【大人鐡19】JR東日本「海里」編

2021/01/23 - 2021/01/24

■はじめに
　前回の大人鐡では明知鉄道に乗車したが、その「はじめに」において「地方の私鉄や第三セクター鉄道が一所懸命にアイディアを詰め込んで企画している列車」と表現し、そして「今回からは連続して、そのような観光列車に何回か乗ることとしている」と書いた。というのも、その時点の予定では、1月16日に秋田内陸縦貫鉄道の「ごっつお玉手箱列車」に乗り、2月11日に樽見鉄道の「しし鍋列車」に乗ることになっていたため、3回連続で似たような観光列車が続くはずであったためである。
　ところが、である。緊急事態宣言を受けて秋田県知事が首都圏との往来自粛を求めたため、秋田内陸縦貫鉄道の観光列車が運休になってしまった。当該列車が動かなければ手も足も出ないので、これは致し方ない（なお、キャンセルではなく、3月6日に振り替えることとした。こちらは無事に乗れますように）。
　しかし、すぐにじっとしていられなくなってしまった。というのも、緊急事態宣言を受けて運休となる観光列車は、実は少数派なのである。例えばJR東日本ではたくさんの観光列車を走らせているが、今回の宣言に伴って運休となったのは「TOHOKU EMOTION」と「フルーティアふくしま」だけであり、それ以外は影響がない。その他、私鉄や第三セクター鉄道の多くの観光列車も、感染対策を万全に取りつつ運行中である。ということで、あれこれ検索しているうちに、JR東日本の海里を予約してしまった（勢い余って、2月7日の「しなの鉄道」まで予約してしまった。こちらについての詳細は後日に）。
　2019年10月にデビューしたばかりの海里であるが、食事付き観光列車としての醍醐味は4号車のダイニングである。しかし、この車両は2人以上でないと申し込めない。同様に2人以上が必須の「TOHOKU EMOTION」や西武鉄道の「旅するレストラン」については、旅行会社が企画しているツアーに紛れ込んで経験済みであるが、海里ではそういうツアーを見つけられなかった。
　しかし海里の場合、一般席でも特製弁当を発注可能である。ということで、上り列車（酒田発新潟行）の弁当の方にそそられたので、上り列車に乗る旅程を立てて特製弁当もネットで購入しておいた。座席については、普通席の海側の窓側席が売り切れていたため、コンパートメントを買っておいた。見知らぬ人との相席（同室）の可能性もあるが、進行方向側の窓側を買ってあるので、外を見る分には問題ない。

＠酒田駅にて

【大人鐡1】長良川鉄道「ながら」編
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【大人鐡17】島原鉄道「しまてつカフェトレイン」編
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【大人鐡18】明知鉄道「食堂車（じねんじょ列車）」編
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エリア 酒田(山形)

• 旅行の満足度: 4.5

■2021.1.23
　今回は大人の休日倶楽部の「東日本パス」を使うことも考えたが、予定がない日曜日にどの路線に乗るかをあれこれ考え、久々に阿武隈急行に乗ることにした。ということで、当該路線に乗車できる週末パスを利用している。この切符の場合特急料金は別料金になるため、新幹線に乗るのは大宮からである。

＠「つばさ」で北へ

　6時38分発の新幹線「つばさ」は新庄行であるため、これに乗り続ければあっという間に到着するが、福島で下車した。その理由は、「そんなに早く酒田に行っても仕様がない」「特急料金を安くするため」と、そして「峠の力餅を買うため」である。
　東北本線との接続を取って、定刻より2分遅れた８時06分に福島を出発した。
　峠の力餅よりも先に気になるのが、もうしばらくしたら廃駅となる赤岩駅である。定期列車がすべて通過となり乗降ができなくなって久しいが、ついに廃駅が決定してしまった。

＠雪だらけ

　赤岩を過ぎてしばらくすると、お待ちかねの峠である。売り子さんから無事に1箱購入した。
　以前の記録を見てみると、14年前に峠の力餅を買っており、その時は12個入り。数年前の他の人のブログ等によれば、10個入り。そして今は8個入りである。色々と値上がりしているから、仕様がないのであろう。「だったら値上げすればいいのに」と思われるかもしれないが、停車時間が30秒しかないため、「千円ポッキリ」というのが重要なのである。

＠美しい

　早速車内で頂く。さすがに8個全部は多いので、半分だけ頂いた。ホーム上はずいぶんと寒いのであろう、餅の表面がひんやりと冷たくなっており、それが逆に良い感触であった。
　途中から定刻になり、8時51分に米沢に到着した。中途半端な乗り換え時間は、売店で買い物をしたり、先発する新幹線を見送ったり。
　9時39分の列車で北上し、かみのやま温泉で下車した（そのまま山形まで行っても、1時間くらいの乗り換え時間ができてしまうため）。適当に街中散策である。

