2013/06/17 - 2013/06/26
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SamShinobuさん
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中国一人旅の始まりである。今回は清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀や張作霖の足跡をたどりつつ、満州時代の建造物を見ながら、満鉄が経営していた旧ヤマトホテルを泊まり歩く旅を実現させることができた。10日間かけて、東北3都市を満喫した。その長春篇。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.5
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 タクシー 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
長春駅
長春駅は工事中のようで、少し手前の臨時駅に降ろされた。時刻は12時55分である。焼けつくような熱気と埃、そしてどこからともなく漂ってくるすえた臭いに、長春なかなか手強いぞと思った。自分の現在位置も分からないので、道端のおばさんから地図を買い、今どこにいるのか教えてもらった。 -
地図を頼りに喧騒の中を10分ほど歩くと、ようやく長春駅が見えてきて安堵した。
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春誼賓館迎賓楼(旧新京ヤマトホテル)1泊338元(5,410円)朝食付
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春誼賓館は建物が2つあり、迎賓楼が旧ヤマトホテルなのでこちらでチェックイン。するとフロントの女性たちが小声で部屋がないと話している。挙句の果てに、しれっと「あなたの部屋は隣の貴賓楼です」と言う。貴賓楼は近年建てたビルであり、自分は旧ヤマトホテルである迎賓楼を予約したので、ここは譲れない。予約確認書を見せながら文句を言うと、再度調べて、一部屋空いているがまだ清掃していないと言う。どのくらい待つのか聞くと、30分位だがどうぞ部屋に入ってくださいと言い出す。思った通り客の目の前で何のためらいもなく掃除をはじめるので、「しっかり掃除してね」と言って、荷物だけ置いてホテル探検をすることにした。
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このホテルは、当時新築のヤマトホテルとしては最初のホテルで日本人が設計したが、内部はかなり改装されていて他の旧ヤマトホテルのような趣は少ない。外観のみ、1910年の開業当時を偲ばせる。202号室が、満映の甘粕正彦の常宿だ。また、阿部晋三総理の祖父である岸信介は、陸軍が作った満州に魂を入れた男と言われているが、彼がよく関東軍を接待するのにこのホテルを使ったそうだ。
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ホテルは工事中の長春駅前にある。まず、ホテル周辺を散策することにした。駅前から南にまっすぐ延びるのは人民大街。ここを南下して、長江路を左折。この長江路はアーケード街になっており、道の中央部分は衣類の出店が所狭しと並んでいる。
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そして突き当たると、勝利大街。ここは満州時代は日本橋通りと呼ばれていた通りだ。そこを左折して一旦ホテルに戻る。長春は初めは何もない土地だったが、満州国の首都に決まると未来都市の創造を夢見た日本人の設計者たちが、当時の最新技術の粋を集めて作り上げたメトロポリスだ。日本で実現できないことも実験的にこの都市では何でもできた。敷設された道路の道幅は非常に広く、上下水道は立派に整備され電線は地中に埋められた。長春の地図を俯瞰すると、いまだに実用的で美しいデザイン画を見るようだ。
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タクシーがつかまらないのでバスで人民広場まで行くことにした。こちらの人はバス停でも当然並ばないので、バスが来ると凄い勢いでドアに殺到する。挙句の果てに、乗車口に片足かけているにもかかわらずドアも閉めずにそのまま発車してしまい、結局乗れなかった。そう、ここは中国。常に臨戦態勢で臨まなければ、バスにも乗れないのだ。次のバスがやってきたので気合を入れて突入したら、なんとか乗ることができた。
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重慶路
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夕飯は卓展購買中心にある日本料理店「本土風」に行く。ここもネットでカレーうどんが美味しいと書いてあったので注文したが、やはり日本のカレーうどんとは違う。長春はトヨタの進出により日本人が増えたといっても、日本人の駐在はせいぜい600人程度なので、このカレーうどんが限界か。
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重慶路
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今日はコンビニでビールとツマミを買って部屋飲みにした。
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2013年6月23日
朝食ビュッフェ
ビュッフェは貴賓楼の2階のレストランに行く。意外と豪華で品数もたくさんあった。 -
豆乳、揚げパンという中国人定番の朝ごはんを取り、コックに目玉焼きを作ってもらう。やはりコーヒーは砂糖、ミルク入りしかなかった。
