2020/11/10 - 2020/11/11
208位(同エリア1377件中)
ひらしまさん
中山道の宿場町では妻籠に泊まってその静かな雰囲気にひたった記憶がある。こんどは奈良井も見てみたいと思い、我が家の久々の泊まり旅は長野県の奈良井宿へ行くことになった。
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晴天に恵まれ渋滞もない中央道と長野道を走り、まず向かったのが塩尻・桔梗ヶ原の井筒ワイナリー。大地を守る会で時々届けてもらっていたけど来たのは初めて。
ワイン好きの妻はコロナ対策で試飲ができないことを嘆きながら赤白1本ずつを選んだ。
左のメルローに付いている「長野県原産地呼称管理委員会認定」とは、長野で採れたぶどうで長野でつくったワインとの説明だったので、その表示がないのは県外国外のぶどうも使っているんですねと尋ねると、ウチではすべて地元産だけ使っていますが認定を受けるのにお金がかかるので上級グレードだけにしていますとのこと。ちなみに田中康夫が知事の時につくった制度だそうで、さすがブランドの大切さを知っている。 -
昼時に奈良井駅に着き、駐車場所を聞こうと宿に電話するも応答なし。駅の右手の有料駐車場はいっぱいだったので、駅員のお許しを得て左奥の駅利用者用駐車場にとりあえずとめた。
線路をくぐって木曽の大橋の手前にある広場で昼食のおにぎりを食べようと思ったが、風が強く冷たくて震え上がる。標高900mだから朝晩は冷え込むとは覚悟していたが、真昼間からこんなに寒くていったい夜はどうなっちゃうんだろう。
見つけた東屋にはいると風をさえぎってくれたので、枯葉舞う大橋を見ながらおにぎりを食べる。 -
風が少しおさまったところで木曽の大橋を渡ってみた。
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総檜造りの太鼓橋で、橋脚を持たない橋としては日本有数の大きさだそうな。たしかに、太鼓橋で思い浮かぶのは庭園の中の小さな橋だ。
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黄色に染まる山を背になかなか美しい。
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橋の下の対岸に見えるのがさっき昼食をとった東屋。トイレも駐車場も近くにある。
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観光客はちらほら。
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あとで宿の主人に聞いたところでは、この木曽の大橋はあのバブル期のふるさと創生一億円事業でつくったという。木造なので傷みが激しく、毎年修理費がかかると彼はぼやいていた。
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宿場の歴史とは関係もなく観光用につくられた代物らしいが、しかし木造建築の美しさは見せてくれる。
青森ヒバ、秋田杉とともに日本三大美林といわれた木曽の檜のよさを都会人に伝える木曽の大橋、いいじゃない。 -
街道に戻り、宿場の北にあるという杉並木をめざした。
八幡宮の石段を登ろうとしたら、水飲み場にいたらしい猿がギャーギャー鳴きながら檜を駆け上がった。 -
全国どこにでも猿が現れる時代、木曽で出会っても当然だろう。檜の赤い実を食べているらしい。なかなか美形の猿だった。
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石段から右にはいるとすぐ杉並木が現れた。まさに、昼なお暗い道だ。
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ほんの30mほどで終わってしまう杉並木だけど、手甲・脚絆姿の旅人がここを歩いていたんだな。
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では、わたしらも奈良井宿にはいろうか。
奈良井宿は鎌倉時代から宿駅として成り立っていたという。中山道の難所である鳥居峠を控え、江戸時代には奈良井千軒とよばれる大きな宿場町だった。 -
今夜お世話になる民宿いかりやを確認。助六の暖簾が目印だ。
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そのちょっと先の水場の奥、立派な松と真っ赤な楓の前には、宿内安全を願う庚申塔がどっしりとあった。
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奈良井宿には寺が5つもある。これは大宝寺の山門。
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1kmほどある宿場の半ばまで来た。
写真中央の伊勢屋の左にきむらという団子屋があって、そこの五平餅がおいしいという評判で楽しみにしていたのに、なんと昨日から明日まで三連休と貼り紙が出ていた。食べたかったなあ、五平餅。 -
その2軒先の上問屋(かみといや)資料館にはいる。
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問屋とは宿駅に置かれた25頭の馬と25人の人足を管理する役で、この上問屋は1602年から明治維新まで勤め、庄屋も兼務した。
