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<br />1989年7月3日、月曜日。<br /> 昨夜、ゲーブルくんと2人で、たいしたつまみもなしに、ジョニ赤の1リットル瓶を飲み干してしまった。<br /><br /> 一番いいお酒のつまみは、「面白い話」ってことなんだ。<br /> 話の合う人と一緒ならば、酒の肴なんか要らないものなんだよ。<br /><br />いくら僕が酒に強くても、4千メートルの高地で、食事もせずにウィスキーを飲んだら二日酔いになる。<br />この朝、僕はボーッとしていた。<br /><br /> 今日はチャカルタージャ山に行く。<br /> 昨日予約した観光バスが、僕の泊まっている「ホテルトリノ」にやってくるはず。<br /><br /> 午前8時の約束だったが、南米の時間はいい加減なものだから、遅れるに決まっている。<br />そう考えて、ゆっくりとトイレに入っていたら、8時10分にツアーのバスがやってきた。<br /><br /> 結局ヒゲを剃れなかった(涙)。<br /> 別に山に登るだけだから、ヒゲを剃る必要もないんだけどね。<br /><br /> 8時10分にバスに乗り込んで、次の乗客のいるホテルへ行く。<br />これが時間がかかった。<br /><br />いつまでたっても乗り込んでこない。<br />ブラジル人の大家族だったんだよ(涙)。<br /><br />ブラジル人の家族をホテルの前で待っていて、時間が過ぎる。<br /> 彼らが乗り込んで、次は、ぼくの友人のゲーブルくんのホテルへ行く。<br /><br />バスがゲーブルくんのホテルに近づくと、ゲーブルくんがホテルの前に立っているのが見えた。<br />ゲーブルくんは、バスを待ちきれずに歩き出した。<br /><br /> 僕は、バスの窓を開けて、声をかけた。<br />バスに乗ってきたゲーブルくんの話では、あまりに来るのが遅いので、旅行会社に殴りこみに行くところだったそうだ(笑)。<br /><br /> 南米の旅行会社なんか、いい加減なものなんだよ。<br /> 南米の人が全体的に時間を守らないってことだけどね。<br /><br /> 結局、ラパスの市街をバスが出たのは、8時40分になった。<br />バスは、アンデスの高原を走り、最後ちょっと上って、チャカルタージャ山の下にある「チャカルタージャロッジ」へ到着した。<br /><br />ここの標高が5300メートルだそうだ。<br />ロッジを出ると、そこからチャカルタージャ山の頂上まで、なだらかな坂道が通じている。<br /><br />ゲーブルくんと僕は、そこを足を踏みしめながら上っていった。<br />スキー場のあるところへ着いたが、7月初めだと雪がなく、スキー客もいなかった。<br /><br />ゆっくりと頂上を目指して歩いていると、急に苦しくなった。<br />ゲーブルくんの姿を見失った。<br /><br /> 僕は、なぜかすぐに「ゲーブルくんは山から落ちた!」と思い込んでしまった。<br /> 斜面を見て歩くが、人影はない。<br /><br />ちゃんと装備をした白人登山者が数人やってきた。<br /> 僕は「僕の友達が山から落ちた」と、捜すように頼んだ。<br /><br /> 彼らは東洋人のおじさんの言葉を聞き流して、「ちょっと待っててね」と言ったまま、通り過ぎてしまった。<br />これは困った(^ω^;)(;^ω^)。<br /><br />ゲーブルくんが崖から落ちてしまったのならば、仕方がない。<br />おそらく死んでしまっただろう。<br /><br /> 問題は、ゲーブルくんが死んだことで、僕に迷惑がかかるってことだよ。<br /> 死んだら、日本大使館に連絡すればいいだろう。<br /><br /> 死んだかどうかわからない今現在、僕はどうしたらいいのだろう。<br /> 僕自身もいま、高山病にかかっているみたいで、頭がふらふらしているのに。<br /><br /> 捜索や何かで、僕は動きたくない。<br /> 考えてみると、ゲーブルくんの本当の名前も住所も知らない。<br /><br /> 旅先で知り合っただけの関係だ。<br /> 僕が知らない振りをするのが一番楽なんじゃないかな。<br /><br /> 一緒のホテルでバスに乗ったわけでもない。<br />バスの中で、日本語でしゃべっていただけだ。<br /><br /> 知らない振りをしていれば、ここは切り抜けられるかもしれない。<br />ゲーブルくんがいなくなったことを僕が言わなければ、問題はない。<br /><br />しょせん、南米はラパスの旅行会社だ。<br /> 行きと帰りで乗客の数を数えることもないだろう。<br /><br /> 僕はゲーブルくんをチャカルタージャ山から落ちたままにして、シカトを決め込む。<br /> 1人でラパスへ戻ることに決めた。<br /><br />これで、スッキリ解決(笑)♪<br />そう結論付けて、チャカルタージャロッジへ下っていった。<br /><br />ロッジの中へ入ると、なんと、崖から落ちたとばかり思っていたゲーブルくんがいたよ。<br /> 人騒がせなやつだ(怒)。<br /><br /> 僕は、「なーんだ、崖から落ちてなかったの?」と話しかける。<br /> 「いま君を見捨てることに決めたばかりだったんだ」と、説明した。<br /><br />こんなことを言わなくてもいいのだが、僕はもともとざっくばらんな人間。<br />この手の笑いが好きなんだよ。<br /><br /> 高山病にいいという「コカ茶」を、ロッジで飲んだが、効くとは思えなかった。<br />ちなみに、ここでは、コカ茶一杯が1ボリビアーノ(50円)もした。<br /><br />チャカルタージャ山の入山料が、別に5ボリビアーノ(250円)徴収された。<br />この日のチャカルタージャ山の気温は、マイナス13度。<br /><br /> 高山病がなくても、長居したい状況ではない。<br />ブラジル人家族はすぐに戻りたがるし、僕も戻りたい。<br /><br /> 結局、正午にはチャカルタージャロッジを出発して、帰途に着いた。<br />ラパスの旅行会社前に着いたのが、午後1時10分。<br /><br />ゲーブルくんと僕は、そのまま日本人会館へ歩く。<br /> 日本人会館で、トンカツ定食(10ボリビアーノ/5百円)を食べ、ご飯のお代わり2杯までのところを、うまく3杯お代わりした。<br /><br /> 食事のあと、ソファで、置いてある朝日新聞、パオリスタ新聞を読む。<br /> 日本人会館の図書館で、本を4冊借り出す。<br /><br /> 本を借り出すには、一冊あたり1ボリビアーノ(50円)かかった。<br />メルカード(市場)にいって、紫色の「とうもろこしジュース」を飲む。<br /><br /> 夜は、中華料理店へ行って、スープだけを飲んだ。<br /> 同じホテルに泊まっていて、ちょっと話をしたイタリア人が、これからバスでアルゼンチンへ抜けるという。<br /><br />「いま、アルゼンチンは何でも安いぞ。一緒に行こう!」と、誘われる。<br />この時期、アルゼンチンの通貨が暴落して、一夜で、対ドルの通貨価値が3分の1になった。<br /><br />つまり、ドルがあれば、豪華なアルゼンチン滞在が出来る。<br /> 僕はまだ、ボリビアにやることがあるし、次はチリへ向かうつもり。<br /><br />あっさりと、アルゼンチンへの誘いを断ってしまった。<br /> 僕は、通貨暴落はまだまだ続くと思っていた。<br /><br />残念ながら、こういう風に決断が出来ないところ、目の前のチャンスをみすみす逃がすこと。<br />それは僕も、優柔不断な、本物の日本人だってことかな(笑)。<br /><br /><br />

