2021/01/03 - 2021/01/03
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motogenさん
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中央構造線に沿った谷筋を走って行く。
地盤は強い圧縮と摩擦によって破壊され、もろくなり、雨風によって谷となった。
この巨大な断層が発生したのは、1億年以上も前のこと。
想像すらできない太古のことだ。
この日本列島最古の傷の上を走っているだけで、冒険しているような気分になってくる。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
-
中央構造線はおよそ1億年以上も前にできた巨大な断層。
この断層の北側と南側では、全く異なる地質構造が現れる。
『ブラタモリ』を見ていると、俄然地質構造に興味が湧いて、勉強したくなる。 -
1億年以前には、まだ日本列島は存在していない。
日本列島の基礎は、ユーラシア大陸の東の縁だ。
その縁に、南東側から押し寄せてくるプレートに乗った土砂が集まってくる。 -
土砂は大陸にぶつかって圧縮され、鉱物が変化し、盛り上がって陸地になる。
ぶつかった境が中央構造線の始まりだ。 -
7000万年前、ユーラシア大陸の一部の端は引き裂かれ、徐々に南東に移動し始める。
(プレートの活動が変化したため)
そのため、2000万年前はこんな状態だったと考えられる。
ちなみに人類誕生は10万年前、縄文人が日本に住み始めたのは1.5万年前。
黄色の線は中央構造線の元祖。 -
引き裂かれた地盤は時計回りに回転し、1500万年前はこんな状態。
西日本の基礎ができる。
その後、東北部が隆起して北日本が造られ、
最後にその間を埋めるように、関東平野とその周辺が造られたが、古傷は残った。 -
その中央構造線に沿って走っている。
龍王権現の駐車場を出発すると、すぐ集落が現れた。
佐久間の民話に出てくる下平集落だ。 -
道路脇に集会所があリ、「ふれあいバス・下平」の停留所になっている。
山の中の過疎集落だが、室町時代には既に集落ができていて、人が住み始めたのはもっともっと先、もしかしたら縄文時代かも知れない。
日本列島の人口が500万人にも満たない時代に、山奥にも人が住んでいたということに驚く。
自給自足の社会では、山は暮らしやすいのだ。 -
日当たりが良く、風も穏やか。
なだらかな斜面を切り開いて、畑が作られている。
しかし貨幣社会となった現代は、この畑と山林だけでは生活できないのだろう。 -
3年前の調査では、この集落は18世帯と、過疎化の真っ最中。
住民の大半は高齢者で、子どもや孫たちは近辺の町に出てしまっている。
空き家もあるはずだ。
誰かいないかと見回すが、どこにも人の姿はなく、物音もしない。 -
グーグルマップを見ると、集落の半分は杉林の上にあった。
飯田線はトンネル内を通り、地表には出ていない。
『機織り渕』までは動画(2分弱)で紹介します。
https://youtu.be/-xEDP3TXH4Y -
下平集落から1kmほど走った場所に、「機織り渕(はたおりぶち)」への降り口があった。
枝の杖が置いてある。
ありがたい、ありがたい!
ステッキを忘れてしまった私たちは、この杖を持って歩くことにした。 -
急傾斜の谷間だ。
谷底はここから30mほど下った場所。
ちなみに竜王権現の滝に降りた時の高度差は75mあったが、こちらの方が傾斜は急。 -
つまずきそうな山道が続く。
土砂崩れを防止する堰が、遊歩道の一部に組み込まれていた。
美しい緑の苔に覆われている。
油断すると足を滑らせそう。 -
水の音が聞こえてきた。
樹々の間から白い滝が見える。
二段式の滝だった。
落差は30mと聞いている。 -
「ここに降りてしまうと、滝壺は見えないよ・・」
と先に谷底に降りた妻が言う。 -
滝壺までは丸太を渡る必要があるが、成功率は20%以下だろう。
足を滑らせれば冷たい水の中。
そんな覚悟は、もちろんない。 -
遠くから水しぶきが跳ねるのを見て、良しとする。
ドローンを飛ばせば撮影できそうだが、ドローンは車の中。 -
上の滝も、ここからはちょっとしか見えないが、
ここまで来れたことで満足。
こんな崖下まで降りるなんて、人生に何度もあるはずがないのだから。 -
「機織り渕」の民話が書かれている。
落武者との悲恋の末、自分の織った晴着をまとい、滝つぼに身投げした下平の里の娘の悲話だ。
こんな話が出てくる背景には、この山間部に落武者が逃げ込み、中には定住した者もあったということだろう。
下平の人には、高貴な武者の血が入っている可能性がある。
『機織り渕の滝』動画(2分20秒)もあります。
https://youtu.be/pEhbrlaOG_U -
峠をめざして再出発する。
「凍結注意」の看板が所々に立っている。 -
凍結したら、この勾配では危ない。
-
機織り渕から1.6km。
標高は460mとなっている。
ヘアピンカーブに駐車場。
『たっくい渕』の案内板が立っている。 -
樹木の間から下界がちらついている。
佐久間の町の近くだろう。
標高が高くなったせいか、空気が冷たくなっている。 -
滝つぼは90m下。
しかしそこまでは遊歩道は伸びていない。
滝を眺める展望台が60m下にあるようだ。 -
「また~、降りるの?
