどを眺めながら散策ができます。
この付近は富裕層が住んでいる地域なのでしょうね。 -
公園の奥に給水塔が見えてきた。
-
公園の中央にはどなたかの像が。
もしかしてコルマール出身のバルトルディ?
バルトルディはニューヨークの自由の女神を造った彫刻家です。
この方はギュスターヴ・アドルフ・ヒルン(1815-1890)。
コルマール生まれの偉大な科学者です。 -
この像を制作したのがフレデリック・バルトルディ(1894-1904)だそう。
案内板には自由の女神が。
コルマール生まれのバルトルディの縁で、街の観光案内はニューヨークの自由の女神さまがやってくださるようです。 -
しばらく進むと今度は路上に自由の女神の道案内。
近くにコルマールの名所旧跡があるよ、ってことですね。 -
あそこに大きな建物が見えてきましたが、きっとこれのことでしょうね。
旧カトリーヌ教会。
1371年に建てられ、かっては修道院でした。今はコンサートホールなどとして使われているようです。 -
通りの向こうに見えるのが私たちが降りるはずだった「テアター」のバス停。マラソンのために運休されました。
ドイツや近郊のアルザスの街からバスで訪れる場合はここで降りるのが便利です。 -
コルマールのテアター、市民劇場。
-
テアターのバス停前をマラソンランナーが次々と駆けぬけて行きます。
-
テアターをぐるりと回りこむと水路の向こうにウンターリンデン美術館の重厚な建物が見えてきました。
13世紀前半に建てられた旧ドミニコ会修道院を利用した美術館です。フランス革命後の1853年に博物館として開館しました。 -
ここが入口。
12年ぶりの再訪です。 -
美術館の模型。
広すぎてどこが何やらさっぱりわかりません。
シニア旅では美術館内は別行動と決めています。好きな絵をお互い自由に見て回ったほうがいいですものね。 -
私がまず入ったところは石器時代や鉄器時代の展示物の部屋。
いろいろ写真に撮ります。私が好きなのではなく、古い埋蔵物に興味がある夫へのお土産用です。 -
当時の原始人の生活の様子や、現代のクレーンなどでの発掘の様子などが絵に描かれて展示してあり、私でも楽しめました。
-
ところが帰国して衝撃を受けました。
カメラの設定が間違っていたのか、説明の文字が全く見えないのです。
今回の他の美術館の絵画の説明なども、すべて文字は全滅。
理解できないなりにも、旅行記のコメントなどこの説明文でヒントを得ていましたから私にとっては大打撃。泣くに泣けないとはこのこと。 -
ここはワイン倉庫だったのでしょうか。
古いワイン樽やぶどう圧縮器など。
さてさて、気になる部屋はいくつもありますが、私はまずどうしても行きたいところがあります。 -
一番奥の部屋。かっての礼拝堂だったところです。
中に入ると大勢の人々。
その中央に目指すものがありました。
「イーゼンハイム祭壇画」
2012年の一人旅でどうしてもこの祭壇画が観たくてドイツのフライブルクから日帰りで訪れました。あれから12年、懐かしい再会です。 -
ドイツルネッサンスの画家マティアス・グリューネヴァルト(1470-1528)が制作した史上最も凄惨な磔刑画といわれる「イーゼンハイムの祭壇画」。
コルマール近郊にあるイーゼンハイムの聖アントニウス修道院のためにグリューネヴァルトが4年の歳月をかけて描いたもので、フランス革命の後にコルマールに移されました。 -
この祭壇画は複雑な観音開きの形状をなしており、広げると3面の場面が現れます。
まず第一面。
キリスト受難の場面です。
身体中無数の棘が突き刺さり、釘うたれた指は痙攣して曲がっている。激しい痛みに苦悶しているキリスト。
それを見た聖母マリアが失神して倒れた。聖母を支えているのは使徒ヨハネ。
血が流れているキリストの足元ではマグダラのマリアが悲痛の祈りを捧げている。香油の壺。
キリストを指さし横に立ってるのは洗礼者ヨハネ。キリストに洗礼を授けた預言者です。
ヨハネの足元には十字架を背負った神の子羊。 -
キリストの拡大。
史上もっとも凄惨な磔刑図と言われる十字架上のキリストの苦悶の表情。
見たくない方はスルーしてください。 -
磔刑図の左右のパネル。
右のパネルは聖アントニウス。彼は病気やけがの守護聖人です。
左パネルは聖セバスティアヌス。ペストの守護聖人。例によって矢に射貫かれている姿で描かれます。 -
下段はキリストの埋葬。
悲しみにくれる聖母マリアと使徒ヨハネ。 -
第二面。
右に描かれているのは「キリスト降誕」。
金色の光に包まれ天の神から祝福を受けている。
左はリートを奏でてそれを祝福している天使像。
しかし周りには気味の悪い悪徳の像も。キリストのこれからの苦難を象徴しているかのようです。 -
同じく2面。
右パネルは受胎告知。
大天使ガブリエルがマリアに神の子を宿したことを告げる。
左パネルは「キリストの復活」。
墓を見張っていた兵士たちは眠りこけ、墓から出てきたキリストは金色の光を浴び、天に昇っていく(キリストの昇天) -
第三面
ここだけはグリューネヴァルトの作ではなく、ドイツルネッサンス期の彫刻家ニコラス・ハーゲナウ(1445頃-1538)の木彫りの像。 -
向かって左は、聖アウグスティヌスと、その横で跪いているのは祭壇画の依頼者。
中央は聖アントニウスの座像と供物をささげる二人の信者。なお供物の豚はアントニウス会の紋章だそう。
右に聖ヒエロニムスの立像がある。横にはちゃんとライオンが控えている。
