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日曜日のタ方、Evangelical Church of Bangkok バンコク福音教会(?)のクリスマスイベント2週目のコンサートに、いそいそ出かけてみた。演目はメサイア。<br /><br />街中の教会のイベントなのでクオリティについての期待は薄く、実はちょっと迷っていた。ところが先週のイベント会場で元牧師さんにそれとなく水を向けたところ、なんと合唱100名オケ100名で著名な指揮者だという。俄然、興味が沸いてきた。<br /><br />ヘンデルは特段好みじゃないが嫌いというわけでもない。ただ、よく聴くのは器楽ソナタや鍵盤曲で、メサイアは全くもってノーマークだった。いまさらCDなどと真面目に向き合う気力は無いけれど、コンサートならいいかも、と思えたのだ。なにせ超有名曲なわけだし。<br /><br />例年クリスマスに開かれるこのコンサートシリーズは人気らしく「もの凄く人が集まるから早めに来たほうがいい」と言われた。そこで早いつもりで1時間前に会場に着いたが、駐車場はすでに満車、待合室も空席が無い。開場時間になって、あまり厚かましくないように列の後ろのほうに遠慮がちに並んだが、席はちゃっかり前のほうをゲットした。コンサートはかぶりつきが面白いと思っている。<br /><br />ところで待合室や会場に案内されたときに気になることがあった。全くといっていいほどタイ語での案内が無く、全部英語なのだ。ここはバンコクなのに、なんで? たしかに外国人も多いけど、もしかしてタイ人なら英語ぐらいは解する人じゃなきゃダメということ?<br /><br />オープニングに至って、この疑念は確信へと変わった。タイ語を使う気がぜんぜん感じられない。開演の挨拶はひとこと目から&#39;Good evening, ladies and gentlemen&#39;だし、開演前の短いお祈りも&#39;in Jesus&#39; name, Amen.&#39;で終わる。<br /><br />今夜ここには英語話者しかいないのか? まさかそんなわけないだろう。日本で同じことやったら、ちょっとブーイングものじゃないだろうか? でも待てよ、周りのオジサンやオバサンたち、タイ人に見えてもタイ語より英語のほうが多い気がする。うぁああ、なんか場違いなところに来ちまったのかも・・・。だが今更しょうがない。どうせ自分だってタイ語の理解力は限りなくゼロに近い、外国人だ。<br /><br />演奏は、クリスマスキャロル3曲から始まった。Joy to the world「諸人こぞりて」は途中ベートーヴェン9番第4楽章のいわゆる「歓喜の歌」のフレーズを挟んだ派手な編曲で &quot;盛り上がる&quot; バージョン。指揮者は両手を大きく振り廻すアクションで、初っ端からノリノリなご様子。<br /><br />そしていよいよ期待のメサイア、第一部。だが作品のせいか演奏のせいか、いまひとつ乗り切れない。たしかに個々のアリアなど魅力のある佳品が多いのだが、なんとなく各曲バラバラで散満な印象だ。メサイアのテクストは脚本家が旧約新約のいくつか異なる出典から自由に拾ったモザイクで、マタイ受難曲のようにストーリーテリングでないからかもしれない。<br /><br />そんな気分も第二部に入ってからはどこかへ消えて、だんだん面白くなってきた。受難のシーンでテクストもわかりやすいし、バッハほど突き詰めないにせよドイツ風味の構築感もある。それでいてどこか屈託のない明快さが、この頃なりに新しい時代の空気を感じさせて新鮮だ。<br /><br />テクスト、テクストと書いているが、実は演奏を楽しみながら対訳サイトのお世話になった。イベントの性格上、スマホのちら見がはばかられる雰囲気でもない。クラシック特有の声で歌われる古英語を初耳で追って意味を理解するのは辛いので、大助かりだ。<br /><br />「神に彼を救ってもらおうじゃないか」の掛け合いの合唱のあと、テノールのレチタティーヴォとアリオーゾ、ソプラノのレチタティ一ヴォとアリア、とおいしそうな曲が並んでいるなぁ。ここからの展開が見どころ・・・と思っていたら、あれれれ?????  テノールが立ち上がる様子も無いまま合唱が歌い始め・・・一瞬にして迷子と化した私の目はスマホの画面上を彷徨うばかり。<br /><br />10秒ほど焦ったあと、ようやく探し当てた。なんと4曲すっとばして「おお城門よ、こうべをあげよ」に突入している! えええーっ??? でもこれはまだ序の口。その後も結局ソリストは誰ひとり立ち上がることの無いまま、次に立ち上がったのは聴衆のほうだった。・・・そう。国歌斉唱よろしく全員起立する習わしの、まるで打ち上げ花火みたいな、例のハレルヤコーラス。ここまで一気に10曲とばし! お見事!!(呆) ほとんど詐欺みたいな中抜きである。<br /><br />パンフのどこにも断り書きは無いし、演目紹介で何の説明も無かったと思う。長大なオラトリオは何度か聴いているが、こんな体験したのははじめてだ。それとも私が無知なだけで、メサイアは第一部だけマジメにやり、あとは数曲単位でガンガン省略するのがフツーなの?<br /><br />ここまで大胆にやられれば、第三部もおおよそ想像がつくというもの。案の定、ソリストが歌ったのはソプラノのアリア、それにバスのレチタティーヴォとアリア「トランペットが鳴り響き・・・」の都合たったの3曲だけ。あとは華麗にワープしまくって、終曲「子羊こそ賛美にふさわしい」の合唱から一気に「アーメン」へとなだれ込んだ。<br /><br />演奏後はスタンディングオベーションで拍手の嵐。日本のようにブラボーコールこそないものの、温かい拍手を通り越して、演奏者たちがステージに戻るたび「ウォー!!!」という歓声で迎える。<br /><br />演奏者の誰かと個人的なつながりがある聴衆がリードしていた可能性は多分にある。でも、それ以外の人も含めて基本的に皆さん、今夜の演奏には何の不満も無く最高の音楽体験だったという意思表明だ。さすが、万事てきとーで大らかなタイ。でもお願いだから、全曲ノーカット版聴かせてくれ!!

