2022/08/28 - 2022/08/28
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kojikojiさん
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この旅行記のスケジュール
2022/08/28
この旅行記スケジュールを元に
今年の7月と8月は異常な暑さと天候不順による大雨とコロナの感染者の増加を鑑みてどこへも旅行に出ませんでした。4回目のワクチン接種で病院に行った際にネットのニュースを見ていて中野区の江古田にある「哲学堂」で「哲学堂と民族芸能のひびき ワヤン・クリ」というイベントがあることを知りました。9年前にバリ島の伝統芸能を観るために2週間、ジャワ島に移動して伝統芸能を1週間堪能する旅をしたことがありましたが、明るくリズミカルなバリのガムランに対して、静かなジャワ島のガムランに魅了されました。またワヤン・クリという影絵とガムランの演奏を聴くために「ソノブドヨ博物館」にも何度も通いました。それが「哲学堂」のオープンエアーの森の中の「時空岡」で生演奏が聴けるのですから行かないわけにはいきません。定員50人で発表されてからだいぶ経っていたので病院を出てすぐに電話してみました。上手いことに予約も出来て一安心です。当日は朝から雨が降っていましたが、午後には上がって、涼しいくらいの気温の中での観劇はとても気持ち良かったです。子供の頃の夏祭りを思い出すような雰囲気の中、刻々と暮れてゆく時間も楽しめました。ワヤン・クリの場合何日もかけて上演する「ラーマ・ヤーナ叙事詩」が有名ですが、この日の演目は「幽霊城チントコプロ」というものでした。以前の旅行記でも書き記しましたが、「哲学堂」と幽霊は切っても切れない縁があるので、偶然なのか面白い趣向だと思いました。受付を済ませて「哲理門」から会場である「時空岡」という広場に入りますが、この門には幽霊の像と天狗の像が安置されています。門を潜って、ケリールと呼ばれるスクリーンの前まで行くとすでに影絵の側の席はほとんど埋まっていました。ワヤン・クリの場合は裏側である演者やガムランの動きが面白く、牛皮製の人形たちはとてもカラフルなので裏側に座った方が楽しいです。午後6時30分に開演され、午後8時前に終了しました。撮影に来られていたJ-COMにインタビューを受けて、アンケートを書いて我が家のささやかな夏休みは終わりました。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 交通
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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今年の春に50年振りに「哲学堂」の桜を観に来て、4か月後に再び来るとは思ってもいませんでした。江古田駅から中野行のバスに乗って10分ほどで到着しました。野球場の脇から公園に向かいます。
哲学堂公園 公園・植物園
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既に公演は閉園している時間ですが、スタッフの方が受付を行っていました。名前を伝えて手指消毒と検温をして、マスク着用で会場に向かいます。
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受付の横には「哲理門」があります。哲学堂公園は明治37年に哲学者で東洋大学の創立者である井上円了によって精神修養の場として創設されています。この門は「妖怪門」とも呼ばれていますが、門の両側には幽霊と天狗が納められています。哲学者として著名な円了ですが、いわゆる妖怪研究を批判的に行った人物としても知られます。
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円了は「妖怪学」「妖怪学講義」などでそれぞれの妖怪についての考察を深め、当時の科学では解明できない妖怪を「真怪」、自然現象によって実際に発生する妖怪を「仮怪」、誤認や恐怖感など心理的要因によって生まれてくる妖怪を「誤怪」、人が人為的に引き起こした妖怪を「偽怪」と分類しています。
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「哲理門」を抜けた「時空岡」がこの日のワヤン・クリの会場になります。演目は「幽霊城チントコプロ」なので、幽霊門を抜けた先で演じるにはもってこいのプログラムです。三層六角形のこの建物は「六賢臺」で、「哲学堂」のシンボルのような建物です。
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「時空岡(じくうこう)」の真ん中に舞台が設えてあります。影を写す白い布のスクリーンはケリールと呼ばれ、手前側が舞台裏になります。インドネシアのワヤン・クリは影絵ではありますが、観客に人気があるのは裏側になります。
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ジャワ島の「ソノブドヨ博物館」では毎晩ワヤン・クリを観劇する会が催されますが、お客のほとんどは舞台裏側に座っていました。この日は先に来ていたお客さんはほとんどがスクリーンの向こう側に座っていました。舞台裏側の席はほとんど空いていたのでラッキーでした。
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ジャワガムランのルーツは紀元前にジャワに伝わったベトナムの青銅文化のドンソン文化で、ジャワの代々の王朝の庇護を受けながら花開き、現在に至っています。使用する楽器は約15種類で、サロン(鉄琴)やゴング(銅羅)などの青銅製打楽器群に加え、クンダン(両面太鼓)やルバブ(二弦楽器)、ガンバン(木琴)など青銅以外の素材でできた楽器があり、オーケストラ形式で演奏されます。
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この日は「クルタクルティ( Kluthak-Kluthek)」というダランの加清明子さん率いるグループの公演です。ダランとはスクリーンのすぐ裏側で影絵人形を操る人物です。1人で延々と操るのですからとても大変だと思います。
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巨大な団扇のような物はサンピンガンと呼ばれ、舞台で場面が変わる時の緞帳のような役目をします。1枚の水牛の皮を鞣し、皮に細かい穴を穿って模様を彫って、さらに美しい絵が描かれてあります。スクリーンの反対側に座っていると白黒のシルエットだけなのでこの美しい絵は楽しめません。劇中では場面が変わる際に緞帳の様な役をもします。
