メキシコシティのセマナサンタでイエスキリストの受難を再現 (Passion of the Christ in Semana Santa)

2022/04/14 - 2022/04/17

メキシコでセマナサンタを祝います。毎年3-4月に開催され英語ではイースター・日本語では復活祭と呼ばれて、キリスト教の国ではクリスマスに並んでメジャーな祝日です。私もキリスト教の国に住んでいますが、日本の人にイースターをどうやって祝うか訊かれたら返事に困ります。熱心なキリスト教徒は教会に行きますが、それ以外の一般人には子供がイースターエッグ探しやイースターショーの仮設遊園地で遊ぶ俗世的なイメージしかないです。そんな私に本物のイースターを教えてくれたのが、メキシコのセマナサンタです。イエスキリストの受難から復活までイベントで再現しており、キリスト教の起源を勉強できます。メキシコシティでは教会の中だけでなく、町中でセマナサンタを祝う様子が見られて、観光客でも参加して楽しむことができます。2022年4月はコロナ禍の影響は減ってきており、3年ぶりにセマナサンタを盛大に祝います。

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エリア メキシコシティ(メキシコ)

• 旅行の満足度: 4.5

セマナサンタは1週間前から続く聖週間(ホーリーウィーク)、本来のメキシコでは1週間祝い事が続きます。しかし2022年4月はコロナ禍が収束しておらず、メキシコシティの政府は慎重に再開を決めます。本来は1週間毎日祝うところを最も重要な金曜日のみイベントを開催して、他の日は教会サービスのみとなります。多くの人がマスクを着用しています。私は事前にネットでセマナサンタの情報収集をしましたが、殆ど具体的なイベント情報が得られないままメキシコへと出発します。この写真のメトロポリタン大聖堂では、木・金・土・日の4日間に教会サービスが開催されます。

セマナサンタ(イースター)木曜日、観光も兼ねてメキシコシティを歩き回りましたが、観光客も参加できるセマナサンタのイベントは見つかりません。これはセントロのメトロポリタン大聖堂。入場に長い行列ができています。教会ではミサが行われており熱心な信者が沢山集まっています。ミサの雰囲気から教会内部の写真は遠慮しておきます。

メキシコシティ メトロポリタン大聖堂 寺院・教会

セマナサンタ(イースター)金曜日の朝、今朝もメキシコシティのセントロを歩いていると、ご覧の人たちが集まっています。捕われているのはイエス様ではないですか。

ソカロ (中央広場) 広場・公園

テレビ局も取材に来ています。何かが始まりそうな感じです。予期せぬセマナサンタのストリート・ドラマに遭遇です。

注：これからドラマが始まりますが、私にはスペイン語のセリフは分かりませんので、聖書から推定して説明します。キリスト教宗派によってこのストーリーは若干異なります。

ドラマが始まり行列が動き出すと、イエス様は最後の審判に連れていかれます。ユダヤのあり方を批判し人々に神の教えを説くなどしていたイエス様が、支配者ローマ帝国へ反逆者として渡されるシーンからドラマは始まります。この時代はローマ帝国がエルサレム周辺を支配しており、ユダヤは属州でした。

その後ろを歩くのはイエス様を信仰する人々。皆心配そうな顔をしています。

しかしイエス様を十字架に磔たい人たちもいます。ユダヤの祭司は、イエスが秩序を乱したと怒っています。群衆は言い争いになっています。

聖書では処刑賛成派の「磔ろ、磔ろ！」という声が大きかったとの事ですが、ここでは処刑反対派が多い感じです。反対派は涙ながらに訴えています。キリスト教宗派によって聖書には様々なストーリーがあります。

左は裁判官であるユダヤ属州総督ピラト Pilatusです。有名な言葉「お前はユダヤ人の王なのか」と訊いています。イエス様は「それはあなたが言っていることです」と曖昧に答えて黙ってしまいます。

沈黙を続ける態度に反感を持ったのか、ローマ帝国兵がイエス様を鞭で打ち付けます。叫び声を上げるイエス様。

散々痛めつけた後に派手なマントと荊冠を掛けられます。ピラトはこの鞭打ちで刑を終わらせようとしたとしますが、ユダヤ祭司は納得しません。

判決の時、ピラトは迷います。ピラト個人は磔の刑には値しないと考えていた様ですが、ユダヤ祭司らの勢いに押されて磔の刑を宣言します。

十字架が運ばれてきます。

イエス様は自ら磔となる十字架を持ち上げます。

救い主であるイエス・キリストが人類をその罪から救うために、身代わりになる決心をします。

イエス様の背後には、もう2人の罪人が連れられます。ヴィア・ドロローサを歩きます。2016年にエルサレムで実際にヴィア・ドロローサを歩いた時の記憶と重ねます。
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十字架は重くてイエス様は転んでしまします。母マリアが駆けつけて悲しみます。

ローマ帝国兵は容赦無く、十字架を運ぶ様に命じます。後ろの罪人は言います「自分達は処刑に値するが、イエスは何も悪い事はしていない。私のことを覚えておいてください」イエス様は「本当の事を言う。今日お前は私と天国へ行く」と答えます。

何度も崩れ落ちるイエス様。

見ていられない信者からは涙の言葉が。イエス様は言います「エルサレムの娘さん、私のために泣かないで。あなたやあなたの子供に泣いてください」。

後半になるとストリート・ドラマの観客が沢山押しかけてイエス様を囲んでしまい、何をやっているのか見えない状態です。ドラマの舞台上に自由に観客が上がれる様な状態で、企画側がしっかり観客を管理していない事が問題ですが。

ゴルゴダの丘(実際はメトロポリタン大聖堂の広場を一周)に着くと、磔の刑の執行が開始されます。罪状書きには、「ユダヤ人の王」または「ナザレのイエス」の意味の”INRI” (IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM)が刻まれています。

