2018/06/09 - 2018/06/09
4819位(同エリア22907件中)
junxさん
観光客向けの施設でも、喧騒を離れて休日をのんびり過ごすのにうってつけのスポットはいくつかある。
ジム・トンプソン・ハウスは都心からのアクセスも非常に良く、よく知られているわりに人でごった返すことも少ない、お気に入りの場所のひとつ。
ジム・トンプソンはタイシルクのブランドとして知られているが、この家はブランドの創始者でシルク王と呼ばれるアメリカ人、ジム・トンプソンが古い家を寄せ集めて建てた自宅、兼コレクションの収集場所だ。
1959年に完成した後すぐに一般にも公開されたというから、私設美術館のような使い方を最初から意図していたのかもしれない。パブリックという考え方に対する彼の感覚がうかがわれるような話だ。彼自身は、1967年に失踪するまでのごく短期間この家を使っただけだった。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 船 徒歩
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入場料は150バーツ。学生割引もあるようだ。小規模な私設博物館でこの金額だと聞くと少し高いように思われるかもしれないが、後述のガイドを考えれば相当に安い。また、ここの収益金はバンコクの盲学校の運営に使われるとのこと。
建物の入り口と受付は、門をくぐってからレストランとショップの間を抜けて、かなり奥まったところにある。受付前の広場では、訪れた人たちが建物をバックに記念写真を撮ったりしてガイドツアー開始までの待ち時間を思い思いに過ごしている。ジム トンプソンの家 建造物
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ツアーは英語、中国語、日本語など数ヵ国語に対応。音声ガイド機を貸してくれるのではない、人がついて案内してくれるのだ。ガイドさんたちが受付の周りで歓談している。
建物外は自由だが、建物内をガイド無しで勝手に見て回ることはできないので、展示物を見たいのならツアーへの参加が必須である。ガイドツアー代は入場料に含まれている。 -
日本語のツアーはこの女性が案内してくださった。発音はまずまずだが「アユタヤ」が何度聞いても「イタヤ」に聞こえる。正しい発音は「イタヤ」に近いのかもしれない。
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ガイドさんに連れられて庭の奥を進む。左の柵の向こうはサン・セープ運河。正面の東屋は運河への出入口だ。
かつてのバンコクは、運河が道路の役割を担っていた。この家も、運河でモノを運び、運河から人が出入りしていた。 -
主な建物はいずれも、タイに伝わる高床式。階下のスペースは、農家であれば家畜を飼ったり穀物や農具を保管したり、さまざまな作業スペースとして使われたはずだ。トンプソン・ハウスでは、ここも大型美術品や調度品の展示場所として使われている。
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中国風の陶器の天板を擁する八角形のテーブル。いま見ても全く古さを感じさせない。
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木彫のレリーフに彫られた鯉。こうした古い工芸品に描かれたかたちを、トンプソンは自身のいくつかの絹製品のデザインに用いたのだそうだ。
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高床のダイニング付近の下に置かれた仏像。ロッブリー県で発見されたという。優美な曲線は7世紀後半から8世紀、アユタヤ時代のものだ。
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シンハーは沖縄のシーサー、日本の獅子と同じ起源を持つ。こうして入口の左右に置かれれば、日本人にはそんな説明さえ要らないかもしれない。
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トンプソンの家は各地に散在していた複数の建物を集めて移築したもので、古いものは2世紀も遡る。若い頃に建築家として働いたキャリアを持つ彼は、移築作業も人任せにしなかった。最初に雇ったバンコクの建築家に伝統建築への知見が無いとみるや、アユタヤの別の建築士に鞍替えしたという。
建物は釘を使わない伝統的な技法で建てられ、柱や壁の傾きまでオリジナルにこだわっている。塗られた塗料もタイで古くから使われてきた防腐塗料だ。 -
建物の外観だけでも見るべきところは多い。窓や扉の上下、妻面などの凝った木彫の装飾も、伝統的な建築の特徴のひとつだ。
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開け放たれたドアにも木彫が施されている。
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直角に交互に組まれた木枠、鎧戸の斜めのパターンが織りなすリズミカルな空間に、軒を支える支柱の輪郭が大胆な印象を与える。時代を超えたデザインだと思う。
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屋内には魅力的な美術コレクションや調度品が山ほど展示されているのだが、残念ながら屋内での撮影は禁止されている。ただし多くの扉が開放されていて、屋外から見える範囲を撮影するのは自由だ。
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仏教絵画のコレクションも見応えがある。ガイドツアーの説明は、私には少しペースが速すぎる。個人的には、できれば1点ずつもう少しゆっくり鑑賞したい。トンプソンならば私が質問するまま、もっと心行くまで説明してくれるのではないかと想像してしまう。
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テラスから見たメインリビング。ビルマの仏陀像が中央に置かれている。大きなテーブルは実はベッドで、中国風の重厚な細工が施されている。このリビングのある建物は19世紀初めごろのものだそうだ。
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トンプソンは東南アジアの古美術を好みタイの伝統を尊重したが、それらに縛られていたわけではない。室内にはタイや周辺国の伝統的な工芸品と西欧のデザインとが複雑に同居しているし、建物も単なる移築ではなく自由な発想で再利用されている。
リビング両側の壁にある仏像が置かれた展示用の窪みは、もともとは窓だった。他にも、彫刻が施された窓下のパネルを彫刻が室内を向くように組みなおしたりもしている。 -
ひとけのないテラスはしっとりと静まり返り、いつまでいても飽きることが無い。
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カメラを振れば、運河沿いの東屋の屋根が見える。
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建物と庭の境目は定かでなく、テラスの石段を数歩降りれば緑の中だ。
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蓮の水盤が置かれた小径。運河に沿う小庭。
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建物の裏側へ廻ると、高い木々が茂る大きな庭がある。
ジム・トンプソン・ハウスは、その建物と所蔵コレクションに一番の価値があるのは間違いない。しかし建物を取り囲むように木々が深い影を作る庭にも、大きな魅力がある。 -
熱帯の植物なので成長も早く、どんどん様相が変わるだろう。手入れは行き届いているのだが、植物が持つ本来の力強さが失なわれていない。
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トンプソン自身、庭にはこだわりを持っていた。この家を計画していた頃、姉妹に書き送った手紙のなかで庭園を「ジャングル」と呼んでいたのだそうだ。彼のジャングルはいまも生き続けている。
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門から建物までの間では、繭からシルクを取り出して染める工程をデモンストレーションして見せている。
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きれいなお姉さんも愛想を振りまいてくれる。残念ながら英語は通じないようだった。
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サン・セープ運河のエクスプレスボートを使えば Ban Krua Nuaという埠頭が至近(歩行者専用の橋を渡り運河の反対側)なので、これが最も便利だろう。とはいえ陸路でも、BTSでサイアム駅の隣のナショナル・スタジアム駅から歩いて、ほんの10分程度だ。ソイの入り口から博物館まで無料のカートも利用できる。
ここまで便利なロケーションから、ジム・トンプソン・ハウスのあの静かな佇まいはちょっと想像がつかない。ジム トンプソンの家 建造物
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