2019/05/01 - 2019/05/03
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いが☆たつさん
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観光や旅行に関わることの多い私は、以前より観光学の「ダークツーリズム」の概念に興味を持っていた。特に、1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原子力発電所の事故現場周辺を巡るツアーが最近右肩上がりで参加者が増えていて、キエフ発の1日ツアーなど手軽に参加できるものがあるそうなので、私もこのツアーに参加してみようと思い、GWの10連休を利用してウクライナへと向かった。
とはいえ、子供のころの記憶でチェルノブイリ原発事故といえば、テレビ画面から映し出される悲惨な映像や、死者の多さなどから恐怖の記憶しかなく、本当にこのような場所へ行くことが適切なのかという葛藤もあった。
事故から33年が経過し、放射線量が半減期をむかえ、短時間であれば放射線被ばくの危険性はないという話を聞いていたが、実際はどうなのだろうか? どういった人々がこの場所を訪れるのだろうか? また、現場を訪れた時の精神的なショックなどは?
様々な疑問が沸き上がるが、「フクシマ」という同様の原子力災害問題を抱えている我が国にとっても、災害復興とそれにツーリズムがどのようにかかわるべきなのか、という問題を考える際にもチェルノブイリの事例は今後何かの参考になるのではないかという想いでこのツアーに参加してみることにした。
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ツアーはウクライナの首都キエフから出発する。キエフには旧ソ連時代に建設された地下鉄が走っており、レトロな車両が今も活躍している。ギギギというモーター音と、地下深くまで潜っていくやたらと早いエスカレータ、各駅ごとに異なる装飾やデザインなどが注目だ。
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チェルノブイリ原発1日ツアーは様々な会社が催行している。今回はSOLO EAST TOURのものに参加した。事前にネットから申し込みして89ドル(一人)。朝8時にキエフ市内中心部のKozatskiy(コザーツキー)ホテル前に集合する。料金は申し込み時にデポジットを50ドルをカード決済。残りを現場で払う。カード利用可能。参加者は16人乗りバンが3台の約40名で、国籍も中国、ハンガリー、イスラエル、イギリスなど様々な国から参加している。
https://www.tourkiev.com/ -
ツアーでは追加8ドルで放射線測定器(ガイガーカウンター)をレンタルできた。日本で購入したエステーの簡易測定器(AIR COUNTER-S)も持参した。キエフ市内の出発時は0.13μSV/h(マイクロシーベルト)。ほぼ東京都内と変わりないレベルだった。
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バスで走ること約1時間。原発から10km圏内に入るチェックポイントを通過する。ここでパスポートをチェックし、QRコードが印刷された参加証をもらう。
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まず衝撃を受けたのが、チェックポイントでおみやげを販売していたこと。チェルノブイリ・マグカップや、ポストカード、Tシャツなどが売られていた。
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そしてさらに驚いたのが、チェルノブイリツアーに参加する人の数。ツアー客はすべてこのチェックポイントを通過しなくてはならないので、他社の参加者もすべてここに集まってくる。その数300人ほど。行列をなして軍人のパスポートチェックを待っていた。軍人はいたってフレンドリー。さほど緊張感はないが、写真を撮ると注意される。
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その後もう1か所で再度チェックを受ける。このようなGPS機器?を首から下げてツアーが開始となる。注意事項は以下のとおり。①アミューズメントパークのようにふるまってはならない。②決められた場所以外での撮影禁止。③地べたに座ってはならない、野外のものに触ってはならない。④肌をさらすような服装は禁止。⑤ものを持ち帰ってはならない。⑥野外でモノを食べてはならない・・・など。
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チェルノブイリ原発周辺には様々な野生動物が生息しているようだった。野良犬を目撃することが多かった。ガイドからは「野生動物に絶対に触ってはいけない」と注意されるものの、近づいて写真を撮ることはOKだった。
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ツアーはまず、チェックポイントから近い廃墟になったザリーシャ村を見学する。この辺りは原発から約20km離れたところにあるとのこと。ポーランド製のラッダという大衆車が放置されたままになっていた。
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草木でおおわれてしまった村の集会所。ソビエト連邦で広く使われていた鎌と槌の紋章が掲げられている。
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かつて商店だったところを見学。1986年の新聞や書籍が無残な姿で放置されたままになっていた。
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その後、「チェルノブイリ」の街を訪問。チェルノブイリは原発から約20km離れており、事故後帰宅してきた人が今でも住んでいるそうだ。
チェルノブイリと書かれたモニュメントの前で記念撮影をするが、大勢の犠牲者を出した場所であることを忘れてはならない。 -