タイのメサイアはオメデタイ?

15いいね!

2017/12/09 - 2017/12/10

10816位(同エリア22960件中)

0

8

junxさん

日曜日のタ方、Evangelical Church of Bangkok バンコク福音教会(?)のクリスマスイベント2週目のコンサートに、いそいそ出かけてみた。演目はメサイア。

街中の教会のイベントなのでクオリティについての期待は薄く、実はちょっと迷っていた。ところが先週のイベント会場で元牧師さんにそれとなく水を向けたところ、なんと合唱100名オケ100名で著名な指揮者だという。俄然、興味が沸いてきた。

ヘンデルは特段好みじゃないが嫌いというわけでもない。ただ、よく聴くのは器楽ソナタや鍵盤曲で、メサイアは全くもってノーマークだった。いまさらCDなどと真面目に向き合う気力は無いけれど、コンサートならいいかも、と思えたのだ。なにせ超有名曲なわけだし。

例年クリスマスに開かれるこのコンサートシリーズは人気らしく「もの凄く人が集まるから早めに来たほうがいい」と言われた。そこで早いつもりで1時間前に会場に着いたが、駐車場はすでに満車、待合室も空席が無い。開場時間になって、あまり厚かましくないように列の後ろのほうに遠慮がちに並んだが、席はちゃっかり前のほうをゲットした。コンサートはかぶりつきが面白いと思っている。

ところで待合室や会場に案内されたときに気になることがあった。全くといっていいほどタイ語での案内が無く、全部英語なのだ。ここはバンコクなのに、なんで? たしかに外国人も多いけど、もしかしてタイ人なら英語ぐらいは解する人じゃなきゃダメということ?

オープニングに至って、この疑念は確信へと変わった。タイ語を使う気がぜんぜん感じられない。開演の挨拶はひとこと目から'Good evening, ladies and gentlemen'だし、開演前の短いお祈りも'in Jesus' name, Amen.'で終わる。

今夜ここには英語話者しかいないのか? まさかそんなわけないだろう。日本で同じことやったら、ちょっとブーイングものじゃないだろうか? でも待てよ、周りのオジサンやオバサンたち、タイ人に見えてもタイ語より英語のほうが多い気がする。うぁああ、なんか場違いなところに来ちまったのかも・・・。だが今更しょうがない。どうせ自分だってタイ語の理解力は限りなくゼロに近い、外国人だ。

演奏は、クリスマスキャロル3曲から始まった。Joy to the world「諸人こぞりて」は途中ベートーヴェン9番第4楽章のいわゆる「歓喜の歌」のフレーズを挟んだ派手な編曲で "盛り上がる" バージョン。指揮者は両手を大きく振り廻すアクションで、初っ端からノリノリなご様子。