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グヌンガン(Gunungan)はカヨンとも呼ばれ、形は聖なる山であるメル山(須弥山)を表しています。一番重要なモチーフは真ん中に描かれた生命の木で、周囲には虎などの動物やクパラカラやラクササなどの怪物が描かれています。
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楽器を眺めていると9年前に旅したバリ島の2週間とジャワ島の1週間の旅の記憶が蘇ってきます。バリ島の音楽との出会いは大好きだった大友克洋の「AKIRA」の映画でした。芸能山城組のアキラのテーマのジュゴクのリズムに魅了されました。
https://www.youtube.com/watch?v=GK4jviXPzMU -
その後にバリ島で観たケチャと王宮の劇団の演奏と踊りに魅了されました。そして9年前の旅行では毎晩のようにウブドゥ周辺の裏村まで巡りました。それまでは艶やかなバリヒンドゥーの踊りやガムランに惹かれましたが、その続きに行ったジャワ島のクラトンで聴いたガムランの調べは全く違う印象を受けました。
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同じような楽器を使っているにもかかわらず、もの悲しい響きに魅了されました。同じ国でありながら島が1つ変わるだけで文化も違うのだなと感じました。また近いうちにジャワ島に行きたいと思いながらその願いは叶わずにいますが、日本でジャワのガムランの演奏を聴けるとは思いませんでした。
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この日の出演は「クルタクルティ(Kluthak-Kluthek)」というグループです。
ダランとガムラン隊で構成されたワヤン一座で、ガムランの生演奏と日本語の語りによるワヤンを上演しているそうです。メインの楽器はジャワスタイルのようです。グループ名「クルタクルティ」は、箱の中で何かがカタコトいうジャワ語の擬音だそうです。 -
ジャワ島のジョグジャカルタの博物館で夜間に観たのは「ラーマヤーナ叙事詩」の2つのべ面でしたが、何しろ登場人物が多いので、大枠のストーリーは本を読んでいたことと英文のパンフレットで理解できましたが人物までは把握できませんでした。ところがこの劇団では登場人物の写真が添えられているので理解しやすいです。
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午後6時30分になってスタートしました。午前中の雨も上がって、夕方からは涼しいくらいでした。「哲学堂」の森の中ですからやぶ蚊の心配をしていましたが問題ありませんでした。それよりも蝉の声が最初のうちはうるさかったです。
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物語のスタートと場面転換ではこのグヌンガン(Gunungan)が劇場で言う緞帳の様な役目をします。それ自体も美しいのですが、透かし彫りになっているので、光線が当たるとさらに美しいレース模様のように見えます。
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ダランと呼ばれる演者は語り部でもあるのですが、ここでは別の方が物語を語っていました。上演時間の1時間30分、ずっと人形を操るので大変な体力だと思います。
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ワヤン人形は水牛のなめし革製の棒操り人形です。革には細かい透かし彫りと彩色がほどこされます。伝統的な作り方では革自体が透けないように下塗りをします。こうすることで人形の影は色のない白黒の世界になります。人形の中心を通る支えの棒と手を操る棒は水牛の角からできています。細く裂いた角をランプの熱で温め、人形の形に沿わせ器用に曲げていきます。ジョグジャのクラトンからタマン・サリへ向かう町中を歩いているとそんな作業を見ることが出来ます。
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ジョグジャカルタでは博物館の建物の中で観たのですが、このようなオープンエアのステージは初めてです。バリ島などで夜になって車で走っていると、小さな村を通りがかるとこんな風景を見ることがあります。
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「哲学堂」の「時空岡」という哲学的な空間でガムランの調べを聴いていると時間も空間も超越した不思議な感覚にとらわれます。洋子の場所を思いついたなと感心します。
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この日の演目の「幽霊城チントコプロ」は「マハーバーラタ」の一部ということです。「ラーマーヤナ」とともにインドの二大叙事詩と称され、世界で最も長い叙事詩ともいわれます。この長大な物語には古代インドにおける人生の四大目的、法(ダルマ)と実利(アルタ)、性愛(カーマ)と解脱(モークシャ)が語られており、これら4つに関して「ここに存在するものは他にもある。しかし、ここに存在しないものは、他のどこにもない」とマハーバーラタ自身が語っています。
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王宮を追放され放浪することになってしまったパンダワたち5人の兄弟がたどり着いたのはカミヨコの森の奥深くにあるチントコプロという幽霊城でした。
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パンダワ兄弟は彼らに好意を寄せるマツウォパティ王から森の一部を譲り受けます。一足先にその森に入ったプロセトノは後から来る兄弟のために森を切り開き、道を作っていきます。
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森の中にはそこに住むお化けたちが右往左往しています。
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森の奥にある幽霊城チントコプロでは、城の住人であるジンの兄弟が森で起きている騒動について語り合っています。長男のジン・ユディスティロが弟たちに語りかけます。
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右にはジン・ガディンパウキルとジン・クルバンアリアリ、双子のジン・クナロとジン・サデウォが続きます。ジンとは妖(あやかし)という意味です。
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グヌンガンが出てくると場面が変わることが分かります。
