2024/05/18 - 2024/05/20
184位(同エリア2098件中)
鯨の味噌汁さん
- 鯨の味噌汁さんTOP
- 旅行記142冊
- クチコミ106件
- Q&A回答2件
- 306,187アクセス
- フォロワー93人
5月18日。サラエヴォ、快晴。
午前5時に目が覚める。
そのまま着替えてフロントへ。
ホープ氏ではなく、ふくよかなお姉さんがパソコンを見つめていた。
「グモーニング」
笑顔でコーヒーを入れてくれる。かたじけない。
フロントをぐるりと見渡すと、階段の踊り場に、何点かパネル写真が掲出されている。
何かの工事を記録したらしい。
なおもよく見たら、昨日入ったハマムの浴槽だった。めちゃめちゃに壊されている。ほぼ廃墟だ。
そこで気づく。
このホテルはハマムを改装したもの、と聞いていたが、破壊されたのを「作り直し」したものなんだ。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
そのまま街に出る。
土曜日の朝だ。人通りはまだ少ない。猫があちこちにいる。
宿はミリャツカ川の南岸に建つ。川を渡るとすぐに職人街だ。 -
坂道をゆるゆると上がっていく。
道路の補修で半分かくれたサラエヴォ・ローズがある。
「許すが、忘れない」
消えかけたがバラがワシに言う。 -
サラエボからバスで南下、モスタルという町にたどりつく。
バスターミナルから、ネトレバ川の東岸をぶらぶら歩く。
こちら岸はボスニャク人の土地。
いっぽう、西側はクロアチア系のカトリックが住む。
この町も激しい内戦の舞台になり、川をはさんだ東西に分かれて砲弾を撃ち合った。
今でも街道沿いの建物にはぎょっとするような砲撃の跡が残る。
隣人は愛するものではなく殺し合う相手だった。 -
旧市街の外れにある橋は名所らしく、観光客が鈴なりだった。
今はその橋から若者が飛び込むのが名物なのだそう。そっちのほうが断然良い。
橋の見える宿に旅装を解き、旧市街を一周する。
町の中心には内戦の犠牲者の墓が並ぶ共同墓地がある。
まだ歴史になっていない、白々とした墓標には内戦の年号が刻まれる。
そのはす向かいに戦争犯罪記念館がある。
食堂でビールを飲んでたら通り雨が来た。
宿に引き返し、シャワーを浴びてウトウト。そのまま寝落ちしてしまう。 -
翌朝は7時のバス。
この旅で5つ目の国、クロアチアを目指す。
渓谷を離れ、丘陵地帯を2時間ほど走ると国境だった。
ゲートは穏やかな山塊の中腹にあった。
旧ユーゴスラビア諸国はひとつひとつの国が小ぶりだ。せいぜい関東地方くらいの面積で一国が成り立っている。
つまりは埼玉から関越道で新潟に抜けると国が変わる、みたいなものである。
国境を越えても景色はいっしょだし、住民の顔つきだってガラリと変わるわけではない。
どの街にもカトリック・ムスリム・ビザンチンがグラデーションになってるし、民族だって混じって住んでる。言葉だって方言程度の変化だ。
ふと思う。
この状況で民族とか国家とか意味あるのか。 -
正午過ぎにクロアチア・スプリトという港街につく。
ローマ時代の城壁の中に旧市街が残る。
宿は旧市街のアパートを予約した。
出発前にモスタルから宿にメールをいれると
「今どこ? そかモスタルか、こっちについたら迎えに行くから」
なんて威勢のいい反応があり、バスを降りたら大柄なお兄ちゃんが「歓迎 鯨の味噌汁様」のカードを持って立っていた。 -
お兄ちゃんの名前はルカという。
宿まで案内してくれ、かつ、みちみち観光ガイドもしてくれる。
ワシの英語力に忖度せず、ドドドッとテンポよく畳みかけてくる。いっそすがすがしくてよい。もっとも
「壁は1700年前のローマ時代からある」
「海岸通りのレストランはイマイチな店が多い」
くらいまではなんとか分かる。
あとは指差すタイミングと口調で
「丘に登れば、はるか国後に白夜はあけぬ」
「この店で都会で流行りの指輪を贈るよ、君に似合うはずだ」
みたいな感じでテキトー脳内翻訳する。
間違ってても命に別状はないからこれでいいのだ。 -
例によって日中はお昼寝、夕方から街歩き。
ルカが推奨していた西の丘に登って旧市街を眺める。
