2016/10/07 - 2016/10/07
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norio2boさん
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国立西洋美術館は東京の山手線か京浜東北線の上野駅の公園口を出て300mのところにあります。
2016年に国立西洋美術館は7ヶ国17の建物で構成される「 ル・コルビジェの建築作品」の1つとして世界遺産に登録されました。
当日は特別展で「クラーナハ展」をやっていました。常設展は65歳以上は無料なので、世界遺産登録後の今までとは違った見方で国立西洋美術館を見学して来ました。(国立の施設ですから東京都以外の方でも無料です)
ル・コルビジェ Le Corbusier は1887年スイス生まれの建築家です。常設展にはル・コルビジェの絵が2枚(寄託なので撮影禁止)展示されています。この美術館は1959年に設計ルコルビジェ、施工清水建設で竣工しています。
- 旅行の満足度
- 5.0
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国立西洋美術館の入り口です。
世界遺産登録された建物と思うと印象も変わって来ます。
今まで何気なく見過ごしていましたが、写真のように、入り口と出口が分けて人が流れるように意図されているのが分かりました。国立西洋美術館 美術館・博物館
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この美術館には松方幸次郎(1866~1950 川崎造船社長であり、衆議院議員だった)が収集した厖大な美術品たち「松方コレクション」が展示されています。
入ると前庭の右には「松方コレクション」の彫刻部門を代表する作品オーギュストロダン(1840~1917)の「地獄の門」、左には同じくロダンの「考える人」があります。「地獄の門」の手前にはアントワーヌブールデル(1861年~1929年)の「弓を引くヘラクレス」があります。
パリのロダン美術館の収蔵作品に負けていない「松方コレクション」の作品のレベルです。
パリのロダン美術館旅行記は下記です。
http://i.4travel.jp/travelogue/show/10964926 -
本館の右には「地獄の門」があります。
国立西洋美術館の本館は地上3階(使われているのは2階まで)、地下1階の鉄筋コンクリートの建物です。
20世紀を代表する建築家ルコルビジェ Le Corbusier (1887~1965)が設計し、日本の弟子の前川國男、板倉準三らが実施設計を行いました。施行は清水建設で1958年に着工し、1959年に竣工しています。
ちなみに、皇太子のご婚約(ミッチーブーム)が1958年です。第一次安保闘争、岸内閣退陣そして池田内閣の所得倍増計画が1960年です。
あの頃の日本は高度成長経済の入り口に入り始めていました。 -
65歳以上は無料です。都民でなくても年齢を証明するものがあれば入場する事が出来ます。
写真の左奥にはミュージアムショップがあります。 -
頂いた入場券と「建築探検マップ ぐるぐるめぐるルコルビジェの美術館」と言うリフレットです。
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常設展の入り口を入ると「19世紀ホール」という空間があります。
写真の手前にあるのは国立西洋美術館の構造模型です。奥の壁面には世界遺産についての解説があります。 -
「19世紀ホール」の天井部分には三角形に開けられた北向きの明かりとり窓があります。
この明かりとりのトップライトからの自然光がホール全体を明るく照らすように設計されているのです。 -
「19世紀ホール」の彫刻作品たちは天井部分のトップライトの採光で自然な照明を受けています。
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2階の展示室の写真です。
左にある階段は3階に上がります。現在は進入禁止ですが、開館当時は館長室があったそうです。ルコルビジェの設計の構想には「無限成長美術館」というものがあって収蔵作品の増加に対応して空間を追加して行く予定だったようです。
また、写真の中央部分にあるように天井の高さが低いの高いのと組み合わせられています。低い天井は226cm、高い天井はその倍寸です。歩くに連れて空間の広がりと変化するよう演出しているそうです。 -
常設展室の写真です。
