2015/08/01 - 2015/08/02
66位(同エリア199件中)
naoさん
異常な猛暑の中、8月1日から2日にかけて富山と石川を訪れました。
旅の行程
8月1日 五箇山:菅沼集落、相倉集落、上梨集落
8月2日 白山市白峰、加賀市加賀東谷
石川県白山市白峰は、古より信仰の対象として人々の崇敬の念を集めてきた霊峰白山の、北西山麓を流れる手取川の狭隘な河岸段丘上に広がる、白山信仰と深いつながりのある町です。
奈良時代の養老元年(717年)、泰澄という修験者によって開山された白山は、平安時代の天長9年(832年)には、加賀、越前、美濃からそれぞれ参詣道が開かれ、越前からの参詣道に位置する白峰は大勢の参詣者で賑わったと云われています。
ちなみに、霊場として確固たる地位を築いた白山は、比叡山の日吉大社に勧請された事で天台宗の布教と共にますます隆盛を極めるところとなり、白山比神(しらやまひめのかみ)を祀る白山神社は、現在、全国で2000社以上を数えるまでになっています。
南北に延びる通りに面して建ち並ぶ町家は、周囲を山に囲まれ、冬場には2mを超える積雪に見舞われる豪雪地帯の厳しい気候風土に適応するよう、柱や梁には雪の重みに耐えられる極めて太い木材が使われ、外壁は下地に直径3cm程度の木の枝を組んだ上に、まるで土蔵のように土を厚く塗り籠めることで断熱性を高めています。
さらに、冬場の薪の搬入口として2階に設けられた「セド」と呼ばれる窓や、雪下ろしの為の梯子が屋根に常設されるなど、豪雪地帯特有の工夫が随所に凝らされており、独特の風情をたたえた町並みが展開しています。
養蚕を町の主な産業としてきた白峰では、二階建てや三階建ての大きな町家が多く見られますが、これは一階を生活空間、二階以上は蚕を飼育する蚕室として利用していた為で、姿形は異なるものの、合掌造り家屋に通じる様式となっています。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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この日、白山市白峰へ移動するのに、白山白川郷ホワイトロードを走っていると、眼下に白川郷の合掌造り集落が見えました。
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遠景なので定かではありませんが、明善寺の辺りが見えているように思われます。
白川郷へは、以前一度訪れているんですが、この光景を見てまた訪れたくなりました。 -
白峰に到着しました。
白山市役所白峰支所の駐車場に車を停めさせていただいて、町歩きを始めます。 -
左手の、南北に延びる白峰のメインストリートの前に、先ずは右側に迂回している脇道を歩きます。
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この脇道はメインストリートと平行に南北に延びています。
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白峰の町家は、下見板張りの外壁が大きな特徴となっています。
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外壁の一部に杉皮を張った町家がありました。
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玄関庇の、白く塗られた木口が自己主張しています。
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時の経過とともに傷みが来るのは仕方ありませんが、ガラス障子に優れた意匠の名残を見ることができます。
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この辺りには新しく建てられた町家が並んでいます。
では、ここで一旦メインストリートに戻ります。 -
メインストリートにある3階建ての町家。
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ツバメがさっそうと飛び去っていきます。
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夏ですね〜!