＠お城あり

　今日は関東地方では天候が下り坂のようであるが、幸いにも東北は晴れ模様である。羽越線は「風で運休」が多いため、一安心である。
　11時14分の列車で北上し、山形で乗り換え、新庄には12時52分に到着した。新庄ではいつも小一時間待たされる記憶しかないが、今日も1時間20分以上ある（新幹線に乗ってこない私が悪いのであるが）。スーパーに行って、追加食材を買ったりして時間を潰した。
　続いて乗るのは、14時14分発の陸羽西線新庄行である。

＠入線してきた

　最上川などの景色をのんびりと眺め、終点の酒田には15時26分に到着した。
　駅付近を適当に散策してから駅構内で日本酒をさらに1本追加購入していると、15時50分頃に海里が入線してきたのが見えたので、さっそくホームへと向かった。

＠ハイブリッド新車両

　ダイニングの4号車であるが、外から見る限り、セッティングがされているのはカウンター2組（4人）だけで、残りのボックス席はすべて売れ残っているようである。「どうせ空いているのなら、お1人様に売れば営業利益になるのに」とは思う。「出発1週間前から1人でも申し込める」なんてシステムはどうであろうか（JR東に個人的に提案）。
　しかし、今日はまだ特製弁当があるため、これで良しとしよう。早速、自室へと向かった。

＠2号車コンパートメントルーム

　コロナ対策のパーテーションが少し目立つが、窓側席から外を見る分には影響がない。まだまだ新しい車両であるため、「そういう香り」（車の新車のような）が残っている。
　早速、他の車両も見学に行ってみる（ただし、4号車は入ることができない）。1号車の普通席には展望スペースもあるが、上りの場合は最後尾になるため、この車両に乗るのであれば下りが良さそうである。3号車は売店であり、後ほど（鶴岡出発後）に特製弁当を取りに来る予定である。

＠売店（スタンプあり）

　定刻の16時00分、酒田を出発した。ハイブリッドだけあって、まるで電車のような静かな走り出しである。
　すぐに車掌によるアナウンス（通常アナウンス＋観光アナウンス）があった。幸いにも、今日は鳥海山が見えているということで、通路に出てそれの撮影である。

＠少しどんよりしてきた

　16時23分に鶴岡に到着し、ここで特製弁当が列車に積み込まれた。10分の停車時間があるため、私も改札を通って売店へ向かった。というのも、最初の日本酒だけは「冷」で呑みたいためである。
　売店で鶴岡の酒蔵の冷酒を買い、車内へ。まずは、奥羽本線を北上中に買いそろえた食材たち（米沢駅で買った米沢牛サラミと日本酒、新庄のスーパーで買った鯉のうま煮と焼き鳥と日本酒）と、酒田駅と鶴岡駅で買った日本酒を並べてみた。

＠これはこれで豪華

　日本酒を買い過ぎかもしれないが、今日は呑んで乗り終わった後はホテルに直行して寝るだけなので、いつもより多めなのである。
　定刻の16時33分に鶴岡を出発したので、さっそく売店に行ってバウチャー券と特製弁当を引き換えた。乗客が少ないこともあるが、弁当を引き換えていたのは4人だけであった（ダイニングもそうだが、やはりご時世的に売れていないようである）。
　自室へ戻り、まずは撮影である。

＠さらに豪華

　野菜から肉や魚まで、地元の食材で揃えているのが好印象である。実は昨年度の発売当初は2,000円であったのだが、掛け紙の中央付近にある「めじか」が不漁で値上がりしているということで、途中から2,100円になっている。しかし、許容の範囲であろう。

＠掛け紙も紹介（サイズの関係で横に）

　さて、後はひたすら呑んで食べるだけである。特製弁当の中身も、おかずといよりはツマミという感じであり、日本酒には最適である。ただし、量は思っていたより少なかったというのが正直な感想であるが、そこは幸いにも「少し買いすぎたかな」と思っていた鯉や焼き鳥が補完してくれた感じである。
　しばらくすると右手に海が見えてきたが、薄暗くなり始めており、写真撮影は難儀を極めた。

＠苦しい…

　笹川流れの奇麗な景色を堪能するためには、せめてあと1～2か月後（日が長くなってから）乗るべきであることは承知していたが、急に決めた旅行であるから仕様がない。とにかく、車内での酒と料理を楽しむばかりである。

＠手前がメイン

　17時過ぎまではうっすらと外も見えて粟島もかろうじて確認できたが、17時半にはもう真っ暗になってしまった。景色はもう見えないが、コンパートメントにはコンセントが1つあるし、もう誰もこの部屋には乗ってこないであろうから、そこにPCを繋げて今日撮った写真の確認などの開始である。

＠かろうじて

　しばらくすると「海里のムービーを上映します」というアナウンスがあった。残念ながら2号車（コンパートメント）にはスクリーンがないため、1号車に行ってみた。
　1号車の指定券がほぼ売り切れ（海側は全滅）であったため2号車のコンパートメントを買ったのだが、1号車の座席に実際に座っている人は半分以下であった。旅行自体をキャンセルした人が多いのであろうか（なおJRの場合、緊急事態宣言に伴うキャンセルは無料で手続き可能なので、もしそうなら払い戻せばいいのに、と思う）。