イエス様は十字架に磔となり針を打ち付けられ、それを見て泣き出す信者たち。

刑が執行される最後の瞬間です。

イエス様は息を引き取りました。

深く悲しむ信者たち。

ここでドラマは終了です。役者が全員集まり記念撮影。連続ノーカット1時間15分のストリート・ドラマで、役者は一度も失敗なくセリフを言えるとはさすがです。彼らは熱心なカトリック信者で毎日聖書を読んでいるからでしょう。私はスペイン語は分かりませんが、雰囲気だけでもキリストの受難のドラマは楽しめました。

セマナサンタ(イースター)金曜日の午後、イスタパラパ Iztapalapaへ向かいます。イスタパラパはメキシコシティの南東部にあり、イースターを盛大に祝う地域として知られています。仮設遊園地と屋台が並んでおり祭りの雰囲気です。

イエス様の藁人形などが売られています。

イスタパラパ教会です。大勢の人が入場に列を作っています。

中には十字架を担ぐイエス様の姿が。イスタパラパはセマナサンタ金曜日に、この様なイエス様になりきって十字架を担いで歩くイベントで有名です。

イスタパラパはメキシコシティでは下町の様な感じで治安は決して良くはありません。日本人の駐在員なら絶対に近づかない地域です。この日も武装警察の厳戒態勢でイベントが開催されます。

イスタパラパの広場には大勢の人々が。全く近寄れません。この日は100万人がイスタパラパを訪れたそうです。

舞台では今朝見たものと同様なドラマが演じられている様です。遠すぎてよく分かりません。

”INRI” (IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM)の罪状書きと十字架を持ったローマ兵が舞台に向かいます。

舞台の帰りはイエス様が十字架を背負って登場。観客は大興奮。ヴィア・ドロローサを歩くイエス様をローマ兵が観客を必死で守っています。

音楽隊が続きます。緑のベストの警官に守られながら大混雑を進みます。観客も多いですが、警察官もすごい人数が集まっています。

イエス様の信者たち、朝のストリート・ドラマと展開は同じです。

イスタパラパでは大勢が十字架を担いで坂を登るパレードすると聞いていたのですが、ここで見たのは一人だけ。どうも間違えた場所でスタンバイしていた様です。間違いに気が付き、パレードの正しい場所に行くも人が多すぎて全く近づけません。歩道橋の上にもそのシンボルが。

イスタパラパの丘です。ここでイエス様が磔にされます。ご覧の人が吊るされており、女性の泣く声(録音)が大音量で拡散されて、異様な雰囲気です。ローマ帝国時代の残酷な歴史を再現しています。

磔の刑が始まります。十字架にかけられるイエス様。

大勢の群衆が見守っています。2022年前のゴルゴダの丘もこんな雰囲気だったのでしょうか。

磔の刑が執行されて下されるイエス様。

セレモニーは終わります。帰りには各町内の代表が十字架を担いで坂を降りています。肝心の登るシーンは見られなかったのですが、その代わりイベントが終わり降りるところに遭遇します。

太い丸太で作った十字架は重そうで、降りるのも一苦労です。イスタパラパの各町内対抗の十字架担ぎは、日本の各町内で神輿を担ぐ祭りとも似ています。

沢山の十字架を担ぐ人々が降りてきます。後ろに見えるのは春の名物ジャカランダ(スペイン語でハカランダ)の花。

セマナサンタ(イースター)金曜日の夕方、再びセントロに戻るとイエス様のお葬式の行進がみられます。

イエス様が埋葬されるために運ばれます。

教会の中に運び込まれます。聖書によると、実際はイエス様は町から離れた場所に埋葬されています。

セマナサンタ(イースター)土曜日、この日は皆が悲しみに暮れる日です。イエス様はぐったりとして葬式用の白い花が飾られています。土曜日の昼間は特にイベントはありません。

土曜日の夜になると、花火が打ち上がっています。土曜日は悲しみの日のはずですが、突然どうしたのでしょう。

夜に教会に行くと、葬式の白い花から明るいヒマワリの花に入れ替わっています。この当時は1日の切り替わりは日没で、夜になって日曜日に切り替わるとイエス様が復活した事を祝うのです。聖書によると、日曜日の朝にイエス様の墓を見に行くと、遺体は消えておりイエス様は復活を遂げています。

教会ではロウソクの火を使ったビジル Vigilで祈ります。ビジルとはロウソクの光で夜を通して見守る儀式(復活徹夜祭)です。現在の西洋圏でも、事故で亡くなった人を追悼して葬式とは別にビジルで人々が集まったりします。

復活されたイエス様。この日は夜遅くまで祝いますが、パーティの様に騒ぐのではなく、普通の教会サービスという感じで静かな祝いです。

セマナサンタ(イースター)日曜日、お祝いで十字架も派手な花で飾られています。日曜日もとても重要な日ですが、特にイベントは見つかりません。教会サービスのみです。残念ながら政府の予告通り、2022年もコロナ禍で金曜日以外のイベントは中止されたのでしょう。

メキシコシティ北部にあるグアダルーペ寺院 Basilica of Our Lady of Guadalupeに行きます。グアダルーペとはメキシコ発祥のカトリック分派みたいな存在で、ここが総本山です。すこし変わった形の教会。

グアダルーペ寺院 寺院・教会

教会の建物は新興宗教の感じがしますが、グアダルーペは1531年から続くメキシコ人の心の拠り所で沢山の人々が訪れています。

グアダルーペの聖母。花が飾られており日曜日はどこもお祝いムードです。

セマナサンタをメキシコで過ごす事で、イエスキリストの受難から復活までを目撃して、メキシコ人と一緒にお祝いすることができました。