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残された古文書類も展示されている。
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庭の散りかけた楓の葉もまた味わいがあった。
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公民館ももちろん宿場の町家風だ。
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クランクになった鍵の手を曲がると宿場の端が見えてきた。
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ここではいったのは中村邸。
天保の大火の後、1840年前後に建てられたこの家は、奈良井の民家の中で最も古い形を残している。住む人がいなくなっていた1969年に川崎市の日本民家園に移設する話が出たのをきっかけに、住民の間に現地で保存しようという動きが生まれ、当時の楢川村(現在は塩尻市)に寄贈されて文化財として保存され、その後の奈良井宿全体を保存する運動に発展していったのだそうだ。 -
くぐり戸をはいると土間が中庭まで通り、右に上がると店、勝手、中の間、座敷と続く間取りは奈良井宿の商家に共通してみられるという。写真は勝手。
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二階に上がる階段から見えた中庭。二階には茶室などがあり、なかなか風流な商家だったとみえる。
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この家が建てられる百年ほど前、伊那で櫛挽の技術を習得してきた中村恵吉が奈良井の漆器の技術を生かし木櫛に漆を塗った塗櫛を考案して売ったところ、街道をゆく人々の間で土産品として大人気になり、さらには江戸や京、大坂へも出荷されるようになってたいそう繁盛したという。よその技術を取り入れ、地元の特色を加えて新しいものを創り大ヒットさせた中村さん、えらい!
この塗櫛問屋中村屋はその分家にあたる。 -
中庭の奥の土蔵には様々な塗櫛が展示されていた。
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宿場南端にある鎮(しずめ)神社から振り返る。
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おやつの時間なので、中村邸近くのカフェいずみやにはいった。
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街道に面した窓際の厚い一枚板のテーブルが気に入り、そこでお茶とケーキで体を温め、ほっとする。
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店内は落ち着いて趣味がよく、接客も心地よいのでゆっくりくつろげた。
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民宿いかりやに行き、車をどこに持ってくればよいか尋ねると、駅前に無料のスペースがあるからそこに置いてくれと言われた。が、教えられた場所には駐車禁止の表示がある。昼は一杯だった有料駐車場がこの時間(4時半頃)はがら空きになっていたので、車はそちらに移した。料金500円は貯金箱の大きなやつに自主的に入れる素朴システムで、これは裏切っちゃいかんという気になるね。
宿にはいり部屋に案内してもらうと、廊下を下がって上がって温泉旅館並みに遠い。きっと裏の家を買い取ってつなげたんだろう。二階の突き当りの部屋で、窓を開けると中央線の線路がある。きれいな8畳の部屋が二間続きで、もったいないくらい広い。 -
一息ついた後、日暮れ時の宿場はどうだろうと外に出てみるとすっかり暗くなっていた。
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ヨーロッパの石造りの町だと少ない光でも輝いて見えるが、ここでは黒っぽい木の壁が光を吸い込んでしまうようだ(この写真は明るくしてるけど)。
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控え目にライトアップされた木曽の大橋を見て宿に戻った。
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夕飯の主菜は馬刺しと鯉の甘露煮。鯉はわたしには甘過ぎに感じられたが、馬刺しはとてもおいしい。さらに、天ぷらとすき焼きが加わった。おいしいけれど、とても食べきれそうにない。
今夜の客はほかに二組で、隣のテーブルは東京から来た元気な70代ご夫婦。その向こうが京都在住の若い米国人カップル。
せっかくのごちそうを無駄にしたくないので、若いカップルに天ぷらとすき焼きを持っていくと喜んでくれる。
米国大統領選結果を祝い、彼の出身地ニューヨークの思い出を語りあい、日本語達者なのにわたしらのつたない英語につきあってくれた。コロナがなければもっともっと語り合いたかったな。