こんなことに付き合うのは、私くらいだよ・・」
半分冗談、半分本気で泣き言を言う妻。
それを聞き流して、3回目の谷底に下りて行く。 -
枯葉の溜まった遊歩道が、途中から鉄の階段に変わった。
梯子のように急だ。
階段は一つではなく、次々と出てくる。 -
途中から周囲に白い雪が混ざり始め、そして展望台の屋根が見えた。
真っ白な雪がたくさん積もっている。
3日前の大晦日に降った雪だろう。 -
雪を踏んで歩き回る妻。
キュッ、キュッと鳴ることが楽しくて仕方ない。 -
数年に一度しか雪を体験しない私たち遠州人は、雪を見ると人が変わる。
そして無邪気に雪だるまを作る。
手は凍えるが、そんなことは気にならない。 -
完成!
雪だるまの可愛さにうっとり。 -
岸壁が美しい。
領家編成帯の岩石だ。
花崗岩なのか、片麻岩なのか?
『ブラタモリ』なら、ここで学芸員登場なのに、私たちにはそんなサポートはない。 -
展望台と言うのに、滝のある下方は樹木に隠れている。
それでも必死に滝を探すと、 -
樹木の隙間から白いものが目に入った。
滝だ。
落差60mはあるというこの谷で最大の滝。
望遠機能を生かしてカメラを構える。
わずかに写った。 -
たっくい渕の伝説を読む。
川の中の大蜘蛛が、ヤマメ採りの男の足に糸を絡ませた。
それに気づいた男は気転を利かせ、近くの立ち杭に糸を移し変え、助かった。
そんな話で、「立ち杭」が、いつの間にか「たっくい」になったらしい。
民話にはどこかに真実が隠されている。
この話には何が隠されているのだろうか? -
降りるは良いが、登るのは大変な60mの崖。
「雪、見れて、良かったね!」
と喜ぶ妻を見て、気持ちを奮い立たせる。
『たっくい渕』の動画は2分50秒です。
https://youtu.be/qazScOctwIk -
二本杉峠に向かって走り出すと、「矢嶽山登山口」の立て札があった。
矢嶽山はここから北西に1.5kmの、標高927mの険しい山。
ここにも「矢嶽山の藤づるの橋」の伝説がある。
この山に逃げ込んだ武将一族が、蔓で作った橋に75人もの追手を誘い、谷底に落としたのだという。
真赤な血で染まった谷底の川は、その後、厚血川(こうちがわ)と呼ばれるようになり、それが河内川となったそうだ。
ここにも落武者が登場する。 -
この辺り、左のどこかに「三社神社」があるはずだ。
龍神が刻まれた灯篭があって、流行りのパワースポットとなっているらしい。
注意深く見ていくと、粗末な小屋が目に入った。
「これは違うだろう。」
みすぼらし過ぎて通過してしまったが、それが三社神社だったようだ。 -
突然目の前が明るくなった。
-
二本杉峠の『パノラマ展望台』だ。
展望台と言っても、道路がちょっとばかり広いだけで、駐車場はない。
中央構造線が分かりやすく見えると、紹介されている。 -
評判通りの景観だ。
下に見える道は旧道で、別のルートを経て峠を越えて行く。
目を上げれば、日本列島の割れ目が谷の形で見えている。
この谷筋を、私たちは走って来たのだ。 -
遠くに見えるのは佐久間の町。
天竜川を渡る橋や、発電所も見える。
構造線はこの先、浦川、長篠、豊橋を通って伊勢へと続いていく。 -
啓蒙活動にも力を入れている佐久間町。
(今は浜松市の管轄かな)
こんな素晴らしい大自然の宝物を持っているんですね。
これからもこの財産を守っていってください。
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旅行記グループ 中央構造線の谷を走る
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