2017/12/16 - 2017/12/16
4637位(同エリア22966件中)
junxさん
バンコクの旧市街といわれてもあまりピンとこないが、ラッタナコーシン・アイランドの島内がいちおうそれにあたるとされているらしい。
アイランドといっても他と狭い運河で隔てられているだけなので、はっきりいって島という感じは全然しないし、観光ガイド以外の誰ももはやこれを島とは呼ばないだろう。興味がある人は "Rattanakosin Island" でググってほしい。
王宮、ワットポー、ワットプラケオ、国立博物館など名だたる観光スポットはすべてこの中にあり、このエリアにはもちろん足を踏み入れたことが何度かある。でもここには見るべきところがもっと他にあると知って、あらためて訪れてみた。
目的地は王宮の真正面から1ブロックと運河1本を隔てたあたり。王宮もそうだが、BTSもMRTもここまで来ないので普通はクルマかバスのお世話にならざるを得ない。距離を歩くのに慣れているなら、MRT終点のフアランポーン駅から歩いても実はたいしたことはない。ただ油断すると熱中症の恐れがあるし、排気ガスが酷くて歩くのはあまり気乗りしない。
快適に移動したいならタクシーだけれど、時間を気にしないかわりにできれば無駄遣いしたくない自分はフアランポーン駅から路線バスを利用した。バス停の前のサランロム王立公園を抜けたところに運河があり、小さな橋を渡るとそこはもう旧い街並みの一角。ここから運河沿いに徒歩で北へと向かう。
本流から枝分かれする小さな運河を渡り、ワット・ラーチャボピットに隣接する王室墓地の前を通り、内務省の前を通り過ぎると、プレーンプットン通りに出る。ここから順にプレーンナラ通り、プレーンサンパサット通りと続く一帯をサームプレーン Sam Phraeng と呼ぶ。3本の道の町という意味らしい。
通りを挟んで軒を連ねる商店と住居を兼ねた旧い建物たちは、こじんまりとしてとてもつつましく、落ち着いた雰囲気。あきらかに計画的にデザインされた建物で、ヨーロッパの旧い街並みのように統一された美しさが感じられる。雑然としたバンコクの一角にこんな景観が残されていたとは、ちょっとした驚きだ。
何年か前に歴史的遺産として公式に認定し、クリームと緑にリペイントしたのだそうだ。そこがどんな歴史を持った何のお店なのか(または過去にどんなお店だったのか)、まるで博物館の説明書きのような小さなプレートが歩道に建てられている店もあり、タイ語、英語、中国語、ときおり日本語まで添えられている。
チャオプラヤ川対岸のトンブリーからラッタナコーシンへと都が移された、いにしえのとき。その記憶もいまや遠く、力強く激しく未来を目指す現代のバンコク。
時代の奔流からするりと取り残されて、いまもここだけ、時がゆっくりと流れているようだ。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
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王宮へ向かうタイ人観光客の便宜のためか、フアランポーン駅から無料で乗せてくれるバスが出ている。この女性は車掌さん。ふつう料金を集めるのが車掌さんの仕事だが、無料のバスにもなぜ車掌さんが乗務しているのかは、謎である。この手の謎が、タイにはいろいろある。
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王宮の入り口にあたるロータリーで。DISCOVEER THAILAND!