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軽軌3号線
長春の映画会社「長春電影」に行くために駅前から市内電車の軽軌3号線に乗った。まだ新しく綺麗な電車は寛平橋駅まで2元だ。 -
寛平橋駅で路面電車に乗り換える予定だったが、降りてみると辺り一帯見渡す限り工事中で、路面電車の駅など何処にもない。
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ただ少し行くと朽ちて錆びた線路があったので、とりあえずその線路の上を歩くことにした。たぶんこの付近の開発工事のために、路面電車はずっと運休しているのだろう。
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雑草の生えた線路を15分位歩くと、遠くの方に数人がかたまって立っているのが見えた。
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そこがきっと駅だろうと思い、さらに歩いて行くとちょうど向こうから路面電車がやってくるのが見えた。思った通り寛平橋駅前は工事のため閉鎖しており、路面電車はこの途中駅と終点の工農大路を折り返し運転しているのだ。
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路面電車
大連の路面電車は日本の古い車両を使っていたが、ここ長春は中国製である。その安っぽいところが、まるでキャラメルのおまけみたいで可愛い。 -
1元札を料金箱に入れて乗り込んだ。靴をみるとかなり汚れている。工事中の道なき道や、線路を歩いてきて泥々になったのた。中国にいると靴が凄く汚れるので、毎日汚れを落とすのが大変だ。
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長春電影制片廠(旧満州映画協会)
長影駅で降りると、目の前が長春電影制片廠だ。かつての満映こと満州映画協会である。関東軍の宣伝や満州国の正当性をアピールするために作られた国策の映画会社で、1923年に発足。しかしヒット作に恵まれなかったために業績は悪化したため、甘粕正彦大尉が立て直しの為に撮影所所長として迎えられる。甘粕は大改革に着手し、映画スター李香蘭を育てたりしてヒットを飛ばして、満映を超優良企業に発展させる。 -
残念ながら現在は中に入れないので、門から建物の写真を撮った。
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タクシー相乗り
運よくタクシーが来たので停める。先客がいたが、そこは慣れたもので構わず「新民広場まで行く?」と聞くと、乗れと言う。幾らか訊くと、着いたら教えるとちょっと怖い返事。でも他のタクシーが来そうもなかったので、乗ることにした。先客はすぐに降りて、それから運転手とずっと話していた。自分は中国が好きでいろいろな都市に行ったと話した。しばらくすると新民広場が見えてきた。さあ、どのくらい吹っかけてくるのかと思いきや、6元(96円)とのこと。長春のタクシーの基本料金だが、こんなに安いのは初めてである。この運ちゃん、いい人だ。 -
偽満州国総合法衙
新民広場は大きなロータリーになっており、タクシーの運転手は「この建物は日本人が建てたんだよ」と言いながら、ちょうどいいところで停めてくれた。法衙とは満州国の検察庁。現在は人民解放軍の病院である。長春もハルビン以上に柳絮(柳の綿毛)が大量に飛んでいる。地面が雪のように真っ白なところもある。季節の風物詩だが、マスクをしたり顔一面を布で覆っている人もいるほどなので、市民にとっては迷惑なんだろうと思う。 -
偽満州国交通部旧址
さて、この新民広場から文化広場まで北に一直線に延びる新民大街には、満州国の遺構である建築群がずっと続いている。まず、すぐ左手に見えてくるこの建物は、1935年創建の興亜式建築である。興亜式とは、西洋式と中国式の西中折衷様式のこと。かなり古く傷んでおり、現在は吉林大学になっているが、こんなボロいところで講義を聞かなければならない学生に同情した。 -
偽満州国司法部旧址
新民大街を北上すると右手に見えてくるのが、素晴らしいデザインのこの建物。1935年創建の和漢折衷様式で、こちらも現在は吉林大学。 -
偽満州国司法部旧址
ちょうど卒業式だったようで、学生たちが記念写真を撮っていた。それにしても、すべて「満州」の前には「偽」の文字があり、満州国は偽りの国だったという中国人の思いが強く伝わってくる。 -
偽満州国国務院旧址
さらに北上すると、同じく右手に建っているのが偽満州国国務院旧址。満州国の行政機関で、国会議事堂の意匠を基に1936年に完成。確かに国会議事堂に中国式の屋根を載せたような不思議なデザインだ。当時は地下道で長春駅と繋がっていたとか。現在は吉林大学で、この内部は非公開で見学不可と「地球の歩き方」に書いてあった。そこで、ちょうど卒業式を終えた女学生たちが門の所にいたので、「毕业吗?」(卒業ですか?)と話しかけた。「対」(そうです)と答えたので、「Congratulations!」、「Thank you」などと親しげに話しながら、当然のような顔で一緒に中に入ってしまった。 -
偽満州国国務院旧址
建物内部の正面にある満州国時代同盟国だったイタリアからの寄贈物(大理石の手摺)など見て、ちゃっかり内部の写真も撮らせてもらう。 -
偽満州国軍事部旧址
その向かい側に威圧的に建っているのが、1935年に竣工した興亜式の元満州国軍事部。 -
偽満州国軍事部旧址
現在は吉林大学医学部の付属医院ということで中に入って見たが、幽霊が出そうなほど古くて暗かった。こんな病院に入院したら、かえって病気が重くなるって! -
山寨亭(さんさいてい)