見て行くとあることに気づきました。
作品のレベル、作品の芸術的な力量がそれぞれ違うのです。
この絵は良いと思って近づいて鑑賞すると、解説のプレートに「松方コレクション」、「旧松方コレクション」の表示がありました。
この美術館が開館したのは1959年です。
それ以降の購入作品は「松方コレクション」、「旧松方コレクション」と比べると劣るように思いました。(あと寄贈されていた素晴らしい作品があります)
言い方を変えると最近の購入作品も素晴らしいけれど「松方コレクション」の素晴らしさにはかなわないと感じられたのです。 -
クロードモネ Claude Monet (1840~1926)
「睡蓮」Water Lilies 200.5x201cm
Oil on canvas
「松方コレクション」
モネは生涯に200枚以上の「睡蓮」を描いています。
日本の屏風絵に触発された横長の「睡蓮」はパリのオランジュリーとニューヨークのMOMAと瀬戸内海の直島の地中美術館にあります。
この「松方コレクション」の「睡蓮」は200枚のなかでも素晴らしい作品だと思います。
1922年に松方幸次郎はモネのアトリエを訪ねモネから直接この絵を購入しています。
その時、モネは自分の「睡蓮」たちの中でも最上の作品を日本人の松方に差し出したようです。モネは自宅に日本庭園を作くるほど日本の文化に憧れていました。
日本文化に影響を受けた芸術家、ジャポニズムの芸術家にはゴッホ、マネ、ボナール、ロートレック、ドガ、ルノワール、ピサロ、ゴーギャンそして彫刻のロダンがいます。
ジャポニズムの芸術家たちは自分の作品が憧れの地である日本で、そして日本人に鑑賞されることに大きな喜びを感じたと思います。
松方幸次郎のコレクターとしての鑑定眼が優れていたことに加え、印象派の時期の芸術家たちが「日本びいき」で自己の最上の作品を松方に差し出したことが、「松方コレクション」に何故、これだけの素晴らしい作品が集まっているのか?の理由だと思います。
この「睡蓮」は1944年にフランス政府により接収されました。美術館の開館の年1959年に返還されています。 -
「睡蓮」のアップです。
左下に赤い絵の具でサインがあります。
Claude Monet 1916
1893年にモネは日本庭園を作り、小川を利用して大きな池を作り、睡蓮を浮かべ、日本の太鼓橋をかけます。ここでモネはひたすら「睡蓮」の制作に没頭します。晩年には白内障になるものの描き続け200枚以上の作品を残しています。 -
国立西洋美術館はコンクリートの円柱で支えられています。円柱の直径は1階は60cm、2階は55cmです。重量の為1階が太くなっています。
ル・コルビジェは「モデュロール」という建築の寸法を決めるルコルビジェのルールを考案しています。例えば天井の高さはヨーロッパ男性(身長183cm)が手を伸ばした高さ(226cm)としています。同様に建物、部屋や家具も「モデュロール」で決めようとしています。
写真はコンクリートの円柱の表面に出た木目です。姫小松の木の型枠で円形を作りコンクリートを流し込んで作られました。型枠の木目が美しく浮き出ています。 -
「旧松方コレクション」
ブリューゲル(子)(1565?1638)
「鳥罠のある冬景色」
この作者はブリューゲル(父)の長男としてベルギーのブリュッセルで1565年に生まれています。
当時、大人気作家であったブリューゲル(父)の作品を長男は数多く模写しました。
まだ、印刷技術の無かった当時は模写画は重要な作品として需要がありました。
ブリュッセル近郊のアントワープには海運交易で財を成した新興の商人たち出てきました。当時のアントワープは人口が10万人を超え(当時のパリ、ロンドンを超える人口)文化への関心が高まって行くのです。お金持ちの多いアントワープでは芸術に対して大変な需要があり、人口10万人に300ものアトリエ工房がありました。
父の作品はハフスブルグ家の王侯貴族に買い取られ門外不出になっていました。長男は父のアトリエ工房に残っていた下絵や習作を参考に想像を加えながら描きました。父は長男が3歳の時に死去しています。父からブリューゲル画法を授けられず、父の描いた本物は見られず、父の絵を模写(再現)した長男の努力は大変だったと想像出来ます。
この「松方コレクション」の「鳥罠のある冬景色」は長男の描いた模写の中で最高位の作品だと思います。 -
作品の脇にある説明パネルです。
中央部分に「旧松方コレクション」と表示されています。 -
ピエールオーギュストルノワール Pierre-Auguste Renoir(1841~1919)