そしていよいよ期待のメサイア、第一部。だが作品のせいか演奏のせいか、いまひとつ乗り切れない。たしかに個々のアリアなど魅力のある佳品が多いのだが、なんとなく各曲バラバラで散満な印象だ。メサイアのテクストは脚本家が旧約新約のいくつか異なる出典から自由に拾ったモザイクで、マタイ受難曲のようにストーリーテリングでないからかもしれない。

そんな気分も第二部に入ってからはどこかへ消えて、だんだん面白くなってきた。受難のシーンでテクストもわかりやすいし、バッハほど突き詰めないにせよドイツ風味の構築感もある。それでいてどこか屈託のない明快さが、この頃なりに新しい時代の空気を感じさせて新鮮だ。

テクスト、テクストと書いているが、実は演奏を楽しみながら対訳サイトのお世話になった。イベントの性格上、スマホのちら見がはばかられる雰囲気でもない。クラシック特有の声で歌われる古英語を初耳で追って意味を理解するのは辛いので、大助かりだ。

「神に彼を救ってもらおうじゃないか」の掛け合いの合唱のあと、テノールのレチタティーヴォとアリオーゾ、ソプラノのレチタティ一ヴォとアリア、とおいしそうな曲が並んでいるなぁ。ここからの展開が見どころ・・・と思っていたら、あれれれ?????  テノールが立ち上がる様子も無いまま合唱が歌い始め・・・一瞬にして迷子と化した私の目はスマホの画面上を彷徨うばかり。

10秒ほど焦ったあと、ようやく探し当てた。なんと4曲すっとばして「おお城門よ、こうべをあげよ」に突入している! えええーっ??? でもこれはまだ序の口。その後も結局ソリストは誰ひとり立ち上がることの無いまま、次に立ち上がったのは聴衆のほうだった。・・・そう。国歌斉唱よろしく全員起立する習わしの、まるで打ち上げ花火みたいな、例のハレルヤコーラス。ここまで一気に10曲とばし! お見事!!(呆) ほとんど詐欺みたいな中抜きである。

パンフのどこにも断り書きは無いし、演目紹介で何の説明も無かったと思う。長大なオラトリオは何度か聴いているが、こんな体験したのははじめてだ。それとも私が無知なだけで、メサイアは第一部だけマジメにやり、あとは数曲単位でガンガン省略するのがフツーなの?

ここまで大胆にやられれば、第三部もおおよそ想像がつくというもの。案の定、ソリストが歌ったのはソプラノのアリア、それにバスのレチタティーヴォとアリア「トランペットが鳴り響き・・・」の都合たったの3曲だけ。あとは華麗にワープしまくって、終曲「子羊こそ賛美にふさわしい」の合唱から一気に「アーメン」へとなだれ込んだ。

演奏後はスタンディングオベーションで拍手の嵐。日本のようにブラボーコールこそないものの、温かい拍手を通り越して、演奏者たちがステージに戻るたび「ウォー!!!」という歓声で迎える。

演奏者の誰かと個人的なつながりがある聴衆がリードしていた可能性は多分にある。でも、それ以外の人も含めて基本的に皆さん、今夜の演奏には何の不満も無く最高の音楽体験だったという意思表明だ。さすが、万事てきとーで大らかなタイ。でもお願いだから、全曲ノーカット版聴かせてくれ!!

旅行の満足度
3.0

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  • 開演1時間前。教会の駐車場はクルマがつんつんに詰まって、こんなふう。まあバンコクの路上はどこでもこんなふうなのだが。

    開演1時間前。教会の駐車場はクルマがつんつんに詰まって、こんなふう。まあバンコクの路上はどこでもこんなふうなのだが。

  • チューニング中のオーケストラと合唱団。<br /><br />教会内部はごく普通の四角い部屋で、天井が吸音仕様で背後にガラス張りのPAブースがあったり、巨大なプロジェクタを備えていたり、ちょっとしたコンベンションホールのようだ。

    チューニング中のオーケストラと合唱団。

    教会内部はごく普通の四角い部屋で、天井が吸音仕様で背後にガラス張りのPAブースがあったり、巨大なプロジェクタを備えていたり、ちょっとしたコンベンションホールのようだ。

