2018/05/20 - 2018/05/22
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ノーーウォリーズさん
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北海道へ5月下旬に4日間のドライブ旅に出かけてきました。中編の旅行記では北海道の先住民アイヌの文化を探すテーマです。アイヌはかつて日本の北海道を中心に東北、樺太、千島にわたって住んでいた少数民族でしたが、明治以降旧土人保護法などで迫害され、負の歴史としてしか知られていないのが実情でしょう。アイヌのアイデンティティである生活や言語が政府により禁止された結果、現在では普通の日本人と何も変わらない生活をしています。しかし流れは変わりつつあります。2008年にアイヌが先住民族として日本政府に認められ、風前の灯火だったアイヌ文化に現在復活の兆しも見えます。アイヌ文化を見るために北海道に旅行に行くのはあまり聞いたことがありません。アイヌが注目されないのは、皆関心がないのか、見るべき物がないのか、それとも政治的な理由か、、考えても分からないので、実際自分の目で確かめてくることにしました。
- 旅行の満足度
- 4.0
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アイヌ文化が残っている場所として有名なのが、白老、平取(二風谷)、阿寒が挙げられます。今回このアイヌ3大聖地全て見て周るつもりが、、白老のアイヌ民族博物館(ポロトコタン)は2018年3月末をもって改装中でクローズとなっていました。 2020年に「国立アイヌ民族博物館」として生まれ変わります。
アイヌ民族博物館しらおいポロトコタン【閉館】 美術館・博物館
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なので最初に到着したのが、平取(二風谷)地区の二風谷アイヌ文化博物館。行き方は日高自動車道を南下し日高富川ICを降りて、山側へ車で15分位。千歳空港からは1時間程です。付近は何もない素朴な場所です。
二風谷アイヌ文化博物館 美術館・博物館
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建物の中に入ると、ビデオ上演でアイヌ文化が紹介されます。10分位でアイヌの風習や特徴、現在の状況をさらっと勉強するには丁度良い内容です。
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アイヌ文様を施した民族衣装の展示。服の作り方も学べます。
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カヌーです。アイヌの人々の移動手段として使われました。
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アイヌ文化の工芸品、左はトンコリと呼ばれる弦楽器。笛の様に鳴らすムックリと並んで有名な楽器。右はお盆(イタ)にアイヌ文様を施します。
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これらのスティックはパスイと呼ばれ、真ん中の漆の器に入った酒をすくい、カムイ(神)に捧げるために使われたものです。これはアイヌにとって、重要な儀式のひとつ。仏教で言うとお香をたく感じなのでしょうか。
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そして、アイヌの儀式で最も重要なのが、熊送り(イオマンテ、または「飼い熊の霊送り儀礼」)です。アイヌにとって熊はカムイ(神)からの使者、神が食料を贈ってくれていると考えます。特に小熊が手に入ると大切に育てて、翌年の冬に熊送り(イオマンテ)で神の元に送り返します。平たく言い換えれば、小熊を殺して肉を頂く儀式です。アイヌのイベントの中で一番特別なものです。写真はウンメムケといって熊を送った後に衣(イナウ)を覆った熊の頭骨。とても神聖なものです。
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建物の外には、アイヌの家(チセ)のレプリカが。この中のうち幾つかには中に入ることが出来て、地元のアイヌの人々と交流できる仕組みになっています。他に訪問客も少なく、沢山時間を取って話をすることができます。
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アイヌの衣服を作る工程のデモンストレーションが。木の皮を剥いでそれを茹でて柔らかくすることで、綿の様に柔らかい素材になるとの事です。しかし服として織る事ができるアイヌの人はもうごく僅かだとか。