(ギリシャをのぞく)前の国三つに比べ明らかに異なるのは
1・道にゴミが落ちてない
2・お嬢様のチチが小ぶり
の2点である。
1については、クロアチアの国民性を感じる。
ゴミはゴミ箱を捨てる。タバコは灰皿に捨てる。
ルールを決めて全員で守る、たったそれだけのことだけど。
人口400万に満たないこの国のサッカーが、世界の強豪であり続けているのは偶然ではないのだろう。(⇒偉そう)
2については、google先生にお伺いを立てたが、真相は不明である。
鯨の味噌汁思えらく。
この国はイタリアの影響を色濃く受けている。
イタリアといえばローマにルネッサンスである。
言うまでもなく、ローマ彫刻に巨乳なく、ルネッサンスの代表的チチ「ヴィーナスの誕生」もまた小ぶりである。
つまりクロアチアは「チチ高きがゆえにたっとからず」といった伝統的イタリアン・チチ観の強い影響下にあったに違いない。
ここ試験に出ませんからノート取らなくていいです。 -
バスターミナル近くのフードコートで夕飯を物色していたら、見事な黒柴を連れたマダムとすれ違う。
実はワシは重度の柴犬フェチである。今まで三頭飼ったワンコはすべて柴だ。
小型犬なんぞは見ても「唐揚げにしたらうまかろう」程度の感想しか持たないが、柴犬はもれなくモフモフしたくなる。
よってマダムに近寄り、(われながら)不気味な微笑を浮かべつつ
「モフモフ(手マネ)とフォトはOKデスカ?」
マダムにっこりと
「いいわよー、この子はサトシっていうのよ」
うむむ。ポケモン恐るべし。 -
翌日は旅の最終目的地・ドブロブニクへバスで移動する。バスのブランドはFLIX。ドイツ発祥で欧州最大手のバス会社だ。
ペーパーレスが徹底していて、ネットで購入するとQRコードが送付されてきて、それがチケットになる。
バスターミナルで待っていると、東洋人の女性と目があった。
おそらく30代後半、ショートカットの黒髪、どんぐり眼。
日本人だな、となんとなく判断する。
この旅で東アジア人の観光客を山ほど見たが、ひと目で日本人と判断したのはこの人だけだった。なんでか知らないが「わかる」のだ。
というわけで日本語で尋ねる。
「座席指定ですか」
女性もフツーに答える。
「昨夜来たメールに座席番号が振ってましたよ」
メールを確認すると確かに座席の指定が来ていた。
普段の座席はフリーだが、予約で満席に近くなると座席を割り振るらしい。
隣に荷物を置き、二席確保するのを防ぐためと思われる。
8時30分、定刻発。ワシは前から2列目、彼女はずっと後方だ。 -
バスは多島海の海岸線を快調に走る。午前のアドリア海はおだやかに霞がかかり、小ぶりなクルーザーが浮かんでいる。
いくつかの街を過ぎ、大きな橋を渡ると、ゆっくりカーブを左にまわり、バスはドブロブニクの新市街へと降りていく。
やがて終点。女性とは降りぎわにご挨拶して別れた。どうぞ良い旅を。
ここから旧市街までは路線バスで移動する。
世界に冠たる観光地なので、バス路線の表示もシンプルでわかりやすい。
こうゆう細かいところを手厚くすると観光客の評価が上がるんだろう。
旧市街の門前でバスを降り、ツーリストインフォで地図をもらう。日本語のパンフレットも用意されている。 -
そこから城外の石段をぼちぼち上がり、予約したアパートメント(貸部屋)を探す。
振り返ると城壁、その向こうにアドリア海。階段を上がるごとに新しい景色がある。
ただし、午後の日差しが厳しい。たちまちにして汗が吹き出る。 -
坂を登りきり、車道を渡って小道に入る。google map が「目的地に到着しました、ルートガイドを終了します」と宣言し、沈黙する。
こうべをめぐらすと、壁には四つのドアがあり、すべてapartment の表示。
個別の名前が出ていない。このうち「当たり」はひとつか。まいったなぁ。
やむなく電話。何回かのコールの後でおばちゃんが出る。
「アイムクジラ、ブックド、トデイ。ナウアイステイ、アウトオブ、ドアー」
恥を忍んでクソバカ英語で告げると、ドアの一つが開いておばちゃんが顔を出した。あーよかった、通じた。
部屋は1階で、庭から直接入るタイプだった。庭にはおばちゃんの洗濯物がはためいており、その向こうが城壁。そこにクロアチア国旗。
