2015/09/18 - 2015/09/18
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ばねおさん
ボルドー展の招待券が得られ、折りしもル・コルビジェ展も催されていたので併せて鑑賞せんと国立西洋美術館に出かけた。
本館のボルドー展はドラクロワの大作、ルドンによる模写、ペルジーノの聖母子像そしてローセルのヴィーナスなどをメインとし、ボルドー美術館とアキテーヌ博物館そして装飾芸術美術館からの出品が大部分を占めている。
いずれも現地に足を運ばなければ見ることのできないものばかりで、見ごたえのある内容であった。
新館のル・コルビジェの絵画作品展示は、少数ながらも圧倒される内容で、ル・コルビジェの才能の豊さを今更ながら認識させられた。。
19、20世紀フランス絵画を中心とした常設展も久しぶりに一巡してあらためて多くの名画を堪能することができた。
- 交通手段
- JRローカル
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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国立西洋美術館(本館)は、ル・コルビュジエの基本設計で建てられた日本で唯一の建築物となる。
現在、フランスが世界遺産登録に申請しているル・コルビュジエ作品群に加わる形で日本も本館を推薦しているので、おそらく近い将来、世界遺産に登録されるのだろう。国立西洋美術館 美術館・博物館
-
この美術館の建物と収蔵品について語るには、どうしても歴史にふれずにはいられない。
国立西洋美術館の収蔵品は、第二次大戦終結後にフランスに接収された実業家・松方幸次郎の個人コレクションの返還に基をおいている。
接収した作品の返還にあたってフランス政府は、展示にふさわしい美術館の建設を条件とし、結果としてル・コルビュジエに設計が依頼されたものである。
作品にふさわしい美術館とは慧眼であるが、そのために尽力した先人たちの苦労は多大なものがあった。 -
日本からみれば返還だが、フランスは寄贈であるとして譲らず、結局「寄贈返還」というおかしな言葉が作られ、今でも使われている。
しかもフランスに接収された作品のすべてが返還されたわけではない。
返還されたのはフランス近代絵画や彫刻類にとどまり、しかも名画とされる20点余の作品はついに戻されなかった。
大戦時の敵国とはいえ、個人の財産である美術コレクションを取り上げ、一部は返さないという仕儀はやはり腑に落ちないものが残る。 -
第2次大戦中、松方コレクションがパリのロダン美術館に預けられていたことからも分かるようにロダンとの結びつきは深く、その多くの作品を収蔵している。
前庭に置かれている「地獄の門」はタンパンの中央に「考える人」を、左右にアダムとイヴを配している構図である。
パリの装飾美術館の門になるはずだったこの作品は美術館側に受け入れを拒否され、ロダンの死後に7体鋳造され、そのひとつがここにある。 -
英仏100年戦争の市民の犠牲的行動を描いたロダンの「カレーの市民」。
こちらも当初、英雄的表現ではないとして注文主のカレー市が受け取りを拒んだ作品。
原型から12点が鋳造され、これは9番目にあたる。
展示方法は世界各地で異なり、中には一体一体を離しているような例もあるという。
ロダンの望んだ展示方法は、このような台座の上に高く置くのではなく、
鑑賞者と同じ地平上にあることだった。
こうした歴史を知らなければ作品を鑑賞できないというのではないが、
歴史を知ると、より面白味が増してくる。 -
地獄の門の手前に置かれているのが、ブールデルの代表作「弓を引くヘラクレス」
同じ作品は各所でみることができる。
(パリ モンパルナス駅近くにブールデル美術館があり、10年ほど前に訪れたことがある。
周囲は近代的建物が多いが、ここだけは自宅兼作業場だったころの雰囲気を保ち、庭を含めた全体がまさにブールデルの世界を形づくっていた。) -
さて、入館してボルドー展に入場。
会場入り口には、世界遺産に登録されたガロンヌ河岸地区の風景がパノラマ写真になっていた。
この展覧会、《Bordeaux Port de la Lune(月の港ボルドー)−美と陶酔の都へー》と題されている。
先史時代にはじまり、歴史的、体系的に展示構成され、実にさまざまな文物が紹介されていた。ボルドー丸ごと紹介展といってもよい。 -
展覧会の最大の目玉は、ドラクロアの大作「ライオン狩り」である。
美術館の火災で損傷し、一部が失われているとはいえ、その迫力は決して損なわれていない。
画学生時代のルドンが火災前これを模写した作品が同時に展示されている。
失われる前の全体図を知る上でも興味深いが、同時代の印象派とは全く別の世界を作り上げた若き日のルドンの足跡を知ることのできる一作である。 -
ローセルのヴィーナスと呼ばれる「角を持つヴィーナス」
