アムステルダムの「夜警」を訪ねて国立美術館へ。お定まりの絵画ばかりでなく、近代オランダの歴史を辿れる場所でした。

2015/12/07 - 2015/12/07

２０１５年１２月、オランダ・ドイツ・ルクセンブルク・ベルギーを巡る駆け足ツアーに参加しました。
毎年行っているヨーロッパのクリスマスマーケット巡りの一環です。
第１回は、オランダの首都アムステルダムの国立美術館見学です。
国立美術館は、中央駅と同じカイパースの設計の重厚な建物。
その真ん中を自転車が通り抜けて行きます。
国土が平たいオランダは、どこもかしこも自転車だらけ。
歩道を歩いているつもりでも、実は自転車専用道路だったりします。
アムステルダムの国立美術館は、レンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」などが見られることで有名です。
しかし、それらの絵画以外にも、東インド会社で世界を席巻した一大貿易国としての歴史を垣間見ることの出来る場所でもありました。
ネット検索でいつでも見られる有名絵画だけでなく、実際に行ってはじめて見られる展示を存分に楽しみましょう。

エリア アムステルダム(オランダ)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0

• 一人あたり費用: 15万円 - 20万円
• 交通手段: 観光バス 徒歩
• 航空会社: ANA
• 旅行の手配内容: ツアー（添乗員同行あり）
• 利用旅行会社: 阪急交通社

昨夜はオランダに到着してそのままホテル到着で終わり、本格的な観光は２日目からです。
とはいえ、駆け足ツアーなので、オランダの観光は今日一日だけ。
たった一日で、3つの都市を訪れます。まず、午前中は首都アムステルダム。ホテルはスキポール空港のすぐそばなので、まずオランダ航空ＫＬＭの青い機体を横に見ながら市内へと入ります。
通勤ラッシュの時間帯は、予想以上の車の多さにびっくり。３車線ある大きな道が車でびっちりと埋め尽くされています。
ようやく市の中心部に近づくと、レンガ造りの同じ高さの建物が横一線に並ぶようになります。
この建物などは、半地下の造りで、１階の部屋には５段の急な階段を上らなければなりません（右端）。
ドアを入ってからも更に１階の部屋に上る階段と、半地下に下りる階段があるのでしょう。
外の階段部分にも窓とドアを設置したのが左端です。３２３のドアの右脇にある半地下の格子窓には小さな囲いがあります。ひょっとして猫ドアかな？
半地下は大抵貯蔵庫になっていて、こうした窓は搬入口になっているんですけどね。ちょっと小さすぎるので・・・

ヨーロッパの新しい建物は、なぜかこういう前面ガラス張りという建物が多く見られます。
店全体がディスプレーだと思えば、一番効率がいいのかもしれません。
レンガが剥き出しの壁に自転車が貼り付けてあるのが、オランダらしいです。
手前の歩道も自転車だらけ。
店の真ん中にある螺旋階段が魅惑的。

喫茶店。パンケーキ・イングリッシュブレックファースト・ランチ・ホームメイドケーキ・サンドイッチなどと書かれています。
8：30過ぎにはもうオープンしていました。出勤前のサラリーマンが寄って行くのでしょうか。
それにしてもドアの前の頑丈な足場。やはり段差が不便なんでしょうね。
そして、何より気になるのが、地面すれすれにある小さな窓。
まるでトム＆ジェリーに出て来そうです。
名前札まで付いているではないですか。何だろう？？？

ここも喫茶店。コーヒー専門店のようです。なぜか撮る店が喫茶店ばかりと思ったら、早朝なので開いている店が喫茶店だけなんですね。この日の日の出は8：35。薄暗い町の中に明かりの付いた店は、結構目に付きました。
古い建物はとにかく段差だらけ。毎日この階段を上り下りする人たちは、足腰丈夫でしょうね。

国立美術館の南西側。トラムの駅があります。
美術館に行くのに、ここでトラムを下りたら、建物に向かって右側から回り込んで行きます。

オランダの国旗がたなびいています。トラムが行き交う交差点。自転車専用道路です。
停まっている自転車とトラムの位置がとても近いです。お互いに、ここまでは安全とわかっているのでしょうが、慣れない私たちには注意が必要です。
スイスでは、トラムの軌道の周りに危険区域のラインが引いてあって、安心して歩けましたが、オランダにはそれがありません。

国立美術館に入る前の名物。「Ｉ　ａｍｓｔｅｒｄａｍ」。「ａｍ」を引っ掛けているんですね。
結構こういう町の名前での文字遊びは大きな看板になっています。
ブルガリアのプロヴディフの町は「ｐｌｏｖｅｄｉｖ」と書いた大きな看板が街中から見える崖に設置されていました。
本当は「ｐｌｏｖｄｉｖ」なのですが、「ＬＯＶＥ」にしたかったんですね。
画像は「街中に溢れる遺跡と修道院とキリル文字の国ブルガリア４（プロヴディフ１）」に掲載しています。