『5千メートルを超すチャカルタージャ山に登ったら、コロッと高山病になっちゃいました』@ラパス近郊/ボリビア

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1987/09/07 - 1990/05/05

196位(同エリア348件中)

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みどくつ

みどくつさん


1989年7月3日、月曜日。
昨夜、ゲーブルくんと2人で、たいしたつまみもなしに、ジョニ赤の1リットル瓶を飲み干してしまった。

一番いいお酒のつまみは、「面白い話」ってことなんだ。
話の合う人と一緒ならば、酒の肴なんか要らないものなんだよ。

いくら僕が酒に強くても、4千メートルの高地で、食事もせずにウィスキーを飲んだら二日酔いになる。
この朝、僕はボーッとしていた。

今日はチャカルタージャ山に行く。
昨日予約した観光バスが、僕の泊まっている「ホテルトリノ」にやってくるはず。

午前8時の約束だったが、南米の時間はいい加減なものだから、遅れるに決まっている。
そう考えて、ゆっくりとトイレに入っていたら、8時10分にツアーのバスがやってきた。

結局ヒゲを剃れなかった(涙)。
別に山に登るだけだから、ヒゲを剃る必要もないんだけどね。

8時10分にバスに乗り込んで、次の乗客のいるホテルへ行く。
これが時間がかかった。

いつまでたっても乗り込んでこない。
ブラジル人の大家族だったんだよ(涙)。

ブラジル人の家族をホテルの前で待っていて、時間が過ぎる。
彼らが乗り込んで、次は、ぼくの友人のゲーブルくんのホテルへ行く。

バスがゲーブルくんのホテルに近づくと、ゲーブルくんがホテルの前に立っているのが見えた。
ゲーブルくんは、バスを待ちきれずに歩き出した。

僕は、バスの窓を開けて、声をかけた。
バスに乗ってきたゲーブルくんの話では、あまりに来るのが遅いので、旅行会社に殴りこみに行くところだったそうだ(笑)。

南米の旅行会社なんか、いい加減なものなんだよ。
南米の人が全体的に時間を守らないってことだけどね。

結局、ラパスの市街をバスが出たのは、8時40分になった。
バスは、アンデスの高原を走り、最後ちょっと上って、チャカルタージャ山の下にある「チャカルタージャロッジ」へ到着した。