旧石器時代(2万5千年前頃)の驚くべき造形表現
いわゆる美術作品として作ったものではないだろう
しかし意味するもが何であれ、これは本当に唸らせる作品だ
しばし腕組みをして見入ってしまった -
そして、新館で開催されていたのが、「没後50年ル・コルビュジェ −女性と海」
ル・コルビュジェの設計した本館での開催ではないが、その弟子の設計した新館だからル・コルビュジェも文句は言うまい。
こちらは本館に比べ、鑑賞者はきわめて少ない -
コルビジェの油彩、素描作品が29点そして関連する写真が9点(カップ・マルタンの小屋でのスナップ写真が主)
いずれも類いまれな才能が圧縮されたような作品ばかりで、画家としてスタートしたル・コルビュジェの豊かさをあらためて知らされた。
いずれまた、作品を所蔵する大成建設のギャラリーでゆっくりとお目にかかりたいものだ。 -
せっかく来たのだから、常設展も一巡。
いくつかの作品をピックアップしてみた。
ドメニコ・プリーゴ「アレクサンドリアの聖カタリナを装う婦人の肖像 」 -
ヨース・ファン・クレーヴの作とされる三連の祭壇画
1485年頃 の制作 -
アドリアーン・イーゼンブラント の母子像
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ルーベンス 「眠る二人の子供」
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ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「聖トマス」
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品は現在まで40点余りしか発見されていない。
2年前ラ・トゥールの出身地であるロレーヌを旅して、ロレーヌ博物館に展示されていた作品4点を見る機会があった。
誰もいない無人の鑑賞室で彼の画と向かい合い、不思議な感動を覚えたことを思い出す。 -
ルノワールの作品2点
・帽子の女
・ばら(部分) -
クロード・モネ 「雪のアルジャントゥイユ」
アルジャントゥイユはパリ近郊にあり、かって印象派が集まった地でもある。
モネは「アルジャントゥイユのひなげし」や「アルジャントゥイユの橋」など、ここで多くの題材をとっている。
モネの描く雪景色には魅せられる -
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 「貧しき漁夫」
何やら祈りを捧げている漁師の小舟の中には幼児が寝ている。
時間が止まり、どこか神秘な雰囲気のある不思議な絵 -
モーリス・ドニの作品群が陳列されているコーナー
パリ郊外のモーリス・ドニ美術館は建物周囲にブールデルの作品を配し、数段の果樹の多い庭園もあって天気の良い日にベンチで弁当でも広げたくなるような素敵な場所である。 -
スーティン 「心を病む女」
彼の画はどれもが荒々しいタッチと歪んだフォルムが特徴で、作者自身の人生、心理と重ねて解釈される場合が多いようだ。
コートダジュールを旅したときに、彼の描いた風景画の場所にいくつか出会った。 -
エミール・ベルナール「吟遊詩人に扮した自画像」
手に持っているのはリュートという楽器
もっとよく知りたいと思っている画家のひとり -
色彩の魔術師デュフィの「モーツアルト」
デュフィはいいな〜♪
口笛を吹きたくなるような気分にさせてくれる -
ブラック「静物」
ピカソとブラックは共同で制作にあたっていた時期もあって、どちらの作だかサインをみないと分からないほど類似した作品もあるが、これはいかにもブラック的といえる。
2年前パリのグランパレでブラック展を観たが、「ブラック展を観たか?」と言うのが挨拶代わりになっていたほどの話題性があった。
やはり何事かを成し遂げたひとりの作家の集大成を見ると、ただただ圧倒され素晴らしいの一言に尽きる -
ピエール・アルベール・マルケ
「レ・サーブル・ドロンヌ (ドロンヌ海岸)」
この色には妙に惹かれるものがある -
さて、気ままな鑑賞を終えて一休みしたくなった。
外は小雨模様
一階のカフェレストラン「すいれん」へ行き、軽食をとる。 -
「すいれん」から見た中庭。
この店はお茶だけでも本格的な食事でも可能で、その内容と値段が良心的なのにいつも感心する。
大きな美術館にはカフェやレストランが併設され、その時々の企画展に合わせた
創作料理などを提供することがあるが、正直あまり感心したことがない。
そして何よりも設定価格が高すぎる。
美術館へ行くことが何か特別な行事という意識があるからそうなってしまうのだろうか -
できればこうした店は末永く存続してほしいと思うのだが、なぜか気に入りの店ほど消えて行ってしまうのが残念だ。
どうかあまり変わらずに続けてほしいと願う。
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