ルーベンス作「神々の会議」の模写
Copy after the Painting by Rubens "The Council of Gods" 1861年作
Oil on canvas 45.8x83.5cm
なんと梅原龍三郎から寄贈された作品です。
本物のルーベンスの作品はルーブル美術館にあり384x702cmの大きさの作品です。 -
額縁つきの全体写真です。
1861年作とありますのでルノワール20歳の時の作品です。
ルノワールはルーブル美術館の近くに住んでいたと言われます。ルーブルに展示されている古典の巨匠の作品をルノワールは模写し絵画技法を勉強しました。
ルノワールは1861年にシャルルグレール(1806~1874のスイス人画家)のアトリエで絵を学んでいます。
このアトリエには、モネやシスレーたち、その後印象派をささえる画家になる弟子たちがいました。
そんな頃に描かれた作品です。
ルノワールの初期の作品はルーベンス、アングルそしてドラクロワの影響が強い作品が多いようです。 -
解説のパネルです。
中段に「梅原龍三郎氏より寄贈」の表示が見えます。
梅原龍三郎(1888~1986)はルノワールが47歳の時に生まれています。
ルノワール死去の1919年には31歳でした。
梅原龍三郎は1908年、20歳の時にフランスのパリへ絵画留学しています。
パリでは「アカデミージュリアン」という私立の美術学校へ通っています。
ここで学んだ日本人には高村光太郎、安井曽太郎や中村不折がいます。
梅原龍三郎は直接にルノワールから指導を受けた機会もありました。
1920年には前年に死去したルノワールを弔うためにパリに行っています。 -
ルノワールの作品です。
「アルジェ風のパリの女たち(ハーレム)」1872年
Parisiennes in Algerian Cosrume or Harem
156x128.8cm
1841年生まれのルノワールが31歳の時に描いた作品です。
一見して分かるようにドラクロワ(1798~1863)の作風のつよい影響が見て取れます。
ルーブル美術館にあるドラクロワの作品「アルジェの女たち」1834年作にインスパイアされて描かれています。
ルーブル美術館のそばに住んでいたルノワールはルーブルに収蔵されている巨匠たちの作品を模写しその技法を学びました。 -
現在は使われていないが、国立西洋美術館の外壁そって設計された空間です。階段につながっていて1階からの動線を演出している。
入場料の徴収という事務的な問題で使われていないように思えた。 -
常設展の部屋です。
ゆとりのあるスペース
天井からの照明
落ち着いた空間が演出されています。 -
1階の彫刻展示室です。
中庭に面し、自然光での照明になっています。
ロダンの作品が並べられています。「19世紀ホール」よりも小型の作品が展示されています。 -
同じ彫刻展示室からの写真です。
中庭には円形状に木が植えられています。
展示室に対して中庭のグリーンが借景の効果を出しています。 -
ピエールピュウィスドシャヴァンヌ Pierre Puvis de Chavannes (1824~1898)
「貧しき漁夫」"Poor Fisherman" 105.8x68.6cm 1887?1892年作「松方コレクション」
オルセー美術館にもシャヴァンヌの同名の同じ主題の作品(1881年作)があります。オルセーにある絵の右から3分の1は船の後尾の部分でカットされ、浜辺に寝ている幼児は船に移されています。祈るような漁師の姿や着ているものは同じです。
制作の年を見るとオルセーの方が先に描かれています。構図の研究の成果物とも考えられるが国立西洋美術館の「貧しき漁師」の右下にP. Soucis de Chavannes のサインがあります。モスクワのプーシキン美術館にはオルセーの習作があるようです。 -
常設展の現代絵画の部屋です。
右にジョアンミロ Joan Milo (1891~1983)
絵画 200x200.3cm Oil on canvas
山村家より寄贈
写真の右側の壁面にルコルビジェの絵画が2枚展示されています。寄託作品なので撮影は出来ません。 -
常設展を出たところです。右側にトイレ、左側に休憩のための空間があります。
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上野駅の公園口から来た通りに面した所には地下1階へのスロープがあります。現在は進入禁止になっています。
