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2021年11月19日(金)12時過ぎ、安倍元首相暗殺で有名になってしまったが、奈良市の西大寺に出掛けた。実は、元々行こうとして行ったのではなく、この前の週に西大寺駅の近くで食事したのだが、連れ合いが帽子を忘れてしまい、それを回収しに行ったついでだった。<br /><br />西大寺は射殺事件のあった近鉄西大寺駅の西側にある真言律宗の総本山寺院。山号は勝宝山で本尊は釈迦如来。事件のあった場所からは駅の反対側。それはさておき、奈良の寺と云えば世界遺産にもなっている東大寺が世界的に有名だが、西大寺は近鉄駅の方が有名なくらい。しかし、今も一部が歴史公園として整備されているが、平城京を挟んで東の東大寺、西の西大寺と双璧を成していた。<br /><br />創建は奈良時代の764年に、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱に際して、孝謙上皇が乱の平定を祈願して金銅四天王の造像と寺院の建立を発願したことに始まる。翌年、上皇は重祚して称徳天皇となり、四天王像を鋳造し、西大寺が創建された。<br /><br />西大寺の寺名はいうまでもなく、東大寺に対するもの。平城京右京一条三・四坊に位置し、東西十一町、南北七町、広さが31町(約48ha)という広大な境域に、薬師、弥勒の両金堂を始め四王堂、十一面堂、東西の五重塔など、百十数字の堂宇が甍を並べ、南都七大寺の1つに数えられる大寺院だった。<br /><br />しかし、平安時代に度々火災に見舞われ、多くの堂塔が失われ、興福寺の支配下に入った。鎌倉中期に興正菩薩叡尊によって復興され、真言律宗の根本道場として整備された。現存する建物はすべて、そのプランに基づいて江戸時代に再建されたもの。寺域は創建当初からは大幅に縮小している。<br /><br />駅に近い東門から境内に入る。門を抜けてすぐ北側に法寿院(下の写真1)、南側に清淨院(下の写真2)。いずれも非公開の塔頭。<br /><br />法寿院は元々は鎌倉時代に開かれた饒益(にょうやく)坊の三庵の一つで法寿庵と呼ばれていた。本尊は阿弥陀如来で、不動明王、禅心上人像も祀られている。本堂の阿弥陀堂は1656年に再建されたもの。<br /><br />清淨院はもとは東室の一院だったものを第49代長老賢瑜和上が坊舎を再造した。1983年に出火全焼したが、本尊諸仏は難をまぬがれ、翌年復興され現在に及ぶ。本尊不動明王坐像は宝山湛海作と伝えられる。<br /><br />その先に進むと四王堂、観音堂とも云う。西大寺創建の端緒となった称徳天皇誓願の四天王像をまつる仏堂。現在の堂舎は江戸初期の1674年の再建。正面3間・奥行2間の寄棟造で、身舎(もや)の四周に裳階(もこし)を廻らし、外観は二重風の建築となっている。堂舎周囲の版築基壇は奈良時代創建当初の規模を伝える。<br /><br />拝観料を払って入堂し、木造十一面観音立像と四天王立像を拝観する(堂内は撮影禁止なので写真はない)。共に国の重文。観音立像は平安時代後期に造られた長谷寺式十一面観音。鎌倉時代の1289年に京都・白河の法勝寺十一面堂院の本尊を移したもの。<br /><br />四天王立像は元々は孝謙上皇発願の四天王像だが、現在は足下の邪鬼にのみ奈良時代のものを残す。像本体は持国天・増長天・広目天像が銅造で鎌倉時代、多聞天像のみ木造で室町時代の作と推定される。<br /><br />なお、この時は拝観券は四王堂、本堂、愛染堂でそれぞれ個別に購入することが出来たが、今年(2022年)4月からは共通拝観券のみとなったそうだ。私たちはこの時も共通拝観券で入ったが。<br /><br />四王堂と道を挟んで池があるが、その畔に玄武の陶板画がある(下の写真3)。2010年に平城遷都1300年にあわせ、平城京の北の守り神として制作されたもの。<br /><br />その右手、池の北西角に建つ木は百萬の古柳(下の写真4)。百萬とは観阿弥作の能楽の題目。百萬と云う女曲舞(踊り子)が我が子とはぐれたのがこの辺り。枝垂れ柳でなく赤芽柳(丸葉柳)。なお、そのはぐれた子とは、やがて京都嵯峨の清凉寺で再会した。近くにはこの話を詠んだ吟詠家の田中哲菖さんの歌碑も建つ(下の写真5)。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.8326850474051570&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />本堂に向かうが、続く

奈良 西大寺 四王堂(Shio-do,Saidaiji Temple,Nara,Japan)