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パンダワの5人の兄弟が揃いました。ここでは長男のプントデウォが弟たちに語りかけます。
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プロトセノとプルマディと双子のピンテンとタンセンです。
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物語は非常にゆっくり進むので時間がかかります。ジョグジャカルタのソノブドヨ博物館でも毎晩4時間ほどの公演が8日間続き、1演目が終わるというペースなので観光客が全部観ることは不可能です。
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召使いのペトルとガレンとバゴン達も追いついてやってきました。3人は兄弟で、スマルの息子たちです。
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ペトルはポノカワンの中で一番饒舌で歌が上手といわれ、流暢にしゃべり人を煙に巻くのが得意です。ペトルの別名はカントンポロンといい、穴の空いた袋の意味があります。
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双子のピンテンとタンセンは動きも一緒です。
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ペトルは腰に巻いたサルンに腰帯姿で、背中にはクリスという短剣を差しています。ジョグジャの王宮のアブディダルムと呼ばれる家臣の姿を思い出します。
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リンプは母と共に宮廷につかえる女官です。太っちょの容姿ですが、世間話から教訓から生活の知恵まで豊富な話題で話をします。道化的な役割でもあります。
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バゴンは父親のスマルに姿が似ています。ペトルと違って話が下手で歌も下手で、どんくさいキャラクターといえます。
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劇中でも観客は自由に歩き回ることが出来ます。これはジャワ島でも同じで、影絵を楽しんだり、ガムランの演奏を楽しんだりできます。
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ほとんどのお客さんが影絵側に座っていました。
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影絵側から眺めると黒いシルエットだけなので、同じ姿をした王子たちと妖であるジンたちの違いは見分けられません。
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森の向こうは住宅街の明かりがあるので空も明るいです。夏の終わりにこのようなシチュエーションでワヤン・クリを楽しめるのは贅沢なことだと思いました。
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ブトテロンは茄子の様に大きな鼻です。鼻に掛かった声で歌が大好きで、お腹も出ています。演者のダランは上演の場一切を取り仕切っていますが、ガムラン奏者とコミュニケーションをとるためのいろいろなルールが存在します。曲を選んだり曲の進行に指示を出すためには楽曲についての深い知識と経験が必要です。優秀なダランは物語を構成したり語りが上手く、人形操作が巧いことはもちろん、ガムランも自由に操れます。
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ダランは人形をスクリーンから離すことによって立体感や感情を人形に与えているように見えます。
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実際の人形とシルエットの両方が楽しめる裏側の方が絶対に面白いと思います。
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裏から見ると美しい彩色が楽しめるグヌンガンです。
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シルエットになるとまた違った美しさを感じさせます。
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場面は変わってチントコプロの城の中でパンダワの5人兄弟と姿がそっくりなジンの兄弟5人が対面します。
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双子のタンセンとピンデンはそっくりな姿をしたジン・サデウォとジン・ナクロと戦います。そしてジンの2人はそれぞれタンセンとピンデンの体の中に取り込まれて姿を消していきます。
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ジン・クンバンアリアリはプルマンディと戦い、敗れるとプルマンディの体と一体化していきます。
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体の大きなジン・ガディンパウキルとプロトセノの戦いは迫力があります。
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この頃になると妖のジンたちは自分たちが影の存在で、実態を失ってしまうことを感じています。それでも戦い続ける姿を観ていると物語に引き込まれていくのを感じます。
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シルエットは大きくなったり小さくなったり迫力があります。負けると分かりながら戦う姿に感動してきます。
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最後はジン・ユディスティロとプントデウォの死闘が演じられ、ジンたちの5人兄弟は姿を消して、パンダワの5人兄弟だけが残ります。悲しいストーリーの終わりともの悲しいガムランの音色が何とも言えない劇の終わりを迎えます。ちょうど90分雄演目が終わると午後8時になっていました。撮影に来られていたJ.COMのインタビューを受けて、バスに乗って江古田に向かいました。ほとんどどこにも行かなかった今年の夏も同時に終わりました。
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