  • あたかも日曜日に初めて聴いたような文章にしたけれど(すみません嘘です)、実は土曜日にも別の教会でまったく同じプログラムを聴いていて、英語の一件と演奏については、ほぼこちらでのお話。でも英語なのはどちらも同じだし、演奏内容も変わらない。<br /><br />土曜日の会場は同じスクンビット通り沿いでBTSアソーク駅に近いSoi19、ワッタナ教会というところ。さらに火曜日にはHoly Redeemer Churchでも演奏するそうで、宗派を超えた都心3教会のジョイントイベントとなっている。<br />

    あたかも日曜日に初めて聴いたような文章にしたけれど(すみません嘘です)、実は土曜日にも別の教会でまったく同じプログラムを聴いていて、英語の一件と演奏については、ほぼこちらでのお話。でも英語なのはどちらも同じだし、演奏内容も変わらない。

    土曜日の会場は同じスクンビット通り沿いでBTSアソーク駅に近いSoi19、ワッタナ教会というところ。さらに火曜日にはHoly Redeemer Churchでも演奏するそうで、宗派を超えた都心3教会のジョイントイベントとなっている。

  • ワッタナ教会の内部。こちらは聴衆を待たせず、開演前から自由に着席させていた。ゲネプロを見学できるので、指揮者を知るには好都合。

    ワッタナ教会の内部。こちらは聴衆を待たせず、開演前から自由に着席させていた。ゲネプロを見学できるので、指揮者を知るには好都合。

  • 「きよしこの夜」を演奏中。

    「きよしこの夜」を演奏中。

  • 指揮はChanrunee Hongcharuという人。名門チュラロンコン大の准教授で、タイ日外交120周年を記念するコンサートでベートーヴェン9番を振って有名になったそうだから、案外日本でも知られているのかもしれない。女性だが、音楽作りの方向性は繊細とは真逆のようだ。<br /><br />公平のために付け加えておくなら、19時開演で途中15分の休憩をはさみ、終わったのは21時を大幅に廻っていた。曲の省略が無ければ22時でも終わらなかったと思われる。とはいえ、持ち時間の多くを第一部の全曲演奏に使うという選択は、個人的にどうにも腑に落ちない。会場を提供した教会にも、もちろんソリストやオケにもその責任はなく、すべては音楽監督たる指揮者の判断だろう。つまり、そういう指揮者なのだ。<br /><br />ソリストの中では、バリトンのKittinant Chinsamranが、豊かな声量と音楽的、視覚的な演出力で光っていた。経歴を知らないが、オペラの経験が豊富な人ではないかという気がする。

    指揮はChanrunee Hongcharuという人。名門チュラロンコン大の准教授で、タイ日外交120周年を記念するコンサートでベートーヴェン9番を振って有名になったそうだから、案外日本でも知られているのかもしれない。女性だが、音楽作りの方向性は繊細とは真逆のようだ。

    公平のために付け加えておくなら、19時開演で途中15分の休憩をはさみ、終わったのは21時を大幅に廻っていた。曲の省略が無ければ22時でも終わらなかったと思われる。とはいえ、持ち時間の多くを第一部の全曲演奏に使うという選択は、個人的にどうにも腑に落ちない。会場を提供した教会にも、もちろんソリストやオケにもその責任はなく、すべては音楽監督たる指揮者の判断だろう。つまり、そういう指揮者なのだ。

    ソリストの中では、バリトンのKittinant Chinsamranが、豊かな声量と音楽的、視覚的な演出力で光っていた。経歴を知らないが、オペラの経験が豊富な人ではないかという気がする。

  • 由緒のある建物というわけではなさそうだけど、実用一点張りなEvangelical Churchとは違って、いかにも教会らしい趣向を凝らしたデザインだ。

    由緒のある建物というわけではなさそうだけど、実用一点張りなEvangelical Churchとは違って、いかにも教会らしい趣向を凝らしたデザインだ。

  • 不満を言い出せばキリがないが、それでも慌ただしい毎日に一服の清涼剤ではあった。帰り道の猥雑な夜の街も、いつもとは少し違って優しく見える気がする。<br /><br />教会の前庭、クリスマスの飾り付けが綺麗だった。

    不満を言い出せばキリがないが、それでも慌ただしい毎日に一服の清涼剤ではあった。帰り道の猥雑な夜の街も、いつもとは少し違って優しく見える気がする。

    教会の前庭、クリスマスの飾り付けが綺麗だった。

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