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2021/11/19 - 2021/11/19

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旅行記グループ 西大寺

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ちふゆ

ちふゆさん

2021年11月19日(金)12時過ぎ、安倍元首相暗殺で有名になってしまったが、奈良市の西大寺に出掛けた。実は、元々行こうとして行ったのではなく、この前の週に西大寺駅の近くで食事したのだが、連れ合いが帽子を忘れてしまい、それを回収しに行ったついでだった。

西大寺は射殺事件のあった近鉄西大寺駅の西側にある真言律宗の総本山寺院。山号は勝宝山で本尊は釈迦如来。事件のあった場所からは駅の反対側。それはさておき、奈良の寺と云えば世界遺産にもなっている東大寺が世界的に有名だが、西大寺は近鉄駅の方が有名なくらい。しかし、今も一部が歴史公園として整備されているが、平城京を挟んで東の東大寺、西の西大寺と双璧を成していた。

創建は奈良時代の764年に、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱に際して、孝謙上皇が乱の平定を祈願して金銅四天王の造像と寺院の建立を発願したことに始まる。翌年、上皇は重祚して称徳天皇となり、四天王像を鋳造し、西大寺が創建された。

西大寺の寺名はいうまでもなく、東大寺に対するもの。平城京右京一条三・四坊に位置し、東西十一町、南北七町、広さが31町(約48ha)という広大な境域に、薬師、弥勒の両金堂を始め四王堂、十一面堂、東西の五重塔など、百十数字の堂宇が甍を並べ、南都七大寺の1つに数えられる大寺院だった。

しかし、平安時代に度々火災に見舞われ、多くの堂塔が失われ、興福寺の支配下に入った。鎌倉中期に興正菩薩叡尊によって復興され、真言律宗の根本道場として整備された。現存する建物はすべて、そのプランに基づいて江戸時代に再建されたもの。寺域は創建当初からは大幅に縮小している。

駅に近い東門から境内に入る。門を抜けてすぐ北側に法寿院(下の写真1)、南側に清淨院(下の写真2)。いずれも非公開の塔頭。

法寿院は元々は鎌倉時代に開かれた饒益(にょうやく)坊の三庵の一つで法寿庵と呼ばれていた。本尊は阿弥陀如来で、不動明王、禅心上人像も祀られている。本堂の阿弥陀堂は1656年に再建されたもの。

清淨院はもとは東室の一院だったものを第49代長老賢瑜和上が坊舎を再造した。1983年に出火全焼したが、本尊諸仏は難をまぬがれ、翌年復興され現在に及ぶ。本尊不動明王坐像は宝山湛海作と伝えられる。

その先に進むと四王堂、観音堂とも云う。西大寺創建の端緒となった称徳天皇誓願の四天王像をまつる仏堂。現在の堂舎は江戸初期の1674年の再建。正面3間・奥行2間の寄棟造で、身舎(もや)の四周に裳階(もこし)を廻らし、外観は二重風の建築となっている。堂舎周囲の版築基壇は奈良時代創建当初の規模を伝える。

拝観料を払って入堂し、木造十一面観音立像と四天王立像を拝観する(堂内は撮影禁止なので写真はない)。共に国の重文。観音立像は平安時代後期に造られた長谷寺式十一面観音。鎌倉時代の1289年に京都・白河の法勝寺十一面堂院の本尊を移したもの。

四天王立像は元々は孝謙上皇発願の四天王像だが、現在は足下の邪鬼にのみ奈良時代のものを残す。像本体は持国天・増長天・広目天像が銅造で鎌倉時代、多聞天像のみ木造で室町時代の作と推定される。

なお、この時は拝観券は四王堂、本堂、愛染堂でそれぞれ個別に購入することが出来たが、今年(2022年)4月からは共通拝観券のみとなったそうだ。私たちはこの時も共通拝観券で入ったが。

四王堂と道を挟んで池があるが、その畔に玄武の陶板画がある(下の写真3)。2010年に平城遷都1300年にあわせ、平城京の北の守り神として制作されたもの。

その右手、池の北西角に建つ木は百萬の古柳(下の写真4)。百萬とは観阿弥作の能楽の題目。百萬と云う女曲舞(踊り子)が我が子とはぐれたのがこの辺り。枝垂れ柳でなく赤芽柳(丸葉柳)。なお、そのはぐれた子とは、やがて京都嵯峨の清凉寺で再会した。近くにはこの話を詠んだ吟詠家の田中哲菖さんの歌碑も建つ(下の写真5)。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.8326850474051570&type=1&l=223fe1adec


本堂に向かうが、続く

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  • 写真1 法寿院

    写真1 法寿院

  • 写真2 清浄院

    写真2 清浄院

  • 写真3 玄武陶板画

    写真3 玄武陶板画

  • 写真4 百萬の古柳

    写真4 百萬の古柳

  • 写真5 田中哲菖歌碑

    写真5 田中哲菖歌碑

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