孫文記念館・移情閣を訪れて

2015/04/01 - 2015/04/01

この建物は、神戸の実業家・呉錦堂（1855〜1926）が別荘「松海別荘」として建てたものでした。大正4年（1915）春に、その別荘の東に八角三層の楼閣「移情閣」が建てられました。外観が六角に見えることから「舞子の六角堂」と呼ばれて、親しまれてきたということです。孫文が大正2年、神戸に来た時に、神戸の中国人、経済界有志が開いた歓迎昼食会の会場として移情角が使われました。その後、昭和58年（1983）11月、兵庫県が「移情閣」を管理していた神戸華僑総会から寄贈されて、改修の後、翌年11月12日、孫文の誕生日に「孫中山記念館」として公開されました。2005年に「孫文記念館」と改称されました。

エリア 舞子浜(兵庫)

• 旅行の満足度: 4.5

• 交通手段: JALグループ JRローカル 徒歩

明石海峡大橋の建設に伴い、一旦解体されて、西南方向に200mの現在地に移転し、復元されて、2000年4月に完成しました。

中国の革命家・政治家・思想家である孫文（1866〜1925）を顕彰する日本で唯一の施設です。昭和59年（1984）11月に開設されました。

舞子の六角堂の玄関ですが、普段は使用されていません。

玄関横にある孫文氏の銅像です。

今日は朝から濃霧で大橋が霞んでいます。明治44年（1911）10月、武昌（現在の武漢）での蜂起が成功すると各地で革命がお切り、やがて清朝は崩壊します。1912年元旦、アジア最初の共和国（中華民国）が創立され、孫文が初代の臨時大統領に就任しました。「主権在民」を明確に規定した臨時憲法（約法）が制定されると、孫文は大統領を袁世凱に譲り、産業基盤整備のための鉄道建設に取り組みました。孫文が翌年春にその計画実現を目指して来日した時に、宋教仁が袁世凱により暗殺されました。宋は孫文の同志で、総選挙に因って開設された国会で首相に選出される筈でした。この異常事態に直面した孫文は、反袁「第二革命」を起こしますが、失敗してまた日本に亡命しました。大正3年（1914）に孫文は東京で「中華革命党」を創立します。翌年、袁世凱の「帝制」に反対して、孫文達は、「第三革命」を起こし、勝利をおさめて帰国しました。

「第三革命」後の大正6年（1917）9月、孫文は自分たちこそが中華民国の正統な代表者であるという信念に基づき、広東において軍政府を組織しました。2度も失敗しますが、孫文は政権から離れた時間を利用して、「建国方略」「三民主義」及び「国民政府建国大綱」など、孫文思想の骨幹をなす重要著作を執筆しました。やがて孫文は「国民革命」の成功を目指して。「国民合作」に踏み切り、1924年1月に「中国国民党第1回全国代表大会」を開催し、6月には党の軍隊を作るための軍官学校を設立しました。その後、孫文の「国民革命」は発展に向かいますが、この年の秋に、北京の中央政府と国策を協議するために、北上した孫文は、神戸に立ち寄って「大アジア主義」講演をおこなったそうです。1925年3月12日、孫文は逝去しますが、その後、国民党が政権の座に就き、更に現在の中華人民共和国の誕生へと移行して行きます。

孫文が日本を訪れた年と場所です。

孫文の逝去に祭し、国民党は北京政府の国葬提案を拒否し「国民葬」を行いました。しかし、南京に「国民政府」を開くち、国民党は壮大な「中山陵」（中山は孫文の号）に遺体を改葬しました。日中戦争最中に、国民政府は孫文に「国父」の尊称を奉呈して団結の象徴にしましたが、今も台北に「国父紀念館」があります。日本の敗戦と共に国共両党は大規模な内戦を展開し、昭和24年（1949）に中華人民共和国が誕生しました。勝利をおさめた共産党は、1956年の生誕90周年に毛沢東の「孫中山先生を記念する」という文章を発表して、「国共合作」を敢行した孫文を自分たちの革命の先行者と位置付けました。以後、共産党は時に応じて、孫文を高く評価する国家指導者の講話を公表し、記念行事を挙行して現在に至っています。台湾統一問題を見据えて、孫文は全世界の華僑・華人を含めた「中華民族」統合の象徴と位置付けられています。