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チセのひとつではお盆(イタ)の木彫りのデモンストレーションが。文様の特徴は対照的でアイヌの伝統の型が使用されますが、自由に彫れる部分もあります。ひとつを完成させるのに何日もかかります。アイヌの木彫り師も残っているのはごく僅かです。息子は継承せず違う職業を選んでしまうのだそう。アイヌへの差別がなくなることで彼らに職業の自由が出来た分、アイヌの木彫り師は絶滅危惧になってしまいました。私はやりませんでしたが、木彫りの体験もできるそうです。
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チセの内部の様子。重要な食料である鮭を乾燥させている様子です。建物の一番奥(左側の窓の周辺)が家の中で神聖とされる位置です。
二風谷のアイヌ博物館の展示は充実しており、アイヌの伝統工芸は良く分かりました。しかしアイヌの歴史を展示するものはありませんでした。文字を持たないアイヌは、全てを口頭で伝承しており、そのためアイヌがどの様な歴史を辿ったかは後に入ってきた和人の記録を基にしたものが殆どです(記録されているのはごく一部で、アイヌの認識と合っていないかも知れません)。なので分かっていないことも多いのでしょう。アイヌに有名な歴史の出来事や偉人などが存在しないのが、アイヌが一般に良く知られない理由なのかと思います。 -
博物館の外ではアイヌ民芸品を買うことができます。写真は木彫り師トオルさん。気さくな人でアイヌの文化について1時間程色々な話を伺いました。博物館で展示されているアイヌ文化の殆どが現在では行われていません。熊送り(イオマンテ)は2007年に政府により解禁されましたが、今では祭事を司る人がいない、動物愛護に反するなどを理由に今後執り行うのは難しいとの事。お土産として花矢(ヘペライ)に似たペーパーナイフを購入。花矢は熊送りで使われて、神に戻された小熊がお土産に持ち帰るものでもあります。
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大きく場所は移って道東の屈斜路湖の側です。ここもアイヌが比較的多く住んでいる地域です。
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湖畔にある屈斜路コタンアイヌ民族資料館です。ガイドの人はアイヌですが、学生時代に差別にあったと、過去のつらい話をしてくれます(私からは訊いていません)。残念ながら、こういったネガティブな出来事もアイヌの歴史の一部です。
屈斜路コタンアイヌ民族資料館 美術館・博物館
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熊に立ち向かうアイヌ。山刀(マキリ)は本来熊と戦うために持ち歩いたわけではなく、木を刈ったり薪を割るためのものです。山刀にも文様を入れて飾り付けたりします。
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ここでもカムイ(神)に捧げるためのパスイなどが展示しています。しかし正直展示物はそれ程でもないです。あと、アイヌの民族衣装を自由に着られるので、アイヌの姿でセルフィーを撮ることができます。
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屈斜路コタンアイヌ民族資料館での個人的なハイライトは、熊送り(イオマンテ)のビデオを見たことです。90年代に撮影された恐らく最新の熊送りのひとつで貴重な映像です。熊送り(イオマンテ)は冬に3日間かけて行わるアイヌにとって最も重要なイベント。写真は熊を遊ばせているところ。ただ縛られて拘束されている様に見えますが、アイヌの解釈では熊はカムイの下に帰れるので喜んでいるとの事。この後、歌や踊りの儀式の後、花矢を射られて棒に首を挟まれて熊は絶命します。その後も熊の肉を使った料理を振舞ったり色々な儀式が続きます。
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阿寒湖に移動しました。付近のアイヌが移住して200人程でコタン(集落)を形成しています。阿寒湖はアイヌのショーを見られるので結構有名ですね。その場所は阿寒湖アイヌシアターイコロです。
阿寒湖アイヌシアター イコロ 名所・史跡
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私がアイヌを考える時にいつも思い浮かぶのが、ニュージーランドのマオリ族です。どちらも後から来た開拓者に制圧され、近年まで差別されて、近年になって文化を認められた歴史はアイヌと非常に良く似ています。更に文化も似ている部分も。写真はニュージーランドのロトルアのマオリ族の家です。どこか似ている感じがします。ニュージーランドでは、今ではマオリのダンス(ハカ)がラグビーの国際試合の前に踊られ、NZ国歌も半分がマオリ語で、名誉回復が図られています。
