2015年5月　台湾　埔里と高雄の旅②　霧社事件の足跡を訪ねて～「霧社」の街へ

2015/05/06 - 2015/05/11

【５月７日】

埔里からバスで１時間ほど山の中を走ると「霧社」という小さな町があります。

今から８５年前(１９３０年)の１０月２７日、この霧社の街でセデック族による凄惨な抗日事件が起こり、当日運動会が行われる予定の霧社公学校(現在の台湾電力)で日本人１３２名が惨殺されました。

その指導者がマへボ社の頭目モーナルタオです。

驚いた台湾総督府は、数千人の軍隊や警察を派遣し、或は部落間の敵対感情を利用しセデック族を「敵・味方」に色分けし戦わせることで鎮圧に乗り出します。

武力に勝る鎮圧部隊は１１月４日には反乱部落を制圧。
１２月初旬には治安を回復しました。

この事件で、反乱部落側にも７００人の死者が出ました。

映画「セデックバレ」を繰り返しみていくうちに、どうしても霧社の街が観たくなり、この機会に訪問しました。

エリア その他の都市(台湾)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 5万円 - 10万円
• 交通手段: 鉄道 高速・路線バス 徒歩 飛行機
• 旅行の手配内容: 個別手配

５月７日のお昼前。

清境農場の「國民賓館」バス停から南投客運に乗車してほどなく霧社に到着。
山の中に突然現れるこじんまりとした街です。

でもその当時、霧社は原住民統治の中心地。
学校や病院、食堂や旅館などあらゆる公共施設の整った最も大きい街だった。

今は穏やかすぎて８５年前のことなど全く感じない。

（観光ポイントのことはクチコミに書き留めておきましたので宜しかったら参考にして下さいね！）････↓

抗日記念公園です。

中心に見えるのがモーナルタオの銅像。
モーナルタオの評価は日本が去ったあと国民党時代も含め、色々評価が変わった。

今のこの公園の状態は、とても抗日の英雄モーナルタオの蜂起を記念する状態とは思えない。

霧社山胞抗日起義紀念碑 広場・公園

原住民抗日勇士の像。

でも、「ルビ・ナウイ」と「へミリ・ピホ」という同じセデック族の２人の少女が、小島源治巡査の３人の子供たちを命がけで守ったことも忘れないでほしい。

霧社山胞抗日起義紀念碑 広場・公園

モーナルタオのお墓。
清流部落のセデック族の人は「頭目のお墓を川中島に移したい」と言っていた･･･

歴史の中で意味があってここに安置されたのだろうけど、セデック族の人たちも納得できるようにしてあげてほしい。

モーナルタオが抗日烈士の象徴になることは、台湾の人たちが決めたこと。

でも、同じセデック族だけど、ガヤ(掟)と日本への恩に悩んで、双方に「義」を貫いて一族２１人とともに命を絶った花岡一郎や二郎の遺骨は未だにスクレダンの山中に埋もれたままだ。

霧社山胞抗日起義紀念碑 広場・公園

決起を促すモーナルタオ？の壁画。

霧社事件については今でも謎が多いままだけど、この事件のあと、敵蕃になった霧社群６社のセデック族には、第二霧社事件、川中島移住(土地の取り上げ)という事件が襲い掛かる。

ここに建つモーナルタオは、部族の行末をどう思っているのだろうか。

霧社山胞抗日起義紀念碑 広場・公園

霧社事件の場所、旧霧社公学校に向かいます。

「保護駅」というバス停の横にひっそりと「霧社事件発生地」という看板がありました。

周囲の風景はこんな感じ。

今は台湾電力の何かの施設のようです。
見た感じはすごく狭いです。
運動場としての面影はあります。

福壽宮の横に、かつて「霧社事件殉難殉職者之墓」があったので行ってみました。

今は階段だけがこんな状態で残っているだけ。

この上の敷地には未だに７０の日本人遺骨が眠っているらしい。
この階段を背にして正面にある公園のような場所も草茫々の状態。

お墓だけはちゃんとならないのだろうか････

蜂起の際に武器の調達のために襲撃された霧社分署（現南投縣警察局仁愛分局）。

この時の霧社駐在がセデック族の警察官、花岡二郎。
武器庫の開放と武器操作の教授が自発的か、強制だったかも謎の中。

日治時代の霧ケ丘神社(現徳龍宮)。

鳥居の先の階段には、鎮圧部隊の味方蕃によって馘首された敵蕃の首が並べられたという。

徳龍宮 寺院・教会

途中、色のおかしい石灯篭などの名残はありますが･････

徳龍宮 寺院・教会

頂上には廟になっていました。

徳龍宮 寺院・教会

自然史教育館にも訪問しました。

ここには台湾原住民族の生活に関する物品が展示されていました。

今は政府に認定された原住民族は１６部族あるそうです。

南投縣自然史教育館 博物館・美術館・ギャラリー

これは、原住民族がお祭りの際に「連飲」という儀式に使う木製の器。
中心が蛇の形になっている。

映画「セデックバレ」の中では、相手に敬意をはらう証として２人が頬と頬をくっつけて一つの器からお酒を飲むシーン(兄弟飲)が度々流れますが、部族毎に飲み方の習慣が異なるようです。

連飲や兄弟飲は原住民族にとっては特別な慣習であったようです。

そういえば、霧社事件の直接の原因は、マへボ社のモーナタダオが勧めた兄弟飲を吉村克己巡査が拒否したことでした。

南投縣自然史教育館 博物館・美術館・ギャラリー

これは原住民族が実際に使っていた刀。

南投縣自然史教育館 博物館・美術館・ギャラリー

同じ年(１９３０年)、嘉南地方では八田與市による「烏山頭ダムが完成」し、翌年(１９３１年)には、近藤兵一が監督となった嘉義農林学校が「三民族混成チームでの甲子園初出場初準優勝」を果たします。

本当に山ひとつ越えた場所では、日台が歓喜の渦に溢れていた時期に、台湾の中心ではこんな事件もあったのです。

自分にとって１９３０年、３１年はとても忘れられない年です。