2018/05/27 - 2018/05/27
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junxさん
ノンタブリー県は、バンコクとアユタヤの間でチャオプラヤー川の両岸を跨いで広がり、アユタヤ時代から400年以上の歴史を持つという。いまは首都圏の一部だ。
いままで一度も足を踏み入れたことが無かったが、川に面して県の小さな博物館があると知り、訪れてみることにした。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 船 徒歩
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ワット・ポーから船を使うことにして、いつものようにバスで出かけた。チットロム付近で渋滞に巻き込まれ、ピタッと止まったまま動かない。でも、まあ予想の範囲内。タクシーみたいに止まっている間もメーターが上がるわけではないので、のんびりと待つ。
バンコク都交通公社は、路線バスにE-TICKETという非接触カードの料金システムを導入すべく準備中で、車内の動画などでしきりに宣伝している。まだ実際に稼働している車を見たことは無いが、一部のバスにはタッチセンサーやその他の機器がすでに設置されている。これが動き始めたら、仕事が減ってしまう車掌さんの乗務はどうなるのだろう? -
バスを降りてワット・ポーへ出る。ワット・ポーと王宮の間を抜けてまっすぐ進むと、突き当りにター・ティエン埠頭がある。
ワットポー 寺院・教会
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エクスプレス・ボートの埠頭は、なんと改修工事のため閉鎖中だった。対岸のワット・アルンの埠頭から乗船するようにとの案内である。致し方ないので、4バーツ払ってフェリーで対岸へと向かう。
チャオプラヤ川 渡し船 (ワットアルン) 船系
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バンコク観光のハイライトを結ぶ人気路線だけあって、観光客でいつも混み合っている。タイ人のおばちゃんたちも、ワイワイと盛り上がったりスマホでワット・アルンを撮影したり、楽しそうだ。
チャオプラヤ川 渡し船 (ワットアルン) 船系
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ワット・アルンでやっとエクスプレス・ボートを捕まえた。ちょうど席が埋まるぐらいの混み具合で、途中で降りる人はあまりいない。観光客らしい人は見当たらず、ほとんどは地元の人たちのようだ。
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東の空が暗く、雲行きが怪しい。ときどき稲妻が光っている。バンコクはこのところ、ほぼ毎日のように雷雨に見舞われている。帰るまで持つとよいが、どうだろう。
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左岸に、崩れ落ちかけた古い大きな家が見えた。クディチンのウインザー・ハウスにも似た装飾のある木造の家屋で、とても気になる。
タノン・ナコンあたりだと見当はつくが、チャオプラヤー川に面している場所なので、陸地から今見えている側へ近づくことはできない。反対側の道路付けはどうなっているだろうか。 -
MRTブルーラインの延伸区間の駅が見えた。線路や信号設備は分からないが、高架や駅などの建造物は出来上がっているように見える。
新しい区間には高架も多く、BTS=高架鉄道、MRT=地下鉄という今のイメージはちょっと変わるだろう。 -
乗ってからそろそろ30分ぐらいだろうか。味気の無い都会の護岸コンクリート壁の代わりに、河底に杭を立てた水上建築が並ぶ風景が続く。高い建物も少なく、空が広い。
船脚は速いが、周りにはゆったりとした空気が流れている。 -
この船の終点、ノンタブリー。お目当ての博物館は埠頭の目の前にあった。
埠頭の建物から外に出ると、そこはまるで鉄道駅のロータリーのようになっていて、クルマやバスがひっきりなしに出入りしていた。駅前通りの左は商店街、右は博物館の建物の脇に露天商のアーケードが続く賑やかな通りだ。 -
お昼を過ぎていたので、商店街の食堂で軽く昼食をとることにした。辛い食べ物は苦手なほうなので何でもというわけにゆかないのだが、このお店は大丈夫のように見える。
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カノム・パッカードらしき炒め物とローゼルジュースを頼んだ。ローゼルは花の赤く熟した萼(がく)の部分を使うもので、優しい甘さがお気に入り。
以前に中南米のソレルジュースの材料を尋ねたとき、おまえはタイ人か?と逆に尋ねられた理由が、後から分かった。ソレルジュースは原材料も色も味も、ローゼルジュースにそっくりだ。