おばちゃんはのんびり
「チェックアウトはカギを挿したままでいいからねー」
なんてことを言いながら奥に引っ込んだ。いかにも素人宿って感じでヨイ。 -
宿のすぐ近くがロープウェイ乗場だ。とりあえず上から眺めてみよう、と出かけることにする。それに標高が上がればいくらか涼しかろう。
だがしかし、ロープウェイ料金は往復27ユーロだった。なんとゆういいお値段、ユーロがどんどん溶けて行く。
10分ほどで頂上駅。
すぐ横が展望台で、お客さんの半分以上がアジア系だった。
韓国のおばちゃん団体がにぎやかに写真を取り合ってる。インド系は親子連れが多い。中国系は一族郎党を引き連れて移動。若者のバッグパッカーはインドネシアか。
まこと、21世紀はアジアの世紀なんだなぁ。
残念ながらその中に日本は入ってないみたいだけど。 -
景色を眺めたら、あとはノンビリだ。日陰の石段ベンチでグースカお昼寝。
下界より涼しくて大変よろしい。
1時間ほどウトウトし、やや涼しくなったところで目を覚まし、山上に残る砦を見物する。
ところどころ砲撃で派手にえぐれてる。 -
でもって砦の中は戦争博物館になっていた。
眼下の旧市街も砲撃でめちゃにめちゃにされたのだが、戦後にユネスコやらがオカネを出し、街並を元通りに修復した。
つまりは「中世の町並みがそのまま残る街」なのではなく、「そっくりそのまま復活させた街」ということだ。
内戦のパネル写真の部屋に、キリスト像が展示されていた。
一部は砲弾の破片で作られたのか、金属製だ。
うなだれ、ガッカリしている。 -
ようやく日が陰って来たところで、ふもとへ降りる。
門をくぐって旧市街へ向かう。
場内に入ると、レストランとカフェが軒を連ねている。しっかり観光地仕様だ。
午後の遅い時間なので、観光客がスシ詰め、なんて状態ではない。
ヨカッタヨカッタ。訪問する時間帯によるのだろう。
そういえばスプリトのルカ氏も
「大きなクルーズ船が港に入るとお客さんが集中して大変だ」
なんてことを言ってたっけ。 -
城壁の上をぐるりと歩くと3時間だそうだ。疲れることはしたくないのでパス。
地図をしまい、google map もオフにして、夕方の城内をお散歩。
大きい通りにはレストランやカフェが並び、椅子とテーブルが路地まで入り込んでいる。
そのまた奥は民家で、その多くにはapartment の看板が出ていた。
そしてさらに奥に行くと住民の生活スペースがあるらしい。 -
ドンづまりには小さな公園があって、若いお母さんが遊具で子供を遊ばせていた。
スーパーの袋をぶら下げたおばあちゃんがゆっくりゆっくり石段を上がってくる。
肩で息をし、途中でひと休みしている。
当たり前だけど、城内で普通に暮らしてる人もいる。
内戦のときは、城壁に守られた旧市街は落城せず、2万1000人が8ヶ月の間、籠城した。
中世の話ではない。1991年だ。 -
さて、夕飯は何を食おうか。
表通りのレストランを物色して歩く。海鮮系のお店が多いけど、やっぱ肉だよなー。今日で旧ユーゴは最後だ、ステーキ食いたい。
…などとぶつくさ言いながら店をいくつか覗いてると、目の前をバスの日本人女性が通過した。思わず声を掛ける。
「メシいっしょに食いませんかー」
先方もびっくりするが、いいですよ~、と笑顔でご返事をもらう。
目星をつけていたお店に入る。ワシはステーキ、お嬢さんはイカスミのリゾット。ワインもフルボトル。 -
「夕飯どうしようか迷ってたところでした」
そうなんだよねぇ。
ひとり旅のネックはやっぱり夕飯。
一人だと、ゆっくり食べてるつもりでも15分で終わっちゃう。
かといって独り言いいながら食うのもヘンだし。
スマホ見ながら食うのもアレだし。
お名前はユミさん(仮名)。大阪のIT会社にお勤め。出身は香川。
いきなりボケをカマしてくる。
「バスの車窓がですね、まんま瀬戸内海やーと。せっかく遠くまで来たのに、帰省してるんちゃうかいと」
わははははは。そのノリならワシもネタはいっぱいあるぞ。
とゆうわけでこの旅で初めて、バカ話をしながら夕飯。
やはりひとり旅が好きで、苦労しながらバスを乗り継いでこの街にたどり着いたのだそう。
「ワタシ英語めっちゃ苦手です!」
