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お金はなくても子供は育つ - ロシアの出産、子育て事情 -(4)

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1998/01/01 - 1998/12/31

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

<<公的社会保障>>

 法的なことを話すと、妊娠30週目で産休には入れる。医師の判断があればもう少し早く入ることもできる。そして出産日までは働いていたころと同水準の賃金が保証されている。産後は1歳6ヶ月まで賃金水準100%の育児休暇が続き、それ以降3歳までは賃金水準は下がるが職場に籍はおいてくれる。しかしソ連崩壊後に現れた私企業ではこれが守られていないことが多々あると思うが、育児に追われる母親は法律相談などにも行く暇もなく、そのままになってしまうのが現実のようだ。

だがまれに、「あっぱれ」と言いたくなるほど巧みに法律の恩恵にあずかっている人もいる。私と同い年ながら、1年半から2年の感覚で5人の子供を次々と産んだターニャは、ソビエト時代末期に就職した国営企業に今でも籍があるばかりか、つい最近まで毎月の給料をもらっていた。今では10歳になる長女を産むときに産休に入って以来、1日も働いたことがないにもかかわらず、だ。

 経済的援助としては「社会保障局」から出産一時金が出る。現在1500ルーブルで、ドル換算すると53ドルだが、私が出産した時は200ドルくらいあり、かなり太っ腹な額だったのだが、私はもらえなかった。社会保障局に「労働証明書」を提出する必要があったのだが、私の勤めていた東洋大学がそれを発行してくれなかったためだ。東洋大学はその他、出産を理由に私を解雇したがこれも法律違反で、「企業は妊婦および乳児を抱える母親を解雇してはならない」と規定されている。

社会保障局は一時金以外にも子供が16歳になるまで毎月「子供手当」を振り込んでくれるが、その額は57ルーブルで、2年前はそれで紙おむつの22枚パックが一つ買えたが、今はそれすら買えない。未婚の母はそれが200ルーブルになる。また、3人以上の子供を抱えた家庭への「子だくさん手当」というのは、なぜか存在しない。代わりに子供は16歳になるまで市内交通に無料で乗車でき、すべての博物館・美術館の入場が無料、月に一度好きな劇場での観劇も無料、学校の給食費が免除になるなどの特典がつく。

また、「地区人民教育部」の管轄になるが、子だくさん家庭は保育園、幼稚園の通園寮が7割引きになる。小学校に上がると、1人につき月380ルーブルの学童手当が支給される。この「地区人民教育部」はその他にどんな業務をこなしているかといえば、孤児院から子供を引き取った里親への金銭的援助、および監視、また保育園、幼稚園と小中学校の学習計画を監督したり、教育者の質のレベルを保つため、教員へのセミナープログラムを実施したりしている。

また、就学年齢の子供がいる家庭が住居を売買したり交換したりする場合、子供の住環境が劣化しないように、1人当たり居住面積が今までより小さくならないように監視されていて、そのため不動産売買の際に「人民教育部」の許可証が必要になることが往々にしてある。


<<日本の幼稚園は恵まれているか>>

 保育園と幼稚園だが、日本との決定的な違いは、公立でも保母さんの人事異動がないことと、ペテルブルグのような大都市の場合、庭がないことが多い。つまりすべり台もブランコも砂場もジャングルジムも、なーんにもないのだ。そういうとき、ふつう園児は毎日ぞろぞろ連れ立って「お散歩」に出掛けるのだが、私のように街の中心部に住んでいると、「お散歩」に行く公園すら近くにない。プーシキン像が立っている辻で、アル中のおばあさん達が昼間っから飲んでいるベンチの周りを、近所の保育園の子供達が「ただ走り回っているだけ状態」でいるのをしょっちゅう見かける。割れたウォッカの瓶やタバコの吸い殻がそこらへんに散らばっているところで、である。

また、人事異動がないことは、園によって職員のレベルというか「職業意識」にかなりバラツキがあるという事態を招く。特に園長先生自身が人格者でない場合などは最低だ。その人がやめるまで、その園の改善は望めない。おもらしをした子供を何時間もそのまま放置しておいたり、そうじが行き届いていなかったり、休職の中身にも差がでてくる。ちなみにこちらの保育園・幼稚園は、みなで一緒に朝ごはんを食べる。同じ公立でも、体操や英会話を取り入れているところがあったりなかったり、迎えに行かなければならない時間もまちまちで、差は大きい。

また、母子家庭のママや、夜勤のある仕事を持つママ、あるいは立て続けに何人も子供ができた人にとって救いの神なのが、公立の夜間保育・幼稚園だ。月曜から金曜まで子供を預けっぱなしにしておける。土日だけ引き取って、限られた時間内で思いきり子供をかわいがってやれる。それでもさすがに良心の呵責をおぼえる人は、仕事が引けてから、たとえ遅くなっても子供を迎えに行く。せめて寝る間だけでも一緒に、という思いがあるのだろう。

 上にあげたような理由で、日本と違って、家から一番近い保育・幼稚園に子供をやる人はそう多くない。少しでもまともな保育・幼稚園探しに必死だ。エルミタージュ幼稚園のように人気があるところは、入園申込み時に最低でも50ドルの「寄付」を覚悟しておかなければならない。その他お値段は10倍ほど高くなるが、独立採算系の保育・幼稚園、そして私立もある。


<<社会の連帯>>

 ここでは子供を産むということが、個人的なこと、あるいは家庭内の出来事だとは思われていないフシがある。それは社会的な出来事であり、ベビー用品や子供服、おもちゃの「お古」は知り合いでない人からも回ってくる。哺乳瓶やおしゃぶりまでまわってきて、私は文字通り何も買わなかった。日本の育児書にあるような「これだけは」用品や便利グッズは、なくても育つ。

日本のように「公園デビュー」で知り合った「子供同士が友達」のママ達があつれきを生み出すというのは、あまり聞かない。まず「親同士が友達」の子供が一緒に遊ぶことが多いからだ。そして親同士の横のつながりはとても広く、しっかりしている。「子連れパーティ」やピクニックがよくあり、それに父親が出席する率が高いのも、親同士が友達だからだ。

 ある日、だっこひもで赤ん坊を結わえたお母さんが、両手に荷物を持ち、セーターをまくり上げて乳房まるだしで授乳しながらネフスキー大通りを横断していた。驚いてそれを目で追ったのは私だけだった。そういう社会なのだ。

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