気づかなかったが、空腹だったらしい。食べ始めると案外食べられる。追加で焼きビーフンも注文してしまった。 -
テーブルから調理台越しに、通りを挟んで博物館の建物が見える。
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改めて建物の正面に回った。地味ながら美しいコロニアル風の二階建てで、少しペールブルーがかった白い塗装がよく似合っている。外廊下で囲まれた様子が、学校を思わせる。
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1階正面の張り出し廊下の内側。奥には外階段がある。左の扉が博物館の入り口だ。
展示室は1階と2階に分かれている。建物は大きいが、博物館は正面の張り出し部分に面した上下各3室だけなので小規模だ。じっくり見ても1時間ぐらいだろう。 -
1階左の部屋ではノンタブリー県の歴史と産業、それに地元出身の偉人たちとその業績が紹介されている。
写真は Nang Yai ナン・ヤイという人形劇用の影絵で、ウィラ・ミムエンという名匠の作品とのこと。天日干しされた牛または水牛の皮革で作る。高さ1mを超えるサイズだが切り抜きと彩色は繊細で、ステンドグラスのようだ。
ナン・ヤイのストーリーはたいていラーマキエンを下敷きにしたものだそうだから、タイ人にとってはお馴染みだろう。ラーマキエンはインドのラーマヤナから転じた物語りで、お寺の壁画などにもよく描かれている。 -
モン族のボート。2人用程度の小さな船で、ちょっと物を運んだり買い物や近所の寺に行くときなど日常的に使われた。モン族はミャンマーに起源をもつ人々だ。
後ろのパネルにはノンタブリーからバンコクにかけてのチャオプラヤー川沿いに掘られた主な運河が示されている。1538年に造られたラット・バン・クルアイ運河、1636年のラット・ムエン・ノン運河、1722年のラット・クレット・ノイ運河が特に重要で、かつて大きく蛇行していたチャオプラヤー川のルートが大幅にショートカットされた。 -
1階右の部屋では、この建物と歴史を紹介している。
司法学校として1910年に建築されたものの運営に必要な人材の不足から学校は実現せず、代わりにキングス・カレッジとして開校した。キングス・カレッジは大学というより、イギリスのパブリックスクールを模した寄宿校だったらしい。
カレッジが1925年に閉校した後、1928年から1992年まではノンタブリの総合庁舎として使われた。1981年に歴史的建造物の指定を受け、2009年からは博物館として使われている。 -
2階は特産品である素焼きに関する展示。左の部屋では製作工程を、右の部屋は製品を展示している。
素焼きの生産はコ・クレット(クレット島)やパク・クレット(クレット島に対面する左岸)に住むモン族の人々が多く担っていたという。いずれもチャオプラヤー川に面する地区だ。
中央に置かれた大きな水瓶は、モン族ゆかりのデザインによるもの。この水瓶の意匠はノンタブリー県のエンブレムにも使われている。 -
素焼きに関する展示らしく、素焼きの人形で製造工程を解説している。
これは原材料になる砂を練る工程。水と混ぜて粘土にしたものを、最初は水牛を使って踏み均す。排泄物が落ちないように専用のトレイを持つ助手が水牛の後ろを付いて回ったのだそうだ。(笑) -
大まかに練り終えた粘土を切り出し、今度は人が踏んでさらに練り上げる。熟達した踏み手が踏むと美しい花びらの形が現れたとか。
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きめ細かく程よい硬さになった粘土を、ろくろで廻しながら成型してゆく。この後も形を整えたり模様を刻んだりと、工程はさらに続く。
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模様は木製のナイフで彫刻したり型押しを施したり、さまざまな方法で施される。模様をつける工程で使われる道具も多岐にわたる。
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十分に乾燥させたものを焼き窯で焼くと製品として完成する。模型から、相当に大きな窯であることが分かる。記述は無かったが、差し渡し20m前後といったところだろうか。窯の中いっぱいに隙間なく壺を積み上げるそうだ。
焼くといっても、掛かる時間が半端でない。薪を燃やし始めてから適温になるまで7日から8日、さらに温度を上げながら20日から25日焼き、ゆっくりと冷ますのに5日から7日だ。焦らずにゆっくりと冷まさなければ、せっかく焼いた製品が簡単に割れてしまう。
焼きあがる前からバイヤーが集まって買い付けを始める。そうした人たちは、木の棒で製品を軽く叩いて音を聞けば製品の丈夫さを判断することもできたという。