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メインストリートの町並みです。
メインストリートから左に折れると・・・ -
路地と言うにはちょっと広めの、風情ある通りがあります。
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右側の民宿には屋根裏部屋があるようで、窓が付いています。
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広場の右側に、最初に歩いた脇道に通じていると思われる路地があるので、行ってみます。
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思っていた通り、脇道のようなんですが・・・
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メインストリートを相当歩いてきたので、振り返っても見覚えのある町家は見えませんが・・・。
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脇道沿いにも、3階建ての町家がありました。
この町並みでは、このように切妻屋根の片方に、片流れの3階を載せた町家を多く見ることができます。 -
こちらは土蔵造りの町家です。
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この町角のたたずまいを見ていると、船の舳先が波を分けて進んでいるイメージが浮かんできます。
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建ち並ぶ町家を繋ぐ路地が・・・
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町中を縫うように巡らされています。
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脇道を抜けて、八坂神社の北側を東西に延びる・・・
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少し広い道路へ出てきました。
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八坂神社の森を背にするこの町家も、片流れの3階建てです。
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このような切妻屋根の片方にだけ、3階を載せるやり方は白峰独特のもののようです。
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メインストリートとの交差点に建つ酒屋さん。
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こちらの町家は、クーラーの室外機を外壁と同じ色に塗っています。
この町並みの景観に配慮されているんですね。 -
メインストリート北側の町並みです。
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古来、霊峰白山の山頂には多くの仏像が祀られていましたが、明治の神仏分離令により廃仏毀釈運動が勃発すると、それらの仏像は下山を余儀なくされます。
白山を追われ、破壊される運命にあったそれらの仏像に救いの手を差し伸べたのが、ここ林西寺の住職、可性法師で、現在、境内にある白山本地堂には、白山信仰の歴史を今に伝える「下山仏」として、丁重に安置されています。 -
こちらは、屋根の上に太鼓堂を戴く行勧寺の庫裏です。
屋根は、腐りにくい栗板を葺いた、木羽葺き屋根が使われているそうです。 -
正面が行勧寺の本堂です。
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観光協会のパンフレットによると、行勧寺を過ぎた辺りから・・・
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風情ある町並みが続いているとのことなので、じっくり楽しみたいと思います。
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先ず現れたのは、江戸時代に幕府直轄の天領だった白山麓の18ケ村を取り仕切る大庄屋だった山岸家住宅です。
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土壁の木造3階建てが特徴的な山岸家住宅の4棟ある建物は、江戸中期から幕末にかけて建てられたと云われています。
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白峰の伝統的な建築様式で建てられた郵便局。
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郵便局から山岸家住宅を振り返った光景です。
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左奥に見えるのは山岸家住宅の主屋です。
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この大きな蔵も山岸家所有のようです。
この先を上ると、郵便局の前の道路の西側を平行するように延びる道路があります。 -
その道路沿いにも町家が続いています。
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郵便局の前まで戻ってきました。
では、この先の町並みを歩きます。 -
郵便局の前にある、この蔵の扉には・・・
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味のある金物がついていました。
欅の一枚板の扉と呼応して、錆びた金物が良い景色を生んでいます。 -
この先に良い町並みがあるよと、郵便ポストが教えてくれているようです。
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これがその町並みです。
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カフェの前のオープンスペースに置かれた手水鉢には、冷たくてきれいな水が注いでいます。
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カフェの先から振り返って見た光景です。
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この辺りの町並みには、古い石積擁壁がたくさん残っています。
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そんな石積擁壁の上から町並みを一枚・・・。
正面の3階建ての町家は堂々としています。 -
石積擁壁のさらに上に設けられた新しいコンクリート擁壁の上にも・・・
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伝統的な町家が建ち並んで、見下ろしています。
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石積擁壁の町並みを振り返って見た光景です。
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この町屋の妻側に、珍しい装置が置いてあります。