チェルノブイリの街には約200人程度住んでいるそうです。事故後故郷に戻ってきた高齢者が多いのだとか。今も廃墟となっていて都市の規模が大きいのは「プリピャチ」の街で、チェルノブイリの街はこじんまりとしている。
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このツアーには昼食がついている。チェルノブイリの街中のホテル併設のカフェでいただきます。
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食事はポークが基本ですが、希望すればチキンも選べます。ツアー参加者同士食事します。私はハンガリーから来た高齢のご夫婦と一緒の席だった。多くを語らなかったけど、ハンガリーは旧・共産圏なので何か原子力関係に関わっていた方なのだろうか、このツアーには思い入れがあるような感じだった。
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カフェは夜はバーの営業もしているようだ。
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チェルノブイリのTシャツを販売する自販機もあった。
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営業時間。
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チェルノブイリの街の一角にある、事故処理に当たり犠牲になった人を祈念する碑。
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午後からは原発にさらに近づいていく。まずは、ソ連製レーダーと秘密の軍事基地へと向かう。
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この巨大なレーダー施設は、チェルノブイリ原発事故がなかったら決して発覚することがなかったであろう秘密の施設だったそうだ。
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基地の内部に散乱していたコンピュータの基盤。
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ドラム缶なども散乱したまま。
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このツアーではとにかくよく歩いた。運動靴がよいのですが、地面は放射量が高いために、通気性のよくない穴の開いていない冬用のブーツなどがよいそうだ。
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ガスマスクなども放置されたまま。
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次に、幼稚園のあった場所を見学した。建物の内部もひどく朽ち果てギシギシと床がきしみ、崩れ落ちそうな状態だった。
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子供用の人形が無残な姿で・・・。
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そして、いよいよチェルノブイリ原子力発電所が見えてきた。2016年6月に完成した、4号炉と事故後突貫で作られた「石棺」を覆う「新・シェルター」(NSC:New Safe Confinement )が遠くから見える。
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道中珍しく野生のキツネに遭遇した。ガイドもキツネに遭遇することは珍しいようで、車を止めて写真撮影を行っていた。ちなみにバンの運転手はブリーダーをしているそうで、動物を手なずけるのがうまく、持っていた菓子をキツネに投げて引き寄せてくれた。
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そしてチェルノブイリ原子力発電所の敷地に入った。
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ここが事故を起こした4号炉の入口付近だ。この日も多くの作業員が出入りしていました。
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新シェルターが完成したために、周囲への放射能の拡散が大幅に減少したといわれている。入口付近で計測したら1.07μSV/h(マイクロシーベルト)となっていました。行きの飛行機内で計測したら2.05μSV/hだったので、ずいぶんと低いことに驚く。
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ガイドが原発内部の状況を説明する。
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熱心に説明を聞くツアー参加者たち。
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チェルノブイリ原発へと続く引き込み鉄道線。ウクライナの鉄道は軌間1524mmなのだが、ぱっとみたところ1435mmの標準軌っぽくも見える。
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いよいよ原発からわずか4kmの場所にあった「プリピャチ」の町を見学する。ここは事故前は約5万人ほどの原発関係者が生活していたが、事故後強制移住を余儀なくされ、未だに人が戻ることができず廃墟になった場所だ。
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レッド・フォレストと呼ばれる、放射能を吸収し真っ赤に変色してしまった松林のある地区の付近まで行く。この辺りは放射性濃度が高いために、わずかな時間だけバンから降りて見学する。線路が見えます。