「Ｉ　ａｍｓｔｅｒｄａｍ」の向こうには電飾されたマヘレの跳ね橋の複製があります。
現存する唯一の木製の跳ね橋で、ゴッホの「アルルの跳ね橋」と似ていることでも有名です。
本物はアムステルダム中心街の縁にある国立美術館より少し内側で、アムステル川に架かっています。

国立美術館です。入り口は中央通路の左側にあります。
１８８５年開館のオランダ最大の美術館。
２０１３年に大規模な改修工事が完了し、明るく綺麗になりました。改修前にも来た事がありますが、当時は薄暗くてどんよりした雰囲気でした。
黄色い表紙で有名なガイドブックには、改修完了の記事が見られますが、そのＨＰでは２０１０年完了予定とあるだけ。
現地情報は、いろいろ見て、最新確実なものを見つけましょう。

アムステルダム国立美術館 博物館・美術館・ギャラリー

国立美術館の建物は、１階の真ん中はミュージアム広場側とシンゲル運河側とを結ぶ通路になっていて、自転車がひっきりなしに通ります。
自転車道路の両側には広い歩道がありますので、通路の中央部分には行かないようにしましょう。
右からも左からも、すごい速さで自転車が来ます。

国立美術館の中を通路から見下ろしています。
通路の壁は大きなガラス張りで、美術館の中がよく見えます。
まだ開館前なので、９時になるまでここで待ちます。
黒服のセキュリティー要員が歩き回っているのが見られます。
美術館の入り口は回転ドアになっていて、一度に大量の人が入れないようになっています。
中に入ると、画面左側の階段を下りて、中央の丸いカウンターでパンフレットをもらい、正面にある大きな2つのゲートのどちらかから館内に入ります。
ｅチケットを持っている人が多いので、入り口の混雑は少ないようです。

暇なので、自転車道路を渡って反対側を覗いてみました。
正面に喫茶コーナーがあり、その下は売店です。
白く広い床の階は道路より下にあるので、先ほどの受付カウンターのある部分と道路の下で繋がっています。

再度、ミュージアム広場側に出て来ました。美術館を背にして左側を見ています。
古きよきヨーロッパという風情で、やっと落ち着いて町並みを見られた気がします。
さて、そろそろ開館時間が迫って来ました。
美術館は、どんなに客がいても、かっきり９時を過ぎなければ開けてはくれないので、あせらなくても大丈夫。

受付カウンターでもらったパンフレットです。各国言語バージョンがあります。
日本語はこのピンク色で、入場券で隠れていますが、上部に「フロアガイド　ようこそ！」という文字があります。
美術館は0〜3階になっていて、受付カウンターがあるのが0階です。
パンフレットは階層ごとに見取り図と、代表的な展示物が書かれていて、展示物についている番号が展示室の番号と符合するようになっています。
有名な絵画は２階に集中しているので、そちらに向かいます。

２階に向かう途中、大好きなアジアの彫像を見つけました。
説明書きを見つける間もなく、通り過ぎたので、どこの国のものなのか、なんの神様なのかもわかりません。
半跏坐像で4本の腕、顔がまん丸で垂れ目。しかも大きなひも耳。
アジアの国にはよく行ったけれど、あまり馴染みのない様式です。
もっと見たいけれど、ツアーにくっついて先に進みます。

２階、「名誉の間」にある絵画です。
隣のフェルメールの「小路」が有名なのですが、今は混んでいるので先ずはこちら。
この女性、洗濯物を乾かすのに、地面に広げているんでしょうか？

移動中、ちらっと見えた彫刻ギャラリー。こちらの方がいいなあ。
中央のナタラージャ（踊るシヴァ神像）、もっと近くで見たい。
ここのアジア関連の収蔵品は、多くないです。
パンフレットによると0〜1階にアジア館があるようですが、そこにあると掲載されているナタラージャが２階にありました。

レンブラントの「夜警」。ここの主力展示品です。
以前見た時は、もっと暗い画だったように感じました。
美術館が改修して明るくなったお陰で、画も綺麗に見えます。
「夜警」が描かれた当初は、もっと横に長い作品でした。しかし、展示場所の都合で、左右が切り取られてしまっていたことが判明しました。
最初の絵の模写が見つかったのです。それが同じ部屋に飾られています。

