それゆけ！日本語教師 from ペトロパヴロフスク・カムチャツキー　◆未だ暗中模索の迷える日々◆

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　カムチャッカ国立海洋アカデミーで日本語を教え始めて、1年がたちました。昨年の9月にあどけない顔で「あいうえお、かきくけこ…」と言っていた1年生たちも、2年生ともなるとずいぶん大人になった感じがします。女子学生は私が照れてしまうほどきれいになりました。

　2年目になり私もようやく慣れてきましたが、まだまだ大変です。1年目には見えなかった「アラ」が目について、教案を作るときなど悩んでしまってかえって時間を費やしたりしてしまいます。

　◆　◆　◆　◆　◆

　私の学生を見ていて思うのは「繰り返しが嫌い」ということです。日本から持ってきた“日本語の教え方”の類の参考書には『頭で文法を理解することと実際に使って話せるのは別。繰り返してロをついて出るまで練習すべき』と書いてあります。例えば形容詞の過去形の場合、先生が「寒いです、きのう」というと学生が0．1秒後に「昨日は寒かったです」、先生「ひまです、おととい」だと学生「おとといはひまでした」とか瞬時に言えるようにトレーニングすると頭でなくて体で覚えられるというのです。もっともなことだとは思いますが、実際にやってみるとなかなか難しいのです。日本国内で日本語を週に30時間くらい勉強している留学生なら、この方法は効果的なのかもしれません。しかし、私のクラスの場合、よくできる学生を除いて応答にかなり時間をとられるし、テンポも悪く、文型もなかなか定着しません。「慣れるまで根気よく」と無理に何度もやってみても弱い学生には苦痛だし、よく出来る学生は「もう飽きちゃった」とあくびまじり…。

　考えた末、工夫をしてやりかたを変えました。例えば「○○○がほしいです」「○○○を?たいです（食べたいです等）」の授業はこんな風にしました。文法の説明とモデル会話の後、次のような課題を出しました。

問題(1)　（？？？に言葉を当てはめる）

・私は大きい？？？がほしいです。
・私はしろい？？？がほしいです。
・私は日本の？？？がほしいです。

　各自で考えて書いてもらい、その後1人ずつ発表します。いろいろな答えが出てきました。面白かったのは「しろい」です。コート、靴、パン、猫などは妥当なところですが、女の子で「白いヒゲがほしいです」という人もいてびっくりしました。また「白い金魚がほしいです」という答えは「はたして白い金魚は存在するのか」と物議をかもしました（「赤い金魚」は日本にいますが、よく考えたらこれもちょっと変な言葉です）。

問題(2)

・私は日本のしょうせつを…
・私は日曜日12時まで…
・私は土曜日大学に…
・私は水道の水を…

　まず文章に合うように「?たいです」という形の動詞を考えてもらい、その後「○○さん、あなたは日本のしょうせつを読みたいですか」などと生徒同土で質問し合ってもらいます。あえて学生がそれぞれ違う動詞を思い付くようにと問題を作ったのですが、「私は日曜日に12時まで寝たいです」「私は土曜日大学に行きたくないです」というのは、みんな共通してしまいました。たぶん日本の大学生も同じですね。「水道の水を飲みたいですか」の質問に「はい飲みたいです」とみな迷うことなく答えていたのは印象的でした。さすが火山と温泉に囲まれ、自然豊かな土地の人の答えだと感心しました。これがモスクワなら100パーセントが「いいえ、飲みたくないです」と答えるでしょう。東京でも自信をもって「飲みたいです」と言える人はどれほどいるでしょうか。

　このやり方は良かったようで、「ほしいです」「?たいです」の文型は楽しみながら勉強してくれました。だんだん難しくなっていく文法を何とか親しみながら身につけてもらおうと頭をひねる毎日です。

（JICインフォメーション　第93号　より転載）