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無料バスに使われている、おんぼろの通称「赤バス」。よくHINOとかMITSUBISHIとかのロゴが入っている。ディーゼルエンジンと低いギアのもの凄い騒音を立てながら、バンコクの込み合う街路を爆走する。赤バスは他の路線でもよく見かける最もベーシックなタイプだが、路線名のところに青文字で何やら書いてあるのが無料のサイン。「国民の税金により無料」とか何とか、書いてあるらしい。
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サランロム王立公園は、かつて王宮の庭園の一部だったところ。ゆっくり歩いても10分で通り抜けてしまうほどの小さな公園だが、落ち着いた雰囲気でくつろげる。
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公園を出たところにあるロップ運河。人だけが通れる木橋は、手動で跳ね上げることができる仕掛けがある。対岸の建物がいい。川は淀んでいるが、一瞬ヨーロッパの旧い街と見紛うような光景だ。
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ロット・ワット・ラーチャボピット運河。他の運河と同じようにラーマ一世時代に作られたという。京の高瀬川を思い出した。あんな風情は無いけれど、街中の小さな運河に共通する雰囲気があるように思う。
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プレーンプットン通りを入り口から見る。つきあたりの救護センターで通りは左右の二手に分かれ、背後でまた合流する。救護センターの建物はラーマ四世から五世の頃に宮殿として使われたことがあるそうだ。
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救護センターの存在で、通りは曲がり角が多くて少し複雑な形をしている。プレーンプットンの特徴は、なんといっても通りが一直線ではないという事実だろう。
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こんなものも置かれている、不思議な空間。まるで街全体が芸術作品のようだ。
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2階の窓には透かし彫りの装飾がある。あとから手を加えられていないかぎり、どの住戸の窓も基本は同じだ。元のデザインが同じだけに、僅かな違いが心地よく感じられる。
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Nuttapornという小さなショップでココナッツアイスクリームをいただいた。他のどこで食べたものとも違うタイプで、少しだけシャーベット状。繊細でとても上品な甘さだった。帰ってから、ここは有名なお店だと知った。タイのアイスクリームの黎明期にまで遡る創業60年以上の老舗で、厳選した若いココナッツだけを使って少量ずつ作っているのだそうだ。
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プレーンナラの入り口にあるミシン屋さん。ジューキ、シンガー、ニッポン、ジャノメと読める。
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この街にも猫が似合う。
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王宮の一部としてラーマ五世のときに建てられたという、私立タラパット・スクサ学校。繊細な木彫の装飾があしらわれた歴史的な建物だが傷みが酷く、いまにも崩れ落ちそうな状態。軒下の説明書きには「補修の予算を待っている」と書かれているが、もう何年もそのままのようだ。
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プレーンサンパサット通りは歴史的建物よりもすでに建て替えられてしまった区画が多い印象だ。通りの入り口に立つ風変わりな門が貴重なのだろうか。
さて、この写真。ミャンマーにもあるそうなのでタイに無いはずがないとは思っていたが、実物を見つけてちょっとびっくりした。 -
石敢當が埋め込まれているのは正面の建物で、駐車しているクルマの影あたり。
沖縄では、マジムンと呼ばれる魔物が道路を直進して家に入ってきてしまうので、これを防ぐため三叉路の突き当りに石敢當が置かれる。ここも三叉路の突き当りだ。だとすると、マジムンの性質も沖縄に特有なものではないわけだ。 -
何と呼ぶのかは知らないが、バイクの前輪にリヤカーを合体したような乗り物。都心部ではめったに見かけないが、旧市街では違和感なく似合う。
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注意深く観察すれば、歴史的建築物はサームプレーンだけではないことがわかる。タノンタナオやそこから延びるSoiには、貴重な旧い建物がいまも多く残されている。
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そんなSoiのひとつサソン通りも、歴史的な景観を保って美しい。
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プアンマライが飾られた軒先。
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サソン通り入り口の機械工場。角の看板は古くて読みづらいが「廣東機器廠 KWANG TUNG ENGINEER」と読めた。いまも昔も、華人の存在はタイの原動力のひとつと言えるだろう。
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日常の光景に運河が溶け込んでいる。
輸送手段としての機能はとっくの昔に棄て去られてしまったが、緑とともに残された水辺はいまや街のオアシスだ。 -
その後、面白い事例を発見したので、追加。
写真は、スクンビット通りのプラカノーン運河に面した場所に新築されたばかりの住宅。妻面の下見板の様子から木造のように見えるが、どうだろうか? 注目に値するのは、例の「卯達」が引き継がれていること。(チャオプラヤー川の記事を参照。) 実効的な意味があるのかどうか、はなはだ疑わしい。こんなデザインに、誰がゴーサインを出したのだろうか。タイの謎が、またひとつ加わった気がする。
この角度の写真ではちょっとわかりづらいが、窓枠などは深緑色に塗装されている。壁面ともども、歴史的な住宅建築に揃えた色だ。歴史的建造物の意匠を、明らかに意識していると思う。
左の高架はおなじみBTS。手前の船は乗り合いのカナルボートで、路線バスのようなものだ。オンヌット通りにほぼ並行してプラカノーン運河を遡る。1時間に1往復運航されている模様。気になったので乗ってみたら、なかなか楽しかった。機会があれば別記事で書きたい。
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