おいこら胸張ってゆうなよ。ワシもそうだけど。
それでなんでひとり旅。
ひとり旅オタクか。
ってことは、ワシもそうなのか。
明日もこの街を歩き、もう一泊するそう。
一つの街に2-3泊のスケジュール。
でもって最終日はミュンヘンで乗換ついでに泊まって、ビアホールに突撃するそうな。なんてステキなスケジュール。
ワシなんて現地11泊で8つの街です。後半は全部一泊で、三日前サラエボ、おとついモスタル、昨日スプリト、きょうドブロブニク、あすはアテネ、あさって帰国。
「スゴロクみたいですね」
確かに言われてみれば。
ベッドで目が覚めるたびに「ここどこだったっけ」になるし。何なら国名すら忘れるし。
でもいいんすよ、街をぶらぶら歩くの好きだし、岬めぐりのバスに乗って僕はどうして生きていこう、なんてのも好きなんで。(居直り)
すっかり暗くなるまで話し込み、最後に写真を撮らせていただいた。
ひとり旅オタクどうしの楽しいディナーであった。 -
ユミさんと別れ、旧市街の石段を上る。
正面にはロープウェイの頂上駅の灯りが、教会の燭台のように光っていた。
あれを目指して歩けば宿に帰れる。
それから門をくぐり、アパートメントに帰っていった。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (4)
-
- 小心者さん 2024/05/31 12:42:32
- あっという間に終わってもた
- もうちょい楽しませてくれ、と思いましたが、まぁ若い…やのうて「なんせヒマ(世界ランキング2位)」やからな…。
でも確かに、観光地ウェーイな写真は他所でいくらでも見ることができますもんね。
少ない写真で「ほほぅ」と言わせる目線がすごいす。
あと、いったいどんな英語を「この店で都会で流行りの指輪を贈るよ、君に似合うはずだ」と翻訳しとるんか、詳しく。
大先生の旅行記はマジで目に毒やなぁ。
諦めきっていた旧ユーゴ諸国の旅、挑戦したくなりました。
小心者
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2024/05/31 20:06:40
- 速いわい。ココロは高校生だもの(はあと)
- 肉体は64歳汚物系のハゲデブでも、心は怒涛奉拝天を突くイキオイの高校生なのよ。
若いころは池袋北口で「速射砲」と呼ばれ尊敬を集めたものです。(手間のかからない客)
ホホ翻訳ですか。
そうですかそこ聞きますか。
ワシに英会話の追及するとはいい度胸してますなお嬢さん。
言ったからにはどうゆうことが起こるか当然、覚悟してますよね?
スタタタタタ(逃げる)
-
- willyさん 2024/05/31 12:39:16
- うなだれたキリスト
- 鯨さん
楽しく素敵な街歩きの記、ありがとうございました。
いつもながら大切に読ませていただきました。
がっかりしますよね、そら。キリストさんも。
willy
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2024/05/31 20:17:47
- 街歩きといいながらほぼ何も書いてない
- 日程以外はほぼ何も書いてない日記を「大切に」読んでいただき恐縮しちょります。
今回は「国の空気を吸いたい」と出かけた旅でした。
名所旧跡を歩く前にいろんなものに引っかかりました。
引っかかってるうちに一日が終わりました。
キリストも泣きますよ。ホンマに。ワシもひさびさにキツかったっす。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
ドブロブニク(クロアチア) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
ドブロブニク(クロアチア) の人気ホテル
クロアチアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?
フォートラベル GLOBAL WiFiなら
クロアチア最安
421円/日~
- 空港で受取・返却可能
- お得なポイントがたまる
旅行記グループ バルカン半島
4
22