明るさの正体はこの天井。とても気持ちのいい空間になっています。

１７世紀は、こうした庶民の群集肖像画が流行ったようです。
記念撮影のようなものでしょうか。

２階の「夜警の間」から続く中央通路は、左右にこのように小部屋があり、絵画が数点ずつ展示されています。
それぞれ、レンブラント、フェルメール、ヤン・・ステーン、フランス・ハルスの間となっています。

「夜警」を背にして見ると、こんな風です。
この通路の場所は、今朝、美術館に入る前に見た自転車通路の真上です。
まさか頭の上にフェルメールがあるとは思わないですね。

これまた、ちらっと見えたウィリアム・レックスの帆船模型。
ツアーでは、絵画専門なので、建物の半分には行きませんでした。
レックスの間を通った先には、ドールハウスやデルフト焼きのコーナーなどがあるようです。

１７世紀に東インド会社を設立し、世界一の貿易港であったアムステルダム。
当時の様子はこんな風だったのでしょうか。

フェルメールの「恋文」。
フェルメールは、こうした室内の日常的な様子を描いた絵画が多く、画面の中に様々な寓意を持ったものが隠されています。
例えば、女性が持っている楽器は「恋愛」を表し、背後の海の風景画は「揺れる気持ち」を表すのだそうで、言葉遊びのような性格を持っていました。
歴代の宗教画がたくさんの寓意を持って描かれてきたので、その流れを汲んでいるのでしょう。

「恋文」に群がる人々。その右隣が「牛乳を注ぐ女」です。

フランス・ハルス「笑う男」。赤ら顔のおやじですが、なんとも憎めない笑顔です。

レンブラント「カプチン派修道士の姿をしたティトゥス」。
最初の妻サスキアとの間に生まれた息子。
なんとなく中性的な顔立ちで、とても惹かれるものがあります。
「夜警」は有名かもしれないけれど、一番気に入ったのは、この絵でした。

中央通路を突き当たるとＶＯＯＲＨＡＬ（エントランスホール）です。
修道院か何かのような内装で、楽しい作りです。

おあつらえ向きにステンドグラスまであります。

１階に降りると3点だけゴッホの作品があります。

ハブリエルの作品。オランダと言えば風車。
午後からはこれを見にザーンセスカンスに行きます。

ゴッホの隣の部屋は、牛と風景画が多くあります。
１階は、１８世紀・１９世紀の絵画になるので、だいぶ趣が異なります。

１階は、あまり有名な絵ではないので、一辺に多くの絵画が展示されています。
心なしか照明も暗く、うら寂しい感じがします。

「アルルの跳ね橋」ではないけれど、跳ね橋の画。
ゴッホが描いた跳ね橋の画は５作あり、一番有名なのがオランダのクレラー・ミュラー美術館にあります。ここは、2大ゴッホ美術館として有名です。
もう一枚は国立美術館のすぐそばにあるゴッホ美術館収蔵です。

オランダの海外貿易の様子を展示した部屋の中央には、長崎の出島の模型があります。
現在の出島は、島ではなくなっていますが、近年跡地が当時の建物を復元した観光施設となっています。

「ジャワ島の役人」という珍しい絵画のある部屋。
オランダの東南アジア殖民地支配の歴史です。
当時の大砲まであります。大砲のある美術館なんて、そうはないでしょう。
これでオランダが何をしたのかについては、まったく触れられてはいませんが。
1942年に日本がインドネシアの石油獲得のために侵略を行った時、それでもインドネシアの人々はオランダから解放してくれたと受け取ったといいます。
日本政府公認で戦時中に独立準備が進められ、敗戦直後の8月17日に独立宣言が行われました。4年後には世界に承認され、現在のインドネシアが誕生したのです。
オランダは、江戸時代に「蘭学」と呼ばれた知識をもたらしたという交流だけでなく、わずか70年ほど前にはインドネシアを巡って戦った相手でもありました。

こうしたものは、タイ・マレーシア・インドネシアなどで、宗主国のイギリス・オランダ・ポルトガルなどの支配者の残した屋敷で、見受けられるデザインだと思います。
植民地に於ける宗主国の建築様式をコロニアル様式と言います。宗主国によって厳密には特徴が異なります。
そうしたものは、現在では観光資源になっていますが、植民地を支配した国の人々は、そういう歴史をどう思っているのでしょうか。

黒と金色がゴージャスな、螺鈿細工の家具です。
東南アジアでは、黒檀の調度品が作られています。こうしたものはエキゾチックで珍重されたのでしょう。

みごとな作りの調度品ですが、何に使われるのかわかりません。
有名な絵画より、日本では窺い知ることの出来ない、西欧列強の植民地支配時代の遺物を見られるこの辺りの展示が興味深いです。