昼食は西康路にある日本人オーナーと中国人の奥さんがやっている店に行った。一見カフェのようだが和食が充実しているとネットに書いてあったので、店の子にお勧めを訊く。彼女は日本語を勉強中ということで、なんと日本語が通じる。久しぶりに日本語を聞いて嬉しくなった。 -
カツ丼が美味しいというので、それとサラダを頼む。すると少しして、「カツ丼は定食なのでサラダが付きますが、どうしますか」と、日本では当たり前な質問だが、中国でこれを言われると(それも日本語で!)、その気遣いに感動してしまった。そしてお勧めのカツ丼は実に旨くて感涙もので、思わず一気にかきこむ。静かで雰囲気もとてもいい店だ。
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偽満皇宮博物院 入場料80元(1,280円)
満州国皇帝・溥儀の宮殿。 -
博物院に着くと入場券を買って、20元で音声ガイドを借りた。これが非常に優れもので、電光パネルの地図に今自分がいる所が点滅するようになっている。それぞれの施設の前に来ると、イヤホンから日本語解説が始まるのでゆっくり見学できた。
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皇后の媛容
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第二夫人の文秀
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譚玉齢
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皇后の媛容や第二夫人の文秀については、映画「ラストエンペラー」でも描かれているので有名だが、溥儀が一番愛したのが、譚玉齢だったというのは知らなかった。まあ、一方的に離婚したいと出て行った文秀や、使用人と浮気して子供まで身籠った媛容から心が離れていったというのは解るが。
ただ溥儀は同性愛者だったので、譚玉齢をひとりの女性としてというよりは、同じ満州族の同志として見ていたのではないかと思われる。この譚玉齢も若くして急逝し(関東軍で皇帝御用掛だった吉岡安直に毒殺されたという説もあるが)、溥儀の悲しみや孤独感は日々深くなっていったに違いない。 -
媛容は使用人との間にできた子を、溥儀によって焼却炉で焼き殺される。それから阿片中毒も酷くなり歩くことさえままならなくなっていった。ファーストレディを夢見て嫁いできたが、結局は籠の鳥にしかなれなかった媛容の阿片吸引室を見ると、その切ない人生が胸に詰まる。
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その後、関東軍は日本人の妃を勧めるが溥儀はこれを頑なに拒否。数多い写真の中から、一番若くて手なずけ易いという理由で、当時まだ15歳の李玉琴を選ぶ。
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溥儀は1932年から1945年までここに住んだ。この13年という歳月を想像するに、溥儀にとって自分が傀儡皇帝と知ってからの暗澹たる苦悩の日々は、なんと長かったことであろうか。
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溥儀の理髪室
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溥儀の映写室
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「ラストエンペラー」にも登場したダンスホール。
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溥儀と吉岡安直。
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旧関東軍司令部
またタクシーに乗って人民大街にある旧関東軍司令部にやってきた。泣く子も黙る関東軍の本拠地だけあって、その作りは異彩を放っている。帝冠様式といって、西洋建築に日本の城郭の屋根を載せたナショナリズム噴出しまくりの異様な建築物だ。ここまで日本の権力を誇示した建物を、今現在中国共産党吉林省委員会がそのまま使っているというのが不思議だ。ここは撮影禁止だったので、道路の向こう側からこっそり撮った。 -
2階建てバス
人民大街でバスを待っていたら、ちょうど2階建てバスがやって来たので、もちろん2階席に座った。高い位置から見る街並みもいい。他のバスと同じく1元だった。 -
八八八ラーメン
札幌市を中心に海外展開もしているラーメンチェーン「ラーメンさんぱち」の長春店。西康路にある。醤油ラーメンを頼んだが、こってり系のスープで太麺、具沢山のそれはまさに札幌ラーメンである。熱すぎるスープもGOOD。ビールは朝日スーパードライがあったので久しぶりに日本のビールを飲む。でも、アルコール度4.3%と書いてあったので日本のとは少し違うようだ。ラーメン、ビールともに満足してホテルに帰った。 -
2013年6月24日
長春駅
ホテルのすぐ前が長春駅だが、来た時は工事中のため臨時ホームで降ろされた。臨時ホームは500m以上離れているので、念の為ホテル前の長春駅切符売り場で切符を見せて、臨時ホームでいいのか確認した。すると新幹線の「和諧号」は臨時ホームではなく、長春駅の北側に新幹線のホームがあると教えてくれた。訊いてみてよかった。 -
地下通路を通って線路を渡ると、まだ新しい綺麗な駅があった。
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和諧号
10時35分に出発したG8010の二等座(144元)では、隣りのお兄ちゃんが乗っている間ずっと大声で携帯電話で話している。前の席の子はCDラジカセを大きな音で聴いている。まったく煩すぎ!12時1分までの1時間半が長かった。
再びの瀋陽篇に続く。
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