カバーには「自動屋根融雪 瓦番」と書いてあるので、屋根の雪を自動的に融かす装置のようですね。 -
そりゃ〜、冬場の積雪が2mを超える豪雪地帯ですから、屋根の雪おろしと云う重労働から解放されるのはありがたいことなんでしょうね。
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この町家の1階柱には、雪よけの板を差し込む金物がつけられています。
冬場の積雪から建物を守る、豪雪地帯ならではの知恵ですね。 -
この町並みを歩いていると、厳しい気候風土と共生するための独特の文化を感じます。
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この土壁は、冬場の厳しい寒さをしのぐための、断熱材として塗られているんでしょうね・・・。
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この小さな町屋も、屋根裏スペースを有効に使っているんでしょうね・・・。
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そろそろ古い町並みの外れにやってきました。
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では、この辺りで引き返します。
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石積擁壁の上に「水」と書いた建物がありました。
恐らく「水」にかかわる建物なんでしょうが、どんな機能や用途があるんでしょうか・・・。 -
郵便局が見える所まで戻ってきました。
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自然石の石積擁壁は、永い時の流れを教えてくれます。
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階の扉が開いていたので、つい失敬してしまいました。
この姿には興味がそそられるでしょう・・・。 -
鬼ゆりが見下ろしています。
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江戸時代初期の元和年間(1615年〜1623年)の白峰には、上流から飲料水を引くための「ミンジャ」と呼ばれる石積の用水路が設けられ、「ミンジャゴヤ」と呼ばれる水くみ場が人々の暮らしを支えていました。
しかし、昭和30年代に簡易水道が整備されると、そのほとんどがコンクリート化や暗渠化されてしまいましたが、最近、その「ミンジャ」が山岸家住宅の近くに復元され、庶民の暮らしぶりを伝える、文化遺産として蘇りました。 -
「ミンジャ」の縁に咲いているネジバナ。
これは野生ランの一種で、螺旋状に小さな花をつけます。 -
行勧寺は、庫裏の屋根の上の太鼓堂が目印になるので、とても判りやすいですね。
ちなみに、太鼓堂は冬の積雪時にもふれ太鼓が聞こえるようにと設けられているそうです。 -
この分かれ道を左に進むとメインストリートで、右に進むと白峰温泉の総湯へ通じています。
では、総湯周辺の町並みへ向かいます。 -
こちらが、日帰り温泉として利用できる白峰温泉の総湯です。
天然温泉100%のこちらの源泉の泉質は、全国的にも珍しい「純重曹泉」だそうです。 -
いろんな格子が特徴の町家です。
1階下屋の、白く塗られた垂木や肘木にもこだわりが感じられます。 -
表札とともに、屋号を書いた札も掛けられています。
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総3階建ての町家です。
外壁につけられた梯子は、積雪時の出入に使うんでしょうか・・・。 -
日帰りの入浴客を迎える総湯の正面入口です。
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総湯周辺の町並みを回ってメインストリートへ戻ってきました。
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メインストリートの突きあたりに見える石垣は、霊峰白山の「下山仏」を安置している林西寺です。
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では、そろそろ車を取りに白山市役所白峰支所までメインストリートを戻ります。
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路地の先に、総3階建ての町家が見えています。
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メインストリート北側の町並みです。
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こちらの民宿には、積雪対策なのか、見るからに頑丈そうな梯子が掛けられています。
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町家が軒を連ねる路地のたたずまい。
どこの町でもそうなんですが、ここ白峰にも、やっぱり路地のたたずまいに惹きつけられてしまう私が居ました。 -
霊峰白山の北西山麓に抱かれ、冬場には2mを超える積雪に見舞われる、豪雪地帯の厳しい気候風土を受け入れざるを得ない白峰は、それに順応するための様々な工夫が凝らされた町家が軒を連ねており、この地方特有の風情をたたえています。
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雪の重みに耐えられる柱や梁、土蔵のように厚く土を塗り籠めることで断熱性を高めた外壁、冬場の出入口として2階に設けられた「セド」と呼ばれる窓、雪下ろしの為に常に屋根に取り付けられている梯子など、厳しい気候風土と共存する、いや、ねじ伏せるための人間の知恵が結集した、素晴らしい町並みに出会うことができました。
再訪したい町が、また一つ増えました。
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この旅行記へのコメント (2)
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- こあひるさん 2015/10/01 10:02:48
- 興味深い家並みですね!
- naoさん、おはようございます!
白峰は全く知らない町でしたが、面白い家並みで、とっても興味深く拝見しました。
一見、3階建てには見えない背の高い家屋・・・雪の寒さを避けるようにお洋服を着たようなデザイン・・・。
あれだけ背の高いお家なので、自動で雪を溶かす装置がついていたり、梯子が備え付けられていたり・・・と工夫されているのでしょうね〜。それでも雪かきは大変そうです。
ステキな町、紹介ありがとうございました。
こあひる
- naoさん からの返信 2015/10/01 19:02:53
- 冬を旨とすべし!
- こあひるさん、こんばんは。
いつも投票ありがとうございます。
建築にたずさわる者の間では、家造りに関する教訓として、吉田兼好の『徒然草』に出てくる、「家造りは夏を旨とすべし」と云う言葉があります。
これは、日本のジメジメした蒸し暑い夏の気候風土を念頭にして家を建てるべし、と説いたものですが、白峰は全く逆で、「冬を旨とすべし」で家が建てられています。
各地の風情ある町並みを見て廻っていますが、明らかにそれらと一線を画す白峰の町並みは素晴らしいもので、私も興味深く歩きまわりました。
もう一度訪れたい町が、また一つ増えました。
nao
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