19世紀のエリアは、時間がないので駆け足です。

珍しく歴史がかった彫刻がありました。「歴史主義」の展示のようです。

うわ〜、綺麗な鏡。19世紀ロマン主義の時代の展示室です。

この巨大なものは何？壺？
説明を読む余裕など一切無しで、次、行きます。

なんと美しいテーブルでしょう！陶器なのかな？

まっすぐな瞳が印象的な少女。
背景はまだ古典的ですが、衣装はだいぶ時代が下ってきました。

「ワーテルロー」という作品らしい。
ワーテルローの戦いと言えば、ナポレオンがイギリス・オランダ・プロイセンなどの連合軍に破れた戦いです。
この画面のどこかにナポレオンがいると思われますが、わかりません。
英語ではウォータールーとなります。

右端の画は「レジオン・ドヌール頸飾をつけたナポレオン1世」らしい。

部屋の真ん中にあるピアノのような楽器は、もしかしてハープシコード？ドイツ語ではチェンバロ。
ピアノとは違う、ちょっと独特な音がします。

かつてのオランダは、どこまでも見渡せるこんな風景が当たり前だったのでしょう。
そして風車によって汲み上げられた水を通す運河。
オランダの国土は、この風車と運河によって作られました。

さて、国立美術館の見学はこれで終了。受付に戻って来ました。
言語によって異なる色のパンフレットが、カウンターを彩っています。

外の自転車通路の下をくぐって、反対側にある喫茶コーナーを見上げています。
真ん中で四方に花をかざしている五重塔のような花瓶は、2階のデルフト焼きコーナーに展示されているもののレプリカでしょうか？

喫茶コーナーの真下には売店があります。

店内はかなり広く、クリスマスツリーも立っています。

売店で見つけた「Ｌｅｎｓ　Ｃｌｏｔｈ（眼鏡ふき）」です。
アムステルダムの運河沿いの古い町並みをプリントしてあります。

売店からさらに降りる階段があり、子供用のお土産を売っています。
オランダのユトレヒト在住のディック・ブルーナ氏が書いているミッフィーのグッズもありました。

最後までお付き合いくださった方へ、おまけです。
国立美術館の階層別見取り図（パンフレット記載）です。
これは、受付カウンターのある０階。
中央右側に二重丸で「ＩＮＦＯ」と書かれているのがカウンターです。
そこから右に２本ある矢印が入り口を示しています。
ゲートを通ったら左回りに歩いて階段を上がり、０．６と書かれた部屋の脇にある階段を上がるとすぐ「夜警」の部屋（２階）に行かれます。

１階です。１階は地上部分なので、展示室は自転車通路で分断されています。
左右の行き来は出来ないので、０階か２階で横断することになります。
ゴッホの3作は、右下の１．１８の部屋です。
出島の模型は１．１７にありました。

２階です。ここがメインなので、先に２階に上がってから下って行くことになります。
中央部分の上側に「ＮＡＣＨＴ　ＷＡＣＨＴ（夜警の間）」があります。
そこから下に繋がる通路が「ＥＲＥＧＡＬＥＲＹ（名誉の間）」になります。
レンブラント、フェルメール、ヤン・ステーン、フランス・ハルスの作品が各小部屋に展示されています。
ここさえ見ておけば、取り敢えず主力絵画は制覇できます。
時間の短いツアーの場合、「夜警」と「名誉」だけ見て、１階のゴッホに行き、後は３０分フリーで終わりでした。
お目当てのある方は、この図を参照にして、計画を立てておいてください。

あまり存在感のない３階です。フロアも狭いです。
展示してあるのが１９００〜２０００年なので、ちょっと魅力に欠けるかな？イヴ・サンローランの部屋があるのが気になる？
２階、１階と見て０階に来ると、そのまま出たくなってしまいますが、絵画以外のものに興味がある人は、０階の左側も行ってみてください。
美術館が「スペシャルコレクション」と銘打つほどのコーナーです。特にデルフト焼などは見たかったです。

美術館を出た数歩先の足元にこんなことが書いてありました。「ＶＩＥＷＰＯＩＮＴ　３Ｄ」。
まだ、横は自転車通路のある歩道上です。

ずんずん歩いていくツアーの列の中で、咄嗟に撮った写真なので、ボケまくっていますが、地面に何か書いてあります。
テレビでは見たことがありますが、本物を見たのは初めてです。
これは、あるひとつの場所から見ると絵が立体的に見えるというチョーク画です。
見てみたいとは思っていましたが、思わぬところで遭遇しました。
出来れば、もっと鮮明だった時に見たかったな。
国立美術館の最後の贈り物は、やはりアートでした。

来た時とは反対側のシンゲル運河側に出て来ました。

真ん中の塔の時計は2つとも合っていません。動いていないのかな？

この後は、運河クルーズです。乗船場まで歩いて行きます。
次回は、船から見上げたアムステルダムの町を紹介します