すべて過去形で書いているのは、素焼きが産業としてほぼ衰退してしまっているから。現在は土産物として細々と作られている程度のようだ。 -
国王72歳の誕生日にあたり神聖な水を湛えるため、1999年に特別に制作された水瓶。
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水瓶に刻まれた模様の細部。
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蓋の頭頂部。非常に複雑で繊細な彫刻だ。
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素焼きの水瓶は本来日用品で基本的なデザインはほぼ決まっているが、かなり変わったものもある。これは"Noeng風"のもの。Noengはよく分からないが、クメールかベトナムの一族だろうか。
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実用品以外にこのような置物も作られている。彩色しない素焼きには土の香りが感じられて素朴な味わいがある。
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素焼きで作られた楽器もある。これはバンコクの楽器店のために作られたというゴブレット・ドラム。巧妙な形で、良い音がしそうだ。
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部屋と部屋は、大きくはないが重厚な開き戸で仕切られている。欄間の明り取りがそこに軽快さを加えていて、なかなか絶妙なバランスだ。
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廊下の手すりの向こうには、船が行き来するチャオプラヤー川の眺めが広がる。
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埠頭の待合室が見える。柱ごとに置かれた観葉植物が涼しげだ。
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振り返ると、張り出した正面から左右に向かってクランクした廊下ごしに、翼のように部屋が続く。
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建物を出て中庭に回ってみた。中庭の右半分には別の建物が建てられ、左半分は駐車場になっている。なにもこんな使い方をしなくてもよいのにと思うが、タイではありがちなパターンだ。
外廊下に張り巡らせた大きなルーバー(鎧戸)は強い日差しを遮って風を通すためのもの。船の操舵輪のスポークの一部を切り取ったような形のブラケットが特徴的だ。 -
回廊の後ろ右半分はもともと建物が無く、左半分だけになっている。左奥の建物の中庭側には、手前の建物と同様の大きな階段室がある。外階段はタイの伝統的な住宅の外階段にヒントを得たものだそうだ。
博物館のあたりは比較的状態が良かったが、奥のほうは修繕が行き届かないようだ。 -
博物館以外に内務省の研修施設としても使われているらしい。左右の建物にも、ときどき人の出入りがある。
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建物正面の手前には広場が設けられ、おかげでチャオプラヤー川までの視界を遮るものが無い。
ベンチで飲食する母娘、建物の姿をカメラに収める人。少し曇って柔らかな光の下、のどかな午後だ。 -
バスと迷ったが、あまり時間を掛けずに帰りたくなり、船で帰ることにした。夕方といってもまだ日が高く、雲が途切れれば日差しも強い。急に風が出てきた。一雨来そうな気配だ。
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バンコク都内中いたるところに、高層のコンドミニアムが次々と建てられている。分譲価格が億を超えるものも珍しくない。こんなに建てて本当に売れるのだろうかと思うが、売れるから建てるのに違いない。タイ経済の成長ぶりを象徴しているようだ。
これで経済格差が緩和されて中間層の厚みが増せば、タイが日本を追い抜く日もそう遠くはない気がする。バンコクの物価はすでにかなり高い。 -
サートンまで一気に川を下り、サパーンタクシンからBTSで帰ることにした。
この駅は高速道路に挟まれて拡幅することができず、プラットフォームの幅を確保するためにここだけ単線になったので、ダイヤ上のネックになっている。当局は駅を廃止したい意向とも聞くが、おそらく無理だろう。いまさらだが、サイアム駅のように2階建てにすればよかったのにと思う。サパーンタクシン駅 (BTS) 駅
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