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地獄の門の脇からスロープを撮影しています。安藤忠雄が直島の地中美術館でやっているスロープはルコルビジェの影響があると思いました。
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ルコルビジェは巻き貝が螺旋状に外に向かっていくように、収蔵作品が増えて展示スペースが必要になったら空間を継ぎ足してゆける構造に設計しています。「無限成長美術館」と呼ばれる構想だそうです。
写真にある美術館正面の右側にある外階段は、出口として構想されたが一度も使われずに進入禁止になっています。
屋外に設置されているロダンの彫刻たちは地盤から絶縁する免震工事が行われています。 -
上野の国立西洋美術館を満喫しました。
約2時間の見学でした。
世界遺産登録されたルコルビジェの建築と松方幸次郎の壮大な人生を思わせる素晴らしい収集作品の数々に魅了されました。
特に65歳以上の方は無料です。
また、特別展で行けば常設展は無料で入場出来ます。オススメします。
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この旅行記へのコメント (3)
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- milkさん 2016/11/24 20:16:04
- 素晴らしい所蔵品ですよね。
- norio2bo様
こんばんは。
私もこの1週間前に国立西洋美術館に行っていました!
素晴らしい所蔵品の数々にビックリし、思いのほか長居をしてしまいました。
特にフランス印象派のコレクションは素晴らしいですよね。
松方幸次郎さんはモネから直接購入していたのですか!!
当時はジャポニズムブームですから、きっと大歓迎されたのでしょうね。
国立西洋美術館、気に入ったので時間があればまたゆっくり見に行こうと思います。
この旅行記からパリのロダン美術館の旅行記も拝見させて頂きました。
ご存知の通り、4月に私も行っています。
私の知らなかった事も沢山書かれていて、勉強になりました。
私は個人的な思い入れがあって、カミーユ・クローデルに焦点を当てた旅行記を作る予定ですが、是非参考にさせて下さいm(__)m
milk
- norio2boさん からの返信 2016/11/24 22:06:36
- Re: 素晴らしい所蔵品ですよね。
- ありがとうございます。
Camille Claudelの記事アップ楽しみにしています
お読みになったものもあると思いますが参考文献としてご紹介まで
musée-Rodin.fr(ロダン美術館のhpの記事です)地球儀マークをタップすると言語が選べます。
http://www.musee-rodin.fr/en/resources/educational-files/rodin-and-camille-claudel
あとYouTubeでは
英語だけ拾ってみました
https://youtu.be/OxsJFBXNywo
日本語記述のブログでは
http://blog.archiphoto.info/?eid=1170757
http://niki310.blog.so-net.ne.jp/2011-04-24-9
http://www.geocities.jp/takahashi_mormann/Articles/camilleclaudel.html
http://s.ameblo.jp/kai211168/entry-12058524829.html
http://s.ameblo.jp/tta33cc/entry-11555520721.html
http://guide.travel.co.jp/article/6148/
http://d.hatena.ne.jp/cool-hira/touch/20110208/1297112964
http://d.hatena.ne.jp/LondonBridge/touch/20090707/1246911556
http://orsinian.blog64.fc2.com/blog-entry-187.html?sp
- milkさん からの返信 2016/11/25 00:17:14
- RE: Re: 素晴らしい所蔵品ですよね。
- 沢山の参考文献、ありがとうございます!
参考にさせて頂きます。
カミーユ・クローデルの映画は見た事がないので、いつか見てみたいと思っています。
milk
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