ここの標高が5300メートルだそうだ。
ロッジを出ると、そこからチャカルタージャ山の頂上まで、なだらかな坂道が通じている。

ゲーブルくんと僕は、そこを足を踏みしめながら上っていった。
スキー場のあるところへ着いたが、7月初めだと雪がなく、スキー客もいなかった。

ゆっくりと頂上を目指して歩いていると、急に苦しくなった。
ゲーブルくんの姿を見失った。

僕は、なぜかすぐに「ゲーブルくんは山から落ちた!」と思い込んでしまった。
斜面を見て歩くが、人影はない。

ちゃんと装備をした白人登山者が数人やってきた。
僕は「僕の友達が山から落ちた」と、捜すように頼んだ。

彼らは東洋人のおじさんの言葉を聞き流して、「ちょっと待っててね」と言ったまま、通り過ぎてしまった。
これは困った(^ω^;)(;^ω^)。

ゲーブルくんが崖から落ちてしまったのならば、仕方がない。
おそらく死んでしまっただろう。

問題は、ゲーブルくんが死んだことで、僕に迷惑がかかるってことだよ。
死んだら、日本大使館に連絡すればいいだろう。

死んだかどうかわからない今現在、僕はどうしたらいいのだろう。
僕自身もいま、高山病にかかっているみたいで、頭がふらふらしているのに。

捜索や何かで、僕は動きたくない。
考えてみると、ゲーブルくんの本当の名前も住所も知らない。

旅先で知り合っただけの関係だ。
僕が知らない振りをするのが一番楽なんじゃないかな。

一緒のホテルでバスに乗ったわけでもない。
バスの中で、日本語でしゃべっていただけだ。

知らない振りをしていれば、ここは切り抜けられるかもしれない。
ゲーブルくんがいなくなったことを僕が言わなければ、問題はない。

しょせん、南米はラパスの旅行会社だ。
行きと帰りで乗客の数を数えることもないだろう。

僕はゲーブルくんをチャカルタージャ山から落ちたままにして、シカトを決め込む。
1人でラパスへ戻ることに決めた。

これで、スッキリ解決(笑)♪
そう結論付けて、チャカルタージャロッジへ下っていった。

ロッジの中へ入ると、なんと、崖から落ちたとばかり思っていたゲーブルくんがいたよ。
人騒がせなやつだ(怒)。

僕は、「なーんだ、崖から落ちてなかったの?」と話しかける。
「いま君を見捨てることに決めたばかりだったんだ」と、説明した。

こんなことを言わなくてもいいのだが、僕はもともとざっくばらんな人間。
この手の笑いが好きなんだよ。

高山病にいいという「コカ茶」を、ロッジで飲んだが、効くとは思えなかった。
ちなみに、ここでは、コカ茶一杯が1ボリビアーノ(50円)もした。

チャカルタージャ山の入山料が、別に5ボリビアーノ(250円)徴収された。
この日のチャカルタージャ山の気温は、マイナス13度。

高山病がなくても、長居したい状況ではない。
ブラジル人家族はすぐに戻りたがるし、僕も戻りたい。

結局、正午にはチャカルタージャロッジを出発して、帰途に着いた。
ラパスの旅行会社前に着いたのが、午後1時10分。

ゲーブルくんと僕は、そのまま日本人会館へ歩く。
日本人会館で、トンカツ定食(10ボリビアーノ/5百円)を食べ、ご飯のお代わり2杯までのところを、うまく3杯お代わりした。

食事のあと、ソファで、置いてある朝日新聞、パオリスタ新聞を読む。
日本人会館の図書館で、本を4冊借り出す。

本を借り出すには、一冊あたり1ボリビアーノ(50円)かかった。
メルカード(市場)にいって、紫色の「とうもろこしジュース」を飲む。

夜は、中華料理店へ行って、スープだけを飲んだ。
同じホテルに泊まっていて、ちょっと話をしたイタリア人が、これからバスでアルゼンチンへ抜けるという。

「いま、アルゼンチンは何でも安いぞ。一緒に行こう!」と、誘われる。
この時期、アルゼンチンの通貨が暴落して、一夜で、対ドルの通貨価値が3分の1になった。

つまり、ドルがあれば、豪華なアルゼンチン滞在が出来る。
僕はまだ、ボリビアにやることがあるし、次はチリへ向かうつもり。

あっさりと、アルゼンチンへの誘いを断ってしまった。
僕は、通貨暴落はまだまだ続くと思っていた。

残念ながら、こういう風に決断が出来ないところ、目の前のチャンスをみすみす逃がすこと。
それは僕も、優柔不断な、本物の日本人だってことかな(笑)。


旅行の満足度
4.0

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