2016/04/15 - 2016/04/15
204位(同エリア364件中)
naoさん
奈良県御所(ごせ)市は、大阪との府県境となっている金剛・葛城山麓の町で、江戸時代以降、伊勢街道、竹内街道、高野街道など、多くの街道が集まる交通の要衝として重要な役割を果たしてきました。
近鉄御所駅とJR和歌山線御所駅の東側に広がる御所まちは、江戸時代初期に作られた陣屋町で、寛保2年(1742年)の検地絵図と比べても、そこに描かれた道路の位置や道幅、環濠や背割り下水の位置は現在とほとんど変わらず、江戸時代から昭和初期にかけて建てられた百数十軒もの伝統的な町家が今も軒を連ねています。
南北に流れる葛城川をはさんで、大和絣や菜種油を営む商業の町の西御所と、圓照寺の寺内町の東御所に大別される御所まちは、西と東ではわずかに雰囲気は異なるものの、古地図の町といっても過言ではないほどの碁盤目状の風情あふれる町並みが続いています。
町並みを構成する伝統的な町家のほとんどは、切妻造りの中二階建てに白漆喰塗籠めの虫籠窓や格子をしつらえたもので、中には煙出しの越屋根や袖卯建を備えた町家も多く、また、ごく稀に蔀戸やばったん床几を残している町家も見ることができます。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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車は別の所に停めさせてもらって、JR和歌山線御所駅へやって来ました。
ちなみに、近鉄御所駅はこの西側にほぼ隣接しています。
では、先ずは西御所から町歩きを始めます。 -
敷地の外周を門長屋や黒塀で囲った大きなお屋敷です。
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玄関先も広々としています。
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玄関の上に手形を押した和紙を貼った町家があります。
88歳の米寿のお祝いに押した手形を玄関に貼り、厄除けや長寿を願うおまじないとする習慣があります。 -
寛保2年の検地絵図に描かれている位置に今もそのまま残る環濠。
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環濠に沿って整備されている遊歩道を歩くと、その様子が観察できます。
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重厚な本瓦葺の屋根に、本卯建をあげた町家。
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御所市の汚水枡の蓋。
「葛城山とロープウェイ」に、市の花「ツツジ」がモチーフになっています。 -
「御結納」の看板に入れられた屋号が風情を醸しています。
御所まちは、今も屋号が通用しているようです。 -
検地絵図の西北の入口にあたる場所には、まちの防衛のために桝形が設けられ、高札場が立てられています。
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1階下屋の角を45度に隅切りした珍しい屋根の納まりです。
足元に石柱が埋められているので、車が当たるのを防止するのに後になって切ったのかも知れませんね。 -
隅切り屋根のある町家です。
瓦屋根の素晴らしさを再認識させてくれるような佇まいです。 -
桝形にある高札場です。
高札場とは、江戸時代、幕府や領主が定めた法度、掟書、御触れなどを木板に書き、人目を引くように高く掲げておく場所のことです。 -
高札場が背にしているのは、桝形の出口にある町家です。
1階下屋の角はこれが一般的な納め方で、先ほどの隅切りした納まりとの違いが判っていただけますでしょうか。 -
かつての御所まちは、四隅の入口にそれぞれ桝形が設けられていたんですが、今ではここだけになってしまったそうです。
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瓜形の虫籠窓と出格子窓が並んでいます。
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西御所の町並みです。
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玄関以外は、名栗加工の駒寄せが覆っています。
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漆喰塗籠めの虫籠窓が整然と並ぶ町家は、お花で溢れています。
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名栗加工の駒寄せに寄り添うムラサキハナナ。
爽やかさを振りまいています。 -
碁盤目状の風情あふれる町並みです。
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そんな風情ある町並みにそぐわない、大きなタンクが並んでいます。
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その正体は、享保4年(1719年)創業の油長酒造さんの貯蔵タンクでした。
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平成10年からは無濾過にこだわった酒造りを身上とされていて・・・
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「風の森」という銘柄の酒をデビューさせておられます。
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こんな素晴らしい町並みに身を置いてのんびり出来るなんて・・・
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何という贅沢な時間の過ごし方なんでしょう。
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このお店、「散髪屋」さんではあるんですが・・・
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「BARBER」とは、何とも良い響きじゃないですか・・・。
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妻入りの妻側全面に下屋をかけた町家。
開口部の上部に下屋をかけるのが一般的ですが、あえて全面にかけたんですね。 -
見えているのは油長酒造さんの貯蔵タンクです。
碁盤目状の道なりに歩いているので、油長酒造さんの東側へ廻ってきたようです。 -
玄関側の格子は新しくやり替えておられますが・・・
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妻側の出窓は風情ある格子をそのまま残しておられます。
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1階は店舗に改装されていますが、1階下屋の卯建がかつての姿を想像させてくれます。
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風情ある町家に埋もれるように続く路地。
こんな「風情の谷間」のような空間も、御所まちの皆さんにとっては普段どおりの日常生活の場なんでしょうね。 -
2階の階高が低いので、背の低い袖卯建が付けられています。
背が低いといっても造作は本格的です。 -
この通りの西側の町並みです。
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こちらの町家の1階下屋は・・・
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この大きな持ち送りが支えています。
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こちらの和洋折衷の建物は、明治4年(1871年)に建てられた旧御所郵便局です。
新しい郵便局は別の場所へ移されましたが、古い建物はそのまま保存されているようです。 -
隣り合う町家の隙間を隠す板塀の下に、背割下水らしきものが見えています。
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黒漆喰塗の大きな町家。
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この通りの東側の町並みです。
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寛政4年(1792年)に建てられた中井邸が見えてきました。
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優に築200年を超えているこの町家は、今も住宅として使われています。
なお、寛保2年(1742年)に描かれた検地絵図は、代々こちらのお宅に伝わってきたものだそうです。 -
焼杉の板壁が、雨に洗われて元の地肌が見えてきています。
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土蔵のあるこの町家の玄関は・・・
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くぐり戸の付いた跳ね上げ式の大戸が入れられています。
普段は小さなくぐり戸で出入りするんですが、いざという時には、大戸を上げると大きな開口部が現れます。 -
小さな瓜形の虫籠窓のある町家の主屋は・・・
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外壁から少し奥まった所に窓が設けられています。
これも虫籠窓の一種でしょうか・・・。 -
こちらの町家は、外格子に門が設けられています。
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この通りの北側の町並みです。