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アイヌ公演は北海道観光の大きな見所のひとつでしょう。1回30分で、季節によりますが日に何回も行われています。現在は公演の写真撮影は禁止されています。数年前の旅行記では公演の写真が旅行記にアップされているのですが。。
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なので、阿寒湖アイヌシアターイコロのウェブサイトの写真を転載させていただきます(Copyright: https://akanainu.jimdo.com)。公演ではアイヌダンスにムックリ演奏が楽しめます。派手な演出はありませんが、アイヌに興味があれば興味深い内容です。いつでもアイヌのショーが見られるだけでも貴重です。
本当のアイヌの姿を見たければ、9月に阿寒で開かれる「まりも祭り」「千本たいまつ」か10月の旭川での「こたんまつり」など年に数回のアイヌ主催のイベントに行くのが良さそうです。 -
隣のアイヌ生活記念館にはアイヌ文化の展示があるのですが、説明が少なく特に印象に残るものはありません。熊送り(イオマンテ)の祭壇(ヌサ)が木の向こうに見えますが、これを見ただけでは何故イオマンテが神聖で立ち入り禁止か分からないでしょう。アイヌ関連で最も有名な場所で訪れる観光客も多いので、もう少し内容を充実させて欲しいですね。
アイヌ生活記念館 美術館・博物館
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阿寒湖のアイヌコタン。アイヌの文様を彫った彫刻が見られます。
阿寒湖アイヌコタン 名所・史跡
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建物はそれらしい雰囲気ですが、アイヌの集落と言うより観光客向けの土産物屋街なのは否めません。まあこれが無ければ、普通の観光客はアイヌの何も見ずに北海道を去ってしまうので、あった方が良いのでしょうが。
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熊の置物。かつては北海道旅行の土産の定番でした。アイヌは伝統的には文様を彫るのであって、熊の彫刻は最近になってアイヌ民芸として定着したものです。
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珍しいアイヌ料理を頂きました。右はオハウと呼ばれ、山菜やキノコなど地元の野菜と鹿(ユク)の肉を入れたスープで、味付けは塩と昆布のみの薄味。左はアマムと呼ばれ、いなきび、豆、キトピロを炊き込んだもの。いなきびはもち米の様にふっくらで甘みのあるご飯と言った感じ。おいしかったです。
アイヌの聖地2箇所(白老が改修中)を周りました。実は、北海道にはこれ以外にもアイヌ文化を展示した多くの小さな博物館が全道に点在しています。さすがに全てに行くのは難しいですが、過去に行った他のアイヌ博物館をひとつ紹介します。民芸喫茶 ポロンノ グルメ・レストラン
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函館市北方民族資料館に2015年に訪れました。江戸時代の松前(函館)はアイヌと和人の交易地で、この資料館は和人の目線でアイヌの紹介があります。この絵では当時のアイヌの1年の生活スタイルが描かれています。
函館市北方民族資料館 美術館・博物館
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その名も「蝦夷島奇観」。蝦夷に暮らす異文化のアイヌを、和人は奇異の目で捉えています。この時代のアイヌ文化はまだ生きており、和人と共存していました。
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もちろん、普通のアイヌの展示もあります。アイヌは和人との交易で、毛皮や鮭と引き換えに米や刃物などの必需品を手にしていました。
アイヌ文化を探す旅では、アイヌについて興味はあってもほぼ無知識で訪れたのですが、実際見て周り話を聞くことでより興味がわいてきました。日本の貴重な少数民族について今後も学ぼうと思いました。旅のハイライトとしてはアイヌの人達と直接沢山の話ができたことでしょう。現状はアイヌ観光の目玉になるものもこれと言ってないですが、2020年の「国立アイヌ民族博物館」の開館でこの状況も変わるのでしょうか。また漫画「ゴールデンカムイ」でも注目を集めているようですし。今後のアイヌ文化の保全のためにも、多くの人に関心をもってもらえることを期待します。
参考文献: 本旅行記は、旅で学んだこと、及びアイヌ民族文化財団の資料に基づき作成しました。 https://www.frpac.or.jp/web/learn/index.html
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