孫文が目標としたのは、まず中国の改造を成し遂げて、更に平和な世界を創り上げることでした。彼の有名な「三民主義（民族・民権・民生）は、主権者である中国国民に幸福な生活を送らせると共に、地球上の全ての国々が共存共栄していく方策を説いたものです。革命の道を選んだ孫文は、腐敗した清朝を打倒して中華民国を創立することに成功しました。そして「革命未だ成らず」の言葉を残し、志し半ばにして倒れたのですが、その後の為政者は、自らの支配体制が孫文の革命を継承するものとしています。海外に亡命した孫文はが、革命活動の主たる根拠地としたのは、日本でした。中国同盟会も、中華革命党も、本部は東京に置かれ、華僑・留学生、更には有志の日本人がその活動を支援しました。彼が、日本を第二の故郷とまで言った所以です。「大アジア主義」講演では、日本が武力侵略の道を棄てて、中国と協力して、新しい平和な世界を創るよう呼びかけました。

六角堂へ入ります。

ビデオで孫文の生涯が放映されていました。

天井部分です。

孫文の書いた「移情館」の扁額

壁紙は、金唐紙です。これは、明治時代の製法により復元され、創建当時の多くの賓客を魅了した大正時代の「金唐紙」です。

窓から見た霞んだ海の景色

復元された暖炉

暖炉周りのタイルは英国製だそうです。

この外側のドアは、先程表から見た玄関です。

2階へ上がります。

六角形なので、曲がり具合が微妙です。

2階の天井部分。この部屋には、呉錦堂ゆかりの机、椅子、扁額などがあります。

各部屋にも展示があります。

孫文の書いた扁額があります。

2階の窓から見た霞んだ大橋です。こんな景色は初めて見ました。

2階から見た松海別荘の勾配のある屋根

ここが紀念館の出入り口になっています。

海に面した方へ回ってみました。

さっき2階から見た建物部分です。

この旅行記へのコメント （3）

• Weiwojingさん 2015/07/20 10:07:04

  私も「孫文記念館」を訪れてみたいです。

  belledune さん、おはようございます。
  
  「神戸の孫文記念館・移情館閣を訪れて」を拝見しました。この記念館の存在は知っていましたが、神戸を訪れることはほとんどありませんので、現在まで訪ねたことはありません。
  
  孫文には大変興味がありますので、彼との関わりのある人物や場所を訪ねてみたいという願いがあります。マカオや香港、中国などの彼とゆかりのある場所は何か所か行ってきました。日本でも横浜などで彼の足跡を訪ねることもしました。
  
  しかし、この神戸の記念館はまだですので、いつか訪ねてじゅっくりと彼の足跡を追いたいと思います。
  
  では、また訪問致します。
  
  Tamegai

  belleduneさん からの返信 2015/07/20 10:36:52

  RE: 私も「孫文記念館」を訪れてみたいです。

  Tamegaiさん、見て頂きまして、ありがとうございます。晴れた日に訪れるとまた違った印象だと思いますが、滅多に見られないこういう天候もまた良かったのではないかと感じました。
  蒸し暑い夏に弱いので、このところ家で本を読んだりすることが多いのですが、4travelのサイトで、世界各地の景色を眺めて、満足しています。早く涼しくならないかな...
  フィリピンの蒸し暑さは格別だと思いますが、Tamegaiさんは如何お過ごしですか？
  
  
  > belledune さん、おはようございます。
  >
  > 「神戸の孫文記念館・移情館閣を訪れて」を拝見しました。この記念館の存在は知っていましたが、神戸を訪れることはほとんどありませんので、現在まで訪ねたことはありません。
  >
  > 孫文には大変興味がありますので、彼との関わりのある人物や場所を訪ねてみたいという願いがあります。マカオや香港、中国などの彼とゆかりのある場所は何か所か行ってきました。日本でも横浜などで彼の足跡を訪ねることもしました。
  >
  > しかし、この神戸の記念館はまだですので、いつか訪ねてじゅっくりと彼の足跡を追いたいと思います。
  >
  > では、また訪問致します。
  >
  > Tamegai

  Weiwojingさん からの返信 2015/07/20 19:53:30

  RE: RE: 私も「孫文記念館」を訪れてみたいです。

  belledune さん
  
  フィリピンはこのところずっと雨季のため、この２週間連日雨ばかりで、台風の接近があったり、烈しい風雨にもまわれたりして、あまり外に出られませんでした。
  
  こんなにすごい雨が降るとは想像もつきませんでした。正にバケツを引っくり返したような猛烈な雨です。
  
  しかし、昨日から雨は止み、青空が顔をのぞかせてきました。２週間余りは寒いと言った方がよいくらいの気候で、ここが熱帯の国かと思えないほどでした。これで雨季は明け多とは言えないようで、まだまだ雨の日があるようです。
  
  日本は今猛暑の毎日でしょうか。健康に気を付けて、お過ごしください。またフィリピンから旅行記をお送りします。
  
  Tamegai