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プリピャチの市街地に入った。社会主義らしい公営住宅のような団地が立ち並ぶ地区を歩く。これだけの規模の街が廃墟になったことが驚きだ。
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プリピャチの道路上の線量は0.86μSV/h(マイクロシーベルト)。概ね思ってたより低いが、ところどころ増減する感じだった。
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廃墟となった団地は入口付近のみ入ることができる。日本の公営住宅のような雰囲気でもあった。
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この建物はかつてカフェだった。この建物の背後に湖があり、かつては湖畔の景色の美しいカフェだったのでだろう。無残な姿だけが残る。
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このツアーで最大の放射線量を計測したのがこの場所。いわゆるホットスポットといわれる場所で、雨水を吸った落ち葉などには放射能がたまりやすいために、46.8μSV/h(マイクロシーベルト)とかなり高い値を計測していた。
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カフェ裏の美しい湖。この湖の水は放射能で汚染されているので「絶対に落ちないでね」とガイドに言われる。
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自動販売機のようですが、水をくむ機械なのだそうだ。
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かつて市役所だった場所。
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行政関連の施設なのだろうか。肖像画が散乱していた。
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音楽学校。バレエや演劇を志す子供たちが大勢学んでいたのだとか。
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ここはデパートだったそうだ。かつての写真と照らし合わせながら解説してくれる。
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病院だった場所。すでに半分崩れ落ちてきており、建物も保存されることなく放置されたままなので、いつ崩れるかわからない状態だ。
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学校の内部。机と椅子が無残。
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かつてのスポーツ施設。
一日中廃墟を見ていたので少々気が滅入る。 -
プールなどもあり飛び込み台などもあったようだ。これだけの施設が揃った町が一瞬にして廃墟になるのだから、原子力はいったん事故が起こると人間の力でコントロールできないのだなということが理解できた。
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そして、オープンを間近にして事故が起こったため人々を笑顔にすることがなかった遊園地。観覧車が当時のままの姿です。私はよく名古屋のサンシャイン栄の観覧車に乗っていますが、この姿を見て悲しくなった。
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放置されたままのコースター。こうした遊具に溜まった水には放射能がたまっているために決して手で触ってはならないと注意を受けます。この遊園地は心にぐっとくるものがあった。
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ツアーは以上です。最後に放置されたままのレーニン像を見学した。社会主義の象徴のレーニン像は旧・社会主義諸国では人為的に撤去する動きが進んでいますが、ここプリピャチでは「放置」されるという形でそのままになっていた。
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ツアーは最後にチェックポイントで放射線測定器で、体に放射能がついてないかどうかを計測する。まれに靴底から高い値が計測されることがあり、その場合は靴を洗浄するなどして再検査するそうだ。
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帰りのバスの中で、事故が起こる前の映像集が流れていて、さっき見た廃墟のなかで、楽しそうに遊んでる人々の様子が写っていて悲しかった。
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キエフに戻ってきた。ガイドと運転手にチップを渡してツアーは終了。ガイドは時々ジョークを交えて、参加者が暗く沈んだ気分にならなよう配慮してくれた。「チェルノブイリの今の状況を知ってほしいし、もっと世界中の人にウクライナに来てほしい。そして、日本にも行ってみたい」のだそうな。
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チェルノブイリツアーに参加して、福島のことを思った。今、福島で同様のツアーをやるには受け入れの問題など多くの課題があるとは思うが、世界中からチェルノブイリに観光客が訪れている状況を見て、今後の福島の復興を考える時に「旅」とかツーリズムがどう役に立つかを考える時に参考になるのではないかと思った。
(写真はキエフ市内のソフィア大聖堂)
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