何かの本によると、この3人は人気聖人ベスト3ですって。 -
下段はキリストと十二使徒。
-
第三面の両翼にはグリューネヴァルトのこの2枚が付きます。
広げてあちら側からみた像を想像してください。
右のパネルは90歳の聖アントニウスが113歳の隠遁聖者聖パウロを訪問したところ。青い法衣を付けているのは聖アントニウス、シュロで編んだ衣を身につけているのは聖パウロ。113歳にしては筋肉隆々ですね。
絵の上の方では二人の奇跡の出合いを祝して二人分のパンを運んできた鳥(カラス?)が描かれている。 -
左パネルは「聖アントニウスの誘惑」この物語も有名ですよね。
砂漠で孤独な修業を積んでいる聖アントニウスに(幻想の中で)悪魔は様々な姿で彼を翻弄する。
怪獣の姿をした悪魔が聖人の手に噛みつき髪を引っ張り今にも棍棒で殴られそうになっている。
必死に痛みをこらえながら悪魔と戦っている聖アントニウス。 -
極めつけは左隅の悪魔。できものに覆われた身体、爛れた皮膚、膨れ上がった腹部。当時の人が最も恐れていた病の象徴。
空の上でキリストが放つ光に聖アントニウスは幻想から救われる。
おどろおどろしい画面です。 -
完成まで4年の歳月を要した「イーゼンハイムの祭壇画」。
描き終えたグリューネヴァルトは故郷マインツに戻りました。
真摯に宗教画だけを描き続けたグリューネヴァルトでしたが、マインツでは彼を嘆かわせる事態が起こっていました。 -
高潔な聖職者であるべきマインツ大司教の座を、時の権力者アルブレヒト・フォン・ブランデンブルク(1490-1545)が金で買ったのです。
その金はローマ教皇と利益を折半するという約束で免罪符を大量に発行したものでした。
(写真はその後訪れたマインツ大聖堂) -
ミュンヘンのアルテピナコテークにグリューネヴァルトがマインツ大司教アルブレヒト(ブランデンブルク)に命じられて描いた作品があります。
「聖エラスムスと聖マウリティウス」(1520/24)。
聖エラスムスのモデルはもちろんマインツ大司教アルブレヒト。
顕示欲のつよい大司教はこれでもかと言うほどの煌びやかな黄金の衣を着け、宝石をちりばめ贅を凝らした冠をつけている。若干23歳の若者でした。(2012年ミュンヘン:アルテピナコテークで撮る) -
その免罪符がきっかけとなってマルティン・ルターの宗教改革が始まります。
敬虔な宗教画家だったグリューネヴァルトはルターの改革に賛同します。しかしアルブレヒト大司教に逆らうことができない彼はその後絵筆を取ることはありませんでした。
「キリストの嘲笑」(1503年)グリューネヴァルト作、
ミュンヘンアルテピナコテークで2018年撮る。 -
いつしか彼の名前は忘れ去られ、その死から300年余り経った1847年までイーゼンハイム祭壇画の作者の名さえ分からなかったそうです。
そして1852年に開館したウンターリンデン美術館に展示されることになりました。
今では世界中からグリューネヴァルトの祭壇画を観るために大勢の人々が訪れます。 -
イーゼンハイムの祭壇画を見終わって礼拝堂の反対側の展示物を観ます。
こちらにも祭壇画のようなもの。 -
St.Eloiの祭壇画。
左から、聖バルバラ、聖アレクサンドリアのカタリナ、聖マルガリタそしてマグダラのマリア -
こちらには磔刑図。作者不詳。
-
「毒杯を祝福する福音書記者聖ヨハネ」(1519)
ヴィルヘルム・シュテッター(1487/1490-1552) -
その他にも興味をそそりそうな宗教画。
-
そう言えば・・・と思いだす。
入り口にあったこの銘碑。「ショーンガウアー協会」とあります。
もともとはこの美術館はコルマール出身のマルティン・ショーンガウアーの作品を散逸させないために創られたものとか。 -
2012年に一人旅で訪れた時はこのスペースはショーンガウアーの作品で溢れ、大勢の人が鑑賞していました。(2012年写す:以下同)
-
特にこれ、「ドミニコ会派修道院の祭壇画」。
全部で16面あり、とてもわかり易い絵が並んでいます。
一つ一つ聖書の物語を思い出しながら鑑賞しました。
上2つはキリストの降下とキリストの埋葬、右下はイエスの傷に触れる聖トマス。 -
マリアのエリザベツ訪問、キリストが馬小屋で生まれる、キリストと律法学者、聖母の戴冠。
-
上は何だろう?
下は左:東方三博士の礼拝。 -
イエスの復活:(イエスは復活時にアダムとエバを彼らの墓から引き出します)知らなかった。
右下:聖母被昇天、など。
聖書の物語は面白い。 -
こんなのもありました。
「オルリエの祭壇画 外側」
「キリスト降誕」「聖アントニウス」(1472)
ショーンガウアーといえば最も有名な「あれ」がありますね。次回別な場所で取り上げます。 -
イーゼンハイム祭壇画が展示されていた礼拝堂を出ます。
中庭。
私は大誤算をしていました。
ウンターリンデン美術館はイーゼンハイムの他は余り見るべきものはないと思っていました。とんでもない!。新旧にわたる美術品の展示が凄いのですね。
これを見逃す手はありませんので、これから鑑賞いたします。
この項は続編で。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
frau.himmelさんの関連旅行記
コルマール(フランス) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
6
60