＠ムービー上映

　その後は暗闇の中を走り続け、2～3分の遅れが続いていたが、終着の新潟には定刻の18時31分に到着した。
　駅近くの安ホテルに投宿して、そのまま就寝。

■2021.1.24
　今日は、久々に阿武隈急行に乗ることにしている。起点となる槻木駅へ行くには、磐越西線経由と米坂線経由があり、いずれも新潟駅を8時台に出発する快速列車がある。しかし旅程を考えているうちに、阿武隈急行で途中下車して観光することにした。となると、5時17分発の列車に乗って新津から磐越西線、これ一択である。
　早朝にホテルをチェックアウトして、件の長岡行に乗り込んだ。新津で降り、しばし待合室で時間を潰してから6時00分発の磐越西線に乗り込んだ。

＠新型車両

　しばらくは暗闇であったが、6時45分頃からやっと景色も見えるようになってきた。寄り添う阿賀野川が雄大である。
　元から2人しか乗っていなかったが、日出谷で1人降りてしまい、私だけになってしまった。ワンマンでない（車掌もいる）のが、申し訳ない限りである。
　喜多方付近でちらほら乗客も増えて、8時47分に会津若松に到着した。続いては、9時09分発の快速「あいづ」郡山行である。

＠一部指定席（私は自由席）

　実は、阿武隈急行の運転本数が部分的に極端に少ないため、槻木まで行くまでに、会津若松か郡山か福島、どこかで「油を売る」必要がある。当初は、会津若松で「朝ラーメン」でもしようかと思っていたが、駅構内の店も駅から徒歩圏内の店も休業中（コロナのせい？）であったので、この案は却下して快速に乗り込んだ次第である。
　さて、次の案は郡山である。あれこれ（駅弁やソースカツ丼などを）検討したが、決め手がなく、なぜか「クリームボックス」に落ち着いてしまった。

＠ご当地パン

　美味しく頂いてから、11時05分の福島行に乗車。11時54分に福島に到着した。郡山であまり時間を使わなかったため、福島でもまだ時間が余っている。さすがにネタがない（仕事で何回も来ている）ので、駅の食品売り場や駅前のスーパーで時間を潰した。
　12時40分の快速仙台行に乗り、13時29分に槻木に到着した。ここからが、久々の阿武隈急行である。

＠かなり新しい車両

　13時32分、槻木を出発した。自宅の地図（路線図）の阿武隈急行の部分にマーカーがしてあるため、乗車経験はあるはずなのだが、いかんせんいつなのか覚えていないくらいなのである。正直なところ、沿線風景が壮大であったり、終着駅に温泉などがあったりすれば数年に1回は乗るのであるが、そういう意味では地味な路線であるためついつい放置してしまっていたのである。
　そこそこの乗客がいたが、角田でほとんど降りてしまい、この列車の終着駅である丸森で下車したのは3人だけであった。

＠ようこそ

　さて、ここで2時間ほど時間がある。観光施設のある町中心部は駅からかなり遠い（2キロ程度ある）ため、適当に歩いて行く予定であったが、ふと駅構内を見るとレンタサイクルがあるではないか。調べてみたら、なんと無料である。ということで、ありがたく貸していただくこととした。

＠出陣

　中心部まで行き、適当に観光。無料の郷土資料の展示館では、国鉄丸森線の開通に関する資料があったりして、予想外の収穫があった。
　地場産品を売っている店舗も発見したので、丸森特産という「へそ大根」や丸森コロッケを購入。おにぎりや田舎寿司も半額になっていたので、それも買っておいた（どうせ家に帰るのだからご飯など炊けばいいのだが、小銭とはいえお金を落とすのが旅行者のやるべきことである）。
　駅に戻り、続いて乗るのは梁川行である。

＠少し古めの車両

　定刻の15時50分に出発。ここから富野までが、今回の旅程でのボトルネックであった。平成元年の台風被害から復活はしたものの、運転本数が極端に少なく、平日は3往復、土日祝日ですら5往復しかないのである。3往復などといったら、国鉄末期の第一次廃止対象路線並みである。
　2両編成であるが、乗客は私を含めても2人だけ。あと1人もやたら車内の写真を撮っているので、所謂「鉄分多め」の人である。つまり、地元民はゼロ。
　全国にある鉄道はできるだけ残ってほしいとは思っているが、丸森－富野が重荷となって阿武隈急行が傾いたのでは本末転倒である。「東北本線の代替ショートカット」という目的は実質的には果たせないのであるから、宮城側（丸森まで）と福島側（富野まで）、それぞれ別の会社でもいいのかもしれない。

＠補修作業継続中

　ガラガラのまま走り続け、16時18分に梁川に到着した。20分ほど待ち、16時40分の列車で福島へ（それにしても、駅間の短いことときたら）。福島到着後は、往路と同じく大宮まで新幹線で移動して、そこからは近郊路線を乗り継いで家に戻るだけである。


＊旅行記および私の詳細については以下で。
「鐡旅」http://www2u.biglobe.ne.jp/~kokuden/tetu.htm