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薄いグレーの漆喰壁はこの町並みでは珍しいものです。
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今は使われていないようですが、市松模様のタイルが張られたところは・・・
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たばこ屋さんのお店だったようです。
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先ほどとは逆に、南側の町並みです。
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肥料販売店と看板にあるこの町家は・・・
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建物としての規模もさることながら、この長大な格子は壮観ですね〜。
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奥行きの深い敷地に、同じ仕上げの建物が続いています。
これは典型的な「ウナギの寝床」ですね。 -
「ウナギの寝床」の町家の正面外観は伝統様式を身にまとっています。
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手前の町家の2階に掛けてある日除けは・・・
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常に固定されたままになっているようです。
開ける必要はないんでしょうか、おせっかいかも知れませんがちょっと気になります。 -
先ほどの日除けの中には、小さいといってもこんな虫籠窓があるはずなんですが・・・。
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黒漆喰壁の中に、白漆喰塗籠めの瓜型の虫籠窓が口をあけています。
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「大和棟造り」の町家が見えてきました。
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「大和棟造り」の町家は、かつて河内平野から奈良盆地にかけてたくさん見ることができましたが、今では数少ない貴重なものとなっています。
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「大和棟造り」特有の本卯建。
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「大和棟造り」の町家の先の、西側の町並みです。
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こちらは、この町並みでも珍しいばったん床几を残しておられる町家です。
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ばったん床几とは、建物に造り付けられた折り畳み長椅子のことです。
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こちらの町家の袖卯建には・・・
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きれいな梅鉢紋が浮き上がっています。
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さて、西御所の町並みもほぼ歩きつくしたようなので、葛城川を越えて東御所へ移動します。
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そうこうしていると、ヒョンな所で・・・
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猫ちゃん見っけ!
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西御所と東御所を結ぶ、葛城川に架かる大橋です。
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東御所へやって来ました。
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鎌倉時代末期にあたる「正安3年」の文字が刻まれた町石。
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町並みの所々で、このような燈籠をよく見かけました。
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これは、先祖から受け継がれてきた神様を守るために祀られているんだそうです。
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黒漆喰の壁に白漆喰塗籠めの虫籠窓も良いんですが、何よりも目を引いたのは1階の下屋を支える持ち送りです。
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鏝捌きも見事に、白漆喰で塗籠められています。
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外壁を黒漆喰で仕上げた町家が連なっています。
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外壁の黒漆喰は同じでも・・・
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それぞれの建物の高さまでは揃えられませんよね。
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こちらはお茶屋さんです。
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元大和絣の問屋を営んでいた町家です。
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当時の典型的な商家の姿を留めているそうです。
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意匠を凝らした2階の外観が特徴的な町家。
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虫籠窓や袖卯建に細かな細工が見られます。
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妻面の小窓から、厄払いの鍾馗様が町並みを見下ろしています。
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何と、本格的な2段卯建を上げた町家があります。
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この2段卯建は、徳島県つるぎ町貞光で見られるような重厚なものです。
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2階外壁の、荒々しい表情が良いですよね。
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何ものをも寄せ付けない、威厳に満ちた太い格子が存在感を放っています。
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ここにも神様を守るために祀られた燈籠があります。
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この三叉路の「ハッ!」とするような光景には緊張感がみなぎっています。
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三叉路を曲がった東側の光景です。
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こちらが「ハッ!」とさせられた町家です。
何気ない町家なんですが、三叉路にはめ込んだ時の緊張感はもの凄いものがありました。 -
大きな虫籠窓のある町家です。
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煙出しの越屋根が載った町家がありました。
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この町家の玄関にもくぐり戸の付いた跳ね上げ式の大戸が入れられています。
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東側の町並みです。
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こちらの町家は、せっかく袖卯建のある中2階が「ちょこん」と頭を出しているのに、窓が開けられていません。
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葛城川を渡って西御所に戻って来ると、満開の藤が花開いているのを見つけました。
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この藤は個人の方が丹精込めて育てておられるもので、御所まちの人々が鑑賞に訪れるそうです。
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寛保2年(1742年)に描かれた「古地図の町」といっても過言ではないほど風情あふれる御所まちは、奈良の今井町や大阪の富田林寺内町にも匹敵するような素晴らしい町並みを見せてくれました。
では、この辺りで家路につきます。
最後に藤の花で癒されたとはいえ、碁盤目状の御所まちの町並みをくまなく歩き回ったので疲れました。
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