部屋の布団は奥の部屋に敷かれていたが、奥の方が寒そうだし、本数が少ないとはいえ電車の音がうるさかろうと手前の部屋で寝ることにした。これが失敗で、隣のご夫婦がトイレに出入りするときの戸の当たる音が響いて、妻は何度も目が覚めたという。まあ民宿だからね。 -
翌朝7時すぎ一人で近くを散歩した。
通学する子どもたちの姿に、ここは人々の生活の場であることを思い出す。 -
朝食をおいしくいただいたあと、最後の奈良井宿歩きに出る。
宿場の西側の家並みと背後の山の黄葉が朝日に輝いている。 -
奈良井宿は自動車進入禁止ではない。観光客の車は遠慮してほしいという表示があるだけだ。生活の場だから難しいとは思うけど、たとえば9時~5時だけでも車がまったく見えないようにできたらいいのにと思う。
飲物の自販機をここに置くセンスはまったく理解できない。 -
鍵の手を曲がり、上町にはいった。
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昨日はいった中村邸。
2階からつるされた庇(ひさし)に朝日が当たっている。鎧(よろい)庇と呼ばれるそれは、奈良井独特のもので、盗人が上ると簡単に落ちる仕掛けになっているそうだ。曲線を描いて波打つ桟は猿頭と呼ばれる装飾だ。 -
鎮神社の手前にある高札場。強訴や逃散の計画を密告すれば密告者の罪は許し褒美をとらせるみたいな高札が多かった。やだね。
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朝日が見せてくれる造形を楽しみながら、宿に荷物を取りに戻る。
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するとちょうど米国人カップルが出発するところだった。てっきり奈良井駅に向かうのかと思ったらその先の平沢駅まで歩くのだという。ひじタッチでよい旅を祈念しさよならした。
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きのう塩尻回りで来たので、きょうは権兵衛峠を越えて(いや、実際には権兵衛トンネルだけど)伊那回りで帰ることにした。
奈良井川に沿って上っていくと、山の黄葉がすばらしい。 -
落葉松だろうか。トンネルを過ぎたあたりでとうとう耐え切れず車を止めて、しばし黄金色の世界にひたる。
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その先でもスペースを見つけて、山の中ならではの景色を満喫する。
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人が植えた楓の紅葉よりも、こういう自然のスケールの大きな黄葉が好きになってきた。
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去年登った木曽駒ケ岳はこの方向だ。
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伊那ではいった中央道を諏訪で降り、白樺湖方面に向かうとやはり黄葉の林が迎えてくれる。
白樺湖、女神湖と上がるにつれ、季節は冬に変わった。標高1500mを甘く見てはいけない。
かろうじて開いていた店で昼食をとり、上信越道方面に下りることにした。 -
佐久への道でも黄金色の山の美しさに目を奪われる。
厳しい冬の一歩手前、晩秋の輝きを放つ信濃路だった。
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この旅行記へのコメント (2)
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- mistralさん 2020/11/16 21:35:38
- 晩秋に。
- ひらしまさん
ご無沙汰しておりました。
晩秋の奈良井宿をめぐられる旅行記、楽しませていただきました。
まず木曽の大橋に圧倒されました。
観光用に作られたとのこと。
木曽檜の美しさ、素晴らしい木組みですね。
維持費がいかにもかかりそう!
それでも、間近に眺めながらお昼を召し上がられたとのこと、
羨ましい限りです。
大宝寺の山門と紅葉とのコラボ、素敵なお写真です。
その場の空気感が伝わってまいります。
早朝の街歩きで、日差しを受けて徐々に輝き出す民家のお写真、
本当に日本の家屋は美しいと思います。
奈良井には新緑の折に行った記憶がありますが
晩秋の時期に行ってみたくなりました。
mistral
- ひらしまさん からの返信 2020/11/16 23:29:37
- Re: 晩秋に。
- mistralさん、早速のご訪問ありがとうございます。
木曽の大橋には正直あまり期待していなかったのですが、あの大きさと複雑な木組みは見事でした。
背景の黄葉の山とも合ってましたね。
全国どこへ行っても同じような街並みになってしまっている中で、奈良井のような独特の建築の家々が残ってくれることは日本の財産だと思うので、現地の方の努力をありがたいとあらためて感じました。
そうそう、mistralさんの旅行記に教えていただいた長崎もまた、日本の中で独特な歴史と魅力を持っていますよね。
それで、来月には九州方面を旅することにしました。
今、DISCOVER JAPAN AGAIN という気分です。
ひらしま
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